妊娠中のつわり対策に漢方はあり?医師も使う小半夏加茯苓湯とは

妊娠中のつわり対策に漢方はあり?
医師も使う小半夏加茯苓湯とは

つわりで『小半夏加茯苓湯』飲んでいます

小半夏加茯苓湯は、「嘔吐」や「つわり」に特化しています。

特に「水がたまったような感じ(胃内停水)」や

「吐き気・嘔吐」が目立つ場合に使いやすい処方です。

妊娠中のつわりにも適応があります。

小半夏加茯苓湯は、オンラインで処方することができます。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。


小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)とは

小半夏加茯苓湯は、漢方医学の古典『金匱要略(きんきようりゃく)』に記された処方をもとにした漢方製剤です。

  • 構成生薬は3種のみ
    • ハンゲ(半夏)
    • ブクリョウ(茯苓)
    • ショウキョウ(生姜)

小半夏加茯苓湯の特徴

  • 由来
    古典処方「小半夏湯」に茯苓(ぶくりょう)を加えた構成。
    元は「半夏湯(はんげとう)」と呼ばれていた処方が、兄弟処方「大半夏湯(だいはんげとう)」と区別されるようになったため、この名称に。

効能・効果

次のような吐き気・嘔吐に使用されます(体力中等度の方)

  • 妊娠嘔吐(つわり)
  • 急性胃腸炎による嘔吐
  • 湿性胸膜炎
  • 水腫性脚気(すいしゅせいかっけ)
  • 蓄膿症(ちくのうしょう)などに伴う嘔吐

💡 ポイント:
同じ「吐き気」でも体質や他の症状によって適応薬が異なるため、証(しょう:体質・症状の組合せ)に合わせて使用されます。


有効性の考え方(実臨床での位置づけ)

  • 添付文書には個別の臨床試験データは記載されていません。
  • しかし、つわりを含む多様な吐き気に対して、臨床現場で広く使用されている処方です。
  • 証に合えば効果が出やすく、効果が乏しければ継続せず中止を検討するのが基本です。

用法・用量

  • 通常成人:1日 7.5g を 2〜3回に分けて服用
    (食前または食間)
  • 年齢・体重・症状に応じて調整可
  • 妊娠中・高齢者などは、少量から慎重に開始することがあります。

使用できない方(禁忌)

添付文書には明確な「禁忌」は記載されていませんが、以下のような方には慎重な投与が必要です:

■ 妊婦・妊娠の可能性がある方

  • 「妊娠嘔吐」が効能にあるが、自己判断せず必ず医師の判断で使用すること

■ 授乳中の方

  • 治療効果と母乳育児のバランスを見て、授乳の継続可否を検討

■ 小児

  • 小児を対象とした試験は実施されておらず、使用は医師と相談のうえで判断

■ 高齢者

  • 生理機能が低下していることを踏まえ、減量や経過観察を丁寧に行う

飲み合わせに注意が必要な薬

  • 他の漢方薬と生薬が重複しているときは、成分の重複による副作用リスクがあるため要注意です。 例:半夏、茯苓、生姜を含む処方との併用
  • 西洋薬との相互作用に関する具体的記載はありませんが、服用中の薬・健康食品・漢方はすべて申告してください。

副作用と注意点

  • 元資料には明確な副作用名・頻度の記載はなし
  • 服用後に:
    • 吐き気や症状が悪化する
    • 全身の体調がすぐれない
    • 効果が出ない
    などの場合は、中止を含めて医師に相談

処方前に知っておいてほしいこと(まとめ)

  • 小半夏加茯苓湯は体力中等度の「吐き気・嘔吐」に使う漢方
  • 生薬は3種類で、古典に基づいたシンプルな処方
  • 証(体質・症状)に合えば有効、合わなければ中止
  • 妊娠・授乳・小児・高齢者では慎重な使用が必要
  • 他の漢方薬との併用では生薬の重複に注意
  • 症状が重いとき(水分がとれない・体重減少・出血など)は早めの受診が重要

参考文献・出典

添付文書 / インタビューフォーム(医療用製剤)
→ ツムラ「小半夏加茯苓湯エキス顆粒(医療用)」添付文書PDF ツムラ医療サイト
→ インタビューフォーム(企業公開資料) 医薬情報QLifePro

「妊娠悪阻・唾液分泌過多に対する漢方療法」論文 (医書.jp)
→ 日本の漢方処方使用実績と安全性に関する記述あり 医書ジェーピー

漢方・中医学における処方解説書・中医学体系書
→ 小半夏加茯苓湯の方義、証の分類・理論的背景を解説している古典および現代解説

妊娠期中薬安全応用の探討(中薬安全性に関する学術論文)
→ 中薬(中医学薬)の妊娠期使用安全性を議論した論考

よくある質問(Q&A)


この薬(小半夏加茯苓湯)の、同じ系統の既成漢方製剤に対する強みは何ですか?

