妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.3|胃腸症状(つわり・胃もたれ・便秘・下痢)
妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.3|胃腸症状(つわり・胃もたれ・便秘・下痢)
吐き気止め・胃薬・便秘薬・整腸剤を妊娠時期別で整理

妊娠初期からつわりがひどくて、便秘もしてしまいます。薬で楽になりたいですが、赤ちゃんへの影響が心配です…

目次
🌟 胃腸症状別 安全な薬の早見表
| 症状 | 妊娠中の第一選択 | 授乳中の第一選択 | 避ける/注意 |
|---|---|---|---|
| つわり・吐き気 | ビタミンB6/半夏厚朴湯/小半夏加茯苓湯/プリンペラン | プリンペラン/漢方 | — |
| 胃もたれ・げっぷ | 六君子湯/ガスター/PPI | ガスター/PPI | — |
| 胸やけ・逆流 | PPI(ネキシウム・パリエット)/タケキャブ | 同左 | — |
| 便秘 | 酸化マグネシウム/モビコール/ラグノス | 同左 | 大黄を含む漢方 |
| 下痢 | ビオフェルミン/ミヤBM/半夏瀉心湯 | 同左 | ロペミン(基本避ける) |
| 胃けいれん・腹痛 | ブスコパン(産科指示)/芍薬甘草湯(頓服) | 同左 | — |
① つわり・吐き気
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ビタミンB6(ピリドキシン) | ◯ | ◯ | つわりの第一選択。1日40〜80mg |
| 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) | ◯ | ◯ | 喉のつかえ・吐き気・不安 |
| 小半夏加茯苓湯 | ◯ | ◯ | つわり専用と言える漢方 |
| プリンペラン(メトクロプラミド) | ◯ | ◯ | 短期で。長期は遅発性ジスキネジア |
| ナウゼリン(ドンペリドン) | △ | ◯ | 妊娠中は推奨されないがプリンペランの代替 |
| ガスモチン(モサプリド) | △ | △ | 妊娠中のデータ限定的 |
| 市販の酔い止め(トラベルミン) | △ | △ | 第1世代抗ヒスタミン。短期なら可 |
つわりの自己ケア:薬の前にできること
少量頻回に食べる(一気に食べない)
朝起きる前に何か口に入れる(クッキー・パン少量)
冷たいもの・酸味のあるもの(果物・ゼリー・氷)
水分は少しずつこまめに(経口補水液・スポーツドリンク)
ビタミンB6(生姜・バナナ・サーモン・ナッツ・鶏むね肉)
ニオイの強い物を避ける
「妊娠悪阻」のサインと受診タイミング
体重減少(妊娠前比5%以上)
1日中嘔吐し、水分も摂れない
尿量減少・濃い尿
脱水・ふらつき
ケトン尿(妊婦健診で指摘)
これらは「妊娠悪阻」の可能性があり、入院・点滴治療が必要。すぐに産科を受診してください。
② 胃もたれ・胸やけ・逆流
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ガスター(H2ブロッカー) | ◯ | ◯ | 長年の実績、安全 |
| PPI(ネキシウム・パリエット・タケプロン) | ◯ | ◯ | 胸やけ・逆流に効果しっかり |
| タケキャブ(P-CAB) | △データ少 | △データ少 | 新しい薬。データ蓄積中 |
| 六君子湯(りっくんしとう) | ◯ | ◯ | 機能性胃もたれ・食欲不振 |
| 半夏厚朴湯 | ◯ | ◯ | 喉のつかえ・吐き気 |
| 酸化マグネシウム | ◯ | ◯ | 胃酸中和+便秘にも |
| ガスモチン/ナウゼリン | △ | ◯ | データ限定的 |
③ 便秘
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 酸化マグネシウム(マグミット) | ◯ | ◯ | 妊娠中の第一選択 |
| モビコール(PEG) | ◯ | ◯ | 吸収されず安全 |
| ラグノスNF経口ゼリー(ラクツロース) | ◯ | ◯ | 吸収されず安全 |
| センノシド/プルゼニド/センナ茶 | △後期✕ | △ | 子宮収縮の可能性、後期は避ける |
