塩分の正しい減らし方|目標値・食品早見表・無理なく続ける10のコツを医師が解説

「減塩しなさい」と言われるんですが、毎日料理してもどれくらい塩が入っているか分からないし、ラーメンや惣菜も食べたい。現実的にはどうすればいいですか?

塩分の話は「ゼロにする」必要はなく、「ちょっとずつ減らす」が現実的。

そもそも日本人は男性平均10.7g、女性9.1g(令和5年 国民健康・栄養調査)と、目標(高血圧の方は6g未満)に対して1.5〜2倍。半分を目指すのではなく、まずは1〜2g減らすだけでも血圧は下がります。

この記事では、目標値、食品別の塩分量、「隠れ塩分」、無理なく減らすコツ、塩分とカリウム・熱中症の関係まで整理します。

そもそも、なぜ塩分を減らすのか

影響内容
高血圧塩1g減で血圧が約1mmHg下がるとされる。脳卒中・心筋梗塞リスクに直結
心臓・腎臓心不全悪化、慢性腎臓病(CKD)の進行を早める
胃がん塩分過多は胃がんリスクを上げる(日本人の高塩分文化と胃がん多発の関連)
骨粗鬆症過剰塩分でカルシウム尿中排泄↑→骨密度低下
むくみ・体重塩分は水を引き込むため、むくみ・体重増加の原因

塩分の目標値(誰がどれくらい?)

対象1日の食塩相当量の目標
日本人の食事摂取基準(2025年版)男性 7.5g未満/女性 6.5g未満
日本高血圧学会(高血圧の方)6.0g未満
WHO(世界基準)5.0g未満
慢性腎臓病(CKD)の方3〜6g(ステージにより)
日本人の現状(成人平均)男性 10.9g/女性 9.3g

「いきなり6g」は現実的ではありません

今が10gの方は、まず8g、その後7g、6gと段階的に。1g減らすだけでも血圧は1mmHg下がるので、無理なく続けるのが正解です。

1食でこれだけ:身近な食品の塩分量

食品塩分量(目安)コメント
カップラーメン1個(汁全部)5.0〜7.0g1食で1日分超え。汁を残せば半分以下
ラーメン店の中華そば(汁全部)6.0〜8.0g同上
うどん・そば(つゆ全部)4.0〜6.0gつゆを残せば2〜3g
味噌汁 1杯1.2〜1.5g薄めだし+具を増やすと味噌少なく済む
食パン1枚0.7〜0.8g隠れ塩分の代表。3食パンだと意外に多い
梅干し1個(大)1.0〜2.5g減塩タイプを選ぶ
たくあん 3切れ1.0g
ハム2枚/ベーコン2枚0.8〜1.2g加工肉は塩分・添加物も
明太子 1/2腹1.5〜2.0g
塩鮭1切れ(甘塩)1.5〜2.0g
カレーライス(市販ルー)2.5〜3.5gルーが塩分の大半
ぎょうざ6個+たれ2.0〜2.5gたれを少なく
外食の和定食4.0〜6.0g味噌汁+漬物+主菜の合計
コンビニおにぎり1個1.0〜1.5g梅・鮭など具で異なる
ポテトチップス1袋(60g)0.6〜0.9g

「隠れ塩分」に要注意

  • パン:1日3食パン食だと塩分2〜3g。米飯にすると1食0g
  • 加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ・ウインナー):保存料兼の塩分多
  • 練り物(はんぺん・ちくわ・かまぼこ):1枚で0.5〜1g
  • 即席麺・冷凍食品・レトルト食品:1食2〜3g
  • ふりかけ・ご飯のお供:見えにくいが意外と多い
  • 市販ドレッシング・たれ・ぽん酢:大さじ1で1〜2g
  • 梅干し・漬物:「健康に良さそう」だが塩分は多い
  • 「減塩」と書いてあっても食べる量が多ければ意味ない

