寝汗・不眠・動悸に|柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)の効果と使い方

柴胡桂枝乾姜湯とは?寝汗・不眠・神経過敏に効く「盗汗の代表方剤」

寝汗がひどくて、夜中に何度も目が覚めて、口も乾くし動悸もして…眠れません。漢方で何かいいものはありますか?

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)は、東洋医学で古くから「盗汗(とうかん/寝汗)の代表方剤」と呼ばれてきた漢方薬です。

「体力がやや低下し、神経が過敏になって、不眠・動悸・寝汗・口の渇き・微熱などがあるタイプ」によく合い、ストレス過多で疲れがたまり、夜になると交感神経が優位になって寝汗をかいてしまう現代人にもよく処方されます。

更年期のホットフラッシュ、心因性の発汗、慢性疲労、感冒の長引きにも使われる、応用範囲の広い漢方です。

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「柴胡桂枝乾姜湯」とは

柴胡桂枝乾姜湯は、中国・後漢時代の医学書「傷寒論(しょうかんろん)」に記載された古典処方で、約1800年前から使われてきた漢方薬です。

「柴胡」を中心に、桂皮・乾姜・栝楼根・黄芩・牡蛎・甘草の7種類の生薬で構成され、「気のめぐりを整え、こもった熱を冷まし、水分代謝を整える」ことで、寝汗や不眠、神経症状を改善します。

「柴胡桂枝乾姜湯」の特徴

合う体質(証)

  • 体力中等度以下〜やや虚弱
  • 神経過敏で、心配性・気疲れしやすい
  • 寝汗(盗汗)が続き、寝間着や枕が湿る
  • 不眠、夜中に目が覚める、夢が多い
  • 動悸、息切れ、胸の不快感がある
  • 口や喉が乾く、微熱が続く
  • 冷え症、貧血気味、疲労感が強い
  • ストレスや緊張で症状が悪化する

合わない体質

  • 体力が充実してがっしりした方(実証)
  • 高熱や激しい炎症がある急性期
  • 消化器が極端に弱く、下痢を起こしやすい方

気の高ぶり+エネルギー不足+うるおい不足」が組み合わさった、寝汗と不眠のあるタイプによく効きます。

配合生薬と働き

  • 柴胡(さいこ):気のめぐりを整え、こもった熱や緊張をしずめる
  • 桂皮(けいひ):体表のめぐりを整え、のぼせを取りつつ寝汗を抑える
  • 乾姜(かんきょう):体の中を温め、冷えからくる不調を改善
  • 栝楼根(かろこん):うるおいを補い、口渇・微熱を改善
  • 黄芩(おうごん):上半身の熱を冷まし、炎症や不眠を鎮める
  • 牡蛎(ぼれい):精神を落ち着け、動悸・不眠・寝汗をしずめる
  • 甘草(かんぞう):他の生薬を調和し、症状全体を整える

「冷え(乾姜・桂皮)」と「熱(柴胡・黄芩)」のバランスを取りながら、「うるおい補給(栝楼根)」と「精神安定(牡蛎)」を組み合わせる、絶妙な配合が特徴です。

効能・効果

添付文書に記載されている効能・効果は次のとおりです。

「体力中等度以下で、冷え症、貧血気味、神経過敏で、動悸、息切れがあり、ときに咳、腹痛などを訴えるものの次の諸症」

  • 更年期障害
  • 血の道症
  • 神経症
  • 不眠症
  • 感冒
  • 気管支炎、気管支ぜんそく
  • 肝炎、肝機能障害

添付文書には「寝汗」という直接の記載はありませんが、上記の症状の背景にある盗汗(寝汗)に対して伝統的に幅広く用いられてきた漢方薬です。

用法・用量

通常、成人は1日7.5gを2〜3回に分けて、食前または食間に服用します。年齢・体重・症状により適宜増減します。

飲み方のポイント

  • 食前または食間に、白湯やぬるま湯で飲む
  • 1日分を朝・昼・夕の3回に分けて飲むのが基本
  • 寝汗中心の方は、夕食前と就寝前にしっかり飲むのも一案
  • 効果実感までの目安は2〜4週間。体質を整える漢方なので根気強く
  • 他の漢方や睡眠薬・抗うつ薬との併用は医師にご相談を

特に気をつけたい副作用

偽アルドステロン症(甘草による)

  • 甘草を含むため、長期服用でむくみ・血圧上昇・低カリウム血症(手足の脱力・けいれん)に注意
  • 他の甘草を含む漢方や、利尿薬・グリチルリチン製剤との併用で起こりやすい
  • 気になる症状があれば早めに受診を

