咳が止まらない…そんなときに処方される麦門冬湯とは?

咳が止まらない…
そんなときに処方される麦門冬湯とは?

乾いた咳が止まりません。『麦門冬湯』使えますか?

麦門冬湯(ばくもんどうとう)は、咳をしずめたり、痰を出しやすくしたり、

気道をひろげたりする複合的な効果が期待できる漢方薬です。

麦門冬湯はオンラインで処方することができます。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。


麦門冬湯(ばくもんどうとう)とは?

痰がからむ咳・気管支炎・ぜんそくに使う漢方を医師がやさしく解説


🧑‍⚕️この記事の対象読者

  • 痰のからむ咳が続いてつらい
  • 気管支炎をくり返している
  • ぜんそくがあり、咳がなかなか止まらない

こうした方に向けて、「麦門冬湯の効果・副作用・飲み合わせの注意点」を、医師がやさしく解説します。
医療用漢方「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)」をベースに、エビデンスに基づいてお届けします。


麦門冬湯とは

  • 漢方の古典『金匱要略(きんきようりゃく)』に記載された処方。
  • 痰(たん)が切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそくに用いられます。
  • 医療現場では「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)」として処方されます。

🧪処方に含まれる6つの生薬

  • バクモンドウ(主薬)
  • コウベイ
  • ハンゲ
  • タイソウ
  • カンゾウ
  • ニンジン

このうち、
カンゾウ由来のグリチルリチン酸
ニンジン由来のギンセノシド(Rb1, Rg1) などの有効成分を含みます。


麦門冬湯の特徴

  • ツムラ独自の技術により、
     水だけで煎じ → 噴霧乾燥 → 有機溶媒を使わず乾式造粒
     といった工程を経て、飲みやすい顆粒剤として製剤化。
  • 昭和60年5月31日、厚生省の通知に基づき製造承認取得
  • 効果としては「咳を抑える・痰を出しやすくする・気管支をひろげる」作用が、薬理試験で確認されています。

💡漢方薬は証(しょう)=体質や症状のタイプによって使い分けます。
麦門冬湯は「痰がからんで咳が長びく」タイプに相性が良いことが多いです。


効能・効果

  • 痰の切れにくい咳
  • 気管支炎
  • 気管支ぜんそく

有効性(研究データより)

① 鎮咳作用(咳を抑える)

  • 動物モデル(SO₂ガスを吸わせたモルモット)で、咳の反射を抑える効果が確認されました。
  • 病態時のみに選択的に作用する可能性あり。

② 去痰作用(痰を出しやすくする)

  • ラット細胞でβ₁アドレナリン受容体の増加・cAMP上昇が確認され、粘液の動きを改善。
  • ヒト好中球エラスターゼで作成したモデルでも、粘液の粘りや成分の異常な増加を抑える効果あり。

③ 気管支拡張作用(息をしやすくする)

  • 犬の気管支でβ受容体刺激による弛緩作用を増強
    呼吸をラクにするメカニズムが示唆されました。

④ 抗アレルギー作用

  • 好酸球の活性抑制/脱顆粒(アレルギー反応の原因)を抑える効果がin vitroで確認。

⑤ 気道過敏性の改善

  • オゾン暴露モデルにおいて、ヒスタミンに対する過敏性を抑える作用を確認。

📌 麦門冬湯は、「咳を抑え・痰を出しやすくし・気道を広げ・アレルギーも抑える」という多面的な作用が確認されています。


用法・用量

  • 通常、成人:1日9.0gを2〜3回に分けて服用
  • 食前または食間に服用します。
  • 小児は臨床試験の情報が限られているため、医師の判断に基づく投与となります。
  • 症状の改善がみられない場合は、継続投与を避けます

使用できない方(禁忌ではないが慎重に)

明確な禁忌はないものの、以下に該当する方は事前にご相談ください。

  • 妊娠中・妊娠の可能性がある方:有益性が危険性を上回る場合にのみ投与。
  • 授乳中の方:母乳育児の有益性と薬の必要性を考慮して判断。
  • 高齢者:生理機能の低下を考慮し、用量調整が必要。
  • 小児:十分なエビデンスがないため、医師の慎重な判断が必要。
  • 高血圧・低カリウム血症の既往がある方:甘草成分による副作用に注意。
  • 生薬アレルギーがある方:必ず申告を。

飲み合わせに注意が必要な薬

❗併用注意の薬の例

  • カンゾウ(甘草)を含む漢方薬
     例:芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など
  • グリチルリチン酸を含む製剤
     例:グリチルリチン酸アンモニウム+グリシン+L-システイン配合錠など

これらの薬と併用すると、低カリウム血症・むくみ・血圧上昇・筋肉の異常などのリスクが高まります。
現在服用中の薬やサプリ、市販薬も含めて、必ず医師・薬剤師に伝えてください。


副作用とその対策

重篤な副作用(頻度不明)

  • 間質性肺炎:咳、息切れ、発熱など → 速やかに受診を
  • 偽アルドステロン症:低カリウム血症、浮腫、体重増加など
  • ミオパチー:四肢の脱力、けいれん、麻痺
  • 肝機能障害・黄疸:AST・ALTの異常上昇、倦怠感

