糖尿病の総論|1型・2型・妊娠糖尿病・MODY・二次性の違いと診断を医師が解説

糖尿病の総論|1型・2型・妊娠糖尿病・MODY・二次性の違いと診断を医師が解説

健診で「血糖が高い」と言われた方のための、糖尿病の分類・検査・診断・合併症の基本

健康診断でHbA1cが高めと言われました。糖尿病は1型と2型があるって聞いたことはあるんですが、どう違うんですか?薬は同じですか?

糖尿病は「血糖値が慢性的に高い状態」の総称で、原因によっていくつかのタイプに分かれます。

日本の患者さんの大多数(95%以上)は2型糖尿病ですが、ほかにも1型・妊娠糖尿病・MODY(若年発症成人型)・二次性糖尿病があり、治療方針が大きく異なります。

「自分はどのタイプか」を見極めることが治療の第一歩。この記事では、糖尿病のタイプの違い、診断のための検査、HbA1cの読み方、合併症の予防までを「糖尿病診療ガイドライン2024」に基づいて整理します。

具体的な薬の選び方は「糖尿病の薬を徹底比較」をご参照ください。

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糖尿病ってどんな病気?

そもそも「糖尿病」って、尿に糖が出る病気のことですよね?

昔はそう言われていましたが、現代の定義は「インスリンの作用不足で慢性的に血糖が高い状態」のことです。

血糖値が高い状態が長く続くと、血管がじわじわ傷ついて、目(網膜症)・腎臓(腎症)・神経(神経障害)の細い血管、心臓・脳・足の太い血管に合併症が起こります。

インスリンとは、膵臓から出るホルモンで、血液中の糖を細胞に取り込ませる「鍵」のような役割をしています。

糖尿病が原因で起こる主な合併症

三大合併症(細小血管症)

① 糖尿病網膜症:失明原因の第3位。眼底検査で早期発見

② 糖尿病腎症:透析導入原因の第1位

③ 糖尿病神経障害:足のしびれ・自律神経障害

大血管症

心筋梗塞・脳卒中・末梢動脈疾患:糖尿病の方は約2〜4倍リスクが上がる

その他

感染症、足壊疽(最悪は切断)、認知症、歯周病、がん

糖尿病のタイプ:5つに整理

1型と2型ってよく聞きます。それ以外もあるんですか?

糖尿病学会の成因分類は、大きく4つ(1型/2型/その他の特定の機序・疾患によるもの/妊娠糖尿病)に整理されます。以下の「二次性」はすべて3つ目の「その他の特定の機序・疾患によるもの」に含まれます。

タイプ原因発症治療の中心
① 1型糖尿病自己免疫で膵β細胞が破壊される子ども〜若年に多い(成人発症もあり)インスリン必須
② 2型糖尿病インスリン分泌低下+抵抗性。生活習慣・遺伝40代以降に多い(最近若年化)食事・運動・経口薬・必要時インスリン
③ 妊娠糖尿病妊娠中に発見妊娠中期以降食事・必要時インスリン
④ その他特殊型(MODYなど)単一遺伝子異常・膵疾患・薬剤性など様々原因別治療
⑤ 二次性糖尿病他の病気(クッシング、甲状腺、膵切除、ステロイドなど)原因疾患により様々原因の治療+血糖管理

① 1型糖尿病

1型糖尿病って、どんな病気ですか?

1型糖尿病は、自己免疫(自分の免疫が膵臓のインスリンを作るβ細胞を攻撃してしまう)が原因の糖尿病です。

日本では子ども〜若年に多いですが、40代以降に発症する「緩徐進行型1型(SPIDDM)」もあります。

原因が「インスリンを作れない」ことなので、治療はインスリン注射が必須。経口薬では補えません。

1型糖尿病の管理は、CGM(持続血糖測定)やインスリンポンプも活用する専門的領域です。当院では1型糖尿病の継続管理は行わず、糖尿病専門医療機関へご紹介します。

1型糖尿病のサイン

急な発症:数週間〜数か月で症状が出る

多飲・多尿・体重減少・倦怠感

ケトアシドーシス(強い倦怠感、意識障害、呼気のアセトン臭)→ 救急対応

家族歴は2型より少ない

抗GAD抗体・IA-2抗体などの自己抗体が陽性

② 2型糖尿病:日本人の糖尿病の95%以上

「2型」が一番多いっていう話ですが、なぜなるんですか?

