寝つけない夜に|依存の少ない睡眠薬「ベルソムラ」という選択

寝つけない夜に
依存の少ない睡眠薬「ベルソムラ」という選択

不眠で『ベルソムラ』が処方されました。

世界で初めて承認された「オレキシン受容体拮抗薬」で

自然な眠りを誘発します。夢を見るという副作用も有名です。

ベルソムラはオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

ベルソムラとは

**ベルソムラ®(一般名:スボレキサント)**は、脳内で「起きていよう」とする信号を出す物質「オレキシン」の働きをブロックする、世界初のオレキシン受容体拮抗薬です。

従来の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系やメラトニン受容体作動薬など)は、「眠気を起こす」ことで眠らせていましたが、ベルソムラは「覚醒を抑える」という真逆のアプローチで、より自然に近い眠りへ導きます。


ベルソムラの特徴

  • 1998年:櫻井武氏らとde Lecea氏らが、脳の覚醒を維持する物質「オレキシン」を発見。
  • 2005年:MSD社が、オレキシン受容体に作用する化合物をスクリーニングで発見し、改良の末に**スボレキサント(ベルソムラの有効成分)**が誕生。
  • 2014年9月:日本で15mg・20mg錠が承認。世界初の「オレキシン受容体拮抗薬」として登場。
  • 2016年9月:10mg錠が追加承認。併用薬による減量ニーズに対応。

効能・効果

  • 適応症:不眠症(特に入眠障害・中途覚醒に効果)
  • ※うつ病や不安障害などに伴う「二次性不眠症」への効果・安全性はまだ確立されていません。

有効性(臨床試験データ)

国際共同第Ⅲ相試験(成人20mg/高齢者15mg、3か月間)

評価項目投与1週1か月3か月
主観的入眠潜時(sTSO)
※寝つくまでの時間
−5.6分−5.4分−5.2分
客観的持続睡眠潜時(LPS)
※眠り続けるまでの時間
−9.6分−10.3分−8.1分
主観的総睡眠時間(sTST)
※自己申告の睡眠時間
+13.6分+16.3分+10.7分
  • 副作用発現率は20.9%。主なものは:
    • 傾眠(4.7%)
    • 頭痛(3.9%)
    • 疲労感(2.4%)

→ 全体的に忍容性(飲み続けられるかどうか)良好と評価されています。


用法・用量

対象通常用量服用タイミング
成人(〜64歳)20mg 1日1回就寝直前(空腹時が望ましい)
高齢者(65歳〜)15mg 1日1回同上
CYP3A中等度阻害薬を併用している場合
(※薬の代謝を遅くする薬)
10mg 1日1回同上

就寝後に一度起きる予定がある場合は服用しないでください。
CYP3Aとは:肝臓の中で薬を分解する“酵素のひとつ”で、
この働きを強く抑えたり、逆に強めたりする薬との併用には注意が必要です。


使用できない方(禁忌)

次の方はベルソムラを使用できません:

  • 本剤に対してアレルギー(過敏症)の既往がある方
  • CYP3Aの働きを強く抑える薬(強力なCYP3A阻害薬)を服用中の方
    → これらの薬はベルソムラが分解されにくくなり、体に残りすぎる危険
    があります。

具体例(代表的な禁忌薬)

  • 抗真菌薬:イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール
  • 抗菌薬+胃薬のキット:クラリスロマイシンを含む「ボノサップ®」「ラベキュア®」など
  • 抗ウイルス薬:リトナビル、パキロビッド®、ゾコーバ®(エンシトレルビル)

飲み合わせに注意が必要な薬

分類主な薬剤注意点
アルコール・中枢抑制薬飲酒、フェノチアジン系、バルビツール酸系 など眠気・ふらつきが強く出る可能性あり
CYP3A中等度阻害薬
(代謝をゆるやかに抑える薬)
ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール など10mgへ減量を検討
CYP3A強力誘導薬
(薬の分解を早める薬)
リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン薬の効果が弱まる恐れあり
P-gp基質薬(排出に関わる薬)ジゴキシン血中濃度が上がる恐れあり→定期的なモニタリングを

