ジャディアンスはどんな薬?糖尿病だけじゃない“心臓と腎臓を守る”理由
ジャディアンスはどんな薬?
糖尿病だけじゃない“心臓と腎臓を守る”理由

糖尿病で『ジャディアンス』を使っています。

ジャディアンスは 「血糖を尿から出すことで下げる薬」 です(SGLT2阻害薬)
2型糖尿病のほか、心不全の治療や腎臓の保護にも使われます。
糖尿病が落ち着いている方は、オンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
ジャディアンスとは
ジャディアンス®錠(一般名:エンパグリフロジン)は、SGLT2阻害薬という種類の飲み薬です。
腎臓で糖を再吸収する働きを持つ「SGLT2」というたんぱく質をブロックし、
余分なブドウ糖を尿に排出することで血糖値を下げます。
現在、日本での主な適応は以下の3つです。
- 2型糖尿病
- 慢性心不全(標準的な治療を受けた患者さん)
- 慢性腎臓病(CKD)(末期腎不全・透析中の方は除く)
剤型は次の2種類です。
- ジャディアンス錠 10mg
- ジャディアンス錠 25mg
いずれも処方箋が必要な薬です。
ジャディアンスの特徴
1.もともとは「糖尿病の薬」として登場
腎臓では、一度尿に出たブドウ糖の90%以上がSGLT2によって再吸収されます。
ジャディアンスはこのSGLT2を選択的に阻害し、
- 糖の再吸収を抑える
- 尿に糖を出す量を増やす
という働きで、インスリンにあまり依存せず血糖を下げる点が特徴です。
国内外の臨床試験により有効性が確認され、
2014年12月、「2型糖尿病治療薬」として日本で承認されました。
2.「心不全」「腎臓病」への効果が注目され、適応拡大
その後の大規模試験で、糖尿病だけでなく心臓・腎臓を守る働きが示されました。
- 2021年:慢性心不全に適応追加
左室駆出率(EF)が低い心不全から始まり、のちに「EFにかかわらず」使えるよう拡大。 - 2024年:慢性腎臓病に適応追加
現在では、
「血糖コントロール」+「心臓・腎臓の保護」の両方をねらえる薬 として位置付けられています。
効能・効果
目次
ジャディアンス錠10mg
- 2型糖尿病
- 慢性心不全
※「心不全の標準治療を受けている患者」に限る(ACE阻害薬/ARB/ARNi、β遮断薬、MRAなど) - 慢性腎臓病(CKD)
※末期腎不全・透析中は除く
ジャディアンス錠25mg
- 2型糖尿病のみ
※心不全・腎臓病では10mgが推奨量であり、25mgに増やしても効果上乗せは確認されていません。
有効性(代表的な臨床試験のポイント)
1.2型糖尿病に対する効果
● HbA1cを 0.7〜1%前後下げる
食事・運動療法で十分に下がらなかった患者さんの試験で、24週間後:
- 10mg:HbA1c 約0.7%低下
- 25mg:HbA1c 約0.9〜1.0%低下
(プラセボ群はほとんど変化なし)
● 体重が約2kg減少
「太りやすい糖尿病薬」とは逆で、体重が減りやすい傾向があります。
● 既存薬との併用でも効果持続
SU薬、ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬、インスリンなどとの併用試験でも
HbA1cを0.8〜1.0%下げる効果が1年程度持続したことが示されています。
2.慢性心不全に対する効果
大規模試験の結果、ジャディアンス10mgを追加すると:
- 心血管死または心不全による入院を約20〜25%減らした
- 糖尿病がなくても効果が見られた
つまり、
「糖尿病のない心不全患者さんにも使える薬」 と位置付けられています。
3.慢性腎臓病(CKD)に対する効果
大規模試験では、以下のイベントを全体として約30%減らしたと報告されました。
- eGFRの急激な悪化
- 透析が必要になる
- 心血管死
糖尿病の有無にかかわらず効果が得られ、特に尿たんぱく(UACR)が多い患者さんで腎保護効果がはっきりしています。
用法・用量
基本(成人)
● 2型糖尿病
- 通常:10mgを1日1回(朝)
- 効果不足:25mgまで増量可能
● 慢性心不全・慢性腎臓病
- 10mgを1日1回(朝)
※10mgを超える量の有効性は確認されていません。
服用のタイミング
毎日、同じ時間帯(朝)に服用するのが理想です。
● 飲み忘れた場合
- その日のうちなら気づいた時に1回分服用
- 2回分をまとめて服用するのは絶対にNG
→ 低血糖・脱水などのリスクが上がります
