脂質異常症の薬「フェノフィブラート(トライコア)」を徹底解説|中性脂肪を下げる理由とは
脂質異常症の薬「フェノフィブラート
(トライコア)」を徹底解説|
中性脂肪を下げる理由とは

脂質異常症のお薬で『フェノフィブラート(トライコア)』を飲んでいます。

フィブラート系薬剤で、1日一回の服用で便利なお薬ですね。
トライコアは当院でも処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
フェノフィブラート(トライコア錠)とは
フェノフィブラートは、脂質異常症(高脂血症)の治療に用いられるフィブラート系の薬です。
核内受容体「PPARα」を活性化することで、脂質代謝にかかわる複数のタンパク質の発現を調節。
その結果、以下のような効果が得られます:
- 中性脂肪(トリグリセライド)の低下
- LDLコレステロールの低下
- HDLコレステロールの上昇
日本では「トライコア錠」として処方されており、1日1回、食後の服用が基本です。
フェノフィブラート(トライコア錠)の特徴
✔ 1日1回の服用でOK
1日1回の食後服用で効果が得られ、服薬負担が少なく続けやすい薬です。
✔ 日本独自の製剤技術で吸収性アップ
フェノフィブラートを固体分散体化することで吸収性を高めており、従来のカプセル製剤に比べて少ない量で同等の効果が得られます。
✔ 脂質バランスを総合的に改善
- 中性脂肪の強力な低下作用
- LDL・総コレステロールの低下
- HDLの上昇
このように、複数の脂質項目に同時に作用するのが特徴です。
✔ 豊富な臨床経験と国際的な実績
1975年のフランスでの承認以来、世界約80カ国で使用され、日本でも20年以上の実績があります。
効能・効果
適応症
- 高脂血症(家族性を含む)
使用上の注意点
- 総コレステロールのみが高い「IIa型」では第一選択薬ではない
- カイロミクロン(I型)には効果未確認
用法・用量
通常の服用量
- 1日1回、106.6mg〜160mgを食後に経口投与
※年齢や症状に応じて調整されます。
開始用量の目安(型別)
高脂血症のタイプ | 初期用量の目安 |
---|---|
総コレステロール及びトリグリセライドの両方が高い高脂血症(IIb・III型) | 106.6mgから開始 |
トリグリセライドのみが高い高脂血症(IV・V型) | 53.3mgから開始可能 |
特別な配慮が必要なケース
- 肝機能異常や肝疾患の既往がある場合 → 53.3mgから開始
- 腎機能に問題がある場合 → 状況に応じて用量調整や投与間隔の延長が必要
使用できない方(禁忌)
以下に該当する方には使用できません:
- 本剤成分に対して過敏症の既往
- 肝障害
- 重度の腎機能障害
- 血清クレアチニン2.5mg/dL以上
- クレアチニンクリアランス40mL/min未満
- 胆のう疾患
- 妊婦、妊娠の可能性がある方、授乳中の方
併用に注意が必要な薬
薬剤 | 注意点 |
---|---|
抗凝血薬(ワルファリン等) | 抗凝血作用が増強される可能性あり。プロトロンビン時間のモニタリングが必要。 |
スタチン系(プラバスタチンなど) | 横紋筋融解症のリスク増加。特に腎機能に問題がある方は慎重に使用。 |
スルホニル尿素系(グリベンクラミド等) | 低血糖症のリスクあり。血糖値をしっかり確認。 |
陰イオン交換樹脂(コレスチラミン等) | フェノフィブラートの吸収低下の可能性があるため、時間を空けて服用。 |
シクロスポリン | 腎機能障害の報告あり。腎機能モニタリングを行いながら慎重投与。 |
副作用と発生頻度
■ 重篤な副作用(頻度不明)
- 横紋筋融解症
→ 筋肉痛、脱力感、CK上昇、ミオグロビン上昇など - 肝障害
→ AST・ALTの大幅な上昇、黄疸、肝炎など - 膵炎
→ 激しい腹痛、嘔吐、アミラーゼ・リパーゼ上昇
■ よくある副作用(臨床試験ベース)
分類 | 症状例 |
---|---|
肝臓 | AST・ALT上昇、γ-GTP上昇など |
消化器 | 吐き気、嘔吐、便秘、腹痛、胃部不快感など |
筋肉 | CK上昇、筋肉痛、脱力感など |
皮膚 | 発疹、かゆみ、光線過敏症など |
精神・神経 | 頭痛、めまい、ふらつきなど |
その他 | 倦怠感、むくみ、しびれ感など |
※服用中にこれらの症状が出た場合は、自己判断せず必ず医師に相談しましょう。
まとめ
フェノフィブラート(トライコア錠)は、複数の脂質異常に同時に対応可能な薬剤であり、特に中性脂肪が高いタイプに強く推奨されます。
- 1日1回、食後に服用
- トリグリセライド・LDLを下げ、HDLを上げる
- 服薬前に食事療法・生活習慣の見直しが前提
- 服用中は定期的な血液検査(特に肝・腎・筋肉)を推奨
- 副作用に注意し、自己判断での中断は避けること
参考情報・出典
- PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構):添付文書・IF情報
- KEGGデータベース:薬剤情報(ベザフィブラート)
- 厚生労働省・日本動脈硬化学会:『脂質異常症治療ガイドライン(JAS)』
よくある質問(Q&A)
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トライコア錠は他のフィブラート系薬に比べてどんな強みがありますか?
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トライコア錠は、フェノフィブラートを固体分散体化する独自技術を用いて開発されており、従来のカプセル製剤(トライコアカプセル67mg/100mg)よりも吸収性が高く、服薬量を減らせるという利点があります。
例えば:
- トライコア錠53.3mg ×2錠=106.6mg → カプセル製剤134mg相当
- トライコア錠80mg ×2錠=160mg → カプセル製剤200mg相当
また、1日1回の食後投与で安定した効果が得られ、患者の服薬アドヒアランス向上にも寄与します。
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フェノフィブラート(トライコア錠)の先発薬はいつ発売されましたか?
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日本国内では、先発品であるトライコアカプセル(微粉化フェノフィブラート製剤)が2005年3月に発売されました。
その後、服用性向上を目指して吸収性を高めた錠剤タイプ(トライコア錠53.3mg/80mg)は2011年12月に発売されています。
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フェノフィブラート(トライコア錠)の1か月分(30日)の薬価と自己負担額の目安は?
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※2025年時点での薬価(2024年改定ベース)に基づいて計算
※自己負担は3割負担として試算● トライコア錠(先発品/ヴィアトリス製薬)
用量 薬価(1錠) 1日用量の例 30日分の薬価 自己負担額(3割) 53.3mg 15.5円 2錠(106.6mg) 930円 約280円 80mg 20円 2錠(160mg) 1,200円 約360円
● フェノフィブラート錠(後発品/武田テバファーマ)
用量 薬価(1錠) 1日用量の例 30日分の薬価 自己負担額(3割) 53.3mg 8.8円 2錠(106.6mg) 528円 約160円 80mg 10.4円 2錠(160mg) 624円 約190円
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妊婦にフェノフィブラート(トライコア錠)は使えますか?
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使用できません。
動物実験で胎児毒性が報告されており、胎児への影響が否定できません。
妊婦または妊娠の可能性がある女性への投与は禁止されています。
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フェノフィブラート(トライコア錠)は小児に使えますか?
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原則、使用できません。
小児を対象とした臨床試験は実施されておらず、安全性や有効性は確立していません。
