関節の腫れ・湿疹に効く漢方「越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)」とは?急性期の使い方を医師が解説
越婢加朮湯とは?効く体質・症状・飲み方まとめ

関節の腫れや湿疹の急性期に『越婢加朮湯』って効きますか

越婢加朮湯は、「体力中等度以上の方の、むくみや汗を伴う関節炎・湿疹・腎炎」の急性期に使われる漢方薬です。
6種類の生薬の組み合わせで、
余分な水分と熱を体の外へ排出する働きがあります。
関節リウマチ・痛風発作・滲出性の湿疹など、「腫れて熱を持つ」状態によく使われる漢方。
この記事では、どんな方に向いている漢方か、効果・注意点をわかりやすくお伝えします。
「越婢加朮湯」とは
越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)は、約2000年前の漢方の古典『金匱要略(きんきようりゃく)』に記載された処方です。
元の処方「越婢湯」に白朮(または蒼朮)を加えたものなので「越婢“加朮”湯」。「水のたまる関節炎・腎炎」の特効薬として、長く使われてきました。
現在はツムラ・クラシエ・コタローなどから医療用エキス製剤として販売されており、保険診療で処方できます。
「越婢加朮湯」の特徴
合う体質(証)
越婢加朮湯が合うのは次のような方です。
- 体力中等度以上
- 関節が腫れて熱を持っている
- むくみ(浮腫)がある
- 汗が出ている、または汗をかきやすい
- のどが渇く
- 炎症が強い湿疹(ジクジクする滲出性のもの)
- 比較的体力があり、急性期の症状
漢方の言葉では「水熱(すいねつ)」のタイプ。「体に余分な水分がたまり、そこに熱(炎症)が加わっている」状態です。
合わない体質
- 体力虚弱な虚証タイプ
- 冷えが強い、汗をかかない
- 慢性期で炎症が落ち着いた状態
- 胃腸が極端に弱い方
越婢加朮湯は「急性期・実証」向けの強めの漢方です。慢性期や体力のない方には別の漢方が選ばれます。
配合生薬と働き
越婢加朮湯は次の6種類の生薬から作られています。
- 麻黄(まおう):発汗を促し、余分な水を排出(主薬)
- 石膏(せっこう):強力に熱を冷ます
- 白朮または蒼朮(びゃくじゅつ/そうじゅつ):水分代謝を改善
- 生姜(しょうきょう):体を温め、胃腸を整える
- 大棗(たいそう):胃腸を保護
- 甘草(かんぞう):他の生薬の働きを調和
全体として、発汗・利水・冷却の3つの作用で、腫れや炎症を急速に和らげる方向に働きます。
効能・効果
医療用エキス製剤の添付文書に記載されている効能・効果は、
「浮腫と汗が出て小便不利のあるものの次の諸症:腎炎、ネフローゼ、脚気、関節リウマチ、夜尿症、湿疹」
実際の臨床では:
- 変形性関節症(特に膝に水がたまるタイプ)
- 関節リウマチの急性増悪期
- 痛風発作
- 急性〜亜急性の湿疹(特にジクジクしたタイプ)
- アトピー性皮膚炎の急性増悪
- 結膜炎、急性腎炎
- 夜尿症(一部のタイプ)
- 滲出性中耳炎
と幅広く使われますが、共通点は「腫れて、熱を持って、水が絡む」状態です。
有効性
越婢加朮湯は急性期の関節炎・湿疹での経験的有効性が知られています。
- 変形性膝関節症(水がたまるタイプ):膝の腫れ・水の量・痛みの軽減
- 関節リウマチの急性炎症:抗リウマチ薬と併用での補助療法
- 滲出性湿疹・接触皮膚炎:かゆみと腫れの軽減
- 痛風発作:コルヒチン・NSAIDsの代替・補助として
現代医学的なエビデンスは限定的ですが、整形外科・皮膚科の現場で「腫れて熱を持つ急性期」に処方されることが多い実用的な漢方です。
「体質改善」というよりは「急性期に短期間使って症状を抑える」使い方が中心です。
用法・用量
医療用エキス製剤の標準的な飲み方は次のとおりです。
通常、成人に1日7.5g(2.5g×3包)を、食前または食間に水または白湯で経口投与。年齢・症状により適宜増減。
飲み方のポイント
- 食前(食事の30分前)または食間がベスト
- 水または白湯で飲む
- 急性期の炎症には1〜2週間の短期使用が基本
- 症状が落ち着いたら中止または他の漢方へ切り替え
