CYP3A4阻害薬・誘導薬の一覧|グレープフルーツ・クラリス・ゾコーバ・セント・ジョーンズ・ワートに注意|医師が解説

降圧薬を飲んでいるのでグレープフルーツを避けているのですが、コロナのゾコーバもダメと聞きました。他にも避けないといけないものはありますか?

CYP3A4という酵素が肝臓と腸で薬を分解します。この酵素の働きを止める食品や薬(阻害薬)と、逆に強めるもの(誘導薬)があり、それぞれ血中濃度を大きく変えるグレープフルーツ・ゾコーバ・クラリスロマイシン・イトラコナゾールが代表格。逆にセント・ジョーンズ・ワート・カルバマゼピンは薬を効かなくします。整理しましょう。

30秒で要点

  • CYP3A4は肝臓と腸で薬の約半数を分解する主要酵素
  • 阻害薬(酵素を止める):グレープフルーツ・ゾコーバ(エンシトレルビル)・クラリスロマイシン・イトラコナゾール・リトナビル/コビシスタット・ジルチアゼム・ベラパミル
  • 誘導薬(酵素を増やす):リファンピシン・カルバマゼピン・フェニトイン・フェノバルビタール・セント・ジョーンズ・ワート
  • 基質薬(CYP3A4で分解される薬):Ca拮抗薬・スタチン(一部)・抗凝固薬DOAC・免疫抑制薬・オピオイド・ベンゾジアゼピン・抗真菌薬・抗HIV薬・エストロゲン
  • 阻害薬+基質薬:血中濃度が数倍〜十数倍に→中毒
  • 誘導薬+基質薬:血中濃度低下→効かない(低用量ピルで避妊失敗、抗凝固薬で血栓 etc.)

CYP3A4阻害薬(酵素を止めるもの)

カテゴリ代表強さ
食品グレープフルーツ・ザボン・ブンタン・スイーティ・ダイダイ・晩白柚強(フラノクマリン)
ライム・セビリアオレンジ(マーマレード)
温州みかん・レモン・普通のオレンジ影響少
抗菌薬クラリスロマイシン(クラリス)=強/エリスロマイシン=中等度強〜中
抗真菌薬(アゾール系)イトラコナゾール(イトリゾール)・ボリコナゾール(ブイフェンド)・ポサコナゾール(ノクサフィル)
抗HIV薬(プロテアーゼ阻害薬)リトナビル・コビシスタット
コロナ経口薬ゾコーバ(エンシトレルビル)・パキロビッド(ニルマトレルビル/リトナビル)
Ca拮抗薬(一部)ジルチアゼム(ヘルベッサー)・ベラパミル(ワソラン)
ハーブ・食品セビリアオレンジ(ビターオレンジ)

CYP3A4誘導薬(酵素を増やすもの)

カテゴリ代表影響
抗結核薬リファンピシン強誘導(多くの薬効↓)
抗てんかん薬カルバマゼピン(テグレトール)・フェニトイン(アレビアチン)・フェノバルビタール強〜中誘導
ハーブセント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)強誘導(数日〜数週で発現)
その他リファブチン
生活習慣喫煙(主にCYP1A2)/慢性大量飲酒弱〜中

CYP3A4で分解される「基質薬」(影響を受ける薬)

分類代表薬阻害薬併用時の危険
Ca拮抗薬ニフェジピン(アダラート)・フェロジピン・ジルチアゼム(アムロジピンは影響が小さい)血圧急降下
スタチンシンバスタチン・アトルバスタチン(プラバスタチン・ロスバスタチン・ピタバスタチンは影響が小さい)横紋筋融解症
DOACエリキュース・イグザレルト(リクシアナ・プラザキサは主にP糖蛋白の基質)出血
免疫抑制薬タクロリムス・シクロスポリン・エベロリムス中毒
オピオイドフェンタニル・オキシコドン過鎮静・呼吸抑制
ベンゾジアゼピンミダゾラム・トリアゾラム・アルプラゾラム過鎮静
抗真菌薬イトラコナゾール・ボリコナゾール(自身も基質)中毒
エストロゲン(ピル)エチニルエストラジオール避妊効果↓(誘導薬時)
ED薬シルデナフィル(バイアグラ)・タダラフィル(シアリス血圧急降下
抗不整脈薬キニジン・アミオダロン(自身も阻害)中毒
抗がん薬イマチニブ・エルロチニブ・パゾパニブ中毒/効きすぎ
三環系・SSRI・SNRIの一部セルトラリン・イミプラミン中毒
コルヒチン痛風肝臓・腎臓に障害がある方はクラリス・イトラ・ゾコーバと併用禁忌(障害がなくても併用注意)
プレドニン・ステロイド血中濃度変動

特に危険な組み合わせ

① グレープフルーツ × 降圧薬・スタチン

小腸のCYP3A4を不可逆的に阻害。1杯のジュースでも3日間影響。ニフェジピン・シンバスタチン・タクロリムス等で血中濃度が数倍に(シンバスタチンでは通常量のジュース1杯で約3.6倍、大量摂取では10倍以上の報告も)。

② ゾコーバ・パキロビッド × 多数

コロナ経口薬は強力なCYP3A4阻害シンバスタチン・イグザレルト・トリアゾラム等は併用禁忌。コルヒチン・アトルバスタチン・エリキュース・リクシアナは併用注意(コルヒチンは肝腎障害があれば禁忌)。処方時にお薬手帳確認必須。危ない薬の組み合わせ参照。

