妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.5|感染症(膀胱炎・性器カンジダ・歯科)

妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.5|感染症(膀胱炎・性器カンジダ・歯科)

抗菌薬・抗真菌薬の妊娠中/授乳中での使い分けを表中心で整理

妊娠中に膀胱炎になってしまいました。抗生剤は赤ちゃんに影響しませんか?性器カンジダも繰り返していて…

妊娠中は免疫の変化と尿路の物理的変化で膀胱炎・腎盂腎炎・性器カンジダ・歯肉炎などの感染症が起きやすくなります。

感染を放置すると切迫早産のリスクが上がるため、適切に治療することが大事。

抗菌薬は「使える系統」と「絶対NG系統」が明確に分かれているので、表で整理します。

🌟 抗菌薬の系統別 安全性

系統代表薬妊娠中授乳中使う場面
ペニシリン系アモキシシリン(サワシリン・パセトシン)/オーグメンチン◯◯膀胱炎・上気道感染・歯科
セフェム系ケフレックス/メイアクト/フロモックス/セフカペン◯◯膀胱炎・上気道感染
マクロライド系クラリス/ジスロマック◯◯上気道・マイコプラズマ
テトラサイクリン系ビブラマイシン/ミノマイシン✕禁忌△胎児の歯・骨形成への影響
ニューキノロン系クラビット/シプロキサン/ジェニナック✕禁忌△軟骨形成への影響
ST合剤バクタ△初期・後期✕△葉酸阻害・新生児黄疸
アミノグリコシドゲンタマイシン△推奨せず△聴神経への影響
メトロニダゾールフラジール△初期は避ける△嫌気性菌・トリコモナス
クリンダマイシンダラシン◯△嫌気性菌

「妊娠中に使える」3つの基本系統

① ペニシリン系(アモキシシリン・サワシリン・オーグメンチン)

② セフェム系(ケフレックス・メイアクト・フロモックス・セフカペン)

③ マクロライド系(クラリス・ジスロマック)

この3系統を覚えておけば、ほとんどの妊娠中・授乳中の感染症はカバーできます。

「妊娠中に避けたい」抗菌薬と理由

テトラサイクリン系(ビブラマイシン・ミノマイシン):胎児の歯(黄染)・骨形成への影響。

ニューキノロン系(クラビット・シプロキサン・ジェニナック):動物実験で軟骨形成への影響。

ST合剤(バクタ):妊娠初期は葉酸阻害で神経管閉鎖障害リスク、後期は新生児の核黄疸リスク。中期は短期なら使えることも。

アミノグリコシド系(ゲンタマイシン):内耳神経への影響。

メトロニダゾール:妊娠初期は避けるのが原則(過去に催奇形性の議論あり、現代は中期以降で使用も)。

① 膀胱炎・腎盂腎炎

妊娠中の膀胱炎は放置すると腎盂腎炎→切迫早産のリスクが上がるため、早期治療が大事。

薬剤妊娠中授乳中備考
セフカペン(フロモックス)◯◯膀胱炎の第一選択
セフジトレン(メイアクト)◯◯—
アモキシシリン(サワシリン)◯◯—
クラビット(レボフロキサシン)✕△妊娠中NG
ホスミシン◯◯単回投与(フォスホマイシン)

膀胱炎の予防のコツ

水分摂取を増やす(1日2L目安)

排尿を我慢しない

セックス後の排尿

陰部の清潔(前から後ろに拭く)

クランベリージュース(軽い予防効果の報告)

「すぐ産科受診」の腎盂腎炎サイン

38℃以上の発熱

背中(脇腹)の痛み

強い吐き気・嘔吐

ふらつき・倦怠感

腎盂腎炎は切迫早産・敗血症の原因になるため、入院・点滴治療になることも。すぐ産科を受診してください。

② 性器カンジダ・細菌性膣炎

妊娠中はホルモン変化で性器カンジダが起こりやすくなります。

薬剤妊娠中授乳中備考
オキナゾール膣錠◯◯カンジダ膣錠の第一選択
クロトリマゾール膣錠◯◯—
エンペシド膣錠◯◯—
外陰部用クリーム(オキナゾール・ルリコン等)◯◯—
フルコナゾール(ジフルカン)内服△推奨せず△妊娠中は外用優先
イトリゾール内服✕△催奇形性
細菌性膣炎:メトロニダゾール(フラジール)△初期は避ける△中期以降は使用可
細菌性膣炎:クリンダマイシン◯△—

③ 歯科感染症(虫歯・歯周病)

妊娠中はホルモンの影響で歯肉炎・歯周病が悪化しやすく、放置すると早産・低出生体重児のリスクが上がるという報告も。歯科受診は積極的に。

薬剤妊娠中授乳中備考
アモキシシリン(サワシリン)◯◯歯科感染の第一選択
オーグメンチン◯◯広域
セフェム系(ケフレックス・メイアクト)◯◯—
クラリス・ジスロマック◯◯ペニシリンアレルギー時
カロナール(痛み止め)◯◯妊娠中の歯痛
歯科局所麻酔(リドカイン)◯◯安全
歯科レントゲン◯防護着◯腹部を防護すれば被曝量はごくわずか

④ 性感染症

病気妊娠中の治療授乳中
クラミジアアジスロマイシン(ジスロマック)/アモキシシリン同左
淋菌セフトリアキソン点滴(産科で)同左
梅毒ペニシリン点滴(産科で)同左
トリコモナスメトロニダゾール(中期以降)—
性器ヘルペスVol.4参照(バルトレックス)同左
尖圭コンジローマ液体窒素/産科で対応—