- 麻黄を含むため夕方以降の服用は不眠の原因になることも
- 「飲み始めたら汗が出てきた」のは作用の表れ(脱水に注意)
特に気をつけたい副作用
麻黄による副作用
越婢加朮湯には「麻黄(まおう)」が含まれており、エフェドリンという成分が含まれます。これにより:
- 動悸・頻脈
- 血圧上昇
- 不眠(特に夜の服用)
- 発汗過多
- 排尿困難(前立腺肥大の方)
- 手足の震え、興奮
これらが出やすいので、心疾患・高血圧・甲状腺機能亢進症・前立腺肥大の方は慎重に使う必要があります。
偽アルドステロン症
甘草を含むため、長期使用で偽アルドステロン症(手足のだるさ・しびれ・こむら返り・血圧上昇・低カリウム血症)に注意が必要です。これも長期に飲まない理由の一つです。
使用できない方・注意が必要な方
- 本剤の成分に過敏症の既往がある方
- 麻黄を含む他の薬を服用中の方(葛根湯、小青竜湯、市販の風邪薬・喘息薬など)
- 心疾患(特に虚血性心疾患)のある方
- 重症の高血圧
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病等)
- 前立腺肥大による排尿困難
- 糖尿病(血糖が上がることがある)
- 虚弱体質・極度の胃腸虚弱
- 妊婦・授乳婦:医師と相談
- 高齢者:心血管リスクが高い方は慎重に
飲み合わせ
- 他の麻黄を含む漢方(葛根湯、小青竜湯、麻黄湯など):エフェドリンの重複に注意
- 市販の風邪薬・鼻炎薬・喘息薬:エフェドリン系成分の重複
- 降圧薬:効果が弱まる可能性
- MAO阻害薬:併用注意
- カテコールアミン製剤:作用増強
- 甘草を含む他の漢方:偽アルドステロン症リスク
受診を考えたい症状
- 動悸・脈の乱れ・胸の痛み
- 急激な血圧上昇
- 不眠が強く生活に支障
- 排尿困難
- 手足のだるさ・こむら返り(偽アルドステロン症)
- 空咳・息切れ・発熱が続く(間質性肺炎)
- 白目や肌が黄色っぽい(肝機能障害)
- 全身に広がる発疹・水ぶくれ
まとめ
越婢加朮湯は、「体力中等度以上の方の、腫れて熱を持つ関節炎・湿疹・浮腫」の急性期に使われる漢方薬です。発汗・利水・冷却の3つの作用で、炎症と水の貯留を素早く改善します。
特に変形性膝関節症(水がたまるタイプ)・関節リウマチの急性炎症・痛風発作・滲出性湿疹でよく処方される実用的な漢方。
一方で麻黄による動悸・血圧上昇・不眠のリスクがあるため、心疾患・高血圧・甲状腺機能亢進症・前立腺肥大のある方は慎重に。基本は短期使用が原則です。
重要なポイント
- 1日3回、食前または食間に服用
- 急性期1〜2週間の短期使用が基本(長期はNG)
- 体力中等度以上・腫れて熱を持つ症状に向いている
- 麻黄含有のため動悸・血圧上昇・不眠に注意
- 心疾患・高血圧・甲状腺亢進・前立腺肥大の方は慎重に
- 夕方以降の服用は不眠の原因に
- 他の麻黄含有薬・市販風邪薬との重複に注意
「急性期に切れ味よく効かせる」タイプの漢方。慢性期や体質改善ではなく、症状が強い時期に短期間使う薬として位置づけられます。
参考文献・出典
- PMDA(医薬品医療機器総合機構):ツムラ越婢加朮湯エキス顆粒(医療用)添付文書
- 日本東洋医学会:漢方処方解説
- 『金匱要略』(漢方古典)
- 『漢方診療マニュアル』
よくある質問(Q&A)
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膝の水がたまるけど、越婢加朮湯で抜ける?
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越婢加朮湯は「水がたまって腫れる膝(変形性関節症)」でよく使われる漢方です。「水を抜く」というよりは、「水がたまりにくくする・腫れを引かせる」方向に働きます。
明らかに水が大量にたまっている場合は、整形外科で関節穿刺(針で抜く処置)が必要です。漢方は処置後の再貯留予防や、たまり始めの段階で活躍します。冷湿布・サポーターと組み合わせて使うのが一般的です。
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越婢加朮湯の費用はいくらくらい?
