生活習慣病とその対策 Vol.3|脂質異常症の生活対策(飽和脂肪酸・青魚・運動)

LDLコレステロールが160で「悪玉が高い」と言われました。痩せ型なのにどうして?食事で下げられますか?

LDLコレステロールは遺伝の影響が大きい項目で、痩せていても上がる方が珍しくありません。
生活対策で下がるのは10〜20mg/dL程度が目安。それで届かない場合は薬の併用が必要なこともあります。
Vol.3では脂質異常症の生活対策を整理します。薬の詳細は脂質異常症の薬を徹底比較もご覧ください。
目次
まず目標値(リスクで変わる)
| カテゴリー | LDLの目標 |
|---|---|
| 一次予防・低リスク | 160未満 |
| 一次予防・中リスク | 140未満 |
| 一次予防・高リスク(糖尿病・CKD・末梢動脈疾患・非心原性脳梗塞があれば無条件で高リスク) | 120未満(糖尿病で末梢動脈疾患・網膜症・腎症・神経障害の合併、または喫煙がある場合は100未満) |
| 二次予防(心筋梗塞・脳梗塞の既往) | 100未満(急性冠症候群・家族性高コレステロール血症・糖尿病・冠動脈疾患とアテローム血栓性脳梗塞の合併のいずれかがあれば70未満) |
LDL以外にHDL 40以上、中性脂肪150未満(空腹時)/175未満(随時)が目安です。
対策① 飽和脂肪酸を減らす(LDLに最も効く)
| 控えたい食品 | 置き換え候補 |
|---|---|
| 牛・豚の脂身、霜降り肉 | 赤身肉、鶏むね、鶏ささみ |
| バター、ラード、生クリーム | オリーブ油、なたね油、えごま油 |
| 菓子パン、クッキー、洋菓子 | 果物、ナッツ、ヨーグルト |
| チーズ(ハードタイプ) | 低脂肪チーズ、無糖ヨーグルト |
| ベーコン、ソーセージ、ハム | 卵、豆腐、納豆 |
1日の飽和脂肪酸を総エネルギーの7%未満に抑えるのが目安。
対策② 食物繊維と魚を増やす
| 栄養素 | 含まれる食品 | 効果 |
|---|---|---|
| 水溶性食物繊維 | オーツ麦、大麦、海藻、こんにゃく、リンゴ、なめこ | LDL吸収を抑える |
| n-3系脂肪酸(EPA/DHA) | サバ、イワシ、サンマ、アジ(青魚) | TGを下げる |
| 大豆たんぱく | 豆腐、納豆、味噌、豆乳 | LDLを下げる |
| 植物ステロール | 植物油、ナッツ、種子 | コレステロール吸収を阻害 |

「青魚を週2回」は脂質対策のキーフレーズ。
サバ缶・イワシ缶でもOK。コストも続けやすさも◎。
対策③ 避けたい:トランス脂肪酸・砂糖
- トランス脂肪酸:マーガリン、ショートニング、菓子パン、フライドポテトなど。LDLを上げHDLを下げる
- 砂糖入り飲料:ジュース、コーラ、加糖コーヒー、エナジードリンク。中性脂肪を直撃
- 果糖(清涼飲料水のシロップ):肝臓で中性脂肪に直行
- アルコール:TG上昇、HDL一時的上昇だが量が増えれば総脂質悪化
対策④ 運動でHDLを上げる
| 運動 | 効果 |
|---|---|
| 有酸素運動(週150分以上) | HDL +3〜8mg/dL、TG -10〜30% |
| 筋トレ(週2〜3回) | 基礎代謝を上げ、LDLを下げる方向 |
| 日常の歩行を増やす(+3000歩/日) | TG・血糖・体重に好影響 |
HDLは「運動で上がる唯一の指標」と言ってもいいほど運動感受性が高いです。
対策⑤ 体重・禁煙
- 体重5%減でTG -20%、LDL -5〜10mg/dL
- 喫煙はHDLを下げ、LDLを酸化させて動脈硬化を加速 → 禁煙でHDLが数mg/dL上昇
- 当院は禁煙外来(チャンピックス自費)に対応
生活改善でどこまで下がる?
| 対策 | LDL低下の目安 |
|---|---|
| 飽和脂肪酸を減らす | -5〜15 mg/dL |
| 食物繊維(5〜10g/日)を増やす | -5〜10 mg/dL |
| 植物ステロール(1.5〜3g/日) | -5〜15 mg/dL |
| 体重5%減 | -5〜10 mg/dL |
| 有酸素運動(週150分) | -3〜5 mg/dL |
| 合計 | -15〜30 mg/dL程度 |