2型糖尿病は、「インスリンを出す量が不十分」+「インスリンが効きにくくなる(インスリン抵抗性)」の組み合わせで起こります。

原因は、遺伝的体質+肥満・運動不足・食事・加齢・ストレスなどの生活要因が複雑に絡んでいます。

症状が出にくく、健康診断で偶然見つかることが多いです。早期に介入すれば、生活改善だけで進行を止められることもあります。

  • 家族歴がある方は要注意(2型は遺伝の影響が強い)
  • 肥満・腹囲増加
  • 運動不足・甘いもの・脂質の多い食事
  • 妊娠糖尿病の既往
  • 40歳以降
  • 高血圧・脂質異常症の合併
  • 急に体重が減ってきた(進行例)

③ 妊娠糖尿病

「妊娠糖尿病」って、妊娠中だけのもの?

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見された糖代謝異常です。胎盤から出るホルモンの影響でインスリン抵抗性が増し、血糖が上がりやすくなります。

母児への影響:児の巨大化、新生児低血糖、母体の難産・帝王切開、将来の2型糖尿病リスク上昇。

妊娠中は食事療法とインスリン注射が基本(経口糖尿病薬は使えません)。出産後は血糖が正常化することが多いですが、将来の2型糖尿病リスクが上がるため、産後・年1回の検査が大事です。

④ MODY・その他特殊型

「MODY」って初めて聞きました。

MODY(若年発症成人型糖尿病)は、単一の遺伝子異常で起こる糖尿病で、家族で何人も若くして糖尿病になっているケースで疑われます。

見た目は2型糖尿病に似ていますが、遺伝子のタイプによって最適な治療がまったく違うのが特徴です。SU薬がよく効くタイプ、食事療法だけで十分なタイプなど、診断によって治療が変わります。

その他、慢性膵炎・膵切除後・薬剤性(ステロイド・タクロリムスなど)の糖尿病もこのカテゴリに入ります。

⑤ 二次性糖尿病

他の病気が原因の糖尿病もあるんですか?

はい、次のような場合は二次性糖尿病を疑います。原因疾患の治療で血糖が改善することもあります。

  • クッシング症候群:満月様顔貌、皮膚線条、肥満
  • 褐色細胞腫:発作的な高血圧
  • 甲状腺機能亢進症:動悸・体重減少・暑がり
  • 先端巨大症:手足の大きさが変わってきた
  • 慢性膵炎・膵がん・膵切除後
  • 薬剤性:ステロイド、タクロリムス、サイアザイド系利尿薬、抗精神病薬など
  • その他の疾患に伴うもの(C型肝炎、ヘモクロマトーシス、嚢胞性線維症 など)

診断基準:どの数値で糖尿病?

健診で「HbA1c 6.0」と言われましたが、これは糖尿病ですか?

糖尿病学会の診断基準は次の通りです。

区分空腹時血糖HbA1c75gOGTT 2時間値
正常型<110 mg/dL<5.6%<140 mg/dL
境界型(予備軍)110-125(判定区分は血糖値で決まり、HbA1cは含まれません。5.6-6.4%は参考値)140-199
糖尿病型≥126≥6.5%≥200

「糖尿病型」が別の日に2回確認されると糖尿病と診断。1回目で糖尿病型かつ典型症状(多飲・多尿・体重減少)や、HbA1c≥6.5%+血糖≥200があれば1回で診断確定です。

HbA1cって何?

HbA1c(ヘモグロビン エーワンシー)は、過去1〜2か月の平均血糖を反映する指標です。

血糖値はその日その時の値、HbA1cは「最近の傾向」を表します。

糖尿病の方の管理目標は、合併症予防のためにHbA1c 7.0%未満が標準。65歳以上で重症低血糖リスクがある場合は7.5〜8.0%程度と緩和することもあります。

糖尿病の初診で受ける「精査」

糖尿病と言われたら、どんな検査を受けるんですか?

