妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.4|皮膚トラブル(湿疹・かゆみ・ニキビ・ヘルペス)
妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.4|皮膚トラブル(湿疹・かゆみ・ニキビ・ヘルペス)
保湿剤・ステロイド外用・抗菌薬外用・抗ウイルス薬を妊娠時期別で整理

妊娠してから肌のかゆみがひどくて、ニキビも増えました。ステロイドや皮膚科の薬は赤ちゃんに影響しませんか?

妊娠中はホルモン変化や肌バリアの変化で湿疹・かゆみ・ニキビ・ヘルペスなどの皮膚トラブルが起きやすいです。
皮膚科の塗り薬は多くが妊娠中・授乳中も使えるものですが、「ニキビ薬の一部」には注意点があります(アダパレン=ディフェリンとアダパレン配合のエピデュオは妊婦禁忌)。またヘパリン類似物質(ヒルドイド)は妊娠中・授乳中も使えますが、疾患の治療目的でない場合は保険給付の対象外です。表中心で整理します。
目次
🌟 皮膚症状別 安全な薬の早見表
| 症状 | 妊娠中の第一選択 | 授乳中の第一選択 | 避ける/注意 |
|---|---|---|---|
| 乾燥・かゆみ | ヒルドイド/プロペト | 同左 | — |
| 湿疹(軽症) | ステロイド外用Ⅳ medium短期+保湿 | 同左 | 長期連用 |
| じんましん | 抗ヒスタミン薬の内服(下欄参照) | 同左 | ステロイド外用は使わない(蕁麻疹診療ガイドラインは「使用しないことを推奨」) |
| 湿疹(中等症) | ステロイド外用Ⅲ strong短期+保湿 | 同左 | — |
| かゆみ(飲み薬) | クラリチン | クラリチン | 第1世代抗ヒスタミン |
| ニキビ(軽症) | ベピオゲル/外用抗菌薬 | ベピオゲル/外用抗菌薬 | ディフェリン・エピデュオ✕ |
| ニキビ(重症) | 産科・皮膚科で要相談 | 要相談 | イソトレチノイン絶対✕ |
| 口唇・性器ヘルペス | バルトレックス/ファムビル | 同左 | — |
| カンジダ皮膚炎 | ラミシール・ルリコンクリーム | 同左 | — |
① 保湿剤
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ヒルドイド(ヘパリン類似物質) | ◯ | ◯ | 局所作用、安全 |
| プロペト・白色ワセリン | ◯ | ◯ | 無刺激、最も安全 |
| 尿素クリーム(パスタロン・ウレパール) | ◯(湿疹部位は避ける) | ◯ | 角質溶解作用 |
| セラミド配合の市販保湿剤 | ◯ | ◯ | — |
| アズノール軟膏 | ◯ | ◯ | 穏やかな抗炎症 |
剤形の使い分けは「ヒルドイドの剤形と基材を比較」もご参照ください。
② ステロイド外用薬:湿疹・かゆみに
外用ステロイドは局所作用で全身吸収はごくわずか。「弱〜中等度を必要な範囲・短期間」なら妊娠中・授乳中も安全に使えます。
| ランク | 代表薬 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Ⅳ medium | ロコイド/キンダベート/アルメタ | ◯ | ◯ | 顔・首・小児にも |
| Ⅲ strong | リンデロンV/フルコート | ◯部位・短期 | ◯ | 体・四肢の中等症 |
| Ⅱ very strong | フルメタ/アンテベート/マイザー | ◯短期 | ◯ | 体・四肢の重症 |
| Ⅰ strongest | デルモベート/ジフラール | △手のひら・足の裏のみ | △ | 広範囲・長期は避ける |
| Ⅴ weak | プレドニゾロン軟膏0.5%/クリーム0.5% | ◯ | ◯ | 超軽症・乳児 |
授乳中に乳房・乳輪に塗る時の注意
乳児が口にしないよう、授乳直前に拭き取るか、授乳後すぐに塗ります。
Ⅱ very strong以上を乳房に長期は避けて、Ⅳ medium以下+プロペトなどで対応するのがおすすめ。
詳細は「ステロイド外用薬の強さを徹底比較」もご参照ください。
③ 抗ヒスタミン薬(飲み薬):かゆみのコントロール
詳細はVol.2 アレルギー・花粉症もご参照。
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| クラリチン | ◯ | ◯ | 第一選択 |
| ジルテック/ザイザル | ◯ | ◯ | クラリチンが効かない時 |
| アレグラ | ◯ | ◯ | — |
| 第1世代(ポララミン・レスタミン) | △推奨せず | △推奨せず | 眠気・乳児への影響 |
④ ニキビ治療薬:要注意ポイントあり
妊娠中の「ホルモンニキビ」はよくありますが、ディフェリン・エピデュオ・イソトレチノインなどレチノイド系は絶対に使えません。
