ステロイド外用薬の強さを徹底比較|部位別の選び方

ステロイド外用薬の強さを徹底比較|部位別の選び方

5段階の強さ・部位別吸収率・FTU・副作用と「酒さ様皮膚炎」予防まで

「強いステロイド」「弱いステロイド」と渡されて、何が違うのか分かりません。

ポイントは2つ。① 日本では強さが5段階② 顔・首・わき・陰部など薄い皮膚は吸収が10倍以上あるので部位ごとに強さを変える。

日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」と添付文書ベースで整理します。

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🌟 ステロイド外用薬の強さ5段階

ランク代表薬よく使う対象
Ⅰ Strongest(最強)デルモベート/ジフラール/ダイアコート重症の手湿疹・足底湿疹・乾癬
Ⅱ Very Strongフルメタ/リンデロンDP/アンテベート/マイザー/ネリゾナ/トプシム体・四肢の中等症〜重症
Ⅲ StrongリンデロンV/フルコート/メサデルム/エクラー/ボアラ体・四肢の中等症
Ⅳ Mediumロコイド/キンダベート/アルメタ顔・首・小児・わき・陰部
Ⅴ Weakプレドニン軟膏顔の超軽症/乳児

合剤(抗菌薬入り)について

リンデロンVG(リンデロンV+ゲンタマイシン):ジュクジュク・化膿時。

フルコートF(フルコート+フラジオマイシン):感染を伴う湿疹。

ベトネベートN(ベトネベート+ナイスタチン):真菌感染合併。

抗菌薬入りは感染がない湿疹に長期使用すると耐性菌。抗菌薬の必要性がなくなったらステロイド単剤に切替えます。

強い=怖い」ではなく「強い=早く治せる」。弱い薬でダラダラ塗るより、強い薬で短期間に抑えるほうが合計の副作用は少なくなります。

部位ごとに「吸収率」が大きく違う

前腕(腕の内側)の吸収を「1」とした場合の比較データ(Feldmann & Maibach 1967):

部位吸収率選び方
足の裏0.14強くてもしっかり効く
手のひら0.83強めを短期で
前腕1(基準)
背中1.7中〜強
頭皮3.5ローションで強め短期
6中〜弱を慎重に
頬・顎13medium/weak
まぶた12〜30very weak/短期
陰嚢・外陰部42very weak/短期
腋窩・鼠径部6〜10medium/短期

顔・首・わき・陰部はステロイドが10倍以上効く=副作用も出やすい。逆に手のひら・足の裏は皮膚が厚く、強いステロイドでないと効きにくい

🌟 部位ごとの「おすすめの強さ」

部位推奨ランク期間
顔(頬・額)Ⅳ medium/Ⅴ weak2週間以内ロコイド/キンダベート
まぶたⅣ medium 最低限5〜7日ロコイド/キンダベート
Ⅳ medium2週間以内ロコイド/キンダベート
体幹(背・腹)Ⅱ very strong/Ⅲ strong炎症が引くまでフルメタ/アンテベート/リンデロンV
四肢(腕・脚)Ⅱ〜Ⅲ体幹に準ずるフルメタ/リンデロンV
手のひらⅠ strongest/Ⅱ短期デルモベート/フルメタ
足の裏Ⅰ strongestデルモベート/ジフラール
頭皮Ⅱ〜Ⅲ(ローション)短期リンデロンVローション
わきの下・足の付け根Ⅳ medium短期ロコイド/キンダベート
陰部Ⅴ weak/Ⅳ短期症状改善までプレドニン軟膏/ロコイド短期
乳児・小児原則Ⅳ medium短期ロコイド/キンダベート/アルメタ

顔の「酒さ様皮膚炎」に注意

顔は薄く吸収率が高いため、同じ薬を漫然と長期に塗り続けると皮膚萎縮・毛細血管拡張・赤みが取れなくなる→酒さ様皮膚炎に。

対策:① 顔はmedium 以下、② 連続使用は2週間以内、③ 落ち着いたらプロトピックコレクチム/モイゼルトへ切替。

詳細は「酒さ(しゅさ)とは?」も参照。

小児・赤ちゃんへの考え方

小児は体表面積に対する皮膚の割合が大きいため、相対的に吸収が多くなります。

原則はⅣ medium中心、体幹のみ短期でⅢ可。Ⅰ・Ⅱは乳幼児にはほぼ使いません。

「ステロイドを使う=肌に悪い」より湿疹を放置するほうがアトピーやとびひに悪化。短期間で完全に消すのが優しい使い方。

「どのくらいの量?」FTU

1 FTU = 大人の人差し指の先〜第一関節までの長さ=約0.5g。これを「大人の手のひら2枚分」の面積に塗るのが目安。

部位大人の目安量
顔・首2.5 FTU(約1.25g)
片手1 FTU
片腕3 FTU
片足6 FTU
体(前面)7 FTU
背中(お尻含む)7 FTU

「テカテカするほど」「ティッシュがくっつくくらい」がベスト。擦り込まず、置くように広げる。「薄塗りで治りが悪い」のがいちばん多い失敗です。

治ったあとの「やめ方」:プロアクティブ療法

治った後も同じ場所に週2回同じステロイドを塗ることで、見えない微小な炎症をくすぶらせず再燃を防ぐ方法。

結果的にステロイドの総使用量が減らせるのが利点です。

プロアクティブ療法の進め方

① 急性期:医師が指示する強さで毎日塗布、症状ほぼゼロまで(通常2〜4週間)。

② 維持期:同じ場所に週2回(例:水曜と日曜の夜)。保湿は毎日。

③ 安定期:週1→保湿のみへ段階的に。

副作用とリスク対策

副作用は「塗る場所」「強さ」「期間」で発生率が変わります。次のリスクを知っておけばほとんど予防できます。

  • 皮膚萎縮:顔・陰部に強いステロイド長期で
  • 毛細血管拡張:細い血管が透けて見える
  • 多毛:塗った部位に細い毛が増える
  • ステロイドニキビ・酒さ様皮膚炎:顔への強ステロイド長期で
  • 感染症の悪化:とびひ・水虫・ヘルペスを見落として塗ると
  • 口囲皮膚炎:口周りに使い続けた時
  • 紫斑・出血:高齢者で皮膚が薄くなった時

全身性副作用(副腎機能抑制等)は広範囲に最強ランクを長期使った場合に稀。指示通りなら心配ありません。

「ステロイドはクセになる」は本当?

