高血圧の総論|本態性と二次性の違い・必要な検査・診断を医師が解説

高血圧の総論|本態性と二次性の違い・必要な検査・診断を医師が解説

「血圧が高い」と言われた人が最初に読みたい、原因の見分け方と精査の流れ

健康診断で「血圧が高い」と言われました。家系的に高血圧の人が多いから「家系のせい」と思っていますが、実際にはどんな原因があるんでしょうか?すぐ薬を始めるべきですか?

高血圧の患者さんは、日本だけで約4,300万人。「ありふれた病気」ですが、放っておくと脳卒中・心筋梗塞・腎不全・認知症の原因になります。

実は高血圧には大きく2タイプあって、① 本態性高血圧(原因が一つに特定できない・約9割)② 二次性高血圧(特定の病気が原因・約1割)に分かれます。

二次性高血圧は「原因の病気を治すと血圧も治る」ことがあるので、いきなり薬を始める前に、「もしかして二次性ではないか?」のチェックがとても大事です。

この記事では「血圧が高い」と言われた方に向けて、本態性と二次性の違い、診断のためにする検査、最新の血圧目標値までを「高血圧治療ガイドライン2025」に沿って整理します。具体的な薬の選び方は「高血圧の薬を徹底比較」をご参照ください。

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血圧の基準値:「いくつから高血圧?」

「最大血圧130」って高いんですか?低いんですか?

日本高血圧学会の最新の基準では、次のとおりに分類します。

分類診察室血圧(mmHg)家庭血圧(mmHg)
正常血圧<120/<80<115/<75
正常高値血圧120-129/<80115-124/<75
高値血圧130-139/80-89125-134/75-84
Ⅰ度高血圧140-159/90-99135-144/85-89
Ⅱ度高血圧160-179/100-109145-159/90-99
Ⅲ度高血圧≥180/≥110≥160/≥100

診察室血圧と家庭血圧、どちらが正しい?

実は家庭血圧のほうが「未来の脳卒中・心筋梗塞リスク」をよく予測すると分かっています。

理由は「白衣高血圧」(病院では緊張で上がる)と「仮面高血圧」(病院では普通だが家では高い)の存在です。

ガイドラインでも家庭血圧を診療の中心にすることが推奨されています。1日2回(朝起床後・就寝前)、それぞれ2回測定し、平均値を記録するのが理想です。

高血圧を放置するとどうなる?

「血圧が高くても痛くないし困ってない」って言う人もいますよね?放置すると何が起こるんですか?

高血圧は「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と呼ばれます。症状がないまま、血管を内側から少しずつ傷つけ続けます。

具体的には次のような合併症が起こります。

  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)
  • 心筋梗塞・狭心症
  • 心不全
  • 慢性腎臓病・腎不全(最終的に透析)
  • 大動脈瘤・大動脈解離
  • 眼底出血(網膜症)
  • 認知症(脳血管性・アルツハイマー型ともリスク上昇)
  • 下肢動脈閉塞

特に怖いのは、「症状がない=血管が無事」とは限らないこと。血圧130/85でも、10年・20年と続けば確実に血管は傷みます。「数値の管理」だけで多くの合併症が予防できるのが、高血圧治療の大きな価値です。

本態性高血圧と二次性高血圧の違い

「本態性」って耳慣れない言葉ですが、どういう意味ですか?

本態性高血圧=「一つの病気が原因とは言えない、加齢・体質・生活習慣の積み重ねでなる高血圧」のことです。日本の高血圧患者さんの約9割がこちらです。

二次性高血圧=「他の病気のせいで血圧が上がっている高血圧」のことです。約1割。

二次性は原因の病気を治すと血圧も治ることがあるため、見落とさないチェックが大事です。

本態性高血圧二次性高血圧
割合約90%約10%
原因加齢・遺伝・塩分・肥満・ストレスなど複合特定の病気(後述)
発症年齢30代以降に多い若年(30歳未満)や急な発症あり
血圧の特徴緩やかに上がる急に上がる/非常に高い
治療生活改善+降圧薬原因の治療+必要時降圧薬
治る?長期コントロールが基本原因解決で治ることも

二次性高血圧を疑う「サイン」

自分が二次性かもしれないかは、どうやって見分けるんですか?

次のような特徴があれば、二次性のチェックを優先します。あくまで目安として、診察と検査で総合的に判断します。

  • 若年(30歳未満)で発症
  • 急に血圧が上がってきた
  • 常用薬3剤以上を使っても下がりにくい(治療抵抗性)
  • Ⅲ度高血圧(180/110以上)
  • 低カリウム血症を伴う(足のつり・脱力)
  • 夜間〜早朝の頭痛・動悸・発汗発作
  • 満月様顔貌・中心性肥満・皮膚線条
  • 耳の下〜腹部の血管雑音
  • 強いいびき・無呼吸・日中の眠気
  • 腎機能異常・タンパク尿・血尿
  • 家族にも若年高血圧/脳卒中の方が多い

二次性高血圧の主な原因

具体的にはどんな病気が二次性高血圧の原因になるんですか?

