手足の関節が痛いときに出される漢方「桂枝加朮附湯」とは?

手足の関節が痛いときに出される漢方
「桂枝加朮附湯」とは?

関節痛があるので『桂枝加朮附湯』使えますか?

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)は、関節痛や神経痛に使われる漢方薬のなかでも、

体力がある人で、冷え・のぼせ・湿気の影響を受けやすいタイプ」に適しています。

桂枝加朮附湯はオンラインで処方することができます。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。


桂枝加朮附湯とは?

江戸時代の医師・吉益東洞(よします・とうどう)が用いた経験方で、
桂枝湯(けいしとう)に蒼朮(そうじゅつ)と附子(ぶし)を加えた処方です。

現在は、以下のように医療用製剤として流通しています:

  • 7種の生薬(ケイヒ・シャクヤク・ソウジュツ・タイソウ・カンゾウ・ショウキョウ・ブシ末)を
    水のみで煎じ→噴霧乾燥→乾式造粒により顆粒化

特徴

◆ 処方の由来

古典の経験方「桂枝加朮附湯」を、現代の品質管理のもとエキス顆粒剤として製品化。

◆ 製剤上の特徴

  • 抽出:水だけを使用、有機溶媒不使用
  • 顆粒化:抽出エキスを噴霧乾燥+乾式造粒で加工
  • 成分の代表例:
    • 芍薬由来 → ペオニフロリン
    • 蒼朮由来 → β-オイデスモール
    • 甘草由来 → グリチルリチン酸
    • 生姜由来 → [6]-ショウガオール
    • 附子由来 → ベンゾイルメサコニン

◆ 効能取得の背景

関節痛・神経痛を効能とする医療用漢方製剤として承認。


効能・効果

  • 関節痛(かんせつつう)
  • 神経痛(しんけいつう)

有効性の考え方

  • 個別の臨床試験データや発現率の記載はありません。
  • 医療用漢方では、効能だけでなく患者さんの「証(しょう)=体質や症状」に合っているかが重要。
  • 効果の確認は短期間で行い、改善が乏しければ継続しないのが原則です。

用法・用量

  • 成人:1日7.5gを2〜3回に分けて、食前または食間に服用
  • 年齢・体重・症状によって適宜調整されます
  • 「食間」は食後2〜3時間を目安
     ※胃が弱い方は事前に医師へご相談ください。

使用できない方・注意が必要な方(禁忌・慎重投与)

以下の方は服用を避けるか、慎重に投与されます:

  • 妊婦・妊娠の可能性のある方:附子の副作用が出やすいため
  • 小児(しょうに):ブシ末含有のため慎重投与
  • 高齢者:一般に生理機能が低下しており、減量などの配慮が必要
  • 体力が非常に充実している方:副作用が出やすく強まるおそれ
  • 暑がり・のぼせやすい方(赤ら顔):動悸・のぼせ・しびれ・吐き気などが出やすい

▶︎ 服用前に必ず申告を
・体質、既往歴(過去の病歴)
・妊娠・授乳の有無 など


飲み合わせに注意すべき薬(相互作用)

◆ 注意すべき成分

この製剤には甘草(カンゾウ)が含まれています。
以下と併用すると、副作用のリスクが高まります:

  • 甘草を含む漢方:芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など
  • グリチルリチン酸を含む製剤
     グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン配合錠 など

◆ なぜ注意が必要なのか?

  • グリチルリチン酸はカリウムの排泄を促進
     → 低カリウム血症
     → 偽アルドステロン症(ぎアルドステロンしょう)
     → ミオパチー(筋力低下など)
    と進展するおそれがあります。

▶︎ 服用中は以下を定期チェック

  • 血清カリウム値
  • 血圧
  • 浮腫(むくみ)の有無

副作用(頻度はすべて不明)

◆ 重大な副作用

  • 偽アルドステロン症
     → 低カリウム血症、血圧上昇、体重増加、浮腫など
     → 異常時は中止+カリウム補充
  • ミオパチー
     → 脱力、けいれん、四肢の麻痺など
     → 異常時は中止+適切な処置

◆ その他の副作用

  • 過敏症:発疹、発赤、かゆみなど
  • 自覚症状:動悸(どうき)、のぼせ、舌のしびれ、吐き気など

▶︎ すぐに受診すべき症状:

  • 急な体重増加
  • こむら返り
  • 筋力低下
  • 動悸や息切れ
  • 発疹

まとめ

  • 桂枝加朮附湯は、関節痛・神経痛に使われる医療用漢方。
  • 「証」に合うかどうかが非常に大切。
  • 用法:成人は1日7.5gを2〜3回に分けて服用
  • 改善がなければ継続投与を避ける
  • 妊婦は原則NG。小児・高齢者も慎重に。
  • 飲み合わせ注意(甘草・グリチルリチン酸含有薬)