結論:正しく使えばクセにはなりません

「やめると悪化する」のは、湿疹が治っていない or 顔の長期連用で酒さ様皮膚炎になっている、のどちらかが多い。

Bz系睡眠薬のような身体的依存は作りません。「塗らないと悪化」と感じる場合は自己判断で中止せず受診を。

長く使いたくない時の非ステロイド選択肢

成分特徴対象
プロトピック軟膏タクロリムスカルシニューリン阻害。皮膚萎縮なし顔・首のアトピー/2歳〜
コレクチム軟膏デルゴシチニブJAK阻害。ヒリヒリ少アトピー全般/6か月〜
モイゼルト軟膏ジファミラストPDE4阻害。刺激最少アトピー全般/3か月〜

上手に使う7つのコツ

  • ① 入浴後5〜10分以内に塗る
  • ② 保湿剤と併用。順番はどちらでもOK
  • ③ FTUを目安に「たっぷり」
  • ④ こすらず置くように広げる
  • ⑤ 強さは医師と相談(弱い方が安心とは限らない)
  • ⑥ 同じ部位の長期連用は避ける(顔は2週間以内)
  • ⑦ プロアクティブで再燃予防

受診を検討したいサイン

  • 同じ場所に2週間以上湿疹が続く
  • 市販ステロイドで効きが悪い/再発
  • 顔のステロイド長期使用で赤みが取れない(酒さ様皮膚炎の疑い)
  • 塗った部位に水ぶくれ・膿・痛み(感染合併)
  • 子どもの強い夜間かゆみ・睡眠障害

受診予約方法

オンライン診療でもステロイドの相談はできますか?

はい、湿疹・かぶれ・アトピー性皮膚炎のステロイド外用薬を、強さや部位に応じて処方しています。初診時には患部の写真をお送りいただくとよりスムーズです。

酒さ様皮膚炎が疑われるケース、重症アトピー、感染合併は皮膚科専門医の対面診療をご案内します。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

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よくある質問

市販ステロイドと病院のステロイドの違い?

市販はⅣ medium が最大(ロコイド・アルメタ相当)。病院はⅠ strongest〜Ⅴ weakまで自由に選べます。「市販で効かない」と感じたら受診を。

「弱く長く」と「強く短く」、どちらが安全?

多くの場合「強く短く」が安全。弱い薬で炎症が残ったまま長期に塗ると、皮膚肥厚・色素沈着・苔癬化など別問題に。

保湿剤とステロイド、どちらが先?

どちらでも効果は変わらないと研究で結論(厚労省研究班報告)。広範囲は保湿が先、ピンポイントにステロイド、が実用的。

プロアクティブってどうやる?

急性期は毎日塗布で炎症ゼロまで。次に同じ場所に「週2回」同じステロイドを塗り続ける。保湿は毎日。落ち着いたら週1→保湿のみへ。

顔にステロイドを塗っていい?

正しい強さで・短期間なら問題なし。① 強さはⅣ medium 以下、② 連続使用は2週間以内、③ 落ち着いたらプロトピック等の非ステロイドへ切替。

怖いのは「自己判断で強いステロイドをずっと顔に塗る」こと。

陰部のかゆみにステロイドは?

使えますが陰部は前腕の42倍も吸収Ⅴ weak(プレドニン軟膏)または Ⅳ medium の短期使用が原則。長く続く時はカビ(白癬・カンジダ)の可能性もあり受診を。

子どもや赤ちゃんに塗っていい?

はい、正しく選べば安全。原則 Ⅳ medium 中心、体幹で短期 Ⅲ まで。湿疹を放置するほうがアトピー悪化・とびひの原因に。

手湿疹で「デルモベート」を出されました。最強で大丈夫?

手のひら・足の裏は皮膚が厚く、吸収率が低いので最強ランクが必要なケースは少なくありません。「弱い薬でダラダラ」より「最強で短期に抑えて改善後はランクを下げる」ほうが効果的。

塗っても治らない湿疹は?

① 強さが足りない、② 量が少なすぎる、③ 湿疹じゃなく真菌感染や接触皮膚炎、④ 酒さ様皮膚炎、⑤ アトピー以外(乾癬・疥癬)など可能性あり。2週間以上塗っても改善しなければ診断を見直すタイミング。

当院ではどのステロイドを処方?

Ⅴ weak(プレドニン軟膏)〜Ⅱ very strong(フルメタ・アンテベート等)を症状と部位に応じて処方。広範囲の重症アトピー、感染合併、酒さ様皮膚炎は皮膚科専門医へ紹介。

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参考文献・出典

  • 日本皮膚科学会編「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
  • PMDA 医薬品添付文書 各ステロイド外用薬
  • Feldmann RJ, Maibach HI. Regional variation in percutaneous penetration of 14C cortisol. J Invest Dermatol. 1967.
  • Long CC, Finlay AY. The finger-tip unit. Clin Exp Dermatol. 1991.

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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