妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.6|不眠・不安・気分の落ち込み

妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.6|不眠・不安・気分の落ち込み

漢方を中心に、睡眠薬・抗うつ薬を妊娠時期別で整理。産後うつの対応も

妊娠してから不眠やイライラがひどくて…でも、睡眠薬や精神科の薬は赤ちゃんに影響しそうで怖いです。

妊娠中・産後はホルモン変動・身体変化・育児ストレス・睡眠不足で、不眠・不安・気分の落ち込みが本当によく起こります。

我慢して睡眠が取れない・食欲が落ちる・希死念慮があるほうが母児にとってリスク。適切な治療は赤ちゃんを守ることでもあります。

当院では漢方薬を中心に対応。SSRI/SNRI・Bz系睡眠薬は専門医(精神科・心療内科)との連携が原則です。

🌟 妊婦・授乳婦の精神症状 早見表

症状妊娠中の第一選択授乳中の第一選択専門医が必要なケース
軽度の不眠漢方(酸棗仁湯・加味帰脾湯)同左—
中等度の不眠ロゼレム(要相談)/漢方同左—
イライラ抑肝散/加味逍遙散同左—
不安・動悸桂枝加竜骨牡蛎湯/半夏厚朴湯同左—
精神疲労・抑うつ感加味帰脾湯同左症状強い → 精神科
うつ病(中等症以上)産科・精神科で連携同左専門医必須
希死念慮・自殺企図救急受診救急受診即対面医療機関

① 漢方薬:当院の中心

漢方妊娠中授乳中向く症状
酸棗仁湯◯◯疲れているのに眠れない
加味帰脾湯◯◯精神疲労・不安・もの忘れ・抑うつ気分
抑肝散◯◯イライラ・怒りっぽさ
桂枝加竜骨牡蛎湯◯◯神経過敏・不安・動悸で寝つけない
柴胡桂枝乾姜湯◯◯体力低下+神経過敏+寝汗
半夏厚朴湯◯◯喉のつかえ・不安・パニック
加味逍遙散◯◯ホルモン変動からのイライラ・不眠
当帰芍薬散◯◯体力低下・冷え・むくみ
女神散◯◯産前産後・更年期様の不調

漢方の使い方のコツ

効果実感まで2〜4週間。即効性は期待しない。

少量から開始(妊婦は1日2包から始めることも)。

甘草を含む漢方の長期は偽アルドステロン症に注意。

大黄を含む漢方は基本避ける。

② 睡眠薬

薬剤妊娠中授乳中備考
ロゼレム△データ限定△メラトニン作動、比較的安全と考えられる
ベルソムラ/デエビゴ/クービビック/ボルズィ△データ限定△オレキシン拮抗薬
Bz系△推奨せず△推奨せず口蓋裂・新生児離脱症状
非Bz系△推奨せず△推奨せずデータ限定
市販睡眠改善薬△推奨せず△推奨せず第1世代抗ヒスタミン

当院ではBz系・非Bz系は処方しません(妊娠・授乳の有無に関わらず)。詳細は「不眠症の薬を徹底比較」もご参照ください。

妊娠中の不眠:薬の前にできること

左側臥位で循環よく眠りやすく

抱き枕・クッションでお腹を支える

就寝前のリラックス(温かい飲み物・深呼吸・ストレッチ)

カフェイン・スマホ・PCの夜の使用を控える

朝の光を浴びる・昼寝は30分以内

③ 抗うつ薬(SSRI/SNRI):当院では初診処方なし

うつ病・パニック障害・強迫性障害などですでに精神科で処方されている方は、自己判断で中止せず、必ず精神科主治医・産科と相談してください。

薬剤妊娠中授乳中備考
ジェイゾロフト(セルトラリン)◯比較的安全◯妊娠中・授乳中の第一選択になりやすい
レクサプロ◯◯—
リフレックス/レメロン◯◯NaSSA、不眠合併
パキシル△推奨せず△初期で心奇形リスクの議論
サインバルタ△△SNRI
三環系(トリプタノール)△△古い薬、データあり

当院で「初診処方なし」の理由

Bz系睡眠薬・抗精神病薬は向精神薬指定のため、厚労省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」により初診のオンライン診療では処方できません。なお当院では、ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は初診・再診を問わず一切処方しておりません。SSRI/SNRIは向精神薬には指定されていませんが、うつ病・不安障害の診断と治療開始はオンラインでは行っておりません。

当院で対応できるのは、すでに精神科で処方されているSSRI/SNRIの継続処方のみで、睡眠薬は対象外です。

うつ病・不安障害は精神科・心療内科の対面診療での評価と治療開始が原則です。

④ 産後うつへの対応

産後うつは10〜15%の女性が経験するとされ、放置すると母親自身と赤ちゃんに大きな影響を及ぼします。

産後うつのサイン(要注意)

