痔がつらい…でも坐薬は不安な人へ|乙字湯(おつじとう)ってどんな漢方?

痔がつらい…でも坐薬は不安な人へ
乙字湯(おつじとう)ってどんな漢方?

切れ痔で『乙字湯』を服用しています。

乙字湯は、「キレ痔・イボ痔」に特化した漢方処方であり、

他の痔疾用漢方と比べて、便通を促すダイオウ(大黄)を含む点が特徴です。

軽度の便秘を伴う痔、排便に関連して悪化する痔症状

などにも対応しやすく、痔の慢性期や繰り返すタイプの人に向いています。

乙字湯は、オンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

乙字湯(おつじとう)とは

乙字湯は、江戸時代の医師・原南陽(はら なんよう)が作った漢方処方をもとに作られた、医療用の漢方エキス製剤です。

とくに、
「症状がそれほど激しくなく、体力が中くらいで衰弱していない人」の
「キレ痔(じ)・イボ痔」に用いられます。

この処方は、以下の6種類の生薬から構成されています:

  • トウキ(当帰)
  • サイコ(柴胡)
  • オウゴン(黄芩)
  • カンゾウ(甘草)
  • ショウマ(升麻)
  • ダイオウ(大黄)

乙字湯の特徴

● 歴史的背景

原南陽は、自身の処方に甲・乙・丙・丁(こう・おつ・へい・てい)…と十干(じっかん)を付けて名付けました。
乙字湯は、そのうちの第二処方
という意味です。

● 含まれる成分例

生薬主な成分
サイコサイコサポニン(b1、b2)
オウゴンバイカリン
カンゾウグリチルリチン酸
ダイオウセンノシドA

※これらは「何mg含有」といった規格ではなく、抽出エキス中に確認される成分例です。


効能・効果(どんな症状に使う?)

● 適応となる人

  • 体力が中等度
  • 衰弱していない方

● 対象となる症状

  • キレ痔(裂肛 = れっこう)
  • イボ痔(痔核 = じかく)

● 症状の程度

「病状がそれほど激しくない」ケースを対象としています。
強い痛み・出血・発熱などがある場合は、必ず肛門科・消化器科で評価を受けてください。


有効性(臨床試験データ)

提供資料(添付文書・製品情報)には、明確な臨床試験の数値や比較試験は記載されていません。

一方で、

  • 適応症
  • 対象となる体力レベル
  • 継続投与の判断指針

などが示されており、実臨床では「体質と症状の相性(証:しょう)」を見ながら使っていくのが基本です。

✅ ポイントまとめ

  • 服用後に改善が見られなければ中止が推奨されています。
  • 合わないと感じたら、早めに医師へ相談しましょう。

用法・用量(飲み方)

  • 成人は1日7.5gを2~3回に分けて食前または食間に服用。
  • 年齢・体重・症状により医師が適宜増減します。

● 特に注意が必要なケース

  • 高齢者:一般的に生理機能が低下しているため、減量など慎重な投与が必要です。
  • ダイオウの影響:瀉下(しゃげ=下剤のような)作用に個人差があるため、下痢や腹痛が出やすい方は特に注意が必要です。

慎重投与が必要な方

以下のような方は、副作用が出やすくなるため慎重に使用します。

  • 下痢・軟便のある方(悪化の可能性あり)
  • 胃腸が非常に弱い方
  • 吐き気・嘔吐がある方
  • 著しく体力が低下している方

飲み合わせに注意すべき薬(相互作用)

● カンゾウ(甘草)・グリチルリチン酸を含む処方

  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  • 抑肝散(よっかんさん)など

偽アルドステロン症(※下記参照)のリスク増

● グリチルリチン酸を含む内服薬

  • 一部の風邪薬、アレルギー薬など

筋力低下・足のつりなどが警告サイン

※グリチルリチン酸は腎臓でのカリウム排泄を促進する作用があるため、血清カリウム値が下がりやすくなります

● ダイオウを含む製剤との併用

  • 下剤作用が重複し、腹痛・下痢などの副作用リスクが増加します。

副作用とその頻度

● 頻度は不明だが注意が必要な「重大な副作用」

副作用名症状
間質性肺炎(かんしつせいはいえん)咳(せき)、息切れ、発熱、胸部X線異常など
偽アルドステロン症低カリウム血症(だるさ・筋力低下・四肢のしびれ・足のつり)血圧上昇、むくみ、体重増加など
ミオパチー(筋障害)手足の痙攣(けいれん)、脱力、まひなど
肝機能障害・黄疸(おうだん)AST・ALT・ALP・γ-GTP上昇、黄疸の症状など

