温清飲(うんせいいん)|『万病回春』の「四物湯+黄連解毒湯」合方——慢性アトピー・血虚熱の8味を医師が解説

温清飲(うんせいいん)|『万病回春』の「四物湯+黄連解毒湯」合方——慢性アトピー・血虚熱の8味を医師が解説

慢性のアトピー性皮膚炎で、皮膚が乾燥+赤み+熱感、のぼせやすくイライラもあります。温清飲を勧められました。

温清飲(うんせいいん)は明代『万病回春』(1587年)の名処方——「四物湯(血を補う4味)+黄連解毒湯(熱を冷ます4味)」の合方で、名前の通り「温補(血を養う)+清熱(熱を冷ます)」を1剤で行います。「血虚+熱」型のアトピー性皮膚炎・慢性湿疹・のぼせ・自律神経失調にビシッと合う設計。日本の皮膚科でも慢性アトピーへの補助として頻用されます。

30秒で要点

  • 温清飲は『万病回春』(明・1587年)収載
  • 生薬8味:四物湯(当帰・地黄・芍薬・川芎)+黄連解毒湯(黄連・黄芩・黄柏・山梔子)
  • 合う証は「血虚+熱=皮膚乾燥+赤み+熱感+のぼせ+イライラ」
  • 効かせどころ:慢性アトピー性皮膚炎・慢性湿疹・皮膚掻痒症・自律神経失調・更年期(熱型)
  • ただしツムラ温清飲の効能・効果は「皮膚の色つやが悪く、のぼせるものの次の諸症:月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症」で、アトピー性皮膚炎や湿疹という病名は含まれていません(皮膚症状に用いる場合は効能・効果の範囲外になります)
  • 「四物湯+黄連解毒湯」の合方——血虚と熱の両方をケア
  • 山梔子含有——長期使用で腸間膜静脈硬化症のおそれ(5年未満の発症例もあり、期間を問わず定期的な確認が必要)
  • 甘草は含みません(四物湯・黄連解毒湯とも甘草を含まないため)
  • 副作用:肝機能異常・間質性肺炎(稀)・腸間膜静脈硬化症(長期)

背景——2つの名処方の合体

温清飲は名前が「温補(血を補う)+清熱(熱を冷ます)」を意味する通り、単独では合わない病態に、2つの名処方を組み合わせて対応するという合方の発想の名作です。

出典処方狙い単独の適応
四物湯血を補い巡らす血虚(乾燥・貧血・冷え)
黄連解毒湯熱を冷ます熱証(のぼせ・イライラ・熱感)(記事)
温清飲合方血虚+熱(アトピー慢性期・皮膚炎の熱型)

慢性アトピー性皮膚炎のように「乾燥+炎症+のぼせ」が同居する状態は、単方剤では対応が難しい——温清飲はそこにピッタリはまる合方です。

温清飲の8味

出典生薬量/日
四物湯要素当帰3g・地黄3g・芍薬3g・川芎3g
黄連解毒湯要素黄芩1.5g・黄柏1.5g・黄連1.5g・山梔子1.5g

現代の使いどころ

状況位置づけ
慢性アトピー性皮膚炎(熱+乾燥)ステロイド外用+補助
慢性湿疹(熱型)消風散との使い分け
皮膚掻痒症当帰飲子との使い分け
自律神経失調(熱型)加味逍遙散との使い分け
更年期障害(熱型)ホルモン療法+補助
慢性じんましん

皮膚科漢方 使い分け

方剤対象特徴
温清飲血虚+熱(乾燥+炎症+のぼせ)四物湯+黄連解毒湯
消風散じくじく+強いかゆみ+夏湿熱型(記事)
当帰飲子乾燥+冬+高齢血虚型(記事)
十味敗毒湯化膿性華岡青洲(記事)
黄連解毒湯熱感のみ清熱(記事)

副作用と注意

  • 山梔子由来:腸間膜静脈硬化症(長期投与で報告。5年未満の発症例もあります)
  • 甘草を含まないため、偽アルドステロン症の心配は原則ありません
  • 黄芩由来:肝機能異常・間質性肺炎(稀)
  • 地黄由来:稀に胃もたれ・下痢
  • 漫然とした連用は避け、長期に使う場合は定期的に腹部症状の確認を
  • 妊娠中は主治医と相談

当院の方針

  • 温清飲の処方に対応——慢性アトピー・皮膚掻痒症(熱+乾燥型)を想定
  • ステロイド外用・保湿・抗ヒスタミン薬・タクロリムス/デルゴシチニブ等の標準治療を優先し漢方は補助
  • 5年以上の連用は避け、休薬・ローテーション
  • 腹痛・便通異常が出たら中止・受診
  • 肝機能を年1回近隣で

よくある質問

消風散・当帰飲子とどう使い分ける?

「乾燥+熱感+のぼせ」なら温清飲、「じくじく+強いかゆみ」なら消風散、「乾燥だけ・高齢者・冬」なら当帰飲子。

ステロイド外用と併用できる?

ステロイド外用が第一選択で、温清飲は内側から補助——併用OK。

効くのに何日?

数週間〜数か月で徐々に体感——じわっと体質改善するタイプ。

腸間膜静脈硬化症って?

山梔子含有漢方の5年以上長期使用で起こる稀な疾患——大腸の静脈壁にCa沈着。腹痛・便通異常が症状。5年以内で休薬・ローテーションを。

妊娠中は?

安全性は完全確立していない——主治医と相談を。

関連記事

まとめ

  • 温清飲は明1587年『万病回春』の「四物湯+黄連解毒湯」合方
  • 生薬8味
  • 合う証は「血虚+熱=皮膚乾燥+赤み+熱感+のぼせ」
  • 慢性アトピー・皮膚掻痒症(熱+乾燥型)に
  • 山梔子の腸間膜静脈硬化症に注意・漫然とした連用は避ける
  • ステロイド外用と併用可

この記事の一次情報

  • 龔廷賢『万病回春』(明・1587年)
  • 大塚敬節・矢数道明『漢方診療医典』
  • PMDA「山梔子含有製剤による腸間膜静脈硬化症について」注意喚起
  • ツムラ/クラシエ「温清飲エキス顆粒(医療用)添付文書」

※本記事は上記の古典・現代文献・添付文書に基づき、市井の視点でわかりやすく解説したものです。

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この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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