食後の血糖値をゆるやかにする糖尿病の薬「セイブル」の効果と注意点
食後の血糖値をゆるやかにする糖尿病の薬
「セイブル」の効果と注意点

食後高血糖があるので『セイブル®錠』使っています

食後すぐに血糖が上がりやすい方
セイブル®錠・OD錠は食事・運動・他の薬でもコントロールが難しい方
食後高血糖が気になる方で糖尿病が落ち着いている方は
オンラインで処方することができます。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
目次
セイブル®錠・OD錠とは
セイブル®(一般名:ミグリトール)は、糖質を分解する酵素の働きをおさえ、食後の急な血糖上昇をゆるやかにする糖尿病治療薬です。
具体的には、小腸で砂糖やデンプンをブドウ糖に変える酵素「α(アルファ)-グルコシダーゼ」の働きを妨げることで、糖の吸収を遅らせます。
剤形(タイプ)
- 通常錠:25mg/50mg/75mg
- OD錠(口腔内崩壊錠):水なしで服用でき、外出時や水分制限のある方にも便利。
セイブル®の特徴
開発の背景
1970年代、ドイツのバイエル社で開発されました。
アカルボースに続く第2のα-グルコシダーゼ阻害薬として、動物試験で同等以上の効果を示しました。
日本では2005年に承認、2008年にインスリン併用、2009年にビグアナイド(BG)併用が追加承認されています。
特徴まとめ
- 食後30分〜2時間の血糖上昇を抑える(特に「食後1時間」に効果的)
- 肝臓では代謝されず腎臓から排泄されるため、肝機能が弱い方でも使用しやすい
- OD錠は水不要で服用可能。外出時や高齢者にも適しています。
効能・効果
糖尿病における食後過血糖の改善
ただし、以下のケースで使用します:
- 食事療法・運動療法で十分な効果が得られない場合
- あるいは、SU剤・BG剤・インスリン製剤などを併用してもコントロール不十分な場合
投与開始の目安
| 状況 | 目安となる血糖値 |
|---|---|
| 食事・運動療法のみ | 食後1または2時間血糖が200mg/dL以上 |
| 併用療法中 | 空腹時血糖が140mg/dL以上 |
有効性(主な臨床試験)
単剤療法(第III相・12週)
- HbA1c:−0.35%(プラセボ群+0.25%)
- 食後血糖:1時間 −73mg/dL、2時間 −27.8mg/dL
→ 食後高血糖を明確に抑制。
SU剤併用(12週)
- HbA1c:−0.28%(プラセボ+0.2%)
- 1時間 −76.8mg/dL、2時間 −32.6mg/dL
- 長期(52週)でも効果持続
BG剤併用(16週)
- HbA1c:−0.40%(固定量)/−0.37%(漸増)
- 1時間 −84.4/−76.3mg/dL、2時間 −29.1/−25.0mg/dL
- 52週の長期試験でも安定
インスリン併用(2型糖尿病・12週)
- HbA1c:−0.36%(プラセボ+0.03%)
- 1時間 −77.0mg/dL、2時間 −43.7mg/dL
インスリン併用(1型糖尿病・12週)
- HbA1c:−0.05%
- 1時間 −75.6mg/dL、2時間 −40.9mg/dL
※併用時は低血糖に注意。
🔍ポイント
セイブル®は「食後すぐ(30分〜1時間)」の血糖上昇をなだらかに抑える薬です。
HbA1cを大きく下げるというより、食後のピークを抑えて全体の血糖を安定させることが目的です。
用法・用量(飲み方)
- 通常:50mgを1日3回、各食直前に服用
- 効果が不十分なら:75mgまで増量可(医師の判断で)
- 高齢者:25mgから慎重に開始
- OD錠は水なしでも服用可能。
💡服用時の注意
- 低血糖時はブドウ糖で対処(砂糖では効果が出ません)
- 腹部膨満(お腹の張り)やガスなどの症状が強いときは、医師に相談してください。
使用できない方(禁忌)
- 重症ケトーシス(けとーしす)
体内で脂肪が分解されて「ケトン体」という酸性物質が増える危険な状態。意識がもうろうとすることもあります。 - 糖尿病性昏睡(こんすい)または前昏睡
血糖コントロールが極端に悪化し、意識が低下するまたはその直前の状態。
→ この場合はインスリン治療が必要です。 - 重症感染・手術前後・重度の外傷
体がストレス状態にあり、インスリンでの厳格管理が優先されます。 - 成分に対するアレルギーのある方
