甘草湯(かんぞうとう)|『傷寒論』の1味処方——軽度喉痛の頓服漢方を医師が解説

甘草湯(かんぞうとう)|『傷寒論』の1味処方——軽度喉痛の頓服漢方を医師が解説

風邪で喉が痛くて話しにくいです。甘草湯という「甘草だけの漢方」があると聞いたのですが本当ですか?

本当です。甘草湯(かんぞうとう)は『傷寒論』のわずか1味処方——甘草だけで組まれた最小の方剤です。「喉が痛い時にまずこれを試して、効かなければ桔梗湯」というのが古典の教えるところ。飲みやすく安全性も高いですが、医療用製剤(クラシエ甘草湯エキス細粒)は1日量6.0g中に日局カンゾウ8.0g相当を含み、医療用漢方のなかで最大級の甘草量です。連用は避け、頓服・短期使用が原則。頓服・短期使用の代表格です。

30秒で要点

  • 甘草湯は『傷寒論』(後漢200年)——1味処方
  • 生薬わずか1味:甘草(医療用は1日量で日局カンゾウ8.0g相当)
  • 合う証は「軽度の喉痛・咳・粘膜の痙攣性痛み」
  • 効かせどころ:喉痛(軽症)・空咳・粘膜刺激感・急性の咳嗽
  • 『傷寒論』の1味処方は非常に稀——原点回帰の潔さ
  • アルドステロン症・ミオパチー・低カリウム血症の方は禁忌。連用で偽アルドステロン症・ミオパチー
  • 飲み方:白湯で溶かしてゆっくり含みながら1日2〜3回・頓服
  • 頓服が原則・連用は避ける

背景——「まず甘草湯」の1味発想

『傷寒論』少陰病篇にこう記されています:

少陰病、二三日、咽痛の者は、甘草湯を与うべし。差えざれば、桔梗湯を与える

要約すると「軽い喉の痛みには、まず甘草だけの甘草湯を試しなさい。それで治らなければ、桔梗を加えた桔梗湯を」——1味からステップアップする、実に潔い発想。

『傷寒論』全体で1味処方は数えるほど——甘草湯・大黄黄連瀉心湯(3味)・調胃承気湯(3味)等、シンプルな方剤の代表格として際立ちます。

甘草湯の1味——「甘草」を知る

甘草(Glycyrrhiza uralensis)はマメ科カンゾウの根茎——漢方の200種以上の処方に配合されている「国老(国の元老)」とも呼ばれる生薬。主成分のグリチルリチンは:

  • 抗炎症作用(副腎皮質ホルモン様)
  • 粘膜保護
  • 鎮痛・鎮咳
  • 薬性の調和(他の生薬の刺激を和らげる)

ヨーロッパでは「リコリス」としてキャンディの原料にもなる、身近な植物です。

現代の使いどころ

状況位置づけ
軽度の喉痛(頓服)1〜2日の短期
空咳桔梗湯・麦門冬湯と使い分け
粘膜の刺激感
薬剤の刺激緩和他漢方に混合されるベース生薬

喉痛系漢方 使い分け

方剤対象
甘草湯軽度の喉痛(1味・頓服)
桔梗湯急性咽喉炎(2味・排膿含む)(記事)
小柴胡湯加桔梗石膏こじれた喉痛(記事)
麦門冬湯乾いた咳・声がれ(記事)

副作用と注意

  • 禁忌:アルドステロン症の方/ミオパチーのある方/低カリウム血症の方(添付文書)
  • 医療用は1日量で日局カンゾウ8.0g相当と甘草量が多く、連用で偽アルドステロン症・ミオパチー(低カリウム血症、血圧上昇、脱力、筋肉痛など)が起こりえます
  • 他の甘草含有漢方との併用は避ける
  • 利尿薬併用者・血圧の高い方は要注意
  • 妊娠中の安全性は確立していません。使用は医師にご相談ください

当院の方針

  • 甘草湯の処方に対応——軽度喉痛の頓服を想定
  • 頓服または1〜2日の短期使用が原則
  • 桔梗湯・小柴胡湯加桔梗石膏との使い分けも相談
  • 他甘草含有漢方併用は避ける
  • 症状長引くなら受診

よくある質問

桔梗湯とどう違う?

甘草湯=1味・軽症・頓服、桔梗湯=甘草+桔梗・排膿含む急性咽喉炎。ステップアップで使う。

毎日飲んでいい?

NO——甘草の偽アルドステロン症リスク。頓服が原則。

市販薬にありますか?

あります——第2類医薬品として。

妊娠中は?

短期・頓服なら比較的安心。長期は主治医と相談。

のど飴で代用できる?

のど飴は気休め程度、甘草湯はグリチルリチンによる実際の抗炎症作用があります。

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まとめ

  • 甘草湯は『傷寒論』のわずか1味処方
  • 軽度喉痛の頓服として1〜2日の短期使用
  • 桔梗湯へのステップアップの前段階
  • 連用は偽アルドステロン症リスク
  • 市販薬でも入手可

この記事の一次情報

  • 張仲景『傷寒論』(後漢・約200年)少陰病篇
  • 大塚敬節・矢数道明『漢方診療医典』
  • クラシエ「甘草湯エキス細粒(医療用)」添付文書(医療用甘草湯はクラシエの細粒のみで、ツムラの医療用製剤はありません)

※本記事は上記の古典・現代文献・添付文書に基づき、市井の視点でわかりやすく解説したものです。

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この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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