妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.1|風邪・咳・発熱・頭痛・関節痛
妊婦・授乳婦が使える薬 Vol.1|風邪・咳・発熱・頭痛・関節痛
症状別の安全な薬リストと「絶対NG」を医師がやさしく解説(妊娠時期別+授乳期対応)

妊娠中なんですが、風邪をひいて熱も出ました。市販薬を飲んでもいいんでしょうか?赤ちゃんへの影響が心配で…

妊娠中は「とにかく薬を飲むのが怖い」と感じる方が多いですが、我慢して症状を悪化させるほうが赤ちゃんに悪影響になることもあります。
この記事では、妊娠時期別+授乳期に分けて、風邪・咳・発熱・頭痛・関節痛で使える薬/避ける薬を表中心で整理します。
※迷ったときは、必ずかかりつけ産科医(小児科医)と相談してください。当院でも個別にご相談いただけます。
目次
まず基本:妊娠時期別の薬の影響
| 時期 | 週数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 超初期 | 〜4週 | 「All or None(全か無かの法則)」:影響があれば流産、なければ全く影響なし |
| 器官形成期 | 4〜15週 | もっとも注意が必要。催奇形性のある薬を避ける |
| 中期 | 16〜27週 | 多くの薬が比較的安全に使える |
| 後期 | 28週〜出産 | NSAIDsは禁忌(胎児の動脈管早期閉鎖) |
| 授乳期 | — | 母乳への移行を考慮。「飲んですぐ授乳」を避けるなど工夫 |
「オーストラリア基準(TGA)」の見方
日本では公的な妊娠中薬剤の分類がないため、世界で最も参照されるオーストラリア基準で説明します。
A:多くの妊婦で検証され、害なし
B1/B2/B3:動物実験データあり(B3はやや注意)
C:薬理作用上、胎児・新生児に影響が出る可能性
D:明らかな害が報告されているが、必要な場合は使うこともある
X:妊娠中絶対禁忌
※カテゴリは目安。最終判断は必ず医師と相談を。
🌟 風邪症状別 安全な薬の早見表
| 症状 | 妊娠中の第一選択 | 授乳中の第一選択 | 避ける/注意 |
|---|---|---|---|
| 発熱・痛み | カロナール(アセトアミノフェン) | カロナール | NSAIDs後期禁忌 |
| のどの痛み・腫れ | トラネキサム酸/カロナール/うがい薬 | 同左 | 市販トローチの一部 |
| 鼻水・くしゃみ | クラリチン/鼻噴霧ステロイド | クラリチン | 第1世代抗ヒスタミン薬 |
| 痰がからむ咳 | カルボシステイン/ムコダイン/葛根湯 | 同左 | — |
| 空咳 | アスベリン/メジコン/麦門冬湯 | 同左 | コデイン |
| 頭痛 | カロナール/呉茱萸湯/五苓散 | 同左 | NSAIDs後期、トリプタンは要相談 |
| 関節痛・腰痛 | カロナール/湿布(要相談) | カロナール/湿布 | NSAIDs後期、モーラステープ |
① 発熱・痛みの薬
| 薬剤 | 妊娠初期 | 妊娠中期 | 妊娠後期 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| カロナール(アセトアミノフェン) | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 第一選択。胎児・乳児への影響少ない |
| ロキソニン/ボルタレン/イブプロフェン | △短期 | △短期 | ✕禁忌 | △少量短期 | 後期は動脈管早期閉鎖のため禁忌 |
| セレコックス/モービック | △ | △ | ✕禁忌 | △ | 同上 |
| アスピリン | △ | △ | ✕禁忌 | △ | 低用量アスピリンは産科指示で使うことあり |
| ポンタール(メフェナム酸) | △ | △ | ✕ | △ | |