- 妊娠中または妊娠の可能性がある方
注意が必要な方(主治医に相談)
- 重い腎機能障害:薬が体にたまりやすくなります。
- 重い肝機能障害:血糖コントロールが乱れやすくなります。
- 腸の病気・既往歴がある方:腸閉塞(ちょうへいそく)のリスクがあります。
- 小児:副作用が出やすいため、慎重に判断します。
飲み合わせに注意が必要な薬
🔻低血糖を起こしやすくする薬
- SU剤(スルホニル尿素薬):すい臓からインスリン分泌を促す薬(例:グリメピリドなど)
- BG系薬(ビグアナイド系):肝臓で糖の産生を抑える薬(例:メトホルミン)
- インスリン製剤:血糖を直接下げる薬
- DPP-4阻害薬:インスリン分泌を助ける薬(例:シタグリプチンなど)
- GLP-1受容体作動薬:インスリン分泌を促す注射薬(例:オゼンピック®など)
- SGLT2阻害薬:腎臓から糖を尿に排出する薬(例:ジャディアンス®など)
➡ 併用により低血糖のリスクが高まるため注意が必要です。
🔻糖尿病薬の作用を強める薬
- β遮断薬(ベータしゃだんやく):血圧や心拍を下げる薬(例:プロプラノロール)。
低血糖が起きても動悸などのサインが出にくくなります。 - サリチル酸剤:解熱鎮痛薬(例:アスピリン)で、血糖を下げる作用を強めることがあります。
- MAO阻害薬(モノアミン酸化酵素阻害薬):抗うつ薬の一種で、インスリンの作用を強め、低血糖を起こしやすくします。
- フィブラート系薬:中性脂肪を下げる薬。血糖降下作用が増強することがあります。
- ワルファリン:血液をサラサラにする薬で、他剤との相互作用に注意が必要です。
🔻血中濃度に影響する薬
- ジゴキシン:心臓の働きを助ける薬。セイブルと併用で血中濃度が下がることがあります。
- プロプラノロール/ラニチジン:前者はβ遮断薬、後者は胃酸を抑える薬。どちらもセイブルの吸収を少し下げることがあります。
🔻効果を弱める薬
- アドレナリン(エピネフリン):体の「緊急反応」で血糖を上げる作用。セイブルの効果を相殺します。
- ステロイド(副腎皮質ホルモン):炎症を抑える薬ですが、血糖を上げやすい。
- 甲状腺ホルモン:代謝を高め、血糖上昇を引き起こすことがあります。
📝 服用中の薬・サプリメントは必ず医師・薬剤師に伝えましょう。
特に糖尿病治療薬を複数使用している場合は、低血糖のサイン(ふらつき・冷や汗・手の震えなど)に注意してください。
副作用と頻度
🔺重大な副作用(まれ)
- 低血糖:他の糖尿病薬との併用時に0.1〜5%未満。単剤でもまれに起こります。
- 腸閉塞:腹部膨満(おなかの張り)や痛み、嘔吐が続くときは早めに受診。
- 肝機能障害・黄疸:AST/ALT上昇、黄疸が出る場合は中止し医師へ。
🔸よくある副作用(消化器症状)
| 使用状況 | 主な症状(発生率) |
|---|---|
| 単剤 | 腹部膨満23.6%、鼓腸(ガス)23.0%、下痢16.7% |
| SU併用 | 腹部膨満27.6%、鼓腸27.0%、下痢15.1% |
| BG併用 | 下痢38.5〜48.9%、鼓腸23.1〜31.9%、腹部膨満3.8〜23.4% |
| インスリン併用(2型) | 低血糖35.5%、鼓腸20.6%、下痢11.2% |
💬これらは服用初期に出やすく、時間とともに軽くなることが多いです。
つらい場合は、自己判断で中止せず医師に相談してください。
まとめ
✅ セイブル®はこんな方におすすめ
- 食後すぐに血糖が上がりやすい方
- 食事・運動・他の薬でもコントロールが難しい方
- HbA1cはそれほど高くないが、食後高血糖が気になる方
💊 飲み方
- 1日3回、各食直前に50mg(最大75mgまで)
- OD錠は水なしでも服用可
⚠ 注意すべき副作用
低血糖(併用時)→ ブドウ糖で対応調や検査値、飲み合わせを医師と確認しながら使いましょう。
消化器症状(お腹の張り・下痢・ガス)
参考文献・出典
医薬品インタビューフォーム(IF): 三和化学研究所「セイブル®錠・OD錠」最新版
添付文書情報(PMDA 医薬品医療機器総合機構)
→ PMDA 医薬品情報検索 で「ミグリトール」で検索
日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイド2024』
よくある質問(Q&A)
-
この薬の同じ系統の薬と比べて、どんな強みがあるの?
