アジスロマイシンってどんな抗生物質?3日だけ飲む理由や副作用を解説

アジスロマイシンってどんな抗生物質?
3日だけ飲む理由や副作用を解説

マイコプラズマ肺炎に『アジスロマイシン』が処方されました

アジスロマイシンは、一部の感染症では3日間で治療が完了するとても使いやすい抗菌薬です。

ただし、乱用は耐性菌(薬が効きにくくなった菌)につながる原因になることもあります。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。


アジスロマイシンとは

アジスロマイシンは、アジスロマイシン水和物を有効成分とする抗菌薬です。
先発品ではジスロマック、後発医薬品(ジェネリック)ではアジスロマイシン錠250mgなどとして処方されます。

ポイント

  • 細菌のたんぱく合成を妨げて、増えにくくする薬
    • いわば、細菌が増えるための働きを止めるイメージです。
  • ウイルスが原因のかぜには基本的に効きません
    • のどの痛みや咳があっても、原因が細菌でなければ効果は期待しにくい薬です。

アジスロマイシンの特徴

アジスロマイシンは、従来のマクロライド系抗菌薬よりも抗菌スペクトル(効く菌の範囲)が広いとされる、世界初の15員環マクロライド(アザライド系)の薬です。
日本では2000年6月
に発売されました。

後発品の一例であるアジスロマイシン錠250mgは、規格や試験方法を定めたうえで、加速試験(保存中に品質が保てるかを見る試験)や生物学的同等性試験(先発品と同じように体に吸収されるかを確認する試験)などを行い、2013年8月に承認2013年12月に販売開始となりました。

その後、2016年9月には、適応菌種に淋菌プレボテラ属が追加され、さらに骨盤内炎症性疾患(PID)の効能・効果と用法・用量も追加承認されています。

臨床で「使いやすい」と言われる主な理由

  • 1日1回でよい
    • 飲む回数が少なく、続けやすい薬です。
  • 一部の感染症では3日間で治療が完了する
    • 体の中、とくに組織内に薬が長くとどまりやすい性質があります。
  • 幅広い菌に効果が期待できる
    • グラム陽性菌だけでなく、一部のグラム陰性菌、嫌気性菌、クラミジア、マイコプラズマなどにも使われます。

一方で、薬が体内に比較的長く残るため、飲み終わったあとに副作用が出ることがある点には注意が必要です。


効能・効果

添付文書上、アジスロマイシンは、アジスロマイシンに感受性のある細菌による感染症に使われます。
ここでいう感受性があるとは、その菌に対して薬が効く可能性が高いという意味です。

主な対象となる感染症(例)

  • 皮膚の感染症
    • 深在性皮膚感染症
    • リンパ管・リンパ節炎 など
  • のど・気道の感染症
    • 咽頭・喉頭炎
    • 扁桃炎
    • 急性気管支炎 など
  • 肺の感染症
    • 肺炎
    • 肺膿瘍
    • 慢性呼吸器病変の二次感染 など
  • 副鼻腔炎
  • 歯科・口腔内の感染症
    • 歯周組織炎
    • 歯冠周囲炎
    • 顎炎 など
  • 性感染症の一部
    • 尿道炎
    • 子宮頸管炎
  • 骨盤内炎症性疾患(PID)
    • ただし、注射剤から内服へ切り替える治療が前提です。

主な適応菌種(例)

  • ブドウ球菌属
  • レンサ球菌属
  • 肺炎球菌
  • インフルエンザ菌
  • モラクセラ・カタラーリス
  • レジオネラ・ニューモフィラ
  • ペプトストレプトコッカス属
  • 淋菌
  • プレボテラ属
  • クラミジア属
  • マイコプラズマ属 など

※特にPIDで淋菌を適応菌種とするのは、PIDの適応症に限るとされています。


有効性(臨床試験など)

アジスロマイシンは、さまざまな感染症で臨床試験が行われており、代表的な成績は以下の通りです。

皮膚科感染症

  • 有効率 91.8%(67/73)

呼吸器感染症

咽喉頭炎、急性気管支炎、扁桃炎、肺炎、肺化膿症、マイコプラズマ肺炎などで、

  • 有効率 97.6%(373/382)

歯科・口腔外科領域感染症

歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎で、

  • 有効率 85.9%(73/85)