使用できない方(禁忌)
■ 絶対に使わない(添付文書上の禁忌)
- ジャディアンス成分へのアレルギー(過敏症)歴
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡/前昏睡
→ インスリン治療が必要な緊急状態 - 重症感染症、手術前後、重い外傷
→ 血糖管理にインスリンが優先される状況
■ 慎重に判断するケース(禁忌ではないが注意)
● 高度な腎機能障害
- 2型糖尿病目的:腎機能がかなり低い/透析中では効果が期待できず使用しない
- 心不全・腎臓病目的:
eGFR<20では腎保護効果が弱い可能性や悪化のリスクがあり、慎重に判断
● 1型糖尿病
→ ケトアシドーシスのリスクが高く使用不可
● 妊婦
動物実験で胎児の腎への影響が報告。
→ 妊婦には投与しない
● 授乳中
母乳移行の報告あり。
→ 授乳を避けるか薬の中止を検討
飲み合わせに注意が必要な薬
1.他の糖尿病薬(低血糖に注意)
- SU薬(グリメピリド等)
- インスリン
- 速効型分泌薬
- DPP-4阻害薬
- GLP-1受容体作動薬
など
→ 併用で血糖が下がりすぎることがあるため、SU薬やインスリンは減量検討
2.血糖をさらに下げやすい薬
- β遮断薬
- 大量アスピリン(サリチル酸系)
- MAO阻害薬
→ 低血糖症状(手のふるえ、冷や汗、動悸)に注意
3.血糖を上げやすい薬
- 副腎皮質ステロイド
- アドレナリン
- 甲状腺ホルモン
→ ジャディアンスの効果が弱く感じられることがあります。
4.利尿薬
- チアジド系
- ループ利尿薬
→ 脱水・血圧低下リスク増加
特に高齢者は要注意。
5.リチウム製剤
リチウムの排泄が増え、血中濃度が下がる可能性。
→ 必ず主治医に報告。
副作用と発生頻度
すべての薬に副作用があります。ここでは頻度がわかっているものを中心に紹介します。
■ 重大な副作用(頻度は高くないが要注意)
● 低血糖(約1.4%)
特にSU薬・インスリン併用時。
症状:手のふるえ、冷や汗、動悸、強い空腹感、集中できない など
● 脱水(約0.3%)
症状:口の渇き、だるさ、立ちくらみ、血圧低下
→ 重度では血栓症につながることも
● ケトアシドーシス(0.1%未満)
血糖がそれほど高くなくても起きる「正常血糖ケトアシドーシス」に注意。
症状:強い倦怠感、息苦しさ、吐き気・嘔吐、腹痛、異常な口渇、意識もうろう
→ すぐ受診が必要
● 重い感染症
(腎盂腎炎、フルニエ壊疽、敗血症 等/いずれも0.1%未満)
高熱・強い痛み・陰部の腫れや変色があれば緊急受診。
■ 比較的よくみられる副作用(0.1〜5%)
- 尿路感染・膀胱炎
- 性器カンジダ症(女性)/亀頭包皮炎(男性)
- 頻尿・多尿、口渇
- 体重減少
- めまい、便秘、かゆみ、発疹
- 血液検査の変化(クレアチニン上昇・eGFR低下 など)
受診・相談の目安
次の症状があれば、自己判断で中止せず速やかに受診を。
- 強いだるさ、吐き気、息苦しさ、腹痛(ケトアシドーシスの可能性)
- 高熱・背中〜脇腹の強い痛み(腎盂腎炎の可能性)
- 陰部の強い痛み・腫れ・変色(フルニエ壊疽の可能性)
- 立ちくらみ・ふらつき・極端な口渇(脱水の可能性)
- 頻尿・体重減少がつらい場合
まとめ
ジャディアンス(エンパグリフロジン)は、
- 腎臓のSGLT2を阻害して血糖を下げる薬
- 2型糖尿病だけでなく、慢性心不全・慢性腎臓病でも心臓と腎臓を守る働きがある
- 1日1回で服用しやすく、体重が減りやすいのも特徴
一方で、
腎機能低下の強い方、1型糖尿病、妊婦などには使えない/慎重に判断する必要があります。
尿路感染、脱水、ケトアシドーシスなどの特有の副作用があり
参考文献・出典
📘 公的文書
- PMDA 添付文書(ジャディアンス錠)
- PMDA RMP(リスク管理計画)
- 日本糖尿病学会 ガイドライン
- 日本循環器学会 心不全治療ガイドライン
📚 主要論文(一般向けに読みやすいもの)
- EMPA-REG OUTCOME 試験(NEJM 2015)
→ 「心臓を守る効果」を証明した代表的な大規模研究 - **EMPEROR-Reduced / EMPEROR-Preserved 試験(心不全)」
- EMPA-KIDNEY 試験(腎臓保護)
いずれも世界基準で評価されているデータです。
よくある質問(Q&A)
-
ジャディアンスってどんな薬?どんな人に使われるの?