| 市販総合感冒薬(PL顆粒など) | ✕推奨せず | ✕ | ✕ | ✕ | 第1世代抗ヒスタミン・カフェイン・複数成分配合 |
カロナール(アセトアミノフェン)の使い方
用量:1回300〜500mg、最大1日4,000mgまで。
使えるシーン:発熱・頭痛・歯痛・関節痛・生理痛など。
注意:規定量を守れば安全。総合感冒薬と併用すると知らずに重複服用することがあるので注意。
授乳中:母乳移行量はごくわずか、安全に使えます。
NSAIDs(ロキソニン・ボルタレン等)が「妊娠後期禁忌」の理由
妊娠28週以降にNSAIDsを服用すると、胎児の動脈管(出生後に閉じる血管)が早期に閉じてしまうことがあり、新生児の心不全・肺高血圧症の原因になります。
また、羊水量の減少・分娩遷延・出血の原因にもなるため、後期は禁忌。
中期までは「短期間・必要最小限」で使うことはありますが、できればカロナールを優先。
② のどの痛み・腫れ
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| カロナール | ◯ | ◯ | 痛み止めの第一選択 |
| トラネキサム酸(トランサミン) | ◯ | ◯ | 炎症・出血を抑える |
| ペラックT(市販トラネキサム酸) | ◯ | ◯ | 市販で入手可 |
| 桔梗湯 | ◯ | ◯ | 喉の痛みに効く漢方 |
| うがい薬(イソジン) | △短期 | △ | 長期はヨウ素過剰で胎児甲状腺機能に影響 |
| アズノールうがい液 | ◯ | ◯ | ヨウ素なし、安心 |
| ペレックスやPL顆粒(市販) | ✕ | ✕ | 複数成分、第1世代抗ヒスタミン入り |
③ 鼻水・くしゃみ
詳しくはVol.2「アレルギー・花粉症」で詳細予定。風邪の鼻水には次の選択肢があります。
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| クラリチン(ロラタジン) | ◯ | ◯ | 第2世代抗ヒスタミンの第一選択 |
| ジルテック/ザイザル | ◯ | ◯ | クラリチンが効かない時の選択肢 |
| 鼻噴霧ステロイド(アラミスト等) | ◯ | ◯ | 局所作用で全身影響少 |
| 葛根湯 | ◯(妊婦には少量) | ◯ | 風邪のひき始め |
| 小青竜湯 | △(麻黄含む) | ◯ | 水様性鼻汁に。妊婦は要相談 |
| ポララミン・レスタミン(第1世代) | △推奨せず | △ | 眠気強く授乳中は乳児の眠気も |
④ 咳止め
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| アスベリン(チペピジン) | ◯ | ◯ | 穏やかで広く使える |
| メジコン(デキストロメトルファン) | ◯ | ◯ | 中枢性、効きしっかり |
| カルボシステイン(ムコダイン) | ◯ | ◯ | 痰を切る薬 |
| 麦門冬湯 | ◯ | ◯ | 空咳・痰がからむ咳 |
| 葛根湯 | ◯(少量) | ◯ | 風邪のひき始め |
| 五虎湯(ごことう) | △(麻黄含む) | ◯ | ひどい咳。妊婦は要相談 |
| 麻黄湯 | △(麻黄含む) | △ | 妊婦は基本避ける |
| コデインリン酸塩 | △後期は避ける | ✕ | 授乳中NG(乳児の呼吸抑制報告) |
| 市販総合咳止め | ✕ | ✕ | 複数成分・第1世代抗ヒスタミン入り |
麻黄(まおう)を含む漢方の注意
麻黄はエフェドリンを含み、血圧上昇・心拍数増加・子宮収縮の作用があります。
麻黄湯・葛根湯・小青竜湯・五虎湯・麻黄附子細辛湯・越婢加朮湯などが該当。
葛根湯はひき始めに少量短期なら妊婦でも使われますが、長期や高用量は避けるのが安全。
心疾患・高血圧・甲状腺機能亢進症の方は要相談。
⑤ 頭痛