原因主な特徴チェック
原発性アルドステロン症若年・低カリウム血症・治療抵抗性。二次性で最多PAC/PRA比、副腎CT
腎血管性高血圧腹部血管雑音、急に悪化、ACE阻害薬で腎機能低下腎動脈エコー、造影CT
慢性腎臓病タンパク尿、血尿、eGFR低下腎機能・尿検査
褐色細胞腫発作的な高血圧、動悸、頭痛、発汗血中・尿中カテコラミン、副腎CT
クッシング症候群満月様顔貌、皮膚線条、糖尿病合併コルチゾール、ACTH
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)動悸、体重減少、暑がりTSH、FT3、FT4
甲状腺機能低下症むくみ、寒がり、徐脈TSH、FT4
睡眠時無呼吸症候群 詳しくはSAS検査の記事へ大いびき、無呼吸、日中の眠気簡易ポリソムノグラフィー
薬剤性NSAIDs、ステロイド、漢方(甘草)、ピル、エフェドリン系服薬歴の確認
大動脈縮窄症若年、両上肢の血圧差胸部CT、心エコー

二次性で最も多い「原発性アルドステロン症」とは

副腎から「アルドステロン」というホルモンが出すぎることで、ナトリウムをため込み、カリウムを排泄しすぎる病気です。

高血圧患者さんの5〜10%に潜んでおり、ガイドラインでも全例での一次スクリーニング(PAC/PRA比)が推奨されています。

「低カリウム血症」「治療抵抗性高血圧」「若年高血圧」がサイン。診断確定後は副腎手術や、スピロノラクトン/エサキセレノンといった選択的アルドステロン拮抗薬で治療します。

当院では一次スクリーニングと専門医療機関(内分泌内科)への紹介をご案内します。

高血圧の初診で受ける「精査」

血圧が高い時、病院ではどんな検査を受けるんですか?

高血圧と分かったら、① 高血圧そのものの重さの評価② 二次性ではないかのチェック③ すでに合併症が起きていないかの評価を行います。

当院でも、初診の方には次の検査をおすすめしています。

検査見たいこと
血液検査(基本)腎機能(Cr・eGFR)、Na・K、肝機能、脂質、血糖/HbA1c、尿酸
尿検査タンパク尿、潜血、腎臓障害のサイン
心電図左室肥大、心筋虚血、不整脈
胸部X線心拡大、心不全のサイン
家庭血圧の記録白衣高血圧/仮面高血圧の鑑別、変動パターン
必要に応じてPAC/PRA比(原発性アルドステロン症)、TSH(甲状腺)、副腎CT、腎エコー、簡易PSG(睡眠時無呼吸)

「降圧薬を飲み始める前に、これだけの検査をします」と言うと驚かれることもありますが、最初に全体像を把握することで、その後の治療がスムーズで、合併症も予防しやすくなります。

降圧目標:どこまで下げる?

血圧はどこまで下げればいいんですか?

日本高血圧学会の最新ガイドラインでは、年齢と合併症で目標値が変わります。

対象診察室血圧の目標家庭血圧の目標
75歳未満(一般)<130/80 mmHg<125/75 mmHg
糖尿病合併<130/80<125/75
慢性腎臓病(蛋白尿あり)<130/80<125/75
脳血管障害既往<130/80<125/75
冠動脈疾患既往<130/80<125/75
75歳以上(高齢者)<140/90 (可能なら130/80)<135/85 (可能なら125/75)

「140/90を切ればOK」だった時代から、ここ数年で「130/80未満が新しい標準」に変わってきています。高齢者は無理なくゆっくり下げるのが原則です。

まずは「薬の前にできること」

生活改善でどれくらい血圧は下がるんですか?

次の6項目をきちんと行うと、収縮期血圧で10〜15 mmHg下がることがあります。軽症の高血圧は薬なしでもコントロール可能です。

  • 減塩(1日6g未満):日本人は平均10gと多い。麺類のスープを残す・漬物を控える・しょうゆをスプレーボトルにするなど
  • 野菜・果物:カリウムが余分なナトリウムを排出。腎機能が悪い方は要相談
  • 適正体重:BMI 25未満。体重1kg減で血圧1〜2 mmHg下がる
  • 運動:週150分以上の有酸素運動(早歩き・自転車・水泳など)
  • 節酒:男性 ビール中瓶1本/女性 半量まで。週2日休肝日
  • 禁煙:血管収縮・酸化ストレスを減らす

「すぐ受診が必要」なサイン

  • 収縮期180以上 または 拡張期110以上が続く
  • 強い頭痛・めまい・吐き気・視力障害を伴う
  • 胸の圧迫感・息切れがある
  • 麻痺・ろれつが回らない・意識が遠のく
  • 妊娠中に血圧が140/90を超えた

上記のような場合は緊急性のある高血圧(高血圧緊急症・切迫症)の可能性があるため、対面医療機関を速やかに受診してください。

受診予約方法

オンライン診療でも、高血圧の初診はできますか?