減塩のコツ:味は落とさず塩だけ減らす

テクニック具体例
① だしを濃くかつお・昆布・煮干し・干ししいたけ。うまみが塩の代わりになる
② 酸味を使う酢、レモン、柑橘、トマト。同じ塩分量でも味の満足度↑
③ 香辛料・薬味こしょう、唐辛子、しょうが、にんにく、わさび、ゆず、シソ、みょうが
④ 香ばしさ焼き目、ごま、ナッツ、海苔、油の香り(ごま油)
⑤ 「かける」より「つける」醤油はかけず小皿に少量つける
⑥ 麺類の汁を残す汁半分残すだけで3〜4g減
⑦ 加工食品を減らすコンビニ・冷食を週に何回か自炊に置き換え
⑧ 表示を見る「ナトリウム」表記は×2.54で塩分量に換算(後述)
⑨ 段階的に薄味へ舌は2〜4週間で薄味に順応。最初がしんどいだけ
⑩ カリウムを増やす野菜・果物・芋類でナトリウム排泄を促す(後述)

減塩しょうゆ・減塩味噌・減塩ふりかけの使い方

  • 減塩しょうゆ:通常品の半分程度の塩分。「同じ量を使う」のが大事(味が薄いとつい多くかけてしまっては意味なし)
  • 減塩味噌:仕上げに少量。だしと具で味を作る
  • 減塩ふりかけ・減塩漬物:選ぶ価値あり。ただし「減塩」表示でも食べ過ぎれば塩分多
  • 「塩・しょうゆ・味噌は計量する」:目分量はだいたい1.5〜2倍盛りやすい

「ナトリウム」表記の食塩量換算

表示食塩相当量に直す
ナトリウム400mg約1.0g
ナトリウム800mg約2.0g
ナトリウム1200mg約3.0g

計算式:食塩相当量(g) = ナトリウム(mg) × 2.54 ÷ 1000

現在は「食塩相当量」での表示が主流ですが、海外品や古い表示は「Na」表記のことも。覚えておくと便利です。

カリウムとの関係(野菜・果物を増やす)

  • カリウムはナトリウムの尿中排泄を促進し、血圧を下げる方向に働く
  • 目標量:男性3,000mg/日以上、女性2,600mg/日以上(カリウムに「推奨量」の設定はなく、目安量は男性2,500mg・女性2,000mg)
  • 多い食品:バナナ、トマト、ほうれん草、芋類、アボカド、海藻、豆類
  • 「DASH食」は減塩+高カリウム+全粒穀物+低脂肪乳を組み合わせた食事スタイルで、降圧効果が立証されている
  • 注意慢性腎臓病・ACE阻害薬・ARB・スピロノラクトン服用中の方は高カリウム血症リスクがあるため、カリウムの摂りすぎは禁物。腎機能と薬の記事も参照

熱中症との兼ね合い(夏の話)

  • 大量発汗時は塩分も失う。1Lの汗で約3gの塩分が失われる
  • 通常の屋内生活なら食事の塩分で十分。追加の塩飴・スポドリは不要
  • 炎天下の屋外作業・スポーツ・高齢者経口補水液(ORS)で水分+電解質を補う
  • 「減塩中だから熱中症の時も塩を控える」は危険。汗で失った塩分はその場で補う
  • 詳しくは熱中症の予防と対処

減塩しすぎの注意(低ナトリウム血症)

  • 極端な減塩や水分大量摂取で血中ナトリウム濃度が下がると、めまい・吐き気・けいれん・意識障害
  • 特に高齢者・利尿薬服用中・SIADH(抗利尿ホルモン分泌異常)でリスク
  • 目安:1日2g未満の極端な減塩は通常は不要
  • 「だるい」「ふらつく」「足がつる」が増えたら主治医に相談

当院での減塩相談

  • 家庭血圧手帳と食事のお話から、現実的な減塩プランをご提案
  • 「外食が多い」「家族と食事が違うのは困る」などの生活制約に合わせたコツも
  • 定期採血(電解質・腎機能)でのフォローは当院では行えません。年1〜2回はかかりつけ医で
  • 関連記事:高血圧のすべて生活習慣病Vol.2 高血圧の生活対策腎機能と薬

よくある質問

減塩すると血圧はどれくらい下がりますか?

