高血圧の漢方「七物降下湯(しちもつこうかとう)」とは?のぼせ・耳鳴り・頭重に効く理由を医師が解説
七物降下湯とは?効く体質・症状・飲み方まとめ

血圧が高くて、のぼせや耳鳴りがつらい…『七物降下湯』って効きますか

七物降下湯は、「体力虚弱で、最低血圧が高めの方の高血圧に伴う症状(のぼせ・肩こり・耳鳴り・頭重)」に使われる漢方薬です。
7種類の生薬の組み合わせで、
体を整えながら血圧の症状を和らげる働きがあります。
降圧薬の代わりに使う薬ではありませんが、降圧薬と併用して症状を補完する役割もある漢方。
この記事では、どんな方に向いている漢方か、効果・注意点をわかりやすくお伝えします。
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「七物降下湯」とは
七物降下湯(しちもつこうかとう)は、日本の漢方医・大塚敬節(おおつかけいせつ)が考案した処方です。古典中国の処方ではなく、日本で生まれた比較的新しい漢方薬(昭和時代)で、高血圧の随伴症状のために作られました。
現在はツムラ・クラシエ・コタローなどから医療用エキス製剤として販売されており、保険診療で処方できます。
名前の「七物」は7種類の生薬、「降下」は血圧を下げるという意味です。
「七物降下湯」の特徴
合う体質(証)
七物降下湯が合うのは次のような方です。
- 体力虚弱〜中等度(実証ではなく、虚証寄り)
- 最低血圧が高い(下の血圧が90以上のことが多い)
- のぼせ・ほてりがある
- 肩こり・頭重・頭痛
- 耳鳴り
- 顔色が悪い・疲れやすい
- 比較的高齢者に多い
漢方の言葉では「血虚(けっきょ)」+「肝陽上亢(かんようじょうこう)」のタイプ。「血や栄養が不足気味で、上半身に熱がこもっている」状態です。
合わない体質
- 体力充実で赤ら顔、暑がりの実証タイプ
- のぼせよりも冷えが強い
- 若くて元気な高血圧
配合生薬と働き
七物降下湯は次の7種類の生薬から作られています。
- 釣藤鈎(ちょうとうこう):のぼせ・頭痛・めまいを抑える(主薬)
- 当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)・地黄(じおう)・芍薬(しゃくやく):血を補い、血の巡りを改善(「四物湯」の構成)
- 黄耆(おうぎ):気を補う
- 黄柏(おうばく):余分な熱を冷ます
全体として、不足している血と気を補い、上半身の熱(のぼせ)を冷まし、血圧上昇に伴う症状を和らげる方向に働きます。
甘草が入っていないのもこの漢方の特徴。長期使用しても偽アルドステロン症のリスクが低めです。
効能・効果
医療用エキス製剤の添付文書に記載されている効能・効果は、
「身体虚弱の傾向のあるものの次の諸症:高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重)」
注意点として、七物降下湯は「高血圧そのものを治す降圧薬」ではありません。あくまで高血圧に伴う症状を緩和する補助的な役割です。
実際の臨床では、
- 降圧薬を飲んでいるが、のぼせ・耳鳴り・肩こりが残る方
- 軽症高血圧で薬を飲むかどうか迷っている方の補助
- 高血圧体質の改善(最低血圧が高めの方)
- 更年期に伴う高血圧傾向
といったケースで使われます。
有効性
七物降下湯は大塚敬節先生自身の高血圧と腎機能低下に対して処方された経験から生まれた薬です。
- 最低血圧(拡張期血圧)が高めのタイプでの降圧効果が報告
- 頭重・肩こり・耳鳴りの改善
- のぼせ・顔のほてりの軽減
- 腎機能の安定(軽度〜中等度の腎機能低下のサポート)
現代医学的な大規模試験はありませんが、長年の臨床経験で「最低血圧が高めで、のぼせや耳鳴りを伴う高血圧体質」に効果があるとされています。