はい、当院オンライン診療では、高血圧の初診から、生活指導・降圧薬の処方・家庭血圧の伴走まで対応しています。

初診時には家庭血圧(朝・夜の記録)を1週間ほどつけてきていただくとスムーズです。

血液・尿・心電図・副腎CTなどの精査が必要な場合は、近隣の検査可能医療機関をご紹介し、結果を踏まえて治療を継続します。

二次性高血圧が強く疑われる場合(若年・低カリウム血症・治療抵抗性など)は、内分泌内科・循環器内科への対面紹介をご案内します。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

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よくある質問

健康診断で血圧が高めでしたが、自宅で測ると普通です。受診すべきですか?

「白衣高血圧」と呼ばれ、診察室では緊張で上がる方が一定数います。

ただし、白衣高血圧でも将来本物の高血圧に移行することがあるため、定期的に家庭血圧を測る習慣と、年1回の健診はおすすめです。

逆に「診察室では普通だが家では高い」仮面高血圧は、見逃すと心血管リスクが上がるので注意が必要です。

若いのに血圧が高いです。「家系のせい」だけで終わらせていいですか?

若年高血圧(30歳未満発症など)は、二次性高血圧の可能性を必ずチェックする必要があります。

原発性アルドステロン症・腎血管性高血圧・甲状腺疾患などが隠れていることがあるため、家系のせいと決めつけず、一度精査を受けることをおすすめします。

血圧の薬は一生飲み続けるんですか?

多くの本態性高血圧の方では、長期間(場合によっては一生)の継続が必要になります。

ただし、生活改善で大きく下がった場合、薬を減量・中止できることもあります。「やめたい」と思った時は自己判断せず、医師と相談しながら段階的に減量します。

二次性高血圧は原因疾患の治療で血圧が正常化することがあります。

減塩はどれくらい大事ですか?

日本人の高血圧は塩分摂取と強い関係があり、1日6g未満が目標です。日本人の平均は10g前後なので、麺類のスープを残す・漬物や加工食品を減らすだけでもかなり下げられます。

カリウム(野菜・果物)の摂取も塩を排泄する助けになりますが、腎機能が悪い方は摂りすぎ注意です。

「上の血圧」と「下の血圧」、どちらが大事ですか?

基本は「上の血圧(収縮期)」のほうが脳卒中・心筋梗塞リスクの予測に重要です。特に高齢者では下が低くても上が高ければ治療対象です。

若い方では「下の血圧(拡張期)」の上昇が早く現れることもあります。両方を見て総合判断します。

原発性アルドステロン症が見つかったらどうなりますか?

副腎にできた腺腫(良性腫瘍)が原因の場合、副腎手術で血圧が正常化することも多いです。両側性や手術困難な場合は、選択的アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン・エサキセレノンなど)で内科的にコントロールします。

当院では一次スクリーニングのうえ、内分泌内科への紹介をご案内します。

血圧の薬を飲んでも下がりません。どうしたらいいですか?

利尿薬を含む3剤以上の降圧薬を最大量で使っても、血圧が140/90以上で下がらない状態を「治療抵抗性高血圧」と言います。

このケースでは、二次性高血圧の再精査(特に原発性アルドステロン症、睡眠時無呼吸)が必要です。塩分摂取・薬剤の影響(NSAIDs、漢方の甘草、ピル等)も見直します。

妊娠中の高血圧はどうしたらいいですか?

妊娠高血圧症候群は、母児ともに大きなリスクがあるため、産科での厳重管理が必要です。

当院オンライン診療では妊娠中の降圧管理は行わず、産科への速やかな受診をご案内します。

塩分のチェックは家でできますか?

1日尿(24時間蓄尿)が正確ですが、自宅では「尿中Na/Cr比」の朝1回チェックでも目安が分かります。

簡易な「塩分計」「減塩しょうゆ」「食卓でひと振りやめる」など、コツコツした見直しが効果的です。

オンライン診療で高血圧の管理はできますか?

はい、初診からのオンライン診療で降圧薬の処方・家庭血圧の確認・生活指導を行っています。

初診時には1週間程度の家庭血圧の記録を持参(または共有)いただくとスムーズです。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

関連記事「高脂血症はオンライン診療で管理できる?」もご参照ください。

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参考文献・出典

  • 日本高血圧学会編「高血圧治療ガイドライン2025」
  • 日本内分泌学会「原発性アルドステロン症診療マニュアル」
  • Williams B, et al. 2018 ESC/ESH Guidelines for the management of arterial hypertension. Eur Heart J. 2018;39(33):3021-3104.
  • Whelton PK, et al. 2017 ACC/AHA/AAPA et al. Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults. Hypertension. 2018;71:e13-e115.

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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