クラミジアによる尿道炎・子宮頸管炎

1,000mgを1回投与した試験では、

  • 投与開始15日目:PCR陰性化率 86.7%(98/113)
  • 投与開始29日目:PCR陰性化率 90.7%(98/108)

PCR陰性化率とは、検査で原因となる菌や病原体が見つからなくなった割合のことです。

肺炎(注射→内服への切り替え治療)

いわゆるスイッチ療法(点滴から飲み薬へ切り替える治療)では、

  • 投与開始15日目の有効率 84.5%(60/71)

骨盤内炎症性疾患(PID)

注射から内服へ切り替える治療では、

  • 投与開始15日目の有効率 94.1%(48/51)

さらに、この試験では主な原因菌であるクラミジア淋菌に対して、

  • 臨床効果 100%
  • 菌消失率 100%
    が示されています(試験内の該当例)。

これらの数字は、すべての人に同じような結果が出ることを保証するものではありません
ただし、どのような感染症に使われ、どの程度の有効性が期待されてきたかを知る参考になります。


用法・用量

アジスロマイシンは、病気によって飲み方がかなり違う薬です。
成人でよく使われる代表的な飲み方を整理します。

① 一般的な感染症

(皮膚、のど、急性気管支炎、肺炎、副鼻腔炎、歯科・口腔領域など)

500mgを1日1回、3日間
合計で1.5g飲みます。

補足

「3日で終わり」と聞くと短く感じるかもしれませんが、アジスロマイシンは組織内に長くとどまる性質があり、3日間の服用でもその後しばらく効果が続くと考えられています。

ただし、4日目以降も症状が変わらない、または悪化する場合は、医師の判断で別の薬に変更されることがあります。


② 尿道炎・子宮頸管炎

(クラミジアなど)

1,000mgを1回だけ内服します。

補足

1回だけでよいのは、この量で有効な組織内濃度が比較的長く続くと考えられているためです。
ただし、服用後も2〜4週間は経過をみて効果判定を行います。効果が不十分な場合は、別の治療が検討されます。


③ 骨盤内炎症性疾患(PID)

まずアジスロマイシン注射剤で治療したあと、

250mgを1日1回内服に切り替えます。

補足

PIDについては、最初から内服だけで治療した場合の有効性・安全性は確立していないとされています。
そのため、基本的には注射→内服への切り替え治療が前提です。


飲み方のコツ・注意

  • 飲み忘れがあると治療がうまくいかないことがあります
    • 菌が十分に抑えられず、耐性菌(薬が効きにくくなった菌)につながる原因になることもあります。
  • 飲み忘れたときの対応は、飲む量や病気によって変わるため、自己判断せず医師・薬剤師に相談してください。
  • 食事の影響は大きくないとされていますが、処方時に食前・食後などの指示があれば、それに従ってください。

使用できない方(禁忌)

次の方は、アジスロマイシンを使用できません。

  • 本剤の成分に対して過敏症(アレルギー)の既往がある方

たとえば、

  • 以前にアジスロマイシンやジスロマックで発疹が出た
  • 息苦しさ
  • 顔や唇の腫れ
    などがあった場合は、必ず受診時に伝えてください。

使い合わせに注意が必要な薬

アジスロマイシンには、併用に注意が必要な薬があります。
飲み合わせによって、副作用が強く出たり、薬の効き方が変わったりすることがあります。

代表的な併用注意薬

制酸剤

(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなど)

  • アジスロマイシンの最高血中濃度が下がる報告があります。

ワルファリン

  • INR上昇の報告があります。
  • INRが上がると、血が固まりにくくなり、出血しやすくなる方向に働きます。

シクロスポリン

  • 血中濃度の上昇半減期の延長が報告されています。
  • 半減期の延長とは、薬が体から抜けるまでの時間が長くなることです。

ネルフィナビル

  • アジスロマイシンのAUCCmaxが上昇した報告があります。
  • AUCは体が薬にさらされる量の目安、Cmaxは血中濃度のピーク値のことです。

ジゴキシン

  • ジゴキシン中毒のリスク上昇が報告されています。

ベネトクラクス

  • 効果が弱くなるおそれがあり、併用は避けることが望ましいとされています。

そのほか注意したい薬

同じマクロライド系の薬で報告されている相互作用から、

  • テオフィリン
  • ベンゾジアゼピン系
  • カルバマゼピン
  • フェニトイン
  • エルゴタミン
    なども注意が必要と考えられることがあります。