| ラキソベロン(ピコスルファート) | △短期 | △ | 頓服で |
| アミティーザ(ルビプロストン) | ✕禁忌 | △ | 妊婦禁忌 |
| リンゼス(リナクロチド) | △ | △ | データ限定 |
| グーフィス(エロビキシバット) | △ | △ | データ限定 |
| 大黄を含む漢方 | △推奨せず | △ | 子宮収縮・乳児下痢の報告 |
| グリセリン浣腸 | ◯ | ◯ | 頓用 |
| 新レシカルボン坐剤 | ◯ | ◯ | 穏やか |
妊娠中の便秘対策:薬の前に
水分摂取:1日1.5L以上
食物繊維:野菜・果物・全粒穀物・海藻
適度な運動:散歩・マタニティヨガ
朝のルーティン:朝食+トイレタイム
鉄剤・カルシウム剤で便秘悪化:服用中の方は産科と相談
④ 下痢
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ビオフェルミン/ミヤBM/ラックビー | ◯ | ◯ | 整腸剤。第一選択 |
| 半夏瀉心湯 | ◯ | ◯ | 胃腸炎・下痢に |
| 五苓散 | ◯ | ◯ | 水分代謝。下痢・脱水傾向 |
| ロペミン(ロペラミド) | △推奨せず | △ | 子宮収縮・乳児への移行リスク |
| タンナルビン | ◯ | ◯ | 収斂剤 |
| 市販の下痢止め(ストッパなど) | △推奨せず | △ | 原因の感染症を覆い隠す |
妊娠中の下痢は脱水が一番のリスク。経口補水液(OS-1など)で水分・電解質補給を最優先に。発熱・腹痛が強いときは産科受診を。
⑤ 胃けいれん・腹痛
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ブスコパン(ブチルスコポラミン) | ◯(産科指示) | ◯ | 胃けいれん・腹痛 |
| 芍薬甘草湯 | ◯(短期) | ◯ | こむら返り・けいれん性腹痛、頓服 |
| 桂枝加芍薬湯 | ◯ | ◯ | 機能性腹痛・IBS |
急な強い腹痛は要注意:切迫流早産・胎盤剥離・腹腔内疾患の可能性があるため、まず産科を受診してください。
⑥ 妊娠中の痔
便秘+子宮の圧迫で痔は妊娠中で非常に多い悩みです。
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ボラギノール/プリザS(市販坐剤) | ◯ | ◯ | 短期使用 |
| ポステリザン軟膏 | ◯ | ◯ | 医療用、痔の塗り薬 |
| 強力ポステリザン | ◯ | ◯ | ステロイド配合、ピンポイント短期 |
| 乙字湯(おつじとう) | ✕ | ◯ | 痔・痔出血。ただしダイオウを含み、添付文書上「妊婦には投与しないことが望ましい」(子宮収縮・骨盤内充血により流早産の危険) |
| 桂枝茯苓丸 | ✕ | ◯ | 瘀血タイプの痔。妊娠全期間について「投与しないことが望ましい」(トウニン・ボタンピによる流早産の危険) |
⚠ 妊娠中・授乳中に「避けたい」薬
- アミティーザ:妊婦禁忌
- 大黄を含む漢方(大黄甘草湯・桃核承気湯・潤腸湯・防風通聖散・大承気湯・麻子仁丸など)
- センノシド・センナ茶の長期や後期使用
- ロペミンを漫然と
- 市販の総合胃腸薬・整腸剤の複合品(成分が多すぎる)
「すぐ受診」が必要なサイン
- 水分も摂れず体重が減ってきた(妊娠悪阻)
- 強い腹痛・お腹の張り・出血(切迫流早産・胎盤剥離)
- 発熱を伴う下痢(感染性腸炎)
- 血便・タール便
- 強い嘔吐+頭痛+視覚異常(妊娠高血圧症候群)
受診予約方法

オンライン診療で妊娠中の胃腸薬は出してもらえますか?

はい、ビタミンB6・プリンペラン・H2ブロッカー・PPI・酸化マグネシウム・モビコール・ラグノス・ビオフェルミン・各種漢方(半夏厚朴湯・小半夏加茯苓湯・六君子湯・五苓散など)を妊娠時期と授乳状況に合わせて処方しています。ダイオウを含む乙字湯など、妊娠中は避けるべき漢方は妊娠中には処方しません。
妊娠悪阻が疑われる場合や激しい腹痛・出血があるときは、まずかかりつけ産科を受診してください。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。
よくある質問
-
つわりに一番効く薬は?