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医療用エキス製剤の薬価は、ツムラの越婢加朮湯で1gあたり16.1円です。1日量7.5g(1包2.5g×3包)なので、
- 1日:約121円
- 1か月(30日):約3,623円(薬価ベース)
- 3割負担で約1,090円/月、1割負担で約360円/月
※診察料は別途。基本は短期使用なので、月単位で長く飲み続ける薬ではありません。
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どれくらいで効きはじめる?
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急性期の炎症や腫れには数日〜1週間で効果を感じる方が多いです。湿疹のかゆみや関節の腫れが「軽くなった」「水が出てきた」と実感する方もいます。
1週間続けても全く変化を感じない場合は、合っていない可能性があります。長く漫然と続けず、医師と再評価してください。
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高血圧があるけど飲める?
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慎重に判断します。越婢加朮湯に含まれる麻黄(エフェドリン)は、血圧を上げる可能性があるためです。
降圧薬でコントロールできている軽症高血圧なら短期間(1〜2週間)使うことはありますが、コントロール不良や重症高血圧では他の漢方(麻黄を含まないもの)を選ぶ方が安全。必ず医師と相談してください。
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痛風発作に使えるって本当?
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はい、痛風発作の急性期にNSAIDs(ロキソニン等)の代替・補助として使われることがあります。腫れて熱を持って痛む痛風発作は、越婢加朮湯の「腫れ+熱」のターゲットに合います。
ただし第一選択はNSAIDsやコルヒチン。「NSAIDsが腎機能で使えない」「胃腸が弱くて飲めない」といったケースで漢方が選ばれます。発作期だけ1〜2週間使い、症状が引いたらフェブリク等の尿酸降下薬での再発予防に切り替えるのが一般的です。
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麻黄って何がそんなにヤバいの?
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麻黄に含まれるエフェドリンという成分が、交感神経を刺激する作用を持つためです。市販の風邪薬や喘息薬にも入っていることが多く、医療現場では「エフェドリン」「メチルエフェドリン」として注射でも使われる強力な薬。
- 動悸・頻脈・血圧上昇
- 不眠
- 排尿困難
- 手の震え・興奮
これらが起こりやすいので、心臓・血圧の悪い方や前立腺肥大の方は注意。麻黄が入っている漢方を複数併用する(葛根湯+越婢加朮湯など)と、エフェドリン量が重なって副作用が出やすくなります。
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妊娠中・授乳中は飲める?
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麻黄を含むため、妊娠中・授乳中は基本的に避ける方が安全です。妊娠中に強い炎症・腫れの治療が必要な場合は、医師と十分相談のうえで判断します。
授乳中は、エフェドリンが母乳に移行するため、別の漢方や西洋薬を選ぶことが多いです。
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夜に飲んだら眠れなくなった…
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麻黄のエフェドリン作用で不眠が出やすいのが越婢加朮湯の特徴。夕方〜寝る前の服用は避けてください。
対策:
- 朝・昼・夕方(夕方は17時頃まで)の3回に
- 夜の分は服用しない(1日2回に減らす)
- それでも不眠が続くなら他の漢方への変更を検討
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他の漢方と一緒に飲んでもいい?
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麻黄を含む他の漢方(葛根湯、小青竜湯、麻黄湯、麻杏甘石湯、五積散など)との併用は基本NG。エフェドリン量が重なって動悸・血圧上昇・不眠が出やすくなります。
市販の風邪薬・鼻炎薬・喘息薬にもエフェドリン系が入っていることが多いので注意。漢方を飲むときは、他に飲んでいる薬を必ず医師・薬剤師に伝えてください。
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いつまで続けたほうがいい?
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越婢加朮湯は「急性期に短期間使う」のが基本。1〜2週間で症状が落ち着けば中止し、慢性期には別の薬・漢方に切り替えます。
長期使用は:
- 麻黄による副作用(動悸・血圧上昇・不眠)が出やすい
- 甘草による偽アルドステロン症のリスク
のリスクが高まるため、推奨されません。漫然と続けず、症状の経過を見て医師と相談してください。
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この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
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【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)を修了し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/公衆衛生修士(MPH)/産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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