やけどや傷が化膿したときに塗る薬「ゲーベンクリーム」とは?使い方・注意点を解説

やけどや傷が化膿したときに塗る薬「ゲーベンクリーム」とは?
使い方・注意点を解説

潰瘍ができて『ゲーベンクリーム』が処方されました

ゲーベンクリーム1%は、やけどや傷などの二次感染を防ぐ・治す外用抗菌薬です。

広い抗菌力と臨床での効果が確認されています。軽症熱傷は使えません(禁忌)

ゲーベンクリームはオンラインで処方することができます。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。


ゲーベンクリームとは?

  • 薬の種類:外用感染治療剤(病院で処方される薬)
  • 有効成分:スルファジアジン銀(Silver sulfadiazine)1%
  • 作用のしくみ:銀イオン(Ag⁺)が細菌の細胞膜・細胞壁に直接作用して、広い種類の細菌やカビ(真菌)を抑える働きがあります(試験管内実験による確認=in vitro)。

使う場面の例

やけどやけが、手術後の傷、びらん・潰瘍に対して、細菌感染がある、またはその疑いがある場合に使用します。

軽いやけど(軽症熱傷)には使えません
これは国のルールで決められており、逆に痛みが強くなることもあるためです(詳しくは「禁忌」の項参照)。


ゲーベンクリームの特徴

薬の歴史と日本での展開

  • 1943年:有効成分であるスルファジアジン銀が合成される。
  • 1967年:熱傷患者への使用が始まる。
  • 1974年:米国で「Silvadene®」として発売。
  • 1982年:日本でゲーベンクリーム1%が発売。
  • 1985年:褥瘡(じょくそう:床ずれ)や下腿潰瘍などにも適応拡大。
  • 2004年:制度変更により、「軽症熱傷には使わないこと」が明確に。
  • 2008年:販売名が現在の名称に変更。

薬としての強み

  • 幅広い抗菌スペクトル
     → 黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌、エンテロバクター、クレブシエラ、カンジダ属などに効果あり(in vitro)。
  • 耐性菌ができにくい
     → 細胞膜・細胞壁という菌の本体に直接作用する仕組みのため、菌が薬に慣れて効かなくなるリスクが少ない
  • 使いやすい製剤設計
     → O/W型(油中水型)のクリームなので、塗り広げやすく、洗い流しやすい

効能・効果

感染を起こしやすい菌(感受性菌)

  • ブドウ球菌属
  • レンサ球菌属
  • クレブシエラ属
  • エンテロバクター属
  • 緑膿菌
  • カンジダ属(真菌)

適応となる症状

  • 外傷・熱傷・手術後の創の二次感染
  • びらんや潰瘍の二次感染

軽症熱傷は使えません(禁忌)
傷の深さ・広さ、痛みの強さ、感染の有無などを診て医師が判断します。自己判断で使用しないでください


有効性(エビデンス)

国内臨床試験の結果(医療機関での使用データ)

熱傷(中等度・重症)

  • 有効率:71.6%(184/257例)

皮膚潰瘍(プラセボ比較試験)

  • 本剤:70.6%(24/34例)
  • 基剤のみ:32.4%(12/37例)

皮膚潰瘍(ゲンタマイシンクリームとの比較)

  • 本剤:71.1%(32/45例)
  • ゲンタマイシン:61.0%(25/41例)

※いずれも1980年代の日本国内での研究結果に基づきます。
創の深さや壊死組織の有無、全身状態などによって効果には差が出るため、医師による創傷管理と併用しながら使用します


用法・用量(正しい塗り方)

  • 回数:1日1回
  • 厚さ:創面全体を2〜3mmの厚さで覆うように直接塗布
  • 清潔操作:滅菌手袋などを使用
  • ガーゼ使用可:同じ厚さでガーゼに伸ばして貼り、包帯を巻く
  • 翌日以降:前日の薬をやさしく拭き取るか、ぬるま湯やシャワーで洗い流してから新しく塗る

混ぜてはいけない薬あり
特に塩化物系の消毒薬(例:塩化ベンザルコニウム)が混ざると、薬が変色する恐れがあります。

乳幼児や広いやけどの場合は注意
基剤に含まれるプロピレングリコールが体内に吸収されて、血液が濃くなりすぎる(高浸透圧)ことがあるため、医療機関で経過観察が必要です。


使用できない方(禁忌)

以下に該当する方は使用できません

  • スルファジアジン銀、またはサルファ剤にアレルギーのある方
  • 低出生体重児・新生児(高ビリルビン血症のリスクあり)
  • 軽症熱傷(痛みが増すおそれ)

使用に注意が必要な薬(相互作用)

  • 外皮用酵素製剤(例:ブロメライン)

銀イオンが酵素の働きを弱める可能性があるため、併用の際は医師に確認してください


副作用と発生頻度

重大な副作用(頻度は不明)

  • 汎血球減少:発熱、喉の痛み、出血しやすくなるなど
  • 皮膚壊死:塗布部が黒くなったり、壊死が進行する
  • 間質性腎炎:尿が出にくい、背中の痛み、むくみ など