● その他の副作用(頻度不明)

  • 発疹、かゆみなどの過敏症
  • 食欲不振、胃部不快感、悪心(むかつき)、腹痛、下痢などの消化器症状

受診・中止の目安

以下の症状が出たら、すぐに受診・相談してください。

  • 息苦しさ・発熱・長引く咳
  • 筋力低下・足のつり・だるさ(低カリウムのサイン)
  • 肌や目の黄ばみ、濃い尿、強い倦怠感
  • 強い腹痛、止まらない下痢

まとめ

乙字湯は、体力が中等度で衰弱していない方のキレ痔・イボ痔に用いる漢方エキス製剤です。

  • 1日7.5gを2~3回に分けて食前・食間に服用します。
  • 合わない・効かないと感じたら、自己判断せず医師に相談してください。

参考文献・出典

【添付文書】ツムラ乙字湯エキス顆粒(医療用)2023年12月改訂版(JAPIC、PMDA)

【KEGG DRUG】D06926:https://www.kegg.jp/entry/D06926

【「日本漢方生薬製剤学会」誌】などで乙字湯に関する論文が掲載されることもあり

【漢方医学関連の医師向け専門誌】(「漢方の臨床」など)で臨床報告あり

よくある質問(Q&A)


この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?

乙字湯は、体力が中等度で衰弱していない人の「キレ痔・イボ痔」に特化した漢方処方であり、
他の痔疾用漢方(例:芍薬甘草湯、桂枝加芍薬湯など)と比べて、便通を促すダイオウ(大黄)を含む点が特徴です。

これにより、

  • 軽度の便秘を伴う痔
  • 排便に関連して悪化する痔症状

などにも対応しやすく、痔の慢性期や繰り返すタイプの人に向いている処方です。

乙字湯はいつ発売された薬なの?

医療用製剤「ツムラ乙字湯エキス顆粒(医療用)」は、昭和60年(1985年)に厚生省薬務局の通知(薬審2第120号)に基づき製造承認されました。
その元になった処方自体は、江戸時代の医師・原南陽が創案した伝統ある漢方薬です。

乙字湯を1か月(30日)処方された場合の薬価と実際の自己負担額は?

乙字湯(ツムラ製)の薬価は15.2円/gです。

用法は「1日7.5g(3包)」なので、

  • 30日分の薬価: 15.2円 × 7.5g × 30日 = 3,420円
  • 自己負担(3割負担):約1,026円+調剤料等
  • 自己負担(1割負担):約342円+調剤料等

※調剤料・薬局ごとの加算を含めると、実際の支払いは+500~1,000円程度になる場合があります。

乙字湯を飲んでからどのくらいで効果が出る?作用の持続時間は?

漢方薬の特性上、即効性より「体質に合えば徐々に効いてくる」ことが期待されます。

  • 作用発現までの目安:数日~1週間程度(体質・症状による)
  • 持続時間:連続服用による体調変化の中で自然に効果が持続するイメージで、明確な「○時間効く」といった記載はありません。

ただし、1〜2週間以上使っても改善が見られない場合は中止し、医師へ相談することが勧められています。

妊娠中に乙字湯は飲んでもいいの?

(妊娠中の使用)
基本的に使用は避けるべきです。

乙字湯に含まれるダイオウ(大黄)には、

  • 子宮収縮を促す作用
  • 骨盤内臓器への血流を増やす作用

があるとされ、流産や早産のリスクがあるとされています。

>そのため、妊娠中や妊娠の可能性がある方には原則使用しないことが望ましいと添付文書でも明記されています。

授乳中に乙字湯を飲んでも大丈夫?

(授乳中の使用)
授乳中は、医師と相談した上で慎重に検討する必要があります。

理由は以下の通り:

  • ダイオウに含まれるアントラキノン誘導体が母乳中に移行する可能性がある
  • それにより、乳児の下痢などが起きることがあります

授乳継続の可否は、

  • 薬の治療上の必要性
  • 母乳栄養のメリット

を比較しながら、個別に判断する必要があります

子どもにも乙字湯は使えるの?

(小児への使用)
基本的に小児には推奨されていません。

添付文書によると、乙字湯については小児を対象とした臨床試験は行われておらず、安全性が確立されていません。

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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