生活習慣病とその対策 Vol.6|肥満・メタボ・脂肪肝・動脈硬化対策(シリーズ最終回)

BMI 27、腹囲92cmで「メタボ」と言われました。健診のすべての項目で引っかかります。何から手をつければ?

メタボ・肥満は「すべての生活習慣病の上流」。ここを攻めれば血圧・脂質・血糖・尿酸・脂肪肝のすべてが連鎖的に改善します。
まず目指すのは「体重の3〜5%減」。70kgの方なら2〜3.5kg。これだけで健診の数値は大きく変わります。
シリーズ最終回として、Vol.6では肥満・メタボ・脂肪肝・動脈硬化を横断的に整理します。
目次
メタボリックシンドロームの診断
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 必須:腹囲 | 男性85cm以上/女性90cm以上 |
| 追加項目(うち2つ以上で診断) | — |
| 血圧 | 130/85以上、または降圧薬服用中 |
| 空腹時血糖 | 110以上、または血糖降下薬服用中 |
| 脂質 | 中性脂肪150以上、またはHDL 40未満 |
メタボの方は心血管リスクが2〜3倍に上がります。
体重・脂肪・筋肉の関係(BMIだけでは見えない)
| 指標 | 基準 | 意味 |
|---|---|---|
| BMI | 22前後が理想/25以上で肥満 | 身長と体重の比 |
| 腹囲 | 男性85未満/女性90未満 | 内臓脂肪の指標 |
| 体脂肪率 | 男性10〜20%/女性20〜30% | 体組成計で測定 |
| 骨格筋量・基礎代謝 | 加齢で減少 → 太りやすく代謝も悪く | 筋トレで維持 |

