カナグルってどんな薬?糖と一緒に尿で出す新しい糖尿病の薬
カナグルってどんな薬?
糖と一緒に尿で出す新しい糖尿病の薬

糖尿病薬『カナグル』について知りたいです。

カナグル®錠は、1日1回100mgで使用するSGLT2阻害薬です。
血糖を下げるだけでなく、腎臓の保護作用も臨床的に確認されています。
脱水、感染、低血糖、ケトアシドーシスなどの副作用に注意し、
水分補給・症状の早期相談・定期検査(特に腎機能)を欠かさず行いましょう。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
目次
カナグル®錠(カナグリフロジン)とは
2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)に使われるSGLT2阻害薬(エスジーエルティーツー そがいやく)です。
腎臓で糖の再吸収を抑えることで、余分な糖を尿に出し、血糖を下げる働きがあります。また、腎臓内の血流バランスを整えることにより、腎臓を保護する効果も期待できます。
カナグル®錠の特徴
- 田辺三菱製薬が創製した日本発のSGLT2阻害薬です。
- 現在、世界70か国以上で承認されています(2025年3月時点)。
開発の背景
カナグリフロジンは、SGLT2阻害薬の元になった天然物「フロリジン」(そのままでは効果が出ない)を改良し、さらに前駆体T‑1095の知見を活かして、薬の体内動態を最適化した成分です。
特徴的な作用
2型糖尿病では、高血糖が続くことで「糖毒性(とうどくせい)」と呼ばれる状態に陥り、さらに悪化する悪循環が起こります。
カナグルは、糖を尿に出す=エネルギー過剰を減らすという考え方で、インスリンに過度に頼らない血糖改善ができるのが大きな特徴です。
腎臓での効果
腎臓では以下の流れにより保護効果が期待されます:
- SGLT2を阻害 → ナトリウムの再吸収を抑える
- → 糸球体(しきゅうたい)内圧が下がる(TGF:糸球体濾過フィードバックが改善)
- → アルブミン尿を減らし、腎機能の低下を抑える
効能・効果
- 2型糖尿病
- 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)
※ただし、末期腎不全または透析中の方は対象外です。
有効性(有効性試験の要点)
血糖コントロール(国内試験)
- HbA1c:−0.74%
- 空腹時血糖:−31.6 mg/dL
- 食後2時間血糖:−84.9 mg/dL
- 試験期間:24週間
➡ 52週間の長期試験でも、HbA1c −0.80%の改善が持続。
また、体重は平均−4.4%減少しています。
他の薬との併用試験
スルホニルウレア(SU)、速効型インスリン分泌促進薬、α-GI、メトホルミン、チアゾリジン、DPP-4阻害薬などとの併用でも、HbA1c −0.9~−1.1%前後の改善が確認されています。
腎保護作用(国内・国際CKD試験)
- 対象:ACE阻害薬またはARB併用中の2型糖尿病+CKD(eGFR 30~90、UACR 300~5000)
- 結果:主要複合評価項目(血清Cr倍化、末期腎疾患、腎死、心血管死)を相対30%低下
→ HR 0.70(95% CI: 0.59–0.82)
また、国内のCKD第3期(顕性腎症)では、eGFR 30%低下の発生率を群間差11.3%で低減しました。
※過去の心血管高リスク試験(海外)では下肢切断の増加が報告されています(特に100mgまたは300mg投与時)。
一方で、CKD試験(100mg)では有意な増加は明確でありませんでした。
足の傷や潰瘍(かいよう)がある方は、必ず受診時に相談してください。
用法・用量
- 通常、成人に1日1回100mgを、朝食前または朝食後に内服します。
- 血糖目的で使用する場合、3か月で効果が不十分なら、治療方針を見直します。
検査時の注意点
- 尿糖は陽性になります(これは正常な反応です)。
- 1,5-AGは低値になります(血糖コントロールの指標には使えません)。
