多汗症の薬を徹底比較|わき汗・手汗・足汗・夜間の寝汗まで

多汗症の薬を徹底比較|わき汗・手汗・足汗・夜間の寝汗まで

エクロック・ラピフォート・アポハイド・プロバンサイン・ボトックス・漢方を部位別に整理

わき汗や手汗で困っています。病院で治せる薬はあるんでしょうか?夜の寝汗もひどくて…

汗が多くて日常生活に支障が出る状態は「多汗症」として保険診療で治せます。日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」をベースに整理します。

夜だけの寝汗(盗汗)は多汗症とは違う考え方が必要なので、別途解説します。

多汗症の2タイプ

タイプ原因部位
原発性局所多汗症原因不明、25歳以下発症、左右対称、家族歴ありわき・手のひら・足の裏・頭・顔
続発性多汗症甲状腺亢進・糖尿病・更年期・感染症・腫瘍・薬剤性全身性。夜間・安静時も

原発性の診断基準(ガイドライン2023)

原因不明の局所多汗が6か月以上続き、次のうち2つ以上:

① 25歳以下で発症/② 左右対称/③ 睡眠中は止まる/④ 週1回以上のエピソード/⑤ 家族歴/⑥ 日常生活に支障

「睡眠中は止まる」がポイント。寝ている間も汗が出るなら続発性を疑います。

重症度判定(HDSS)

HDSS症状治療対象
1発汗を感じない/日常支障なし
2気になるが日常支障ほぼなし(軽症)
3時々日常支障あり(中等症)
4我慢できず、いつも支障あり(重症)

🌟 部位別の薬の早見表

部位保険適応の塗り薬飲み薬その他
わきの下エクロックゲル/ラピフォートワイププロバンサイン/漢方ボトックス注射(重症)
手のひらアポハイドローションプロバンサイン/漢方イオントフォレシス
足の裏保険適応外(塩化アルミニウム)プロバンサイン/漢方イオントフォレシス
頭・顔保険適応外プロバンサイン/漢方

① 塗り薬の比較

いずれも抗コリン作用を持ち、汗を出させる神経の指令をブロックします。

薬剤部位剤形主な副作用
エクロックゲル5%わきの下ゲル+アプリケーター口渇・霧視・皮膚炎
ラピフォートワイプ2.5%わきの下使い捨てワイプ口渇・霧視・散瞳・皮膚炎
アポハイドローション20%手のひらローション口渇・霧視・皮膚刺激
塩化アルミニウム(院内製剤)わき・手・足液剤刺激感・かゆみ

共通する注意点

1日1回就寝前または朝に使用

使用後は手を石けんで洗う(目をこすると瞳孔が開く=散瞳の副作用)

禁忌:閉塞隅角緑内障、前立腺肥大による排尿障害

アポハイドは塗布後3〜4時間手を洗わない、子ども・ペットに触れない

② 飲み薬:プロバンサインと漢方

プロバンサイン(プロパンテリン)

用法:1回15mg(1錠)を1日3〜4回。多汗症では「イベント前の頓服」もよく行われます。

適応:唯一の保険適応内服。わき・手・足・頭・顔のいずれの多汗にも使える。

副作用:口渇・便秘・霧視・排尿障害・頻脈・めまい・眠気。

禁忌:閉塞隅角緑内障、前立腺肥大による排尿障害、重篤な心疾患、麻痺性イレウス。

⚠ 入手のご注意:夏場(汗の季節)に全国的に欠品しやすい薬で、薬局によっては取り寄せに時間がかかります。当院では1回の処方は最大14日分までです。

漢方向く方
防已黄耆湯水太り・むくみ、汗をかきやすい
補中益気湯疲れやすく体力低下、自汗・寝汗
加味逍遙散のぼせ・イライラ・更年期世代
当帰芍薬散冷え症・貧血気味の女性
桂枝加竜骨牡蛎湯神経過敏・寝汗・動悸・不安
黄連解毒湯のぼせ・顔の赤み・イライラ

③ その他:ボトックス・イオントフォレシス・手術

治療適応保険当院
ボトックス注射重症腋窩多汗症(保険)/手・足は自費一部◯✕ 専門医へ
イオントフォレシス手・足の多汗症✕ 専門医へ
胸腔鏡下交感神経遮断術他治療無効の重症✕ 専門医へ

🌙 夜間多汗(寝汗・盗汗)について

原発性多汗症では睡眠中は発汗が止まるのが特徴。寝汗が中心の場合は続発性を疑います。

原因特徴
更年期障害40〜50代女性、ホットフラッシュ
自律神経の乱れ・ストレス若年〜中年
内分泌疾患甲状腺機能亢進症、糖尿病
感染症・悪性疾患結核・慢性感染症・悪性リンパ腫
薬剤性抗うつ薬・ホルモン薬の副作用

「念のため検査」を考えたいサイン

体重減少(数か月で5kg以上)

発熱・咳・リンパ節腫れが続く

動悸・手の震え・暑がり増悪(甲状腺)

空腹時の冷や汗・動悸(低血糖)

40代以下なのに急に始まった寝汗

当院で血液検査オーダーや専門医紹介もご案内します。

夜間多汗の薬・漢方の選び方

背景選択肢
更年期障害婦人科HRTが第一選択/加味逍遙散当帰芍薬散桂枝茯苓丸
体力低下・疲労補中益気湯
神経過敏・不安・動悸桂枝加竜骨牡蛎湯柴胡桂枝乾姜湯
のぼせ・顔の赤み・イライラ黄連解毒湯
盗汗の代表方剤柴胡桂枝乾姜湯

🩺 重症度別:私にはどの組み合わせ?