副作用と発生頻度

よくある副作用(1〜5%)

  • 傾眠(強い眠気)
  • 頭痛
  • 疲労感

まれに起こる副作用

  • 悪夢・生々しい夢
  • 睡眠時麻痺(金縛りのような症状)
  • 入眠時幻覚(眠りかけに映像や音が聞こえるような感覚)
  • めまい、動悸、吐き気・嘔吐、かゆみ

過量投与(120〜240mg)での報告

  • 強い傾眠、呼吸抑制、胸の痛み など

※多くは軽度ですが、日中に眠気が残る場合は服用量やタイミングを調整する必要があります。


まとめ

  • ベルソムラは「覚醒を切る」新しいタイプの睡眠薬
     オレキシンの働きをブロックし、自然な眠りに近い形で入眠を促します
  • 入眠障害・中途覚醒どちらにも効果があり、3か月にわたって改善が持続。
  • 成人は20mg、高齢者は15mgが基本用量。併用薬や年齢・肝機能によっては調整が必要です。
  • 飲み合わせに注意が必要な薬が多数あり。CYP3Aに関与する薬剤やお酒、運転などにも注意しましょう。
  • 主な副作用は眠気・頭痛。比較的軽度ですが、気になる場合は医師に早めに相談を。


参考文献・出典

厚生労働省:医薬品リスク管理計画(RMP)

PMDA(医薬品医療機器総合機構):医薬品添付文書・インタビューフォーム

KEGG MEDICUS(医療者向け薬剤データベース)

よくある質問(Q&A)


この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?

ベルソムラは、世界で初めて承認された「オレキシン受容体拮抗薬」です。
従来の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系)は、GABA受容体を介して**「脳を強制的に眠らせる」**タイプですが、
ベルソムラは「覚醒を切る」アプローチで、より自然な睡眠に近い形で入眠・睡眠維持を促します。

眠気・ふらつきといった副作用が比較的少なく、中途覚醒にも効果がある点が大きな利点です。

ベルソムラの発売年はいつ?

日本では2014年9月に「ベルソムラ錠15mg・20mg」が不眠症治療薬として承認・発売されました。
その後、CYP3A阻害薬との併用時にも使用できるよう、2016年9月に10mg錠が追加承認されました。

1か月(30日)処方時の薬価と実際の目安価格(自己負担額含む)は?

用量薬価(1錠)30日分の薬価自己負担額(3割負担)
10mg69.3円2,079円約624円
15mg90.8円2,724円約817円
20mg109.9円3,297円約989円

※薬局ごとに調剤料などが加算されるため、実際の負担額は**+500〜1,000円程度**高くなることがあります。

作用発現時間と持続時間はどのくらい?

効果の発現:服用後 1時間前後で入眠効果が現れます(空腹時の服用が推奨)

効果の持続時間約8〜10時間の睡眠維持効果が期待されます(半減期:約10〜12時間)

食後すぐの服用では効果の発現が遅れることがあります。
就寝直前かつ空腹時に服用しましょう。

妊娠中の使用はできますか?(使用可否・リスク・注意点)

妊娠中の使用は推奨されません。
動物実験で胎児の発育への影響(着床数・胎児体重の減少など)が報告されており、
**「治療上の有益性が危険性を上回るときに限り使用すること」**とされています。

ヒトでの安全性データは不十分です。
妊娠の可能性がある場合は、事前に必ず医師へ相談しましょう。

授乳中の使用はできますか?(母乳移行・使用可否と注意点)

ベルソムラは母乳中に移行することが確認されています
 ただし、乳児への移行量(相対的乳児投与量)は母体投与量の1%未満とされています。

使用可否は医師と相談のうえ判断
 必要があれば授乳中断も検討されます。
 リスクと母乳栄養のメリットを比較しながら慎重に決めましょう。

子どもへの使用はできますか?(使用可否と注意点)

小児(18歳未満)への安全性・有効性は確立されていません。
 臨床試験も実施されていないため、原則として使用は推奨されていません

睡眠障害が疑われる子どもには、まず睡眠習慣・環境の見直しを行い、
 必要に応じて小児専門の医師に相談するのが適切です。

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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