「隠れ肥満(BMIは普通だが内臓脂肪が多い)」も日本人に多いタイプ。
BMIだけでなく腹囲・体脂肪率・健診のメタボ要素を合わせて見ましょう。
減量の科学:3〜5%減で何が起こるか
| 項目 | 3〜5%減量での変化 |
|---|---|
| 血圧 | -3〜5 mmHg |
| HbA1c | -0.3〜0.6% |
| 中性脂肪 | -15〜30% |
| LDL | -5〜15 mg/dL |
| 尿酸 | -0.3〜0.7 mg/dL |
| 脂肪肝(γ-GTP, ALT) | 大幅に改善することが多い |
| 睡眠時無呼吸 詳しくはSAS検査の記事へ | 症状が軽くなる |
1か月で1〜2kg、半年で5%減が現実的な目標。極端な減量はリバウンドの元です。
対策① 食事の総量と質
- 1日の摂取カロリーを200〜500 kcal減(夜の白米半分+お菓子1つやめる程度)
- 主食はこぶし1個分(ご飯150g)、白を茶色(玄米・全粒粉・そば)に
- たんぱく質を体重1kgあたり1g(鶏胸肉・魚・大豆・卵)
- 野菜350g・果物200gを目安に
- 砂糖入り飲料・菓子パン・夜遅い食事を減らす
対策② 運動:有酸素+筋トレのセット
| 種類 | 頻度 | 効果 |
|---|---|---|
| 有酸素(速歩、ジョギング、サイクリング) | 週150分以上 | 体重・血圧・血糖・脂質すべてに |
| 筋トレ(スクワット、腕立て、プランク) | 週2〜3回 | 基礎代謝アップ、リバウンド防止 |
| NEAT(非運動性熱産生) | 日常 | 階段、立ち仕事、家事で +200kcal/日も可能 |
筋肉量を保つと、減量後のリバウンドが起きにくくなります。
対策③ 睡眠
- 睡眠不足は食欲ホルモン(グレリン)↑+満腹ホルモン(レプチン)↓でやせにくくなる
- 7時間前後の睡眠を確保
- 睡眠時無呼吸(SAS)は肥満と双方向の悪循環。いびきが強い方は検査を検討
- スマホ・寝る前のお酒は質を下げるので控えめに
対策④ 飲酒・喫煙
- アルコールは「液体カロリー」。ビール中ジョッキ1杯=約200kcal、日本酒1合=約190kcal
- 純アルコール男性20g・女性10g以下、休肝日週2日以上
- 喫煙は動脈硬化を加速。禁煙すると体重が増えやすいが、それでも禁煙のメリットが圧倒的に大きい
- 当院は禁煙外来(チャンピックス自費)に対応
脂肪肝(NAFLD/MASLD)と動脈硬化
- 日本人の脂肪肝の多くは非アルコール性(NAFLD/MASLD)
- 無症状でも肝硬変・肝がん・心血管病のリスクが上がる
- 対策はメタボと同じ:体重・食事・運動
- 体重5〜10%減で脂肪肝はほぼ正常化することが分かっています
- アルコール性も合わさる場合(MetALD)はお酒も減らす。アルコール性肝障害の詳細はお酒で肝臓が悪くなる仕組みへ
動脈硬化を防ぐ:全疾患を貫く最終目標
生活習慣病の最終的なゴールは「心筋梗塞・脳卒中を起こさないこと」。動脈硬化を進めない/戻すために共通で効くのは:
| 介入 | 効果 |
|---|---|
| 血圧管理(家庭125/75〜135/85未満) | 脳卒中・心筋梗塞リスク -20〜30% |
| LDLコレステロール管理 | 心筋梗塞リスク -20%(LDL -40 mg/dLごと) |
| 禁煙 | 1年で心血管リスク半減 |
| 体重・腹囲管理 | メタボ解消で -20〜30% |
| 糖尿病コントロール | HbA1c 1%低下で合併症 -20〜35% |
| 運動習慣 | 総死亡 -20〜30% |
減量補助薬という選択肢(自由診療)
- リベルサス(GLP-1受容体作動薬・内服):BMI 25以上の方に自由診療で処方しています。ただしリベルサスの国内の効能・効果は「2型糖尿病」のみで、減量目的の使用は適応外です(肥満症の適応をもつセマグルチド製剤はウゴービ)
- 当院での処方方針:BMI 25以上の方を対象に、生活改善のサポートとして使用
- 糖尿病の継続処方とは別の自由診療の取り扱い
- 料金・詳細:抗肥満薬としてのリベルサスについて
当院での肥満・メタボ対応
- メタボ各項目(血圧・脂質・血糖・尿酸)の継続処方は対応可能(内科主治医あり前提)
- リベルサス(自由診療)はBMI 25以上の方に対応
- 定期採血フォローは当院では行えません。年に2〜4回はかかりつけ医で
- 禁煙外来(チャンピックス自費)あり
- 生活指導・健診結果の読み方の相談はオンラインで可能
よくある質問
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どのダイエットがいちばん効きますか?
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結論:続けられるものがいちばん効く。
糖質制限・カロリー制限・地中海食・断食系(16:8)など色々ありますが、長期的な効果は「どれだけ継続できたか」でほぼ決まります。
極端な方法より「白米半分・お菓子半分・夜遅く食べない・週3回散歩」のような穏やかな習慣化が成功率が高い。
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体重が増えてないのに健診で引っかかります
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「隠れ肥満」かもしれません。体重は変わらなくても、加齢で筋肉が減り脂肪が増えると健診の数値は悪くなります。
対策は筋トレ+たんぱく質摂取。体組成計(家庭用でOK)で体脂肪率や筋肉量も見るのがおすすめ。
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リベルサスは安全ですか?
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もともと2型糖尿病の治療薬として承認された薬で、糖尿病治療における使用経験は蓄積があります。ただし減量目的での使用は国内では適応外であり、その使い方での長期データは限られます。
主な副作用は吐き気・下痢・便秘。少量から開始すれば軽減できます。
妊婦・妊娠している可能性のある方、および2ヶ月以内に妊娠を予定している方は、添付文書上の禁忌です。膵炎の既往がある方、甲状腺髄様がんの家族歴・多発性内分泌腫瘍症2型のある方も慎重な判断が必要です。詳しくはリベルサス記事へ。
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運動が膝痛で続けられません
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体重を支える運動が辛いなら、水中歩行・自転車・椅子に座ったままできる体操がおすすめ。
減量で関節への負担が減れば徐々にできる運動が増えます。
整形外科で膝の評価+減量という両輪が現実的。
もう少し詳しく
リバウンドを防ぐ「セットポイント理論」
体重を急に減らすと、体は「これは飢餓だ」と判断して基礎代謝を下げ、食欲ホルモンを増やす。これがリバウンドの正体。
対策:① ゆっくり減らす(半年で5%)/② 筋肉を保つ(たんぱく質+筋トレ)/③ 維持期を作る(減量2か月→維持1か月)
「減らした体重を1年維持できれば成功」と考えると現実的。
日本人と動脈硬化:欧米と違うリスクパターン
日本人は欧米人に比べてLDLは低めですが、脳卒中(特に脳出血)のリスクは欧米より高い歴史があります。
近年は食生活の欧米化で心筋梗塞・大腸がん・脂肪肝も増加。
「日本人だから大丈夫」は通用せず、欧米並みの予防が必要な時代です。
シリーズまとめ
- Vol.1 総論:健診の読み方・対策5本柱
- Vol.2 高血圧:減塩・減量・運動・節酒
- Vol.3 脂質異常症:飽和脂肪酸・青魚・運動
- Vol.4 糖尿病・前糖尿病:体重5〜7%減+運動
- Vol.5 高尿酸血症・痛風:体重・アルコール・水分
- Vol.6 肥満・メタボ・動脈硬化(本記事):すべての上流
全6回お読みいただきありがとうございました。気になる症状や数値の悩みがあれば、お気軽にオンライン診療でご相談ください。
▼ シリーズの他の回(生活習慣病とその対策・全6回)
- ▸ Vol.1 総論・健診の読み方
- ▸ Vol.2 高血圧
- ▸ Vol.3 脂質異常症
- ▸ Vol.4 糖尿病
- ▸ Vol.5 高尿酸血症・痛風
- Vol.6 肥満・メタボ・脂肪肝(この記事)
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この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
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【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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