降圧薬ほどの降圧効果はないため、明らかに高い血圧(160/100以上など)はまず西洋薬で治療し、七物降下湯は症状緩和や軽症の補助として使うのが一般的です。
用法・用量
医療用エキス製剤の標準的な飲み方は次のとおりです。
通常、成人に1日7.5g(2.5g×3包)を、食前または食間に水または白湯で経口投与。年齢・症状により適宜増減。
飲み方のポイント
- 食前(食事の30分前)または食間がベスト
- 水または白湯で飲む
- 2〜4週間で症状の変化を判定
- 降圧薬と併用OK(むしろ補助として併用が一般的)
- 家庭血圧の記録と一緒に効果を見るとわかりやすい
副作用と注意点
七物降下湯は甘草が入っていないため偽アルドステロン症のリスクが低めで、長期に飲みやすい漢方ですが、いくつかの注意点があります。
注意したい副作用
- 消化器症状(胃のもたれ・食欲不振・下痢):地黄が胃に重いことがある
- 発疹、かゆみ
- 肝機能の数値の異常
- まれに間質性肺炎(咳・息切れ・発熱が続く場合は要受診)
使用できない方・注意が必要な方
- 本剤の成分に過敏症の既往がある方
- 胃腸虚弱で地黄(じおう)が合わない方:胃もたれ・下痢が出やすい
- 降圧薬を飲んでいて血圧が下がりすぎる場合:医師と相談
- 妊婦・授乳婦:医師と相談
- 高度の腎機能障害:原疾患の評価が先
飲み合わせ
- 降圧薬(ARB・Ca拮抗薬等):併用OK。血圧モニタリングしながら
- 他の漢方との併用:地黄・釣藤鈎の重複に注意
- 抗血小板薬・抗凝固薬:当帰・川芎の影響に注意(出血傾向)
受診を考えたい症状
次のような症状があるときは、漢方ではなく病院を受診してください。
- 180/110以上の重症高血圧:すぐに降圧薬での治療が必要
- 突然の激しい頭痛・ろれつ困難・手足の麻痺(脳卒中の可能性)
- 胸の痛み・息切れ(心臓の病気)
- 空咳・息切れ・発熱が続く(間質性肺炎)
- 白目や肌が黄色っぽい(肝機能障害)
- 思っていた効果と違う・血圧が下がらない
まとめ
七物降下湯は、「体力虚弱で、最低血圧が高めの方の高血圧に伴う症状(のぼせ・肩こり・耳鳴り・頭重)」に使われる日本生まれの漢方薬です。日本の漢方医・大塚敬節が考案した処方。
降圧薬の代わりではなく、補助的に症状を和らげる役割が中心。降圧薬を飲んでいるけど、のぼせや耳鳴りが残る方の選択肢として活躍します。
甘草が入っていないため偽アルドステロン症のリスクが低めで、長く飲みやすい漢方です。
重要なポイント
- 1日3回、食前または食間に服用
- 体力虚弱・最低血圧高め・のぼせ・耳鳴りの方に向いている
- 降圧薬の代わりではなく補助として使うことが多い
- 効果判定は2〜4週間
- 家庭血圧の記録と一緒に評価する
- 甘草が入っていないので長期使用しやすい
- 重症高血圧(180/110以上)はまず西洋薬で治療を
「降圧薬は飲んでるけど、つらい症状が残る」「軽症高血圧で漢方も試してみたい」という方の選択肢として、体質に合えば長く使える漢方。安定して内服を続けている方は、オンライン診療での継続処方も活用できます。
参考文献・出典
- PMDA(医薬品医療機器総合機構):ツムラ七物降下湯エキス顆粒(医療用)添付文書
- 日本東洋医学会:漢方処方解説
- 大塚敬節:『漢方診療三十年』
- 『漢方診療マニュアル』
よくある質問(Q&A)
-
七物降下湯で本当に血圧が下がるの?
-
はっきり言うと、降圧薬ほどの強い効果はありません。あくまで「高血圧に伴う症状(のぼせ・肩こり・耳鳴り・頭重)を緩和する」位置づけです。
軽度の降圧効果は期待できるとされていますが、血圧が140/90以上であれば、まず降圧薬(西洋薬)を使うのが現代医学の標準。七物降下湯は降圧薬と併用したり、ごく軽症で薬は使いたくない方の選択肢として使われます。
-
七物降下湯の費用はいくらくらい?