処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含めて、お薬手帳を受診時に持参することが大切です。


副作用と発生頻度

副作用には、比較的よくある軽いものと、まれでも見逃してはいけない重いものがあります。
大切なのは、危険なサインを知っておくことです。

比較的よくみられる副作用

  • 下痢(1%以上)
  • 腹痛
  • 悪心(吐き気)
  • 嘔吐
  • 腹部不快感
  • 発疹
  • かゆみ
  • 蕁麻疹
  • 肝機能検査値の上昇
    • たとえばALT増加は1%以上、AST増加などは0.1〜1%未満です。

※小児では、

  • 白血球数減少
  • 下痢
    がみられることがあり、年齢によって出やすさに差があると報告されています。

注意が必要な重大な副作用

頻度は高くありませんが、次のような症状が出た場合はすぐに受診が必要です。

ショック/アナフィラキシー

  • 息苦しい
  • ゼーゼーする
  • 顔や唇が腫れる

重い皮膚症状

(TEN、スティーブンス・ジョンソン症候群、急性汎発性発疹性膿疱症など)

  • 強い発疹
  • 水ぶくれ
  • 口、目、外陰部などの粘膜のただれ

肝炎、肝機能障害、黄疸、肝不全

  • 強いだるさ
  • 皮膚や白目が黄色い
  • 食欲低下 など

急性腎障害

  • 尿が少ない
  • むくみ
  • だるさ

偽膜性大腸炎/出血性大腸炎

  • 強い腹痛
  • 頻回の下痢
  • 血便

間質性肺炎/好酸球性肺炎

  • 発熱
  • 息切れ

QT延長、心室性頻脈

  • 動悸
  • めまい
  • 失神

QT延長とは、心電図でみる心臓の電気の流れが長引く状態で、重い不整脈につながることがある変化です。

白血球減少、顆粒球減少、血小板減少

  • 発熱
  • 感染しやすい
  • 出血しやすい など

横紋筋融解症

  • 筋肉痛
  • 強い脱力
  • 尿が赤褐色になる

重要な注意点

アジスロマイシンは、体内に長く残りやすい薬です。
そのため、服用中だけでなく、飲み終わったあとに副作用が出ることもあります。

「もう飲み終わったから関係ない」とは考えず、

  • 発疹
  • 息苦しさ
  • 強い下痢
  • 動悸
  • めまい
  • 失神

などがあれば、早めに医療機関へ相談してください。


まとめ

アジスロマイシンは、15員環マクロライド(アザライド)系の抗菌薬で、先発品のジスロマックや、後発品のアジスロマイシン錠250mg「DSEP」などとして使われています。

この記事の要点

服用後しばらくは体調変化に注意が必要です。にきちんと伝えることが大切です。を伝え、適切な診断のもと使用することが大切です。

幅広い菌や感染症に使われる

呼吸器、皮膚、歯科口腔領域、性感染症の一部などで用いられます。

飲み方は病気によって異なる

一般感染症では500mgを1日1回、3日間

尿道炎・子宮頸管炎では1,000mgを1回

PIDでは注射から内服への切り替え

飲み合わせには注意が必要

制酸剤、ワルファリン、ジゴキシンなどは要注意です。

重い副作用はまれだが見逃せない

発疹、息苦しさ、強い下痢、動悸、失神などは早めに相談が必要です。

飲み終わったあとも副作用が出ることがある

参考文献・出典

PMDAの最新添付文書です。用法、注意点、副作用、妊娠中・授乳中・小児への扱いまで一通り確認できます。加えて、呼吸器や副鼻腔炎などで抗菌薬を使うかどうかの判断には、厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き」が参考になります。

Fouldsらの薬物動態研究

Amsdenらの相互作用研究

クラミジア・PID・肺炎の臨床試験

よくある質問(Q&A)


アジスロマイシンのいちばんの強みは何ですか?

