トランサミンってどんな薬?出血・のどの腫れ・肌のかゆみに使われる理由をわかりやすく解説
トランサミンってどんな薬?
出血・のどの腫れ・肌のかゆみに使われる理由をわかりやすく解説

のどの腫れに『トランサミン』が処方されました。

トランサミンは出血を抑えるための薬です。
具体的には、鼻血・歯ぐき・術後の出血などに加え、
のどの痛み・腫れ・口内炎・湿疹・蕁麻疹(じんましん)などにも使われます。
炎症やアレルギー反応を抑える作用もあり、
皮膚科・耳鼻科・内科などで幅広く処方されています。
トランサミンはオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
トランサミン®(トラネキサム酸)とは?
トランサミン®は、有効成分 トラネキサム酸 を含む処方薬です。出血を止める働き(止血)に加え、のどの痛み・腫れ、湿疹の赤み・かゆみなど炎症やアレルギー症状を和らげる目的で広く用いられています。
剤形は以下の通りです(いずれも医師の処方が必要です):
- 錠剤:250mg/500mg
- カプセル:250mg
- 散剤:50%
- ※医療機関では注射剤(静脈投与)も使用されます
トランサミン®は、抗プラスミン薬(抗線溶薬)に分類されます。
体内で血栓(かさぶた)を溶かす酵素「プラスミン」の働きを選択的に抑えることで:
- 出血を抑える(フィブリン分解の抑制)
- 炎症やアレルギー反応を鎮める(キニンなどの活性物質の抑制)
といった効果を示します。
わかりやすく言えば、
「出血を止め、赤み・腫れ・痛み・かゆみを落ち着かせる薬」です。
目次
トランサミン®の特徴
- 1962年:AMCHAという化合物がプラスミンによるフィブリン分解を抑えることが報告される
- 1964年:AMCHAのtrans体(トラネキサム酸)に、特に強い抗プラスミン作用があると判明
- 1965年:日本でカプセル・注射剤が承認
- その後、錠剤・細粒・シロップが順次追加
- 作用機序は明確で、プラスミンの働きを妨げて線溶(血栓の溶解)を抑える薬です
経口剤・注射剤ともにあり、耳鼻科・皮膚科・内科などで幅広く処方されています。
効能・効果(保険適応)
出血に関する適応
- 全身性の線溶亢進が関与する出血傾向
例:白血病、再生不良性貧血、紫斑病、手術中・術後の異常出血 - 局所の線溶亢進が関与する異常出血
例:肺出血、鼻出血、性器出血、腎出血、前立腺手術中・術後の異常出血
炎症・アレルギーに関する適応
- 皮膚疾患に伴う紅斑・腫れ・かゆみ
例:湿疹、蕁麻疹、薬疹、中毒疹 - 耳鼻咽喉科領域の炎症症状
例:扁桃炎、咽喉頭炎による咽頭痛・赤み・腫れ - 口内炎における痛み・アフタ(潰瘍)
有効性(臨床試験データ)
日本国内の一般臨床試験および二重盲検試験で、以下のような有効性が報告されています。
- 出血傾向・異常出血に対する止血効果:
73.6%(2,063/2,802例) - 皮膚疾患での症状改善(紅斑・腫れ・かゆみ):
60.5%(135/223例) - 皮膚疾患における二重盲検試験:
有効以上:62.9%(本剤) vs 31.3%(プラセボ)(p<0.05) - 耳鼻咽喉科疾患での症状改善:
70.8%(119/168例) - 耳鼻咽喉科疾患における二重盲検試験:
有効以上:52.4%(本剤) vs 26.2%(プラセボ)(p<0.05)
出血コントロールや炎症・アレルギー症状の改善において、明確な有用性が確認されています。
用法・用量
- 通常、成人は1日 750〜2,000mgを3〜4回に分けて経口服用
(年齢・症状により適宜調整) - 飲み忘れた場合:
気づいたときに1回分を服用。ただし次の時間が近い場合は飛ばし、2回分を一度に飲まないように注意 - 腎機能が低下している方:
薬が体内に蓄積しやすいため、減量が必要な場合があります - 妊娠中・授乳中:
医師の判断で有益性が高い場合のみ使用されます。自己判断での服用は避けましょう。 - 注射剤の使用:
手術中・術後など、医師の管理下で静脈投与されることがあります。
使用できない方(禁忌)
- トロンビン投与中の方
併用により血栓形成(血のかたまりができやすくなる)リスクが高まるため、使用できません。
使用に注意が必要な方(要相談)
以下の方は、使用可否や用量を医師に相談してください:
- 血栓症のある方/血栓リスクが高い方(脳梗塞、心筋梗塞など)
- 消費性凝固障害(DIC)の方(※ヘパリン併用が原則)
- 術後で長期間ベッド上にいる方、圧迫止血中の方
- 腎機能障害のある方、透析中の方
- アレルギー体質の方(薬剤成分に過敏症のある方)
飲み合わせに注意が必要な薬(相互作用)
併用禁忌
- トロンビン:併用により血栓形成傾向が高まり、重篤なリスクがあります。
併用注意
- ヘモコアグラーゼ:フィブリン塊が長く残り、血管閉塞のリスクあり
- バトロキソビン:血栓・塞栓症(血管の詰まり)のリスク上昇
- 凝固因子製剤(例:エプタコグアルファなど):過剰な止血が起きる可能性あり
サプリメントや市販薬を含め、自己判断での併用は避け、受診時に服用中の薬を共有してください。
副作用と発生頻度
重大な副作用(頻度不明)
- けいれん(痙攣)
特に透析中の方で報告あり。意識喪失、手足のつっぱり等があれば、速やかに救急受診してください。
比較的よくみられる副作用(0.1〜1%未満)
- 皮膚:かゆみ、発疹
- 消化器:食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、胸やけ
- その他:眠気
まとめ