-
医療用エキス製剤の薬価は、ツムラの場合1包2.5gで約18円。1日3包なので、
- 1日:約54円
- 1か月(30日):約1,620円(薬価ベース)
- 3割負担で約490円/月、1割負担で約160円/月
※診察料は別途。比較的お手頃です。
-
どれくらいで効きはじめる?
-
のぼせ・肩こり・耳鳴りなどの症状の改善は2〜4週間で見え始める方が多いです。血圧そのものの変化を見るには1〜3ヶ月程度の継続が必要。
家庭血圧計で毎日朝・夕に測定して記録すると、効果や用量調整の参考になります。
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降圧薬と一緒に飲んでもいい?
-
むしろ併用が一般的です。降圧薬で血圧そのものはコントロールしつつ、残るのぼせ・耳鳴り・頭重を漢方で補完するパターン。両者の相互作用はほとんど報告がなく、医師の管理のもとで安全に併用できます。
「降圧薬は嫌だから漢方だけ」というのは、血圧が高すぎる場合は危険。重症高血圧は脳卒中・心筋梗塞のリスクが高いので、医師と相談のうえ判断してください。
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胃もたれが出てしまった…
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七物降下湯に含まれる地黄(じおう)が胃にやや重い生薬で、胃腸虚弱な方では胃もたれ・食欲不振が出ることがあります。
対処法:
- 食後に飲んでみる(添付文書は食前推奨だが、合わない方は食後でも可)
- 1日3包から2包に減らす
- 合わない場合は別の漢方への変更を医師と相談
「漢方は安全」と思って我慢せず、合わなければ違う薬を試すのが正解です。
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妊娠中・授乳中は飲める?
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妊娠中・授乳中の安全性データは限られています。「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ」使用します。
そもそも妊娠中の高血圧(妊娠高血圧症候群)は専門的な管理が必要なので、自己判断ではなく必ず産婦人科・内科の医師と相談してください。
-
最低血圧(下の血圧)が高いのが気になる…
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最低血圧(拡張期血圧)が高いのは、若い方や中年で多い高血圧パターンです。七物降下湯は「最低血圧が高めの方」に特に適していると考案者の大塚敬節先生は述べていました。
具体的には:
- 下の血圧が常に85以上ある
- 上の血圧はそこまで高くない(140台前後)
- 頭重・耳鳴り・肩こりを伴う
といった方には、漢方の選択肢として七物降下湯を試す価値があります。ただし、生活習慣(塩分・運動・体重)の改善が前提です。
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お酒は飲んでもいい?
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七物降下湯自体とアルコールの直接的な相互作用は少ないですが、アルコールは高血圧を悪化させる代表的な要因です。
節酒(できれば1日1杯程度まで)が高血圧治療の基本。「漢方を飲んでるから安心」と過信せず、生活習慣の見直しを並行してください。
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他の漢方と一緒に飲んでもいい?
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七物降下湯は甘草を含まないので、甘草の重複問題は起きません。ただし、
- 釣藤鈎を含む他の漢方(釣藤散など):主薬の重複に注意
- 地黄を含む他の漢方(八味地黄丸、六味地黄丸など):胃もたれリスク
他に漢方を飲んでいる方は、必ず医師・薬剤師に伝えてください。
-
いつまで続けたほうがいい?
-
症状の改善が見られたら、3〜6ヶ月続けて様子を見るのが一般的です。長期使用しても比較的安全な漢方なので、合っていれば長く続けられます。
ただし、症状が落ち着いて生活習慣も整ってきたら、減量・中止を医師と相談するのもアリ。「ずっと飲み続ける」より「必要なときに使う」の方が漢方らしい使い方とも言えます。
\ 来院不要・スマホで完結 /
このお薬の相談は、オンライン診療で
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この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
-
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
詳しいプロフィールはこちら
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