ケースまず上乗せ
軽症〜中等症のわき汗エクロック or ラピフォート
軽症〜中等症の手汗アポハイドローション
複数部位/頭・顔プロバンサイン内服+体質に合う漢方
重症のわき汗専門医でボトックス注射(保険適応)
重症の手・足汗イオントフォレシス(専門医)
夜間多汗中心まず続発性原因チェック→婦人科紹介・甲状腺評価・漢方併用

生活習慣のポイント

  • カフェイン・アルコール・辛い食事を控えめに
  • 吸湿速乾素材・汗ジミ目立たない色を選ぶ
  • 寝室20〜23℃、湿度50〜60%
  • 深呼吸・睡眠リズム・適度な運動でストレスケア
  • 緊張する場面の前にプロバンサイン頓服、汗ふきシート活用

受診予約方法

オンライン診療で多汗症の薬は出してもらえますか?

はい、当院ではエクロックゲル・ラピフォートワイプ・アポハイドローション・プロバンサイン・各種漢方薬を処方しています。

夜間多汗で続発性が疑われる場合は血液検査の提案や婦人科・内分泌内科への紹介を、ボトックス・イオントフォレシス・手術が必要な場合は対面の専門医療機関をご紹介します。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

よくある質問

多汗症は治る?一生薬を続ける?

原発性局所多汗症は慢性の体質的疾患。「治す」より「うまくコントロール」のイメージ。塗り薬は症状で頻度を調整できますし、生活工夫や漢方併用で薬を最小限にしている方も多いです。

エクロックとラピフォート、どっちがいい?

効果は同等。エクロックはアプリケーター付きゲルで「自宅でしっかり塗る」のに向く。ラピフォートは1包1回使い切りで衛生的、外出先でも使いやすい。

アポハイドの塗布後の注意は?

塗布後は3〜4時間手を洗わない乾く前に目や口の周りを触らない。子ども・ペットに触れないよう注意。目に入ったら大量の水で洗い流す。

プロバンサインは「汗をかきそうな日」だけ飲んでもいい?

はい、プレゼン・面接・式典などイベント前の頓服は多汗症診療でよくある使い方。効果ピークは30〜60分後、3〜6時間持続。

夏場は欠品しやすく、当院では最大14日処方。お早めの依頼を。

緑内障や前立腺肥大があると使える薬は限られる?

閉塞隅角緑内障や前立腺肥大による排尿障害では抗コリン薬(エクロック・ラピフォート・アポハイド・プロバンサイン)は使えません。

緑内障でも開放隅角型は使用可。塩化アルミニウム・漢方・ボトックス・イオントフォレシスが代替選択肢。

夜の寝汗だけがひどい。多汗症の塗り薬を使うべき?

原発性多汗症では本来睡眠中は止まるのが特徴。寝汗中心の場合は続発性を考えます。

年齢・月経状況・体重変化・他症状を確認し、必要時に血液検査・婦人科紹介。漢方併用が中心の治療です。

更年期のホットフラッシュ・寝汗に何が効きますか?

婦人科のホルモン補充療法(HRT)が第一選択。

当院では漢方で対応:加味逍遙散・当帰芍薬散・桂枝茯苓丸を体質や随伴症状に応じて使い分けます。

子どもの汗が多くて心配。何歳から治療できる?

エクロック9歳〜、ラピフォート12歳〜、アポハイド12歳〜から保険適応。保護者と一緒に診察にお越しください。

ボトックスはオンライン診療で?

いいえ、対面処置のためオンラインでは不可。原発性腋窩多汗症(重症)は保険適応で皮膚科・形成外科の専門医療機関で受けられます。

オンライン診療で多汗症の薬は出してもらえますか?

はい、当院ではエクロックゲル・ラピフォートワイプ・アポハイドローション・プロバンサイン・各種漢方薬を初診から処方しています。処方が確定すると、薬局から服薬指導のお電話をしたうえで宅薬便(ポスト投函)でお薬をお送りします。最短で翌日にお手元に届きますが、薬局の服薬指導の枠の状況によっては、お電話やお届けが翌日にずれ込むこともあります。あらかじめご了承ください。

参考文献・出典

  • 日本皮膚科学会編「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」
  • PMDA 医薬品添付文書「エクロックゲル/ラピフォートワイプ/アポハイドローション/プロバンサイン錠」
  • 日本産科婦人科学会「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」

この記事の監修者

原 達彦
原 達彦梅田北オンライン診療クリニック 院長
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。

【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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