| 薬剤 | 成分 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| ベピオゲル/ローション | 過酸化ベンゾイル | ◯(小範囲) | ◯ | 妊娠中でも比較的安全 |
| ダラシンTゲル | クリンダマイシン | ◯ | ◯ | 外用抗菌薬 |
| アクアチム | ナジフロキサシン | ◯ | ◯ | 外用抗菌薬 |
| ゼビアックス | オゼノキサシン | ◯ | ◯ | 外用抗菌薬 |
| ディフェリンゲル | アダパレン | ✕禁忌 | △ | レチノイド |
| デュアック配合ゲル | BPO+クリンダマイシン | ◯ | ◯ | — |
| エピデュオゲル | BPO+アダパレン | ✕禁忌 | △ | アダパレンを含む |
| ビブラマイシン・ミノマイシン(内服) | テトラサイクリン系 | ✕禁忌 | △ | 胎児歯・骨形成への影響 |
| ルリッド(内服) | ロキシスロマイシン | ◯ | ◯ | マクロライド系 |
| イソトレチノイン(内服) | — | ✕絶対禁忌 | ✕ | 胎児奇形(強力催奇形性) |
「アダパレン・イソトレチノイン」が絶対NGの理由
アダパレン(ディフェリン)・トレチノイン・イソトレチノインはレチノイド(ビタミンA誘導体)で、強い催奇形性があります。
イソトレチノインは絶対禁忌。妊娠を計画する場合は中止後一定期間の避妊が必要です。
ニキビ治療は過酸化ベンゾイル+外用抗菌薬+ルリッド内服を中心に組み立てます。
詳細は「ニキビの薬を徹底比較」もご参照ください。
⑤ 単純ヘルペス・帯状疱疹
| 薬剤 | 成分 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| バルトレックス | バラシクロビル | ◯ | ◯ | 口唇・性器ヘルペス、帯状疱疹 |
| ゾビラックス | アシクロビル | ◯ | ◯ | 長い実績 |
| ファムビル | ファムシクロビル | ◯ | ◯ | — |
| アメナリーフ | アメナメビル | △データ少 | △ | 帯状疱疹、データ蓄積中 |
| アラセナA軟膏 | ビダラビン | ◯ | ◯ | 単純ヘルペス外用 |
妊娠中の性器ヘルペス:分娩前の重要事項
分娩時に活動性のヘルペス病変があると、新生児ヘルペス感染のリスクがあり、帝王切開を検討することがあります。
必ず産科医にご相談ください(性器ヘルペスの既往は分娩計画に大事な情報)。
⑥ カンジダ・水虫
| 薬剤 | 成分 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| ラミシール外用 | テルビナフィン | ◯ | ◯ | 水虫・カンジダ |
| ルリコン | ルリコナゾール | ◯ | ◯ | — |
| ニゾラール | ケトコナゾール | ◯ | ◯ | カンジダ・脂漏性 |
| クロトリマゾール | — | ◯ | ◯ | 市販でも入手可 |
| ラミシール内服 | テルビナフィン | △推奨せず | △ | 妊娠中は外用優先 |
| イトリゾール内服 | イトラコナゾール | ✕ | △ | 催奇形性 |
| 性器カンジダ | — | — | — | Vol.5で詳細 |
⑦ 漢方薬
| 漢方 | 妊娠中 | 授乳中 | 向く方 |
|---|---|---|---|
| 当帰飲子(とうきいんし) | ◯ | ◯ | 乾燥肌・冷え性のかゆみ |
| 消風散(しょうふうさん) | ◯ | ◯ | じゅくじゅくする湿疹・じんましん |
| 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) | ◯ | ◯ | 化膿しやすい湿疹 |
| 桂枝茯苓丸加薏苡仁 | ✕(妊娠全期間について「投与しないことが望ましい」) | ◯ | 月経前悪化のニキビ・シミ |
| 清上防風湯 | ◯ | ◯ | 赤ニキビ・赤ら顔 |
| 越婢加朮湯(麻黄含む) | △推奨せず | ◯ | — |
⚠ 妊娠中・授乳中に「避けたい」皮膚科の薬
- イソトレチノイン(内服):絶対禁忌(強い催奇形性)
- ディフェリンゲル/エピデュオゲル:アダパレン含有
- ビブラマイシン・ミノマイシン内服:胎児歯・骨への影響
- イトリゾール内服:催奇形性
- モーラステープ:光線過敏症(妊娠中はおすすめしない)
- 市販ステロイド配合の総合皮膚薬:成分多すぎ
「すぐ受診」が必要なサイン
- 急に広範囲のじんましん・呼吸困難(アナフィラキシー)
- 強い水ぶくれ・出血・痛みを伴う発疹
- 発熱を伴う発疹
- 性器・口唇のヘルペス様病変が分娩近くに出た(産科へ)
- 顔・首・関節にステロイドを長期使用後の悪化
受診予約方法

オンライン診療で妊娠中の皮膚科の薬は出してもらえますか?