- トランサミン®(トラネキサム酸)は、出血、炎症、アレルギー症状の改善に広く使われる薬です。
- 多剤併用や腎機能、血栓症のリスクがある方では、注意が必要です。
- トロンビンとの併用は禁止(禁忌)されています。
- 用量・期間は症状や体質により異なるため、自己判断せず医師・薬剤師に相談を。
記載内容は一般情報であり、診療・処方は個別の症状・体質に応じて異なります。ぜひ一度ご相談ください。
参考文献・出典
添付文書(第一三共「トランサミン錠」):最終改訂 2023年1月
KEGG DRUG:D01136
JAPIC 添付文書情報
PubMed論文:Tranexamic Acid AND bleeding / dermatology / ENT などで検索
よくある質問(Q&A)
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トランサミンはどんな症状に使われる薬ですか?
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出血を抑えるための薬です。
具体的には、鼻血・歯ぐき・術後の出血などに加え、のどの痛み・腫れ・口内炎・湿疹・蕁麻疹(じんましん)などにも使われます。
炎症やアレルギー反応を抑える作用もあり、皮膚科・耳鼻科・内科などで幅広く処方されています。
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トランサミンと同じ系統の薬と比べた強みは?
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トラネキサム酸(トランサミン)は、抗プラスミン薬(抗線溶薬)の中でも最も古く、臨床実績が豊富で、安全性と効果の両立が評価されています。
止血作用だけでなく、のどの痛み・皮膚のかゆみなどへの適応が明記されているのも特徴です。
同系統薬のエプシロン-アミノカプロン酸より抗プラスミン作用が強く、作用時間も長いとされています。
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トランサミン(トラネキサム酸)の先発品はいつ発売されたの?
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トランサミン®は、1965年に第一製薬(現:第一三共)がカプセル・注射剤として最初に承認・発売しました。
翌年以降に錠剤・細粒・シロップが追加され、長年の使用実績があります。
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トランサミンの1か月(30日)分の薬価と実際の目安価格は?
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以下は30日(1日3回)服用した場合の薬価の例です(2025年時点の薬価基準に基づく概算):
剤形 規格 1日量 30日分薬価 自己負担目安(3割負担) 錠剤 250mg×3錠 750mg 約936円 約280円 錠剤 500mg×3錠 1500mg 約1,071円 約320円 カプセル 250mg×3C 750mg 約936円 約280円 散剤 50%散 約1.5g 約464円 約140円 ※薬局での技術料や管理指導料を除いた「薬剤そのもの」の価格です。
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トランサミンはどのくらいで効いて、効果はどれくらい続きますか?
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経口投与後、**約2〜3時間で血中濃度が最大(Tmax)**となり、効果はおよそ6〜8時間程度持続します。
服用は通常1日3回〜4回に分けて行われ、症状に応じて調整されます。
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妊娠中でもトランサミンは使えますか?
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基本的には医師の判断で有益性が危険性を上回るときに使用可とされています。
動物実験では催奇形性(赤ちゃんに奇形を起こすリスク)は報告されていませんが、十分なヒトでのデータがないため注意が必要です。
切迫流産や早期出血時など、医師の管理下で使用されることはあります。
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授乳中にトランサミンを使っても大丈夫ですか?
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トラネキサム酸は母乳中への移行がごく微量であることが報告されており、授乳中でも比較的安全に使用できる薬とされています。
ただし、乳児に下痢やアレルギーが出る可能性も否定できないため、医師と相談のうえ使用するのが安心です。
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子どもにトランサミンは使えますか?
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小児にも体重や年齢に応じて適切に量を調整することで使用可能です。
実際、口内炎や湿疹などで処方されることも多く、広く小児での使用実績があります。
ただし、乳幼児ではけいれんなどの副作用に注意が必要なため、必ず医師の指示に従ってください。