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| カロナール | ◯ | ◯ | 第一選択 |
| NSAIDs | △初期〜中期短期、後期✕ | △少量短期 | 後期は禁忌 |
| 呉茱萸湯 | ◯ | ◯ | 冷えと吐き気を伴う頭痛・偏頭痛 |
| 五苓散 | ◯ | ◯ | 低気圧・天候性頭痛 |
| イミグラン(スマトリプタン) | △産科指示で | △ | 片頭痛で他で効かない時、産科と相談 |
| その他トリプタン | データ少 | データ少 | 基本イミグランを優先 |
| 市販総合鎮痛薬(複合) | ✕ | ✕ | 複数成分 |
⑥ 関節痛・腰痛
| 薬剤 | 妊娠中 | 授乳中 | 備考 |
|---|---|---|---|
| カロナール | ◯ | ◯ | 第一選択 |
| 湿布(ロキソニンテープなど) | △中期まで・後期✕ | ◯小範囲短期 | 後期はNSAIDs皮膚吸収も避ける |
| モーラステープ | ✕推奨せず | △ | 光線過敏症のリスク。妊娠後期はNG |
| ボルタレンゲル | △中期まで、後期✕ | △小範囲 | — |
| サロンパス(市販) | ◯(サリチル酸量少) | ◯ | 広範囲・長期は避ける |
| 桂枝加朮附湯 | ◯(甘草・附子含む) | ◯ | 冷え・関節痛 |
| 疎経活血湯 | △(麻黄なし) | ◯ | 腰痛・神経痛・しびれ |
| 芍薬甘草湯(こむら返り) | ◯短期 | ◯ | 頓服で。長期は甘草に注意 |
湿布・ゲルの妊娠中の使い方
NSAIDs外用薬も皮膚から吸収されるため、妊娠後期は内服と同様に避けるべきです。
モーラステープ(ケトプロフェン)は光線過敏症のリスクもあり、妊娠中はおすすめしません。
ロキソニンテープ・ボルタレンゲルは中期までなら小範囲・短期間なら使用可。
腰痛などには、サポーター・温め・産科指導のストレッチを優先しましょう。
⚠ 風邪症状で「絶対避けたい」市販薬
- PL顆粒:第1世代抗ヒスタミン+カフェイン+NSAIDs配合
- ベンザブロック系:複数成分配合
- パブロンS/ルル A錠:第1世代抗ヒスタミン入り
- 新ルルA:複合成分
- 「咳止め」「鼻炎薬」市販は第1世代抗ヒスタミン薬入りが多い
- OTCの解熱鎮痛薬で「アスピリン・イブプロフェン・ロキソプロフェン」を含むものは妊娠後期禁忌
代わりにカロナール(タイレノールA)か、医療機関での処方を選ぶのが安全です。
「すぐ受診」が必要なサイン
- 38.5℃以上が3日以上続く
- 咳が2週間以上続く・血痰
- 強い頭痛、視力障害、片麻痺、けいれん(脳血管・妊娠高血圧)
- 胎動が減った・お腹の張りが強い・出血
- 息切れ・胸の痛み(肺血栓塞栓症など)
受診予約方法

オンライン診療で妊娠中の薬は出してもらえますか?

はい、妊娠中・授乳中の方にはカロナール・トラネキサム酸・抗ヒスタミン薬・咳止め・各種漢方を、安全な範囲で処方しています。
NSAIDs(特に妊娠後期)・市販総合感冒薬の使用はおすすめしません。
迷う症状はかかりつけ産科医にもご相談を。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。
よくある質問
-
妊娠に気づかずに薬を飲んでしまいました。流産しますか?
-
妊娠4週までは「All or None」と言われ、影響があれば自然流産、なければ全く影響なし、と考えられています。
飲んだ薬の種類と量、時期を医師にお伝えください。多くの市販薬は超初期に飲んでも問題なかったことが分かっています。
-
カロナールは本当に安全?
-
はい、妊娠中・授乳中の第一選択として世界中で長年使われています。規定量を守れば胎児・乳児への影響はほとんどありません。
総合感冒薬と併用すると重複してしまうので、市販薬と一緒に飲む時は成分を必ず確認してください。
-
葛根湯を飲んでも大丈夫?