③ クラリスロマイシン × 多数

中耳炎・気管支炎・ヘリコバクター除菌などで頻用される抗生剤。スタチン・コルヒチン・DOAC・ミダゾラム・エルゴタミン・シルデナフィル等と併用注意

④ セント・ジョーンズ・ワート × 低用量ピル

CYP3A4を誘導してエストロゲンを分解→避妊効果が消える。海外通販サプリで実際にケースあり。サプリと薬の飲み合わせ参照。

⑤ カルバマゼピン × ワーファリン等

抗てんかん・三叉神経痛薬。強誘導でワーファリン・DOAC・低用量ピル・免疫抑制薬・タクロリムス等の効き↓。

阻害の強さ(主要な指標)

分類AUC上昇代表薬
強阻害基質薬AUC 5倍以上クラリス・イトラ・ボリ・リトナビル・ゾコーバ・グレープフルーツ
中等度阻害AUC 2〜5倍ジルチアゼム・ベラパミル・エリスロマイシン・フルコナゾール
弱阻害AUC 1.25〜2倍シメチジン

CYP3A4以外の代謝酵素も知っておくと便利

酵素影響代表基質阻害・誘導
CYP1A2カフェイン・テオフィリン・オランザピンタバコで誘導/シプロキサンで阻害
CYP2D6コデイン→モルヒネ変換/SSRIで阻害タモキシフェン・オキシコドン・三環系遺伝的多型あり
CYP2C9ワーファリンワーファリン・NSAIDsフルコナゾール阻害
CYP2C19クロピドグレル活性化PPI(オメプラゾール)で阻害/プラビックス効果↓
P糖蛋白(P-gp)ジゴキシン・DOAC・タクロリムスクラリス・イトラ・シクロスポリンで阻害

セルフチェック

  • グレープフルーツを食べる/ジュースを飲む習慣があり、降圧薬・スタチンを服用中
  • クラリス処方時にコルヒチン・DOAC・スタチンを併用中
  • コロナでゾコーバ・パキロビッド処方時に他の慢性薬を服用中
  • セント・ジョーンズ・ワートを海外・ネット通販で購入して低用量ピル・SSRI・DOAC等を服用中
  • カルバマゼピン新規開始時にワーファリン・ピル併用中
  • 思い当たれば処方医・薬剤師に相談を

当院の方針

  • お薬手帳+食習慣+サプリを確認
  • グレープフルーツ回避が難しい方は、Ca拮抗薬の中でも影響が少ないアムロジピンや、ARB/ACE阻害薬を優先
  • クラリス・イトラ・ゾコーバ処方時は併用薬をチェックし、危険な組み合わせは代替薬(アジスロマイシン・別のコロナ薬)を選択
  • セント・ジョーンズ・ワート等のハーブ購入を控えるようご案内
  • 相互作用が疑われる症状(血圧急降下、出血、筋痛、不整脈)が出たら早めにご連絡を

よくある質問

温州みかん・オレンジは大丈夫?

温州みかん・普通のオレンジ・レモンはフラノクマリンが少なく、影響ほぼなし。避けるべきはグレープフルーツ・ザボン・ブンタン・ダイダイ・晩白柚・スイーティ・セビリアオレンジ

グレープフルーツを食べた翌日に降圧薬を飲めばいい?

影響は最大3日続くため、翌日でも安全とは限りません。ジュース・実両方避けるのが確実。

クラリスを1週間だけの処方なら大丈夫?

短期でもスタチン・コルヒチン・DOAC・トリアゾラム等の血中濃度は明確に上がります。処方医に併用薬を必ず伝えて。

カルバマゼピンをやめれば元に戻る?

はい、誘導は中止後1〜2週間で減弱し、酵素量は元に戻ります。ただし急な中止はてんかん発作リスクがあるので主治医と相談。

セント・ジョーンズ・ワートを海外通販で買ってしまいました

ピル・DOAC・SSRI・免疫抑制薬・タクロリムス等を服用中なら使わないでください。避妊効果消失や血栓のリスク。

タバコとカフェインの関係

喫煙はCYP1A2を誘導し、カフェイン・テオフィリン・オランザピンの代謝を早める。禁煙するとテオフィリン中毒を起こすことがあります。

DOACとクラリスの併用は?

エリキュース・イグザレルトはCYP3A4+P糖蛋白の基質、リクシアナ・プラザキサは主にP糖蛋白の基質。クラリスで血中濃度上昇→出血リスク。アジスロマイシンなど代替へ。

マーマレードは大丈夫?

セビリアオレンジ(ビターオレンジ)由来のマーマレードはフラノクマリンを含むため、大量摂取は注意。少量なら問題少。

関連記事

まとめ

  • CYP3A4は薬の約半数を分解する主要酵素
  • 阻害薬(グレープフルーツ・クラリス・ゾコーバ・イトラ)で血中濃度↑
  • 誘導薬(リファンピシン・カルバマゼピン・セント・ジョーンズ・ワート)で血中濃度↓
  • Ca拮抗薬・スタチン・DOAC・免疫抑制薬・オピオイド・ピル・ED薬が影響を受けやすい
  • お薬手帳+食習慣を医師・薬剤師と共有
  • 短期処方でも危険な組み合わせは代替薬を

※本記事は各薬剤の医薬品インタビューフォーム・添付文書(KEGG/JAPIC 収載)、FDAの薬物相互作用に関するガイダンス、厚生労働省「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(平成30年7月23日 薬生薬審発0723第4号)等の一般的な記述に基づきます。個別の使用は主治医とご相談ください。

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この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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