脂質異常症(コレステロール)の薬を徹底比較|スタチン強度別・エゼチミブ・フィブラート・PCSK9

脂質異常症(コレステロール)の薬を徹底比較|スタチン強度別・エゼチミブ・フィブラート・PCSK9

日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」に基づく選び方

健康診断でコレステロールが高いと言われました。スタチンを飲み始めるみたいですが、いろんな種類があってよく分かりません。

脂質異常症の薬は「LDL(悪玉)を下げる薬」「中性脂肪を下げる薬」「HDL(善玉)を上げる薬」の3グループ。

スタチンだけで6種類あり、強さで「ストロング」と「スタンダード」に分かれます。

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」に基づき、心血管リスクごとに目標LDL値を決めて薬を選びます。

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診断基準と目標値

項目基準値(空腹時)意味
LDL(悪玉)140 mg/dL 以上動脈硬化を進める
HDL(善玉)40 mg/dL 未満回収機能の低下
中性脂肪150 mg/dL 以上膵炎・脂肪肝のリスク
Non-HDL170 mg/dL 以上LDL以外の悪玉も含めた指標

LDL目標値はリスクごとに違う

カテゴリ対象LDL目標
一次予防・低リスク若年・合併症なし<160
一次予防・中リスク加齢・高血圧・喫煙<140
一次予防・高リスク糖尿病・慢性腎臓病・末梢動脈疾患<120
二次予防心筋梗塞・脳梗塞既往<100(高リスクは<70)

同じ「LDL 150」でも、リスクで判断が変わります。

🌟 脂質異常症薬の全体像

分類代表薬下げる対象
① スタチンクレストールリピトールリバロメバロチン/リポバス/ローコールLDL(強)
② エゼチミブゼチーアLDL(中)
③ スタチン+エゼチミブ配合剤ロスーゼットアトーゼットLDL(強)
④ PCSK9阻害薬(皮下注)レパーサ/プラルエントLDL(最強・専門医のみ)
⑤ フィブラートトライコアベザトールSRパルモディア中性脂肪/HDL↑
⑥ ω-3脂肪酸(EPA)エパデール/ロトリガ中性脂肪(中)
⑦ 陰イオン交換樹脂コレバインLDL(中)
⑧ ニコチン酸系ペリシット/ユベラN中性脂肪・HDL
⑨ プロブコールシンレスタールHDLも下がる

① スタチン6種:LDLを下げる第一選択

薬剤(一般名)商品名強さ飲むタイミング
ロスバスタチンクレストール★★★★★ ストロング(最強)1日1回いつでも
アトルバスタチンリピトール★★★★ ストロング1日1回いつでも
ピタバスタチンリバロ★★★★ ストロング1日1回いつでも
シンバスタチンリポバス★★★ スタンダード1日1回夕食後
プラバスタチンメバロチン★★ スタンダード1日1回夕食後
フルバスタチンローコール★ スタンダード1日1回夕食後

LDLを大きく下げたい場合はストロングスタチン、軽度ならスタンダードスタチンから。

スタチンの副作用と注意点

① 横紋筋融解症(稀・重篤):筋肉痛・脱力・赤茶色の尿が出たらすぐ受診。

② 筋肉痛:頻度は数%。我慢できない時は医師に相談。

③ 肝機能障害:AST/ALT上昇。定期的に血液検査でチェック。

④ 糖尿病新規発症リスク:軽度上昇の可能性。心血管予防の利益が上回るとされる。

⑤ 飲み合わせ:マクロライド系抗菌薬(クラリス・エリスロマイシン)、アゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール)、グレープフルーツジュースで効果が強くなりすぎる可能性。

⑥ 妊娠中・授乳中は禁忌

② ゼチーア(エゼチミブ)と ③ 配合剤

ゼチーア(エゼチミブ)は小腸でのコレステロール吸収をブロック。単独でLDLを15〜20%下げ、スタチン併用でさらに15〜20%上乗せ。

配合剤成分向く方
ロスーゼットロスバスタチン+エゼチミブ最強でしっかり下げたい
アトーゼットアトルバスタチン+エゼチミブ相互作用が少なめ

④ PCSK9阻害薬:当院非処方

レパーサ(エボロクマブ)/プラルエント(アリロクマブ)。月1〜2回の皮下注射でLDLを50〜60%下げる最強の薬。家族性高コレステロール血症やスタチン+エゼチミブで目標に届かない高リスク患者に。当院では行わず循環器内科・心臓血管センターへご紹介

⑤ フィブラート系:中性脂肪を下げる

中性脂肪500以上は急性膵炎のリスク。第一選択はフィブラート系。

薬剤成分特徴
トライコアフェノフィブラート定番
ベザトールSRベザフィブラート24時間徐放
パルモディアペマフィブラート選択的PPARαモジュレーター。腎機能障害でも使いやすい新薬

フィブラート系の注意点

横紋筋融解症:スタチンと併用時、特に腎機能が悪い方で注意。

肝機能障害:AST/ALTの定期チェック。

胆石:胆汁中のコレステロールが増加。

パルモディアは相互作用が少なく腎機能障害でも使える

⑥⑦⑧⑨ その他の薬

  • EPA/EPA・DHA:エパデール(EPA単独)/ロトリガ(EPA+DHA)。中性脂肪を緩やかに下げ、副作用少
  • コレバイン(コレスチミド):陰イオン交換樹脂。スタチンが使えない時の選択肢。便秘が出やすい
  • ペリシット/ユベラN:ニコチン酸系。補助的
  • シンレスタール(プロブコール):抗酸化+LDL低下。HDLも下げるため使われる場面少

🩺 ケース別:私にはどの薬?