1日1回で済みやすく、短い日数で治療が終わることがあるのが大きな強みです。一般的な感染症では500mgを1日1回、3日間という使い方があり、クラミジアによる尿道炎・子宮頸管炎では1000mgを1回だけ使う場合もあります。さらに、薬が組織に移行しやすく、血液から減ったあとも数日間は組織内で濃度が保たれやすいことが特徴です。

同じマクロライド系の薬と比べて、どう違いますか?

わかりやすく言うと、「飲む回数の少なさ」と「短期処方のしやすさ」で優位性があります。
たとえば、クラリスロマイシンは一般感染症で
1日2回
、エリスロマイシンは1日4〜6回に分けて使う添付文書になっています。一方、アジスロマイシンは1日1回です。飲み忘れを減らしやすく、忙しい人にも使いやすい薬です。

この薬は「同じ系統の薬より飲み合わせが少ない」と言えますか?

比較的そう言いやすい面があります。 アジスロマイシンは、添付文書上チトクロームP450による代謝が確認されていないとされています。そのため、同じマクロライド系でも相互作用が非常に多いことで有名なクラリスロマイシンと比べると、実務上は扱いやすいと考えられることがあります。
ただし、ワルファリン、ジゴキシン、制酸剤、シクロスポリンなど注意が必要な薬はあるので、「飲み合わせがまったく問題ない薬」ではありません。

先発薬はいつ発売された薬ですか?

日本では、先発品のジスロマックとして2000年6月に上市されています。後発品の一例であるアジスロマイシン錠250mg「DSEP」は、2013年8月承認、2013年12月販売開始です。

作用はどのくらいで出ますか?どのくらい持続しますか?

血液中の濃度のピークは、単回投与でだいたい2〜3時間前後です。ただし、この薬は「血中濃度」よりも組織にしっかり移ることが特徴で、一般的な感染症では500mgを1日1回3日間飲むことで、感受性菌に対して有効な組織内濃度が約7日間続くと予測されています。
つまり、飲んですぐ吸収はされるが、効き方の強みは“体の組織に長く残ること”にあります。

「3日だけ」で本当に大丈夫なのですか?

病気によっては大丈夫です。 アジスロマイシンは組織内に長く残る性質があるため、一般的な感染症では3日間で治療設計されている薬です。
ただし、4日目以降も症状が変わらない、または悪化する場合は別の薬に変更することがあります。短いから弱い、という意味ではありません。

1か月(30日)処方だと薬代はいくらですか?

先発品のジスロマック錠250mg145.4円/錠、後発品のアジスロマイシン錠250mg「DSEP」60.7円/錠です。

アジスロマイシンは通常、30日連続で飲む薬ではありません。そのため、これはあくまで薬価計算上の目安です。
仮に250mg錠を1日2錠(=500mg/日)で30日とすると、

  • 先発品:145.4円 × 2錠 × 30日 = 8,724円
  • 後発品DSEP:60.7円 × 2錠 × 30日 = 3,642円
    になります。
    自己負担の目安は、
  • 3割負担:先発 約2,617円、後発 約1,093円
  • 1割負担:先発 約872円、後発 約364円
    です。
    なお、実際の窓口負担には診察料・処方料・調剤料などが加わるので、支払総額はこれより上がります。

妊娠中は使えますか?

絶対に禁止ではありませんが、必要性があると判断された場合に限って使う薬です。添付文書では、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされています。
つまり、自己判断で飲む薬ではなく、妊娠中は必ず医師に伝えたうえで必要性を確認することが大切です。


授乳中は使えますか?

母乳へ移ることがあるため、服用中は赤ちゃんの下痢、機嫌、哺乳の様子などに注意が必要です。添付文書では「授乳継続か中止かを検討」とされており、実際にはお母さんの感染症治療の必要性とのバランスで決まります。
不安がある場合は、授乳中であることを処方前に必ず伝えるのが大切です。


子どもにも使えますか?

使われます。 小児用の細粒や錠剤もあり、添付文書では体重1kgあたり10mgを1日1回、3日間が基本です。ただし、低出生体重児や新生児を対象とした臨床試験は実施されていないため、その年齢層では特に慎重な判断が必要です。

小児では、白血球数の減少下痢、市販後報告で興奮が成人より目立つ傾向があるとされています。特に下痢は2歳未満で多めと報告されています。
飲み始めたあとに、ぐったりする、発熱が続く、下痢が強い、発疹が出るなどがあれば、早めに受診が必要です。


この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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