腎機能に応じた注意点
- eGFR<30での新規開始は推奨されません。
- すでに内服中でeGFRが30未満に低下した場合は、継続の可否を慎重に判断します。
- eGFR<45が続く場合、血糖目的での使用は中止を検討します。
また、多尿・頻尿により脱水のリスクがあるため、こまめな水分補給が大切です。
使用できない方(禁忌)
以下の方は使用できません:
- カナグル®の成分に過敏症の既往歴がある方
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡/前昏睡の方(緊急治療が必要)
- 重症感染症、手術前後、重篤な外傷の方(インスリン治療が優先されます)
- 妊娠中の方(原則インスリンで対応)
- 授乳中の方(授乳を避けることが望ましい)
- 高齢者・腎機能障害・利尿薬併用中の方では、脱水などに注意が必要です。
飲み合わせに注意が必要な薬
低血糖リスクが高まる組み合わせ
- インスリン
- スルホニルウレア(SU)
- 速効型インスリン分泌促進薬
→ 併用時は低血糖に注意し、必要に応じて減量を検討します。
- β遮断薬、サリチル酸、MAO阻害薬
→ 低血糖の症状に気づきにくくなることがあります。
効果が弱まる可能性のある薬
- アドレナリン
- ステロイド
- 甲状腺ホルモン
濃度や作用に影響する薬
- リファンピシン、フェニトイン、フェノバルビタール、リトナビル
→ 本剤の血中濃度が低下する可能性があります。 - ジゴキシン
→ Cmaxが約36%、AUCが約20%上昇する可能性 → 慎重な観察が必要です。 - 利尿薬(ループ・サイアザイド系)
→ 脱水のリスクが増加 - 炭酸リチウム
→ リチウム血中濃度が下がる可能性
⚠ 自己判断で薬を中止・変更せず、必ず医師と相談してください。
副作用と発生頻度(重要なポイント)
全体の副作用頻度
国内外試験の合算(3,983例)で、副作用は24.65%に認められました(検査値異常も含む)。
よくある副作用
- 低血糖:4.82%(無症候性3.11%)
- 尿路感染:2.26%
- 頻尿:1.78%
- 便秘:1.31%
- 血中ケトン体増加:1.26%
- 体重減少(必要以上の減少に注意)
重大な副作用(頻度)
- 低血糖:4.8%
- 脱水:0.1%(口渇、低血圧、多尿など)
- ケトアシドーシス:0.1%
→ ※必ずしも高血糖を伴わないことがあります - 腎盂腎炎:0.1%
- 外陰部や会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽(えそ))、敗血症(頻度不明)
受診の目安
緊急で受診すべき症状
- 強い吐き気・嘔吐
- 激しい倦怠感(だるさ)
- 息切れ
- 意識がぼんやりする
- 腹痛・発熱
- 陰部の激しい痛みや赤み
- 尿が出にくい
早めに相談したい症状
- 排尿時の痛みやにおい
- 陰部のかゆみ・赤み
- めまい・ふらつき
- 急な体重減少
- 強い喉の渇きが続く
日常生活の注意
- こまめな水分補給
- 極端な糖質制限は避ける
- 嘔吐・下痢・食事がとれない・発熱があるときは、服用を自己判断で続けず医師へ連絡を
まとめ
- カナグル®錠は、1日1回100mgで使用するSGLT2阻害薬です。
- 血糖を下げるだけでなく、腎臓の保護作用も臨床的に確認されています。
- 脱水、感染、低血糖、ケトアシドーシスなどの副作用に注意し、水分補給・症状の早期相談・定期検査(特に腎機能)を欠かさず行いましょう。
- 腎機能の状態(eGFR)により使い方の調整が必要であり、他の糖尿病薬や利尿薬との相互作用にも配慮が必要です。
不安や体調の変化があれば、我慢せずに医療機関へ相談してください。
参考文献・出典
PMDA(医薬品医療機器総合機構) 添付文書
日本糖尿病学会 診療ガイドライン
CREDENCE試験(腎保護効果を示した国際論文)
KDIGO CKDガイドライン
よくある質問(Q&A)
-
カナグルって、ほかの糖尿病の薬と何が違うの?