-
ジャディアンスは 「血糖を尿から出すことで下げる薬」 です(SGLT2阻害薬)。
2型糖尿病のほか、心不全の治療や腎臓の保護にも使われます。
-
この薬の同じ系統の薬(SGLT2阻害薬)と比べた強みは?
-
ジャディアンスの強みは以下の点が特に評価されています。
- 心臓への効果がもっとも強く証明されている薬の一つ
→ 心臓が弱っている人(心不全)でも使用され、死亡率を下げたデータあり。 - 腎臓を守る効果も大きい
- 飲み方が1日1回で簡単
- 体重減少・血圧低下が期待できる
同系統の薬(フォシーガ、カナグル、ルセフィなど)と比べても、
“心臓へのエビデンスが最も強い” という点はジャディアンスならではの特徴です。 - 心臓への効果がもっとも強く証明されている薬の一つ
-
先発薬として発売されたのはいつ?
-
- 2014年:海外で承認(アメリカ・EU)
- 2016年:日本でジャディアンス錠として発売
- 2020年:心不全の適応追加
- 2023年:慢性腎臓病の適応追加
比較的新しい薬で、心臓・腎臓まで適応が広がった最新世代の糖尿病薬です。
-
1か月(30日)処方で薬代はいくら?自己負担額の目安は?
-
※薬価は2025年時点の代表的薬価を使用。
用量 薬価(1錠) 30日分 3割負担の自己負担額 10mg 約195円 約5,850円 約1,760円 25mg 約195円 約5,850円 約1,760円 ✔ 診察料や検査代は別。
✔ ジェネリックはまだないため薬価はやや高め。
-
効果(作用)はどれくらいで出る?持続時間は?
-
作用発現:飲み始めたその日から尿糖が出始める → 血糖は数日で下がる
持続時間:24時間以上
1日1回で効果が続くため、飲み忘れにだけ注意。
-
妊娠中にジャディアンスは使える?(妊娠中)
-
妊娠中は原則使用できません。
理由:
- 胎児の腎臓に悪影響が出る可能性が示されている
- 安全性試験が人では十分にされていない
- 糖尿病治療は インスリンが第一選択
📌 妊娠がわかったら、自己判断でやめず医師に相談して変更を行う
特に妊娠後期は胎児の腎臓が発達する時期でリスクが高いとされています。
-
授乳中に使える?母乳への影響は?(授乳中)
-
授乳中も基本的に使用は推奨されません。
- 母乳に薬がどれくらい移行するか不明
- 動物では乳汁移行が確認されている
- 乳児の脱水・腎機能への影響が懸念される
📌 使用が必要な場合は医師と相談し、授乳を中止するか、薬を変更するか を検討します。
-
子ども(小児)には使える?
-
18歳未満は原則使用不可
安全性・効果のデータが少なく、添付文書でも推奨されていません。
📌 小児糖尿病(1型・2型とも)では インスリンや他薬が優先 されます。
-
副作用で多いものは?危険な症状はある?
-
よくあるもの
- トイレが近くなる(尿量増加)
- のどが渇く
- 体重減少
注意が必要な副作用
- 脱水・ほてり・めまい
- 尿路感染・カンジダ感染
- ケトアシドーシス(息が甘い・強い吐き気)
特に「水分不足」は危険なので、こまめな水分補給が大切。
-
ジャディアンスと他の血糖薬(メトホルミン・DPP-4阻害薬など)は併用できる?
-
はい、多くの薬と併用できます。
特に併用されやすい薬:- メトホルミン
- DPP-4阻害薬(エクア、ネシーナ、トラゼンタ等)
- SU薬
- インスリン
- SGLT2阻害薬以外の新薬(SGLT2と併用は不可)
ただし、低血糖を起こしやすい組み合わせ(SU薬・インスリン)は注意が必要。
この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
-
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
詳しいプロフィールはこちら
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