はい、ヒルドイド・ステロイド外用・抗ヒスタミン薬・ベピオ・外用抗菌薬・ルリッド・バルトレックス・抗真菌薬・各種漢方を妊娠時期と授乳状況に合わせて処方しています。
ディフェリン・エピデュオ・イソトレチノイン・ビブラマイシン・ミノマイシン・モーラステープは妊娠中はおすすめしません。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。
よくある質問
-
妊娠中にステロイドを塗っても赤ちゃんに影響しない?
-
塗り薬の外用ステロイドは局所作用で全身吸収はごくわずか。「弱〜中等度を必要な範囲・短期間」なら妊娠中・授乳中も安全です。
体の広範囲に長期で「最強ランク」を使うのは避けます。
-
妊娠中のニキビ、何を使えばいい?
-
ベピオゲル(過酸化ベンゾイル)+外用抗菌薬(ダラシンT・アクアチム・ゼビアックス)が中心。
ディフェリン・エピデュオは禁忌(アダパレン含有)。
内服が必要ならルリッド(ロキシスロマイシン)。テトラサイクリン系(ビブラマイシン・ミノマイシン)はNG。
-
ヘパリン類似物質(ヒルドイド)は妊娠中・授乳中ずっと使える?
-
はい、局所作用で全身への影響はほぼなく、妊娠中・授乳中の保湿の第一選択。
剤形は「ヒルドイドの剤形と基材を比較」もご参照ください。
-
授乳中、乳房・乳輪にステロイドを塗ったあとに授乳していい?
-
乳児が口にしないよう、授乳直前に拭き取るか、授乳後すぐに塗ります。
できればⅣ medium以下のステロイドかプロペトで対応するのがおすすめ。
-
妊娠中に水虫ができました
-
ラミシール・ルリコン・ニゾラールなどの外用抗真菌薬は妊娠中・授乳中ともOK。
内服抗真菌薬(特にイトリゾール)は催奇形性があるため、妊娠中は基本外用で対応します。
-
口唇ヘルペスができました。バルトレックスは飲んでいい?
-
はい、バルトレックス(バラシクロビル)・ゾビラックス(アシクロビル)は妊娠中・授乳中ともに安全に使えます。早期内服が効きを高めるコツ。
-
性器ヘルペスの再発があります。妊娠中はどうすればいい?
-
分娩時に活動性の病変があると新生児への感染リスクがあるため、性器ヘルペスの既往は分娩計画に関わる大事な情報です。分娩に向けた管理は産科で行います。
必ず産科医と相談してください。
-
かゆみがつらい。クラリチンを飲んでもいい?
-
はい、クラリチンは妊娠中・授乳中の第一選択の抗ヒスタミン薬。
同時にステロイド外用・保湿剤と組み合わせるとさらに効果的。
-
湿布は妊娠中に使える?
-
NSAIDs外用薬(ロキソニンテープ・ボルタレンゲル)は中期までは小範囲・短期なら可、後期はNG。
モーラステープは光線過敏症のリスクもあり、妊娠中は基本避けます。
詳細はVol.1参照。
-
オンライン診療で妊娠中の皮膚科の薬は出してもらえますか?
-
はい、ヒルドイド・ステロイド外用・抗ヒスタミン薬・ベピオ・外用抗菌薬・ルリッド・バルトレックス・抗真菌薬・各種漢方を妊娠時期と授乳状況に合わせて処方しています。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。
参考文献・出典
- 国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
- 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- Briggs GG, Freeman RK. Drugs in Pregnancy and Lactation. 11th ed.
- PMDA 医薬品添付文書 各皮膚科薬剤
シリーズ一覧
- Vol.1 風邪・咳・発熱・頭痛・関節痛
- Vol.2 アレルギー・花粉症・鼻炎・じんましん
- Vol.3 胃腸症状(つわり・胃もたれ・便秘・下痢)
- Vol.4(本記事) 皮膚トラブル(湿疹・かゆみ・ニキビ・ヘルペス)
- Vol.5 感染症(膀胱炎・性器カンジダ・歯科)
- Vol.6 不眠・不安・気分の落ち込み
▼ シリーズの他の回(妊婦・授乳婦が使える薬・全6回)
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この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
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【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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