1g減で約1mmHg。2〜3g減らせれば2〜4mmHg程度下がります。

生活改善(減塩+減量+運動+節酒)を組み合わせれば、合計5〜15mmHg下がることも珍しくありません。

外食が多いです。どこから手をつけますか?

① 麺類の汁を残す(これだけで2〜3g減)

② 醤油・ソースを「かけずにつける」

③ 漬物・梅干しを減らす

④ 味噌汁は1日1杯まで、または半分残す

これだけで1日2〜3gは確実に減ります。

「塩分ゼロ」の食事は健康ですか?

NO、危険です。ナトリウムは細胞の働きに必須で、極端な制限は低ナトリウム血症(だるさ・けいれん・意識障害)を招きます。

目安は男性7.5g/女性6.5g未満、高血圧の方は6g未満3g未満はCKD治療など医師の指示下で。

減塩しょうゆを使えば、いつものレシピでOK?

原則OK。ただし「同じ量」を使うことが条件

味が薄いとつい多くかけてしまい、結局塩分が変わらないことも。計量する習慣が大事。

家族と食事を分けるのが大変です

無理に分ける必要はありません。家族全員の食事を1〜2g減らす方が現実的で続きます。

濃い味好きの家族は食卓で各自醤油を足す、薄い味好きの方はそのまま、と「食卓塩」で調整。

ラーメンが好きでやめられません

頻度を減らす(週3→週1)、汁を残す大盛りにしないセット(チャーハン・餃子)を頼まないサイドで野菜を取る

全部やめる必要はなく、楽しみの日と決めて、平時を整える発想で。

カリウム摂取と腎機能の関係は?

健康な腎臓ならカリウムは尿で排泄され、過剰の心配は少ない。

慢性腎臓病(CKD)の方・ACE阻害薬・ARB・スピロノラクトン服用中の方は高カリウム血症のリスクがあり、果物・芋類・青汁は量を意識。詳しくは腎機能と薬の記事へ。

もう少し詳しく

DASH食とは

DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は米国NIHが開発した降圧食。

野菜・果物・全粒穀物・低脂肪乳製品・ナッツ・豆類を多く、赤身肉・甘味・加工食品を控える

減塩と組み合わせると収縮期血圧を平均8〜14mmHg下げた大規模試験あり。

日本の和食でも、魚・野菜・大豆・海藻中心なら近い効果が期待できます。

塩分とむくみの関係

塩分を多く摂ると血中ナトリウム濃度を保つために水分が引き込まれ、むくみと体重増加が起こります。

翌朝の指輪のきつさ・靴のきつさでセルフチェック可能。

腎機能が落ちている方ほど塩分でむくみやすく、心不全の悪化要因にも。

塩分と胃がん

日本人の胃がん多発はピロリ菌+高塩分文化の組み合わせとされ、高塩分食はピロリ菌感染を悪化させ胃粘膜のダメージを増やすことが分かっています。

減塩は血圧だけでなく胃がん予防にも

「塩分計」の活用

汁物の塩分を測れる「塩分計」が市販されています(数千円)。

味噌汁を作って測定し、0.7〜0.8%(人体に近い濃度)を目指すと無理なく薄味に。

家庭での「見える化」のツールとして便利です。

参考文献・情報源

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
  • 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
  • WHO. Salt reduction. 2020.
  • 国民健康・栄養調査(令和5年)

まとめ

  • 日本人は塩分過多。1〜2g減らすだけでも血圧は下がる
  • 目標:男性7.5g/女性6.5g未満、高血圧の方は6g未満
  • 麺の汁を残す・醤油はつける・加工食品を減らすが即効性のあるコツ
  • だし・酸味・香辛料・香ばしさで味は落とさない
  • カリウム(野菜・果物)はナトリウム排泄を助ける。ただしCKD・ACE/ARB服用中は量に注意
  • 極端な減塩は逆効果。1日3g未満は医師の指示下で

「自分の血圧が気になる」「減塩のやり方が続かない」とお感じの方は、家庭血圧手帳と最近の食事内容をご準備のうえ、お気軽にオンライン診療でご相談ください。

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この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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