検査見たいこと
HbA1c・空腹時血糖・随時血糖診断・コントロール状況
75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)境界型と糖尿病の鑑別
血液検査腎機能、肝機能、脂質、尿酸、電解質
尿検査タンパク尿、アルブミン尿、ケトン体
1型のチェック(抗GAD抗体、Cペプチドなど)1型糖尿病の鑑別
眼底検査網膜症の有無
動脈硬化評価(頸動脈エコー、ABI、PWVなど)大血管症の評価
心電図・胸部X線心血管リスク評価

治療の基本:食事・運動・薬の3本柱

まず何から始めればいいですか?

糖尿病治療は次の3本柱で組み立てます。

  • ① 食事療法:適正カロリー、バランスのとれた食事、野菜から食べる「ベジファースト」、間食・夜遅い食事を控える
  • ② 運動療法:週150分以上の有酸素運動+週2回の筋トレ。食後30分〜1時間の運動が血糖に効果的
  • ③ 薬物療法:生活改善で目標に届かない時、または合併症リスクが高い時に開始

実は、生活改善だけでHbA1c 0.5〜2.0%下げられることも珍しくありません。まずは生活改善、それでも届かない時に薬、という順番が基本です。

合併症予防の3つのターゲット

糖尿病治療のゴールは「血糖値を下げる」ことだけではなく、長期的な合併症を防ぐこと。次の3つは特に大事です。

ターゲット目標どうやって
① 血糖HbA1c 7.0%未満(高齢者は緩和)食事・運動・薬
② 血圧<130/80 mmHg減塩・降圧薬(ARB・ACE阻害薬を優先)
③ 脂質(LDL)<120 mg/dL(高リスクは<100)食事・運動・スタチン

「すぐ受診」が必要なサイン

  • 強い倦怠感、意識がもうろう、嘔吐、呼気に甘酸っぱい匂い(糖尿病ケトアシドーシス)
  • 急激な体重減少、強い喉の渇き、多尿(1型糖尿病の可能性)
  • 足の傷が治らない、黒くなってきた(糖尿病性足病変)
  • 急な視力低下、視野が欠ける(網膜症進行)
  • 低血糖症状(冷や汗、震え、意識朦朧)

受診予約方法

オンライン診療でも、糖尿病の治療はできますか?

はい、ただし当院オンライン診療での糖尿病対応には2つの大事な前提があります。

  • ① 内科の主治医がいる方が対象:糖尿病治療は対面の内科・糖尿病外来の主治医のもとで進めるのが基本です。当院は主治医のもとで治療中の方の「継続処方」を原則とし、新規診断・新規薬剤開始は行いません。
  • ② 採血は当院では行えません:HbA1c・血糖・腎機能・肝機能などのフォロー採血はオンラインでは一切できません。定期的に内科主治医のところで採血を受けていただく必要があります。

主治医がいない方や新規発症が疑われる方は、まず地域の内科・糖尿病外来で診断・初期治療を受けてください。安定期に入った後の継続処方の補助として、当院をご利用いただけます。

ただし、1型糖尿病・インスリン治療中・妊娠糖尿病・重症ケトアシドーシスなどは、対面の糖尿病専門医療機関へご紹介します。

また当院では、低血糖を起こしやすいSU薬・グリニド薬・インスリンは処方していません(詳細は「糖尿病の薬を徹底比較」をご参照)。

初診時は、健診の結果や前医処方をアップロードいただくとスムーズです。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

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よくある質問

1型と2型を見分ける方法はありますか?

発症の様子・年齢・体型・症状で疑い、抗GAD抗体・IA-2抗体・Cペプチドなどの血液検査で確定します。

若くて痩せ型・急激な発症・ケトン体陽性なら1型の可能性。中高年で肥満・徐々に進行なら2型の可能性が高いです。

まれに「成人発症の1型(SPIDDM)」もあり、最初は2型として治療していて、後でインスリン依存になることがあります。

HbA1cがいくつになったら薬を始めるんですか?