その他の副作用

  • 過敏症:発疹、じんましんなど

異常を感じたらすぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。
医療機関では必要に応じて血液検査(電解質・肝機能)や血圧チェックなどを行い、安全性を確認します。


まとめ

麦門冬湯(ばくもんどうとう)は、痰がからむ咳・気管支炎・気管支ぜんそくに対して使われる医療用漢方です。
「咳をしずめる」「痰を出しやすくする」「気管支をひろげる」「アレルギー症状を抑える」といった多面的な作用があることが、基礎・臨床研究の両面から確認されています。

服用は成人で1日9gを目安に、2〜3回に分けて食前または食間に行います。
ただし、カンゾウやグリチルリチン酸を含む他の薬との併用や、妊娠中・授乳中・高齢者・小児への使用には注意が必要です。

また、漢方薬は体質や症状のタイプ(証)に合うかどうかがとても重要です。
「自分に合っているのか」「他の薬との相性は大丈夫か」など、少しでも不安がある場合は、医師・薬剤師にご相談ください。。併用できる?」などの疑問は、症状や体質に応じて変わります。医師と相談しながら、最適な治療を一緒に見つけていきましょう。


参考文献・出典

🧾 添付文書・インタビューフォーム

📚 主な文献

Aizawa H. et al., Respirology. 4: 349–354, 1999年

宮田健ほか, 日胸疾会誌 27 (10): 1157-1162, 1989年

Tamaoki J. et al., Japan J Pharmacol. 62 (2): 155–159, 1993年

よくある質問(Q&A)


麦門冬湯にはどんな特徴がありますか?他の似た漢方薬と何が違いますか?

麦門冬湯(ばくもんどうとう)は、咳をしずめたり、痰を出しやすくしたり、気道をひろげたりする複合的な効果が期待できる漢方薬です。
同じ「咳・痰」に使われる漢方薬としては【小青竜湯】【五虎湯】【麻杏甘石湯】などがありますが、

  • 小青竜湯:冷えやアレルギー体質、透明な鼻水・痰に対応
  • 麻杏甘石湯:急性の強い咳・喘鳴(ゼーゼー)に対応
  • 麦門冬湯:乾いた感じの咳/切れにくい痰/体力が落ちている人向け

といった**体質・症状(=証)**で使い分けられます。

特に麦門冬湯は、

  • 気管支の炎症や過敏性をおさえる作用
  • 長引く乾いた咳に使える
  • 体力が落ち気味な人でも使いやすい処方

という点が他薬との違い・強みです。

ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)はいつ発売された薬ですか?

「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)」は、
1985年(昭和60年)5月31日に製造承認されました。
漢方の原典『金匱要略』に基づいた処方を、ツムラが独自の乾式造粒法で製剤化したものです。

麦門冬湯は30日処方でいくらかかるの?薬価と自己負担額を教えて

ツムラ麦門冬湯の薬価は16.5円/gです。
通常の1日量は9.0gなので…

  • 1日薬価:148.5円
  • 30日薬価:4,455円

自己負担額(3割負担)の目安は…

  • 約1,336円/月

※院内処方か院外処方か、調剤料や地域で若干前後することがあります。

麦門冬湯は飲んですぐ効く?作用の出る時間や持続時間は?

漢方薬は即効性のあるものと、徐々に体質に働きかけるタイプがあります。
麦門冬湯は比較的「中間型」で、

  • 数日〜1週間ほどで咳の改善を実感する方が多いです。
  • 効果の持続時間は数時間〜半日程度とされ、1日2〜3回の服用が基本です。

長期的に使うことで、気道の過敏性や炎症にもアプローチできるとされています。。

麦門冬湯は妊娠中でも飲める薬ですか?リスクや注意点は?

妊娠中の使用は、「治療上の有益性が危険性を上回る場合」に限定されます

  • 動物での催奇形性(赤ちゃんへの影響)報告はないが、十分なヒトデータはありません。
  • 含有されているカンゾウ(甘草)によりむくみや高血圧、低カリウム血症のリスクがあるため、慎重に判断されます。

医師と相談のうえ、自己判断では絶対に服用しないようにしてください

授乳中でも麦門冬湯は飲めますか?母乳への影響は?

授乳中の使用についても、「母乳育児の有益性と薬の有益性」を比較しながら判断されます。

  • 母乳への明確な移行データはありませんが、カンゾウによる電解質異常(低カリウム)や高血圧への影響が懸念されます。
  • 授乳中にどうしても必要な場合は、短期間・最小限の投与+乳児の観察が推奨されます。

使用前に、必ず医師に申告し、「一時的な授乳中断」も選択肢として検討してください。

子どもに麦門冬湯は使えますか?使う場合の注意点は?

麦門冬湯は小児にも使われることがありますが、臨床試験データは限られています。

  • 咳が長引く/夜間に咳が強い/痰がからむタイプの咳に対して使われることがあります。
  • 年齢や体重に応じて医師が慎重に用量を決定します。
  • 小児では、**電解質異常・アレルギー症状(発疹など)**に特に注意が必要です。

処方された場合は、必ず処方医の指示通りに服用させ、自己判断で増減しないようにしましょう。

この記事の監修者

佐田七海子