その他の副作用

発現頻度症状例
0.1〜5%未満発疹、接触皮膚炎、塗布部の痛み、白血球減少
頻度不明発赤、光線過敏症、貧血、血小板減少、二次感染(耐性菌による)

いずれも、異常を感じたらすぐに使用を中止し、医療機関を受診してください。


特に注意が必要な方

以下のような背景がある方は、使用できるかどうか医師が慎重に判断します

  • 薬物過敏症の既往
  • 光線過敏症の既往
  • 全身性エリテマトーデス(SLE)
  • G6PD欠損症(特定の遺伝体質)
  • 腎機能や肝機能が低下している方
  • 妊娠中・授乳中の方
  • 小児

まとめ

  • ゲーベンクリーム1%は、やけどや傷などの二次感染を防ぐ・治す外用抗菌薬です。
  • 広い抗菌力と臨床での効果が確認されています。
  • 軽いやけどには使えません。必ず医師の判断を受けましょう。
  • 正しく塗ること(厚さ・回数・洗い落とし)が大切です。
  • 他の薬と混ぜないよう注意し、副作用の兆候があればすぐに中止し受診を。
  • 創の状態・患者さんの全身状態を見ながら、当院では適切に使い分けています。
     気になる症状がある場合、市販薬で悪化する前に、ぜひご相談ください。

参考文献・出典

  • 添付文書(田辺三菱製薬株式会社)
  • インタビューフォーム(製造販売元による詳細資料)
  • KEGG DRUGデータベース(D00433)
  • 国内臨床試験報告(1980年代)
    • 小野ら「熱傷」1980
    • 吉岡ら「救急医学」1980
    • 由良ら「Chemotherapy」1984 等

PubMedや医中誌Webでも「Sulfadiazine Silver」「熱傷 感染 クリーム」などで検索すると文献が見つかります。

よくある質問(Q&A)


この薬の同じ系統の薬と比べて、どんな強みがありますか?

ゲーベンクリームの最大の強みは、広い抗菌スペクトルと耐性菌ができにくい点です。
たとえば、ゲンタマイシン軟膏などの抗菌薬と比べて、黄色ブドウ球菌・緑膿菌・カンジダ属など広範囲な菌に効果があり、しかも菌が耐性を持ちにくいとされています(菌の細胞膜・細胞壁に直接作用するため)。
また、洗い流しやすいO/W型のクリーム基剤なので、日常の処置にも使いやすい特徴があります。

ゲーベンクリームの先発薬はいつ発売されたの?

日本では1982年に初めてゲーベンクリーム1%が発売されました。
海外では米国で1974年に「Silvadene®」という名前で販売開始されています。
その後、1985年に褥瘡(床ずれ)などの皮膚潰瘍にも適応が拡大され、
2008年に現在の製品名(ゲーベンクリーム)に変更されました。

1か月分(30日分)処方された場合の薬価や実際の自己負担額は?

ゲーベンクリームの薬価は、1gあたり12.8円です。

たとえば、1日3g使用した場合の1か月(30日)使用量は約90g。
薬価ベースで約1,152円となります。

患者さんの自己負担額(保険3割負担)で見ると:

  • 約345円前後(薬局での調剤料など別途)

※使用量や塗る範囲によって大きく変わるため、あくまで目安としてお考えください。

効果は塗ってからどのくらいで出ますか?どのくらい続きますか?

明確な「作用発現時間」は明記されていませんが、
塗布後すぐに創面に薬がとどまり、銀イオンが持続的に放出されて抗菌効果を発揮します。

1日1回の塗布で十分とされており、効果は1日程度持続します。
ただし、創面の浄化・感染制御には複数日〜週単位の継続使用が必要です。

妊娠中に使っても大丈夫ですか?

妊娠中の使用は、治療上の有益性がリスクを上回ると医師が判断した場合に限られます。
添付文書上も「慎重投与」とされており、安全性が完全に確認されているわけではありません。

特に妊娠後期では、成分が胎児の代謝に影響する可能性があるため、医師の管理下でのみ使用されます。

授乳中に使用しても赤ちゃんに影響はない?

授乳中の使用は避けるのが望ましいとされています。
動物実験では、乳汁中へのスルファジアジン銀の移行が確認されており、
赤ちゃんへの影響(黄疸や高ビリルビン血症など)の可能性があるため、授乳の継続可否を医師と相談する必要があります。

子どもにも使えますか?使うときの注意点は?

新生児や低出生体重児には使えません。
これは、成分が血中に移行して高ビリルビン血症(赤ちゃんの体に黄疸が強く出る)を引き起こすリスクがあるためです。

また、小児や乳幼児で広範囲に使用すると、基剤に含まれるプロピレングリコールで体液のバランスが崩れる(高浸透圧状態)ことがあるため、医療機関での慎重な管理が必要です。

他の薬と一緒に使っていい?混ぜても大丈夫?

基本的に、他の外用薬と混ぜてはいけません。
特に、塩化物を含む消毒薬(例:塩化ベンザルコニウム)と混ざると変色の恐れがあります。

他の薬を併用する場合は、塗布時間をずらすなどの対応が必要なので、必ず医師や薬剤師に確認してください。

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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