小半夏加茯苓湯の強みは、以下のような特徴にあります:

  • 「嘔吐」や「つわり」に特化している
     特に「水がたまったような感じ(胃内停水)」や「吐き気・嘔吐」が目立つ場合に使いやすい処方です。妊娠中のつわりにも適応があります。
  • 体力中等度の人に使いやすい
     補剤のような“気虚”向けでもなく、強すぎる処方でもないため、中等度の体力で「吐き気・水っぽさ」がある人にバランス良く使えます。
  • シンプルな処方構成(3つの生薬)
     半夏(はんげ)・茯苓(ぶくりょう)・生姜(しょうきょう)だけで構成され、余分な補助生薬がないため、他剤との併用でも生薬の重複が少なく調整しやすいです。

🔍 比較されやすい他の漢方薬との違い

漢方名主な適応小半夏加茯苓湯との違い
半夏瀉心湯胃腸の炎症・下痢・吐き気嘔吐以外に腹痛や下痢もある場合に使う。
六君子湯胃腸虚弱・食欲不振吐き気があっても「虚証」寄りの人向け。
五苓散水分代謝異常・むくみ嘔吐より「尿が出ない」「むくみ」が主症状のときに。
柴胡桂枝湯胃のつかえ・吐き気・微熱ストレス・寒気・風邪症状があるときに選ばれる。

つまり、「水っぽい吐き気」「つわり」「むかつき」が中心のときに、他剤よりもピンポイントで対応できるのが小半夏加茯苓湯の強みです。

1か月(30日)処方時の薬価・目安価格はどのくらいですか?(自己負担額込みで)

ツムラ製品の薬価は 10.7円/g。通常用量は 7.5g/日。30日分の薬価は以下の通りです:

項目金額
1か月分の量7.5g × 30日 = 225g
総薬価225g × 10.7円/g = 2,407円
自己負担額(3割負担)722円(+調剤料等)

※薬局での実際の支払額は保険点数や技術料が加わるためもう少し高くなります。

この薬の 作用発現時間・持続時間 はどのくらいですか?

効果が出るまで:数日~1週間以内に「むかつき」や「吐き気」が軽減されることが多いです。早い人では数回の服用で実感があります。

効果の持続時間:1日2〜3回に分けて飲む設計のため、1回あたりおおよそ 4~6時間程度の持続が想定されます。

ポイント:1〜2週間服用して効果が乏しければ、他の処方へ切り替えを検討します。

妊娠中に飲んでも大丈夫?

添付文書では「妊娠中は有益性が危険性を上回る場合に限り使用」と記載。特に妊娠初期(器官形成期)は慎重に。

特徴:つわり(妊娠嘔吐)は本剤の明記された効能のひとつであり、産婦人科領域でも使用実績があります。

妊娠中は生理機能が変化しており、体質変化・薬物代謝変動・胎児影響リスクを慎重に考える必要があります。変動します。

長年の使用実績から、つわり(妊娠悪阻)治療に用いられてきた例はありますが、それは経験的根拠に基づくものであり、必ずしも統計的な安全性を示すものではありません。

授乳中の使用はどうですか?母乳への移行・注意点は?

使えるか? → 医師と相談のうえ、必要な場合は使用可能。

添付文書の記載:「授乳の継続または中止を検討すること」とあります。

母乳への移行性:明確なデータはないものの、生薬成分が微量移行する可能性あり。

注意点:服用中は赤ちゃんの体調変化(下痢・湿疹など)に注意し、異常があれば服薬中止と医師相談を。

子ども(小児)への使用可否と注意点は?

使用可否:添付文書では「小児に対する臨床試験はない」とされ、慎重投与が求められます。

年齢制限:明確な年齢制限はありませんが、年齢・体重に応じた適正量を医師が調整します。

注意点

吐き気の原因が他にある可能性もあるため、まず医師に相談することが大切です。

乳幼児に対しては特に慎重な観察が必要。

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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