-
セイブル®(ミグリトール)は、α-グルコシダーゼ阻害薬という系統に属します。
同じタイプの薬には「ベイスン®(ボグリボース)」「グルコバイ®(アカルボース)」などがあります。薬の名前 主な特徴 吸収・排泄 使いやすさ セイブル®(ミグリトール) 食後早期(30分〜1時間)の血糖上昇を抑える力が強い 腎臓から排泄され、肝臓への負担が少ない OD錠あり(水なし服用可) グルコバイ®(アカルボース) 腸内にとどまり、局所的に作用 吸収ほぼなし 食前に服用 ベイスン®(ボグリボース) 作用がゆるやかで下痢が少ない 一部肝代謝 食前に服用 💡セイブル®の強みは「速やかな吸収と安定した血糖抑制」。
また、肝臓ではなく腎臓で排泄されるため、肝障害のある方にも比較的安心して使用しやすい点が評価されています。
-
セイブル®はいつ発売されたの?
-
日本での承認・発売:2005年(平成17年)
2008年に「インスリン併用時」、2009年に「ビグアナイド併用時」の効能が追加されました。
もともとはドイツ・バイエル社で1970年代に開発され、
日本では三和化学研究所が承認を取得して販売しています。
-
1か月(30日)分の薬価と自己負担額の目安は?
-
通常は1回50mgを1日3回(150mg/日)服用する場合の目安です。
薬価は2024年度改定時点のものをもとにしています。製剤 規格 薬価(1錠) 30日分(90錠) 自己負担額(3割負担) セイブル錠50mg(先発) 50mg 19.5円 約1,755円 約530円 セイブルOD錠50mg 50mg 19.5円 約1,755円 約530円 後発品(例:トーワ、サワイ等) 50mg 10.4円前後 約936円 約280円 💡薬局・処方日数によって実際の負担は多少異なります。
薬剤費に加え、診察料・調剤料が別途かかります。
-
作用が出るまでどのくらい?どのくらい続くの?
-
作用発現時間: 食直前に飲むと、服用後すぐ(食事開始時から)効果が出始めます。
持続時間: 約4〜6時間。
特に食後1時間前後の血糖上昇をしっかり抑えるのが特徴です。空腹時には効果がほとんどないため、「食直前」に服用することが重要です。
-
妊娠中は使っても大丈夫?
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妊娠中は原則として使用できません(禁忌)。
妊娠中に使用した場合の安全性データが十分にないためです。
胎児への影響(成長への影響など)が確認されていないため、
妊娠の可能性がある方・妊活中の方も使用前に必ず医師へ相談してください。血糖コントロールが必要な場合は、インスリン療法が一般的に推奨されます。
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授乳中に飲んでもいいの?
-
授乳中の使用については安全性が確立されていません。
動物実験では母乳への移行が報告されており、
ヒトでのデータは不十分です。授乳を続けながら服用する場合は、
「母乳を一時的に中止する」か「薬を変更する」かを医師が判断します。
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子ども(小児)への使用可否と注意点は?
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小児への使用経験は少なく、
原則として成人のみを対象とする薬です。海外でも小児糖尿病への使用報告は限られており、
副作用(下痢・腹部膨満・低血糖など)が出やすい傾向があります。やむを得ず使用する場合は、専門医の厳重な管理のもとで行われます。
この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
-
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
詳しいプロフィールはこちら
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