2週間以上続く強い気分の落ち込み

赤ちゃんへの愛着が湧かない感覚/育児が楽しいと思えない

強い罪悪感、食欲低下・体重減少、眠れない/眠りすぎる

「消えたい」「赤ちゃんに何かしてしまいそう」などの希死念慮 → すぐ救急受診

  • ① 早期発見:1か月・3か月健診で「エジンバラ産後うつ病自己評価表」をつける
  • ② 周りに頼る:家族・パートナー・地域の保健センター
  • ③ 必要なら精神科・心療内科の受診
  • ④ 漢方が役立つことも(加味帰脾湯・抑肝散など)
  • ⑤ SSRI(ジェイゾロフト等)は授乳中も比較的安全。専門医と相談を

⚠ 妊娠中・授乳中に「避けたい」薬

  • Bz系・非Bz系睡眠薬
  • 市販睡眠改善薬(ドリエル・ナイトール等)
  • パキシルを妊娠初期に新規開始
  • 大黄を含む漢方
  • サプリ「セントジョーンズワート」(抗うつ作用+他剤との相互作用)
  • 過度な飲酒・タバコ

「すぐ救急受診」が必要なサイン

  • 「消えたい」「死にたい」などの希死念慮
  • 「赤ちゃんに何かしてしまいそう」
  • 1日中ぼーっとして食事も水分も摂れない
  • 幻聴・幻覚・現実感の喪失
  • これらは救急対応が必要。119番・最寄りの救急医療機関・精神科救急へ。

受診予約方法

オンライン診療で妊娠中・産後の不眠やイライラの相談はできますか?

はい、当院では漢方薬(酸棗仁湯・加味帰脾湯・抑肝散・桂枝加竜骨牡蛎湯・柴胡桂枝乾姜湯・半夏厚朴湯など)を中心に処方しています。

Bz系・非Bz系睡眠薬・SSRI/SNRIの初診処方は行いません。

中等症以上のうつ病・希死念慮があるときは必ず対面の精神科・心療内科へ。地域の子育て世代包括支援センターもご活用ください。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

よくある質問

妊娠中の不眠、漢方で本当に効く?

効果実感は2〜4週間と即効性ではありませんが、体質と症状に合えば確実に効く方が多いです。

不安・イライラ・神経過敏など背景にある要因にアプローチできるのが漢方の利点。

ロゼレム(メラトニン作動薬)は妊娠中飲める?

妊娠中のデータは限定的ですが、メラトニン自体は体内ホルモンでBz系よりは安全と考えられます。

まずは漢方と生活改善を優先し、症状によって短期使用をご相談いただけます。

Bz系・非Bz系を妊娠前から飲んでいました

自己判断で急にやめないでください。離脱症状で不眠・不安が悪化します。

元の処方医(精神科・心療内科)とすぐに相談し、減量計画と他剤への切り替えを検討。当院でも漢方併用でサポート可能。

授乳中、SSRIを飲んでも母乳をあげていい?

ジェイゾロフト・レクサプロなどは授乳中も比較的安全とされ、第一選択。

パキシルは新生児離脱症状報告で新規開始は推奨されません。

「マタニティブルー」と「産後うつ」の違いは?

マタニティブルー:出産後2週間以内の一時的なもの。

産後うつ:2週間以上続く強い気分の落ち込み。専門医の評価と治療が必要。

「死にたい」と思ってしまいます

すぐに対面医療機関を受診してください。

各地の自治体「精神科救急情報センター」「いのちの電話」「よりそいホットライン」も利用可。

産後うつは治療すれば改善する病気。一人で抱え込まず、必ず助けを求めてください。

授乳しているとイライラが止まりません

授乳によるホルモン変動・睡眠不足でイライラが起きやすい時期。抑肝散・加味逍遙散などの漢方が効くことがあります。

家族・パートナー・保健センターのサポートも積極的に。

セントジョーンズワート(サプリ)は安全?

セントジョーンズワートは妊娠中・授乳中は推奨されません。他薬との相互作用も多く、SSRIと併用でセロトニン症候群リスク。

夫やパートナーにも何かしてもらえる?

はい、産後のサポートはパートナーが鍵。夜間授乳の交代・家事分担・話を聞く時間が、産後うつの予防になります。

オンライン診療で妊娠中・産後の不眠の相談はできる?

はい、漢方薬を中心に処方しています。Bz系・非Bz系睡眠薬・SSRI/SNRIの初診処方は行いません。中等症以上のうつや希死念慮は対面の精神科・心療内科へ。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

参考文献・出典

  • 国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
  • 日本うつ病学会「日本うつ病学会治療ガイドライン」
  • 厚生労働省「健やか親子21(第2次)」
  • Briggs GG, Freeman RK. Drugs in Pregnancy and Lactation. 11th ed.

困った時の相談先

  • 子育て世代包括支援センター(各市区町村)
  • 精神科救急情報センター
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間)
  • いのちの電話:0570-783-556
  • かかりつけ産科:分娩医療機関は産後も相談可

シリーズ一覧

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この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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