消化器症状

  • 胃部不快感、食欲不振、悪心、下痢など
  • 胃が弱い方は食後の服用に変更することも検討

過敏症

  • 発疹、かゆみなど。出たら服用を中止して相談

間質性肺炎・肝機能障害(稀)

  • 空咳・発熱・息切れ・倦怠感・黄疸などは早めに受診を

使用できない方・注意が必要な方

  • 本剤の成分に対し過敏症の既往がある方
  • アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症のある方(甘草を含むため)
  • 高齢者(少量から開始)
  • 妊婦・授乳婦(医師の判断で)
  • 高血圧・心疾患・腎疾患のある方(甘草の影響に注意)

飲み合わせに注意

  • 他の甘草を含む漢方薬(芍薬甘草湯・小青竜湯・補中益気湯など)との併用は、合計甘草量に注意
  • グリチルリチン製剤・利尿薬・ループ利尿薬との併用で低カリウム血症のリスクが上がる
  • 睡眠薬・抗うつ薬・抗不安薬との併用は医師に相談

受診を考えたい症状

  • 寝汗で寝間着・シーツを毎日着替える状態が続く
  • 体重が数か月で5kg以上減った
  • 発熱や咳が長く続いている
  • 動悸や息切れが日常的にある
  • 服用後にむくみ・手足のしびれ・脱力が出てきた

まとめ

柴胡桂枝乾姜湯は、体力中等度以下で、神経過敏・寝汗・不眠・口渇・動悸のあるタイプに使われる代表的な漢方です。

「盗汗の代表方剤」とも言われ、寝汗のほかに更年期障害・神経症・不眠症など、現代人の自律神経まわりの不調にも幅広く用いられます。

体質に合うかどうかが効果のカギなので、自己判断ではなく医師の診察を受けたうえで処方を受けるのがおすすめです。

重要なポイント

  • 東洋医学では古典「傷寒論」に由来する処方
  • 盗汗(寝汗)の代表方剤として伝統的に使われてきた
  • 神経過敏・不眠・動悸・口渇・微熱を伴うタイプによく合う
  • 更年期障害や心因性発汗にも応用される
  • 甘草を含むため偽アルドステロン症に注意
  • 寝汗が中心の方は、当院オンライン診療でもご相談いただけます

参考文献・出典

  • PMDA 医薬品添付文書「ツムラ柴胡桂枝乾姜湯エキス顆粒(医療用)」
  • 日本皮膚科学会編「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」
  • 中医学古典「傷寒論」(後漢・張仲景)
  • 日本東洋医学会「漢方医学教育コアカリキュラム」

よくある質問(Q&A)

寝汗にどれくらいで効きますか?

個人差はありますが、目安として2〜4週間で寝汗の量・回数の変化を感じる方が多く、しっかり整うまでは2〜3か月かかります。

漢方は「体質を整える」薬なので、即効性より継続性が大事です。

睡眠薬や抗不安薬と一緒に飲んでもいいですか?

基本的には併用可能ですが、薬剤師・医師にご相談ください。

柴胡桂枝乾姜湯は神経の高ぶりを鎮める作用があるため、睡眠薬の量が結果的に減らせることもあります。

更年期のホットフラッシュや寝汗にも効きますか?

はい、更年期障害は柴胡桂枝乾姜湯の代表的な適応症の一つです。

「のぼせ・イライラ」が中心なら加味逍遙散、「冷え・貧血」が中心なら当帰芍薬散、「神経過敏・寝汗・動悸」が目立つなら柴胡桂枝乾姜湯、という使い分けがよくされます。

多汗症(昼間のわき汗・手汗)にも使えますか?

柴胡桂枝乾姜湯は主に「神経過敏+寝汗」のタイプに使う漢方です。

昼間のわき汗・手汗・足汗が中心の原発性局所多汗症には、エクロックゲル・ラピフォートワイプ・アポハイドローション・プロバンサインなどの保険適応薬がより向いています。詳しくは「多汗症の薬を徹底比較」の記事もご参照ください。

飲み続けて副作用は大丈夫ですか?

比較的安全な漢方ですが、甘草を含むため偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・低カリウム血症)に注意が必要です。

長期で飲む場合は、定期的な血液検査(カリウム値)を行うとより安心です。

オンライン診療で処方してもらえますか?

はい、当院ではオンライン診療で柴胡桂枝乾姜湯を処方しています。寝汗・不眠・動悸など気になる症状や体質をお伺いしたうえでご提案します。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

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この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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