-
「インスリンに頼らず、尿に糖を出す」点が大きな違いです。
カナグルは、腎臓で糖を再吸収する働きを抑え、余分な糖を尿と一緒に体の外へ出す薬です。
インスリンの分泌を無理に増やさないため、低血糖を起こしにくいという特徴があります。
-
同じ系統の薬(SGLT2阻害薬)と比べたカナグルの強みは?
-
腎臓を守る効果が「糖尿病+腎臓病」でしっかり確認されている点です。
SGLT2阻害薬は複数ありますが、カナグルは
- 糖尿病+慢性腎臓病(CKD)を対象に
- 腎機能の悪化を抑える効果が大規模試験で示されています。
-
カナグルはいつ発売された薬?
-
日本では2014年に発売された先発薬です。
SGLT2阻害薬の中では初期に登場した薬で、
発売から10年以上使われ、安全性データが蓄積されています。
-
1か月(30日)処方した場合、いくらくらいかかる?
-
薬価ベースでは約7,500円、自己負担はその1~3割が目安です。
- 薬価(100mg):約250円/錠
- 30日分(30錠):約7,500円
自己負担の目安
- 1割負担:約750円
- 2割負担:約1,500円
- 3割負担:約2,250円
※実際の支払い額は、処方内容や医療機関により多少前後します。
-
効き始めるまで、どれくらい時間がかかる?
-
服用当日から尿に糖が出始め、数日〜数週間で血糖が下がります。
- 作用発現:服用当日〜翌日
- 血糖改善の実感:1〜2週間
- 安定した効果:数週間〜
毎日飲み続けることで、効果が持続します。
-
効果はどれくらい続くの?
-
1日1回で24時間効果が持続します。
朝に1回飲めば、その日1日しっかり作用します。
飲み忘れを防ぎやすいのも特徴です。
-
妊娠中でもカナグルは使える?
-
妊娠中は原則として使用しません。
理由
- 胎児の腎臓の発達に影響する可能性がある
- 妊娠中の安全性データが十分でない
👉 妊娠中の糖尿病管理は、原則インスリン治療が選ばれます。
妊娠が分かった時点で、必ず医師に相談してください。
-
授乳中に飲んでも大丈夫?
-
授乳中の使用は基本的に避けるのが望ましいとされています。
- 母乳への移行が完全には否定できない
- 乳児への影響がはっきりしていない
👉 使用が必要な場合は
授乳を中止するか、別の治療に切り替えるかを医師と相談します。
妊娠が分かった時点で、必ず医師に相談してください。
-
子ども(未成年)でも使える?
-
原則として使用できません。
- 小児を対象とした十分な臨床試験がありません
- 成長期の腎臓への影響が不明
👉 成人(2型糖尿病)専用の薬と考えてください。
-
カナグルを飲むとき、特に気をつけることは?
-
「脱水」と「感染症」に注意が必要です。
- 尿量が増える → 水分不足になりやすい
- 尿路感染や陰部のかゆみ・赤みが出ることがある
👉こまめな水分補給
体調不良時(発熱・下痢・食事がとれない)は早めに受診
が大切です。
この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
-
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
詳しいプロフィールはこちら
最新の投稿
コラム2026年1月10日ナパゲルンは五十肩や筋肉痛に使える?効果・塗り方・副作用まとめ
コラム2026年1月9日ゼポラステープとは?関節や筋肉の痛みに効く貼り薬を医師が解説
コラム2025年12月31日慢性的な関節の痛みはボルタレンテープで良くなる?効き目と使い方
コラム2025年12月30日ボルタレンゲル・ローションの使い方と注意点|腰痛・関節痛に効果ある?