一律ではなく、年齢・合併症・希望によって決まります。

HbA1c 7.0%以上、または合併症リスクが高い方は早めに薬を検討するのが一般的。

7%未満でも生活改善で届きそうなら、3〜6か月の生活療法で経過観察することもあります。

健診で「境界型」と言われましたが、治療は必要ですか?

境界型(HbA1c 5.6〜6.4%)は「糖尿病予備軍」です。

この段階で介入すると糖尿病への進行を50〜60%減らせます。食事・運動・体重減少がメインで、薬は通常使いません。

年1回はHbA1c・OGTTで経過観察を。

糖尿病は遺伝しますか?

2型は遺伝の影響が強いです。両親のどちらかが2型糖尿病だと、お子さんの発症リスクが約3倍に上がります。

1型は遺伝の影響は弱いです。家族歴があっても、必ず1型になるわけではありません。

家族歴がある方は、20歳以降は年1回のHbA1cチェックをおすすめします。

糖尿病は治りますか?

残念ながら、2型糖尿病は「完全に治す」のは難しい慢性疾患です。

ただし、「寛解」(薬なしでHbA1c目標を維持できる状態)を達成する方もいます。発症早期、体重を10%以上減らせた場合などで報告されています。

「治す」より「うまくコントロールしながら付き合う」のが現実的な目標です。

糖尿病で食べてはいけないものはありますか?

「絶対ダメ」というものはほとんどありません。「量とタイミング」のコントロールが大事です。

気をつけたいもの:清涼飲料水・お菓子・揚げ物・白米/麺の食べ過ぎ・夜遅い食事。

推奨されるもの:野菜・きのこ・海藻・大豆・魚・全粒穀物・適量の果物。

「ベジファースト」(野菜→タンパク→炭水化物の順に食べる)も実用的なコツです。

糖尿病があると、インフルエンザや新型コロナで重症化しやすいって本当?

はい、糖尿病があると感染症で重症化しやすいことが分かっています。

年1回のインフルエンザワクチン、高齢者の肺炎球菌ワクチン、新型コロナワクチンが推奨されます。肺炎球菌の定期接種は「65歳になる年度の1年間」が対象で(5歳刻みの経過措置は2024年3月末で終了)、2026年度からはPCV20が使われます。

血糖値とHbA1cが解離していることがあります。どちらが正しいの?

両方とも正しい情報です。血糖値はその時点、HbA1cは過去1〜2か月の平均を反映します。

溶血性貧血・腎性貧血・透析・妊娠中などではHbA1cが実際より低く出ることがあります。その場合はグリコアルブミン・1.5-AGなど別の指標を使うこともあります。

糖尿病だと運転免許や仕事に影響はありますか?

安定したコントロール下では、通常の運転免許や多くの仕事に支障はありません。

ただし、「重度の低血糖を起こす可能性のある治療」を受けている場合は、運転免許の更新時に申告が必要になります(SU薬・インスリンを使用中など)。

当院ではこうした低血糖リスクの高い治療は行わず、SGLT2・GLP-1・DPP-4などの低血糖を起こしにくい薬を中心に組み立てます。

オンライン診療で糖尿病の管理はできますか?

はい、ただし「内科の主治医のもとで治療中の方の継続処方」のみとなります(新規診断・新規薬剤開始は行いません)。HbA1cや血糖などのフォロー採血は当院オンライン診療では一切できませんので、定期的に内科主治医のところで採血を受けていただく必要があります。

1型糖尿病・インスリン管理・妊娠糖尿病・低血糖を起こしやすい薬(SU薬・グリニド・インスリン)の処方は行わず、必要時は対面医療機関へご紹介します。

当院で処方する薬の詳細は「糖尿病の薬を徹底比較」をご参照ください。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

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参考文献・出典

  • 日本糖尿病学会編「糖尿病診療ガイドライン2024」
  • 日本糖尿病学会編「糖尿病治療ガイド2024-2025」
  • American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes—2024.
  • WHO. Classification of diabetes mellitus 2019.

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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