-
個人差が大きいですが、ビタミンB6(1日40〜80mg)から始めるのがガイドライン推奨。
効きが足りなければ半夏厚朴湯・小半夏加茯苓湯の漢方やプリンペランを併用。
まずは少量頻回の食事・水分・ニオイ回避などの自己ケアと組み合わせて。
-
プリンペランは赤ちゃんに影響しない?
-
プリンペランは妊娠中・授乳中ともに長く使われ、安全性データも豊富な吐き気止め。
長期連用で「遅発性ジスキネジア」のリスクがあるため、必要な時だけ短期使用が原則。
-
酸化マグネシウムは妊娠中ずっと飲んでも大丈夫?
-
はい、妊娠中の便秘の第一選択として安全に使えます。
腎機能に問題がなければ長期使用も問題ありません。心配な方は定期的な血液検査でMg値を確認。
-
モビコールはどんな便秘にも使える?
-
水分と一緒に飲むのがコツ。1包をコップ1/3〜1/2の水に溶かして。
吸収されずに腸内に水を運ぶ仕組みで、妊娠中・授乳中・小児(2歳〜)にも安全。
-
授乳中に下痢止めを飲んでも母乳をあげていい?
-
ビオフェルミン・ミヤBMなどの整腸剤は問題ありません。
ロペミンは推奨されません(乳児への移行と腸への影響)。
感染性腸炎が疑われる場合は受診を。
-
便秘に大黄を含む漢方を飲んでもいい?
-
子宮収縮の可能性があり、妊娠中は基本避けます。
大黄甘草湯・桃核承気湯・潤腸湯・防風通聖散・大承気湯・麻子仁丸などが該当。
酸化マグネシウム・モビコールが第一選択です。
-
胃もたれにタケキャブ(P-CAB)はOK?
-
タケキャブは比較的新しい薬で妊娠中の安全性データが少ないため、推奨されません。
長く使われているH2ブロッカー(ガスター)やPPI(ネキシウム・パリエット・タケプロン)を選ぶほうが安全。
-
妊娠中の痔がつらいです
-
ボラギノール・プリザ・ポステリザン軟膏/坐剤が使えます。短期間ならステロイド配合の強力ポステリザンも。
便秘改善・温め・座りっぱなしを避ける・ウォシュレット利用なども。
-
授乳中、つわり対策で何を飲める?
-
授乳中もプリンペラン・ナウゼリン・半夏厚朴湯・小半夏加茯苓湯が使えます。
母乳への移行はわずかで、乳児への影響もほとんどありません。
-
オンライン診療で妊娠中の胃腸薬は出してもらえますか?
-
はい、ビタミンB6・プリンペラン・H2ブロッカー・PPI・酸化マグネシウム・モビコール・ビオフェルミン・各種漢方を妊娠時期と授乳状況に合わせて処方しています。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。
参考文献・出典
- 国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン産科編2023」
- ACOG Practice Bulletin "Nausea and Vomiting of Pregnancy"
- Briggs GG, Freeman RK. Drugs in Pregnancy and Lactation. 11th ed.
- PMDA 医薬品添付文書 各薬剤
シリーズ一覧
- Vol.1 風邪・咳・発熱・頭痛・関節痛
- Vol.2 アレルギー・花粉症・鼻炎・じんましん
- Vol.3(本記事) 胃腸症状(つわり・胃もたれ・便秘・下痢)
- Vol.4 皮膚トラブル(湿疹・かゆみ・ニキビ・ヘルペス)
- Vol.5 感染症(膀胱炎・性器カンジダ・歯科)
- Vol.6 不眠・不安・気分の落ち込み
▼ シリーズの他の回(妊婦・授乳婦が使える薬・全6回)
- ▸ Vol.1 風邪・咳・発熱・頭痛
- ▸ Vol.2 アレルギー・花粉症
- Vol.3 胃腸症状(つわり等)(この記事)
- ▸ Vol.4 皮膚トラブル
- ▸ Vol.5 感染症(膀胱炎等)
- ▸ Vol.6 不眠・不安・気分
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この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
-
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
詳しいプロフィールはこちら
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