体感としては「食事+運動+減量を3つ揃えて、3〜6か月でLDLが15〜30下がる」と思ってください。
もとが200近い方は薬が必要ですが、150台の方は十分生活改善で目標域に届くことがあります。
薬を併用するタイミング
- リスクカテゴリーごとの目標を3〜6か月の生活改善で達成できない場合
- 家族性高コレステロール血症(FH)を疑う方(LDL 180以上、若年での心血管疾患の家族歴、アキレス腱黄色腫)
- すでに心筋梗塞・脳梗塞の既往がある方は即時開始
- スタチン・ゼチーア・フィブラート・EPA製剤などの選び方は薬比較記事参照
当院での脂質異常症対応
- 内科主治医での治療方針が決まっている方の継続処方を中心に対応
- 定期採血(脂質・肝機能・CK)でのフォローは当院では行えません。年1〜2回はかかりつけ医で
- 初めて治療を始める場合は対面で家族性除外などを受けてから
よくある質問
-
卵は1日何個まで?
-
健康な方では1日1〜2個程度は問題ないとされています(食事性コレステロールの影響は限定的)。
ただし家族性高コレステロール血症の方や、LDLが180以上の方は1日1個程度に抑えるのが無難。
むしろ重要なのは「卵かけご飯にバターたっぷり」のように卵以外の脂質。
-
お酒はやめないとダメですか?
-
完全禁酒は必須ではありませんが、中性脂肪が高い方は節酒が必要です。
中性脂肪は飲酒で敏感に上がります。男性20g・女性10g以下、週2日の休肝日を。
中性脂肪が500以上の方は急性膵炎リスクがあり、禁酒も含めて医師相談を。
-
「植物油なら安心」って本当?
-
基本的には植物油(オリーブ・なたね・米油・ごま)はOKですが、ココナッツオイル・パーム油は飽和脂肪酸が多く例外。
ヘルシーと言われる「MCTオイル」も、過剰摂取はTGを上げることがあります。
-
健診で「TGが高い」だけです。LDLは普通
-
高TG単独でも、HDL低下とセットで動脈硬化リスクになります。
対策は糖質・お酒・体重。砂糖入り飲料、白米の食べ過ぎ、お酒を控えるだけでTGは大きく下がります。
500を超える方は急性膵炎リスクがあるため早めの薬物療法を。
もう少し詳しく
家族性高コレステロール血症(FH)のサイン
LDL 180以上が遺伝的に続く、家族に若年での心筋梗塞(男性55歳未満、女性65歳未満)、アキレス腱や眼の周りの黄色腫などがある場合、FHを疑います。
FHは生活改善だけでは不十分で、早期からスタチンなどの薬物療法が必要。
健診で繰り返しLDL高値の方は、専門医での精査をお勧めします。
地中海食と日本の食事
地中海食はオリーブ油・魚・野菜・全粒穀物・ナッツ・適量のワインが特徴で、心血管リスクを30%下げることが報告されています(PREDIMED試験)。
日本の伝統的な食事(魚・大豆・野菜・海藻・玄米)も類似の利点を持ち、和食ベースで十分対策可能。
「和食+オリーブ油・ナッツを少し意識する」が現実的なベストプラクティス。
まとめ
- LDLは飽和脂肪酸の見直し、TGは糖質・お酒の見直しが要
- 青魚・大豆・食物繊維・植物ステロールを増やす
- HDLは運動でしか上がらない(週150分の有酸素)
- 生活改善でLDL -15〜30 mg/dLが目安
- 届かなければ早めに薬の検討を
▼ シリーズの他の回(生活習慣病とその対策・全6回)
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この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
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【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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