妊娠中の性感染症は母児感染のリスクがあるため、必ず産科で評価を。

⑤ 妊娠中・授乳中のワクチン

ワクチン妊娠中授乳中備考
インフルエンザ(不活化)◯◯むしろ推奨
新型コロナ(mRNA)◯◯むしろ推奨
百日咳・破傷風(Tdap)◯(妊娠中期〜後期)◯新生児百日咳予防
肺炎球菌◯◯—
麻疹・風疹(MR)(生)✕◯妊娠2か月前まで
水痘(生)✕◯—
BCG(生)✕——
ロタウイルス(生・乳児用)——産後の赤ちゃん用

⚠ 妊娠中・授乳中に「避けたい」感染症の薬

  • テトラサイクリン系(ビブラマイシン・ミノマイシン)
  • ニューキノロン系(クラビット・シプロキサン・ジェニナック)
  • ST合剤(バクタ)を妊娠初期・後期に
  • イトリゾール内服(性器カンジダ・水虫)
  • 生ワクチン(麻疹・風疹・水痘・BCG)を妊娠中に

「すぐ受診」が必要なサイン

  • 38℃以上の発熱+背中の痛み(腎盂腎炎)
  • 悪臭の強い帯下+発熱(細菌性膣炎・性器感染)
  • 強い陰部の痛み・水ぶくれ・潰瘍(ヘルペス活動性)
  • 歯の強い痛み・腫れ・膿
  • 性行為後の不正出血

受診予約方法

オンライン診療で妊娠中の抗生剤は出してもらえますか?

はい、セフカペン・アモキシシリン・ホスミシン・クラリス・ジスロマック・オキナゾール膣錠・抗真菌外用薬・バルトレックスなどを妊娠時期と授乳状況に合わせて処方しています。

テトラサイクリン系・ニューキノロン系は妊娠中処方しません。

腎盂腎炎が疑われる場合や妊娠後期の性器感染、性感染症は必ず産科を受診してください。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

よくある質問

妊娠中の膀胱炎、何の抗生剤を使う?

セフェム系(フロモックス・メイアクト)かペニシリン系(アモキシシリン・オーグメンチン)が第一選択。

クラビット(ニューキノロン系)は妊娠中NG。

症状が改善しても処方された日数はきちんと飲み切ってください。

授乳中に抗生剤を飲んでも母乳をあげていい?

ペニシリン系・セフェム系・マクロライド系はいずれも授乳中OK。母乳に少量移行しますが、乳児への影響はほぼなし。

念のため授乳直後に薬を飲むと母乳濃度ピークを避けられます。

妊娠中、性器カンジダの市販薬を使ってもいい?

市販のクロトリマゾール外陰部クリーム(メンソレータム フレディCC等)は使えますが、膣錠は医師の診察を受けてからがおすすめ。

症状が繰り返す場合は他の感染症(細菌性膣炎・トリコモナス)との鑑別も大事なので、産婦人科で確認を。

歯科治療は妊娠中にしてもいい?

はい、歯周病・虫歯の悪化は早産・低出生体重児のリスクを上げるため、むしろ妊娠中こそ歯科受診を。

抗生剤(ペニシリン系・セフェム系)、痛み止め(カロナール)、局所麻酔(リドカイン)、防護着でのレントゲンはすべてOK。

安定期(妊娠中期)の治療がおすすめ。

妊娠中・授乳中にインフルエンザワクチンは打っていい?

はい、不活化ワクチン(インフルエンザ・新型コロナ・肺炎球菌・百日咳)は妊娠中・授乳中ともに安全で、むしろ推奨されます。

生ワクチン(麻疹・風疹・水痘・BCG)は妊娠中NG。

クラビット(ニューキノロン系)を飲んでしまいました

1〜2回程度の服用で重大な影響が起こることは稀ですが、今後は使わないようにしてください。

心配な方はかかりつけ産科医にお伝えください。

妊娠中のクラミジアが見つかりました

ジスロマック(アジスロマイシン)またはアモキシシリンの内服で治療します。

母子感染(結膜炎・肺炎)のリスクがあるため必ず治療を完遂。パートナーも同時に治療が必要です。

帯下(おりもの)の変化が気になります

妊娠中は生理的に帯下が増えますが、悪臭・かゆみ・色の変化・血が混じる場合は感染症の可能性。

産婦人科で帯下検査を受けると原因(カンジダ・細菌性膣炎・トリコモナス・性感染症)が分かります。

百日咳ワクチンを妊娠中に打つメリットは?

妊娠後期に百日咳ワクチン(Tdap)を打つと、移行抗体で生まれてくる赤ちゃんを生後数か月の百日咳から守れるのがメリット。

日本では自費接種が中心。海外では妊娠後期推奨です。

オンライン診療で妊娠中の感染症の薬は出してもらえますか?

はい、セフカペン・アモキシシリン・ホスミシン・クラリス・ジスロマック・オキナゾール膣錠・抗真菌外用薬・バルトレックスなどを妊娠時期と授乳状況に合わせて処方しています。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

参考文献・出典

  • 国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン産科編2023」
  • 日本感染症学会・日本化学療法学会「JAID/JSC感染症治療ガイドライン2019―尿路感染症・男性性器感染症」
  • Briggs GG, Freeman RK. Drugs in Pregnancy and Lactation. 11th ed.
  • PMDA 医薬品添付文書 各抗菌薬

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この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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