竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)|明『薛氏医案』の下焦湿熱処方——排尿痛・残尿感・帯下に用いる9味を医師が解説

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)|明『薛氏医案』の下焦湿熱処方——排尿痛・残尿感・帯下に用いる9味を医師が解説

尿路感染を繰り返し、排尿痛と帯下増加、外陰部のかゆみもあります。竜胆瀉肝湯を勧められたのですが?

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)は「下焦(骨盤内)の湿熱」——泌尿器・生殖器・肛門周囲の炎症にビシッと合う名処方です。金元の李東垣『蘭室秘蔵』由来ですが、日本で使われる医療用製剤(ツムラ)は明代『薛氏医案』(薛己)由来の9味の処方です(森道伯の一貫堂系は16味で別系統)。慢性膀胱炎・帯下・外陰炎・前立腺炎・痔・下焦の湿疹に幅広く用いられます。

30秒で要点

  • 竜胆瀉肝湯は明代『薛氏医案』(薛己)由来——日本で頻用
  • 生薬15味の大処方(メーカーで差あり)
  • 合う証は「下焦の湿熱=泌尿器・生殖器・肛門周囲の炎症+熱感+帯下増加」
  • 効かせどころ:慢性膀胱炎・帯下・外陰炎・前立腺炎・下焦湿疹・痔
  • 甘草・山梔子・黄芩含有——複合副作用リスク
  • 飲み方:白湯で溶かして温かく、1日3回・食前か食間
  • 副作用:偽アルドステロン症・肝機能異常・腸間膜静脈硬化症(山梔子長期)
  • 虚寒・妊娠中は不適

背景と15味

中国では金元の李東垣『蘭室秘蔵』の竜胆瀉肝湯が原型ですが、日本で使われるのは明代・薛己(一貫堂医学の源流の1人)によるアレンジ版。組成に若干差があります。

分類生薬
熱冷まし竜胆・黄芩・山梔子
湿を捌く沢瀉・木通・車前子
血を補う当帰・地黄
調和甘草
製剤による違いツムラ製剤は9味(竜胆・黄芩・山梔子・沢瀉・木通・車前子・当帰・地黄・甘草)。一貫堂系の製剤は16味で構成が異なります(いずれも人参は含みません)

注目は竜胆(りゅうたん)——リンドウ科リンドウの根で、非常に苦い「下焦の熱を冷ます」代表生薬。名前の通りこの処方の主薬です。

現代の使いどころ

状況位置づけ
慢性膀胱炎(湿熱型)猪苓湯との使い分け
再発性膀胱炎予防的にも
帯下(オリモノ増加)産婦人科と併診
外陰炎・膣炎抗真菌薬併用
前立腺炎慢性型
下焦の湿疹
痔核・肛門周囲炎

猪苓湯との使い分け

項目竜胆瀉肝湯猪苓湯
対象慢性・湿熱・体質改善急性・水熱互結
範囲泌尿器+生殖器+肛門周囲泌尿器
期間数週〜数か月数日〜数週

副作用と注意

  • 山梔子由来:腸間膜静脈硬化症(5年以上長期)
  • 甘草由来:偽アルドステロン症
  • 黄芩由来:肝機能異常・間質性肺炎(稀)
  • 虚寒(冷え性)には合わない
  • 妊娠中は主治医と相談
  • 5年以上の連用は避ける

当院の方針

  • 竜胆瀉肝湯の処方に対応——慢性膀胱炎・帯下・外陰炎(湿熱型)を想定
  • 急性膀胱炎は抗菌薬が第一選択で漢方は補助
  • 反復する感染症は泌尿器科・産婦人科での精査を並行
  • 5年以上の連用は避ける
  • 肝機能を年1回近隣で

よくある質問

猪苓湯とどっちがいい?

「慢性・湿熱・帯下も含む」なら竜胆瀉肝湯、「急性膀胱炎・血尿」なら猪苓湯。

妊娠中は?

安全性は完全確立していない——主治医と相談を。

効くのに何日?

数週間で徐々に体感。

5年以上の連用は?

山梔子の腸間膜静脈硬化症リスク——避けて休薬・別方剤ローテーションを。

関連記事

まとめ

  • 竜胆瀉肝湯は明『薛氏医案』由来の下焦湿熱処方
  • 生薬15味の大処方
  • 合う証は「泌尿器・生殖器・肛門周囲の炎症+熱感+帯下」
  • 慢性膀胱炎・帯下・外陰炎・前立腺炎・痔に
  • 山梔子・甘草・黄芩の副作用に注意
  • 5年以上避ける

この記事の一次情報

  • 薛己『薛氏医案』(明代)
  • 李東垣『蘭室秘蔵』(金元)—— 原型
  • PMDA「山梔子含有製剤による腸間膜静脈硬化症について」
  • 大塚敬節・矢数道明『漢方診療医典』
  • ツムラ/クラシエ「竜胆瀉肝湯エキス顆粒(医療用)添付文書」

※本記事は上記の古典・現代文献・添付文書に基づき、市井の視点でわかりやすく解説したものです。

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この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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