-
葛根湯は麻黄を含むため、心臓・血圧への影響があります。妊娠中は「ひき始めだけ・少量・短期」ならOKとされますが、心疾患・高血圧の方は避けるのが安全。
長く飲み続けるのはおすすめしません。
-
授乳中にカロナール/トラネキサム酸/クラリチンを飲んでもOK?
-
はい、いずれも授乳中に安全に使える薬として知られています。
念のため授乳直後に薬を飲む(次の授乳まで3〜4時間空ける)と、母乳中の濃度がピークの時間を避けられます。
-
NSAIDs(ロキソニン)が妊娠後期に禁忌の理由は?
-
妊娠28週以降は胎児の動脈管が早期に閉じてしまう(持続性肺高血圧症の原因)リスクがあり、新生児の心不全の原因にもなります。
羊水減少や分娩遷延、出血のリスクもあり、後期は必ず避けます。
-
頭痛がひどくてカロナールが効きません。どうすれば?
-
呉茱萸湯(冷えと吐き気を伴う頭痛)や五苓散(低気圧・天候性頭痛)の漢方が選択肢。
片頭痛が確実で他で効かない場合は、イミグラン(スマトリプタン)を産科と相談のうえ短期使用することも。
産科でも頭痛の評価を受けてください(妊娠高血圧の頭痛は要注意)。
-
市販の「PL顆粒」を飲んでしまいました。大丈夫?
-
PL顆粒は第1世代抗ヒスタミン+無水カフェイン+サリチルアミド(NSAIDs類似)の配合剤で、妊娠中は推奨されません。
1〜2回程度の服用で大きな問題が起こることは稀ですが、今後は使わないようにしてください。心配な時はかかりつけ産科医にお伝えください。
-
湿布は妊娠中ずっと使えますか?
-
中期までは小範囲・短期間ならロキソニンテープ等のNSAIDs外用薬も使用可。
妊娠後期はNSAIDs外用薬もNG。モーラステープは光線過敏症のリスクもあり、妊娠中は基本避けます。
腰痛にはサポーター・温め・産科指導のストレッチを優先。
-
授乳中、咳止めにコデインを飲んでもいい?
-
コデインは授乳中は基本NG。乳児に呼吸抑制が起こった報告があります。
代わりにアスベリン・メジコンを使うか、麦門冬湯(空咳)などの漢方を選びます。
-
オンライン診療で妊娠中の薬は出してもらえますか?
-
はい、カロナール・トラネキサム酸・第2世代抗ヒスタミン薬・咳止め・痰切り・各種漢方を、妊娠時期と授乳状況に合わせて処方しています。
危険な頭痛・発熱が長引く・胎動の変化があるときは、まずかかりつけ産科医を受診してください。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。
参考文献・出典
- 国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
- Briggs GG, Freeman RK. Drugs in Pregnancy and Lactation. 11th ed.
- Australian TGA「Prescribing medicines in pregnancy database」
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン産科編2023」
- PMDA 医薬品添付文書 各薬剤
シリーズ一覧
- Vol.1(本記事) 風邪・咳・発熱・頭痛・関節痛
- Vol.2 アレルギー・花粉症・鼻炎・じんましん(次回作成予定)
- Vol.3 胃腸症状(つわり・胃もたれ・便秘・下痢)
- Vol.4 皮膚トラブル(湿疹・かゆみ・ニキビ・ヘルペス)
- Vol.5 感染症(膀胱炎・性器カンジダ・歯科)
- Vol.6 不眠・不安・気分の落ち込み
▼ シリーズの他の回(妊婦・授乳婦が使える薬・全6回)
- Vol.1 風邪・咳・発熱・頭痛(この記事)
- ▸ Vol.2 アレルギー・花粉症
- ▸ Vol.3 胃腸症状(つわり等)
- ▸ Vol.4 皮膚トラブル
- ▸ Vol.5 感染症(膀胱炎等)
- ▸ Vol.6 不眠・不安・気分
▼ こちらもおすすめ
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この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
-
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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