お腹が張って痛い…下痢と便秘をくり返す人に「桂枝加芍薬湯」ってどんな薬?

お腹が張って痛い…下痢と便秘をくり返す人に
「桂枝加芍薬湯」ってどんな薬?

便が出そうで出ない便秘に桂枝加芍薬湯を使っています。

IBS(過敏性腸症候群)タイプの便通異常に適した漢方薬です。

桂枝加芍薬湯はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)とは

桂枝加芍薬湯は、「お腹が張って痛いのにスッキリ排便できない」といった症状に使われる伝統的な漢方薬です。
5種類の生薬(しょうやく):**桂皮(けいひ)・芍薬(しゃくやく)・甘草(かんぞう)・大棗(たいそう)・生姜(しょうきょう)**で構成されています。



桂枝加芍薬湯の特徴

📚 古典『傷寒論(しょうかんろん)』に基づく処方

「桂枝湯(けいしとう)」をベースに芍薬を増量し、腸の不調を整える目的で作られました。


⚖️ 下痢・便秘どちらにも対応できる

以下の作用が確認されています:

  • 止瀉(ししゃ)作用:下痢をおさえる
  • 腸管輸送能の調整:便の流れを整える
  • 腸のけいれんを抑える(鎮痙作用)

▶ このため、IBS(過敏性腸症候群)型の腹痛にも適しています。


効能・効果

腹部膨満感(お腹の張り)をともなう次の症状に使用されます:

  • しぶり腹(便意はあるのにスッキリ出せない)
  • 腹痛

有効性のエビデンス

🧪 主な報告

  • IBS患者79例の観察研究
     → 4週間の服用で腹痛スコアが約40%低下
  • 小児の機能性腹痛のケースシリーズ
     → 単独使用で76%が腹痛の頻度・強さともに半減

※ いずれもプラセボ(偽薬)との比較試験は少ないため、
腹部膨満+しぶり腹という体質(=証)が合っているか」が効果のポイントです。


用法・用量

  • 成人:1日6gを2〜3回に分けて、食前または食間に服用
  • 白湯(ぬるま湯)で服用すると吸収が安定

▶ 症状や体格に応じて調整可能です


使用できない方(禁忌・慎重投与)

対象注意点・理由
妊娠中の方安全性の情報が少ないため、必要最小限の使用にとどめます
高血圧・低カリウム血症の既往がある方甘草(かんぞう)により偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇など)のリスク
高齢で体力が落ちている方少量から開始し、慎重に様子を見ることが必要です

飲み合わせに注意が必要な薬

📌 他の漢方薬(甘草・芍薬を含むもの)

  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  • 抑肝散(よくかんさん)など

▶ 成分が重複し、副作用が出やすくなることがあります


📌 グリチルリチン酸入りの一般薬(風邪薬・胃薬など)

▶ むくみ・高血圧・低カリウム血症のリスクがさらに上昇します


副作用と発生頻度

⚠️ 重大な副作用(頻度は不明)

  • 偽アルドステロン症
     むくみ、体重増加、血圧上昇、低カリウム血症 など
  • ミオパチー(筋肉障害):
     脱力感、筋力低下、手足のしびれなど

⚠️ その他の副作用(頻度不明)

  • 発疹、かゆみ
  • 腹痛、下痢

※「むくみ」「だるさ」「急な体重増加」などがあれば、早めに医療機関へ相談してください


まとめ

桂枝加芍薬湯は、「お腹が張る」「便意があるのに出せない」といったIBS(過敏性腸症候群)タイプの便通異常に適した漢方薬です。

  • 5つの生薬が腸をやさしく整え、けいれんや余分な水分にも対応
  • 甘草由来の副作用に注意し、長期連用や自己判断での併用は避けることが大切

参考文献・出典

厚生労働省「医療用医薬品添付文書」(PMDA)

ツムラ桂枝加芍薬湯インタビューフォーム

KEGG DRUG:D06943

論文例:
 ▶『漢方医学』におけるIBSへの桂枝加芍薬湯の使用(日本東洋医学会誌)
 ▶ "Effect of Keishikashakuyakuto on irritable bowel syndrome"(PubMed掲載)

よくある質問(Q&A)


この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?

「下痢と便秘を繰り返すタイプの腹痛」に対応できる数少ない漢方薬です。

桂枝加芍薬湯は「止瀉(下痢を止める)作用」と「腸のけいれんを和らげる作用」の両方を持ちます。
同じくお腹の不調に用いられる漢方薬には桂枝湯・芍薬甘草湯などがありますが、しぶり腹(出そうで出ない腹痛)や過敏性腸症候群(IBS)様の症状には桂枝加芍薬湯が特に向いているとされます。

先発薬の発売年はいつ?

ツムラ製剤が1986年(昭和61年)に承認・発売されました。

厚生省薬務局の薬審通知(昭和60年5月31日付)に基づき、ツムラの乾式造粒法により製剤化されたエキス顆粒製剤が最初の医療用製品です。

1か月(30日)処方時の薬価・実際の目安価格は?

製薬会社薬価(1gあたり)1日量(6g)30日薬価合計自己負担(3割)目安
ツムラ7.5円45円1,350円約405円
小太郎漢方製薬6.7円40.2円1,206円約362円
クラシエ(細粒)12.5円75円2,250円約675円

※自己負担額は3割負担の目安です(診察料や調剤料は含まず)する薬ではありません)。

効果が現れるまでの時間や持続時間は?

作用は穏やかに現れ、通常は数日〜1週間程度で効果が見られます。**

継続使用によって体質改善を図るタイプの漢方です

即効性というより“徐々に効いてくる”タイプ

持続時間は個人差がありますが、1日2〜3回の服用で効果が維持されるケースが多いです

妊娠中の使用はできますか?

原則、妊娠中の使用は慎重に。

含有される**甘草(カンゾウ)による電解質異常(低カリウム血症)**に注意

安全性データが十分ではないため、妊娠中は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ」使用

特に妊娠初期の使用は医師の判断が必要です

授乳中の使用は大丈夫ですか?

必要に応じて使用できますが、医師と相談のうえで。

授乳中に使用する際は短期間・最小量での使用が望ましい

桂枝加芍薬湯が母乳中へ移行するかどうかの明確なデータはありません

甘草の副作用リスクを考慮しつつ、授乳の継続または中止を検討

子どもに使用できますか?注意点は?

小児にも使用されることがありますが、年齢・体格に応じた調整が必要です。

  • 添付文書上、小児を対象とした大規模な臨床試験は行われていません
  • 実臨床では小児の機能性腹痛や便通異常に使われることもあり、安全性は比較的高いとされています
  • 使用時は、用量調整(例:1日3gなど)を行い、医師が体調を観察しながら処方

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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