受診時に医師へ伝えてほしいこと

  • 現在服用中の市販薬・サプリ・他の漢方薬(甘草の有無)
  • 妊娠・授乳の有無
  • むくみ・筋けいれん・動悸などの症状の有無

参考文献・出典

PMDA添付文書情報
 (https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)

KEGG MEDICUS 漢方製剤データベース(D06944)
 (https://www.kegg.jp/kegg-bin/search_pathway_text?map=drug)

JAPIC医薬品インデックス(製薬協公開情報)

漢方治療ハンドブック(医学書院)

ツムラインタビューフォーム(医療従事者向け)

また、**「日本東洋医学会雑誌」や「漢方の臨床」**などの専門誌にも実例報告があります。

よくある質問(Q&A)


桂枝加朮附湯の同じ系統の漢方薬と比べた強みは?

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)は、関節痛や神経痛に使われる漢方薬のなかでも、
体力がある人で、冷え・のぼせ・湿気の影響を受けやすいタイプ」に適しています。

類似処方と比較した際の強みは以下のとおりです:

  • 桂枝湯ベースで全体のバランスをとりつつ、蒼朮と附子の温め作用を追加
    →「冷え+痛み」に対応できるのが特徴
  • 蒼朮(そうじゅつ)により、湿気による関節痛(重だるさ)にも対応
  • 附子(ぶし)によって、寒さによる神経痛や末端の冷えに特化

桂枝加朮附湯の先発薬はいつから使われているの?

ツムラ桂枝加朮附湯エキス顆粒(医療用)は、
1985年(昭和60年)に「薬審2第120号通知」に基づいて承認されました。

これは医療用漢方エキス製剤としては比較的早い時期の承認で、
現在も整形外科や内科で広く使用されています。

1か月(30日)処方した場合の薬価と自己負担額の目安は?

ツムラ桂枝加朮附湯の薬価は以下のとおりです:

  • 薬価:14.9円/g
  • 通常処方量:7.5g/日 × 30日 = 225g

よって、薬剤費の目安:

  • 225g × 14.9円 = 3,352円(保険点数ベース)

▶ 自己負担額の例(3割負担の場合):

約1,000円程度(+調剤料など別途)

この薬はどのくらいで効果が出る?作用時間は?

個人差はありますが、漢方薬の一般的な特徴として:

  • 1~2週間以内に体質や痛みに改善が見られることが多い
  • 特に「冷え」や「のぼせ」などの体質症状の変化で先に効果が出やすい

持続時間については明確な時間単位での記載はありませんが、
1日2〜3回の服用が推奨されていることから、4〜6時間程度の持続作用を意識した設計と考えられます。

妊娠中でも飲んでいいの?

原則、妊娠中の服用は避けるべきとされています。

理由は以下の通りです:

  • 含有生薬の附子(ぶし)により、胎児・母体への毒性リスクが高まる可能性があるため
  • 添付文書にも「妊娠している可能性がある女性には投与しないことが望ましい」と明記

▶ 妊娠中に漢方薬を検討する場合は、必ず産婦人科医と相談してください。

授乳中でも飲めるの?

授乳中の使用については明確な安全性データはありませんが、

  • 添付文書では「治療上の有益性と母乳栄養の有益性を比較し、授乳の継続・中止を検討すること」と記載
  • 成分の母乳への移行性に関する具体的なデータはないが、
    附子・甘草などを含むため、母乳栄養に影響が出る可能性もある

▶ 授乳中は、医師と相談の上で判断し、必要に応じて授乳のタイミングを調整することが推奨されます。

子どもにも使えるの?年齢制限や注意点は?

小児(15歳未満)への使用は慎重に検討すべきとされています。

理由は:

  • 附子(ぶし)が含まれており、小児では副作用が出やすくなる可能性がある
  • 用量調整が難しく、体重・年齢に応じて慎重な対応が必要

▶ こどもに処方される場合は、小児漢方に詳しい医師による評価が必要です。

この漢方薬はどんな人に向いてるの?

以下のような方に処方されることが多いです:

  • 手足や腰の関節が冷えると痛む
  • 雨の日や湿気が多いと体が重だるくなる
  • 体力はある方だが、のぼせ・赤ら顔・動悸がある
  • 湿気や寒さによる神経痛に悩んでいる

漢方では、こうした「証(しょう)=体質と症状のバランス」に着目して処方されます。

名前が難しい…「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」って何て読むの?

読み方は「けいしかじゅつぶとう」と読みます。

漢方では「桂枝湯(けいしとう)」という基本処方に、
蒼朮(そうじゅつ)+附子(ぶし)を加えた構成になっており、
その名前がそのまま薬名になっています。

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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