ケース第一選択補助
LDLだけ高い・若くてリスク少生活改善→スタンダードスタチン
LDL高くしっかり下げたいストロングスタチン(クレストール・リピトール・リバロ)効果不十分ならエゼチミブ追加
糖尿病・腎臓病・心血管リスク高ストロングスタチン早期エゼチミブ/配合剤ロスーゼット
心筋梗塞・脳梗塞既往ストロングスタチン強化+エゼチミブ/PCSK9専門医導入
スタチンで筋肉痛スタチン減量/変更/エゼチミブ単独コレバイン
家族性高コレステロール配合剤+PCSK9専門医導入
中性脂肪500以上フィブラート(特にパルモディア)EPA/生活改善
中性脂肪150〜300EPA/生活改善で経過観察フィブラート
HDLが低い運動・禁煙が最重要フィブラートが補助

薬の前にできること

  • 食事:飽和脂肪酸・トランス脂肪酸を減らし、青魚・野菜・大豆・海藻・全粒穀物を増やす
  • 運動:週150分以上の中等度有酸素運動
  • 体重管理:BMI 25未満
  • 禁煙
  • 節酒(中性脂肪が上がりやすい)
  • 睡眠:6〜8時間

LDLは食事・運動で10〜20%、中性脂肪は30〜50%下がります。生活改善で目標に届けば薬不要のケースも。

「念のため検査」のサイン

  • 健康診断で初めて指摘
  • 家族に若くして心筋梗塞・脳梗塞の人がいる(家族性の可能性)
  • スタチン服用中に筋肉痛・全身倦怠感・赤茶色の尿
  • 中性脂肪が500を超えた(膵炎リスク)
  • 黄色腫(手・足・まぶたの黄色いふくらみ)

受診予約方法

オンライン診療でコレステロールの薬は出してもらえますか?

はい、当院ではスタチン6種、エゼチミブ、配合剤(ロスーゼット・アトーゼット)、フィブラート、EPA(エパデール・ロトリガ)、コレバインなどを処方しています。健康診断結果は事前にお送りいただくとスムーズです。

PCSK9阻害薬・家族性高コレステロール血症の導入は専門医療機関へご紹介。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

関連記事:「高脂血症はオンライン診療で管理できる?」もご参照。

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よくある質問

スタチンは一生飲み続けるもの?

多くの方で長く続ける薬になります。やめると数週間でLDLは元に戻り、動脈硬化リスクも戻ります。生活改善で大きく下がった場合・もともと軽症だった場合は減量・中止できることもあります。

スタチンで筋肉痛が出ました

軽い筋肉痛は様子見、強い痛み・全身倦怠感・赤茶色の尿があれば速やかに受診(横紋筋融解症の疑い)。

対処:① 量を減らす、② 別のスタチンに変える(ピタバスタチン=リバロが筋症状少なめ)、③ エゼチミブ単独に変更。

クレストール・リピトール・リバロ、どれが一番いい?

いずれもストロングスタチンでLDL低下作用は近い。

クレストール:LDL低下作用が最も強い。

リピトール:心血管イベント抑制エビデンス豊富。

リバロ:他の薬との相互作用が少ない。

グレープフルーツジュースは飲んだらだめ?

シンバスタチン(リポバス)・アトルバスタチン(リピトール)はグレープフルーツジュースで血中濃度が上がります。

クレストール・リバロ・メバロチンはほぼ影響なし。気になる方はグレープフルーツジュースを避けるのが安全。

コレステロールの薬を飲むとがんになる?

長年の大規模研究でがん発症リスクを増やすという結論は出ていません。安心して服用してください。

中性脂肪が500を超えています

急性膵炎のリスクが上がります。すぐにフィブラート(パルモディアやトライコア)で下げ始めるのが原則。並行して禁酒・糖質制限を。

「Non-HDLが高い」って何?

Non-HDL=総コレステロール − HDL。LDL以外の悪玉脂質も含めた指標。基準は170 mg/dL未満が目安。中性脂肪が高い人や食後採血での評価に向く。

妊娠中・授乳中はスタチンを飲んでもいい?

スタチンは妊娠中・授乳中は禁忌。妊娠を計画する時は中止。

妊娠中はまず食事・運動でコントロール。家族性などでは陰イオン交換樹脂(コレバイン)が使われることがあります。

紅麹サプリ・EPAサプリと薬の併用は?

紅麹サプリはスタチンと同じ成分を含むものがあり、副作用が出やすくなります。

EPA・DHAサプリは医療用ロトリガ・エパデールほど含有量がなく薬の代わりにはなりません。

必ず申告してください。

オンライン診療でコレステロールの薬は出してもらえますか?

はい、スタチン6種、エゼチミブ、配合剤、フィブラート、EPAなどを保険診療で処方しています。健康診断結果や前医処方箋は診察前にアップロードを。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

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参考文献・出典

  • 日本動脈硬化学会編「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
  • PMDA 医薬品添付文書 各スタチン/ゼチーア/ロスーゼット/アトーゼット/フィブラート/EPA/コレバイン/PCSK9阻害薬

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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