不眠でオンライン診療を初めて受ける方へ|当院での薬の選び方フロー
不眠でオンライン診療を初めて受ける方へ
当院での薬の選び方フロー

不眠でオンライン診療を受けたら、どんな順番でお薬が処方されますか?

当院では依存性のないお薬から段階的に試す方針です。まず漢方 → 次にメラトニン受容体作動薬かオレキシン受容体拮抗薬(作用時間の短いもの)→ 効果不十分なら作用時間の長いものへ進む流れです。
目次
慢性不眠症とは?
不眠症状(寝つけない・途中で目が覚める・朝早く起きてしまうなど)が週に3回以上かつ3ヶ月以上続き、日中の機能障害(疲労感・集中力低下・気分の落ち込みなど)を伴う場合、慢性不眠障害と定義されます(米国精神医学会 DSM-5、国際睡眠障害分類 ICSD-3)。不眠は大きく入眠困難(寝つけない)/中途覚醒(夜中に目が覚める)/早朝覚醒(朝早く目が覚めて再入眠できない)の3タイプに分けられ、複合することもあります。
当院には、新たに不眠を自覚された方から、すでに睡眠薬を服用中で見直しを希望される方まで、さまざまな方がオンライン診療で来院されます。
オンライン診療での処方ルール
厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2018年策定/最新改訂2023年)により、オンライン診療の初診ではベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬および抗精神病薬は処方できません。
当院はこの指針を遵守し、依存性が極めて少ないお薬を中心とした安全性重視の処方を基本方針としています。
当院の不眠治療フロー
ステップ1:まずは漢方薬から
不眠の背景にはストレスや自律神経の乱れがあるケースが多く、当院ではまず漢方薬を提案しています。
- 酸棗仁湯(さんそうにんとう):不眠の代表的な漢方。疲労感を伴う眠れなさに
- 加味帰脾湯(かみきひとう):心身の疲労・不安・抑うつ傾向を伴う不眠に
- 抑肝散(よくかんさん):イライラ・神経過敏・興奮傾向のある不眠に(高齢者にも使いやすい)
- 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう):動悸や神経質な傾向のある不眠に
体質や訴えに合わせて1種類を選び、まず2週間ほど試していただきます。
ステップ2:メラトニン受容体作動薬 / オレキシン受容体拮抗薬(軽症向け)
漢方で改善しない場合、依存性のない睡眠薬に進みます。
- ラメルテオン(ロゼレム):体内時計を整えるタイプ。昼夜逆転傾向のある方に
- ボルズィ:最新のオレキシン受容体拮抗薬で、半減期が最も短く翌朝への持ち越しが最小限。軽症の方や日中の活動への影響を最小限にしたい方に
- ダリドレキサント(クービビック):オレキシン受容体拮抗薬の中で作用時間が短く、翌日への持ち越しが少ないタイプ
ステップ3:作用時間が中等度のオレキシン受容体拮抗薬
ステップ2で効果不十分な場合に進みます。
- レンボレキサント(デエビゴ):入眠困難・中途覚醒の両方に対応
ステップ4:作用時間の長いオレキシン受容体拮抗薬
中途覚醒や早朝覚醒が強く残る場合に検討します。
- スボレキサント(ベルソムラ):オレキシン系の中で作用時間が比較的長い
【オレキシン系の使い分けポイント】ボルズィ・クービビック・デエビゴ・ベルソムラの4剤はいずれも依存性が少なく安全性が高いお薬です。当院では「作用時間の長さ」で使い分けており、軽症な方ほど短時間作用型を選び、翌日への影響を最小限にしています。
1回の診察で進める?それとも段階的に?
患者さんの状態に応じて柔軟に対応します。
- 段階的に進める例:ステップ1の漢方を2週間 → 効果不十分でステップ2のラメルテオンへ
- 一気に進める例:すでに不眠が長引いていて漢方では難しそうな場合、最初からデエビゴで始めることもあります
それでも改善しない場合
漢方とオレキシン系を併用しても改善せず、不眠がさらに進行する場合は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の検討が必要になります。当院ではオンライン診療上、安全性を優先して対面診療クリニックへの紹介をご案内しています。
オレキシン受容体拮抗薬の作用時間比較
当院で使用するオレキシン受容体拮抗薬は、いずれも依存性が極めて少なく安全性が高いことが特徴です。使い分けの主なポイントは「作用時間(半減期 T1/2)」で、軽症の方ほど短時間作用型を選び、翌日への持ち越し(眠気・ふらつき)を最小限にしています。
| 商品名(一般名) | Tmax(時間) | T1/2(時間) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| クービビック (ダリドレキサント) | 0.75〜1.42 | 6.16〜6.92 | 翌朝への持ち越しに配慮しやすい設計。軽症〜中等症向け |
| デエビゴ (レンボレキサント) | 1.0〜1.5 | 約17〜19 | 入眠困難・中途覚醒の両方で使いやすい万能型 |
| ベルソムラ (スボレキサント) | 1.5 | 約10 | 最初期から使われている代表的な薬 |
| ボルズィ | 0.5 | 2.13 | 半減期が最も短く、翌朝への持ち越しが少ない最新の選択肢 |
※ 患者さんの不眠タイプ(入眠困難なのか・中途覚醒なのか)と日中活動への影響を考慮して選択します。
まとめ:シンプルで安全な処方フロー
当院の不眠治療は「依存性のないお薬から段階的に試す」というシンプルな方針です。経験上、このフローで多くの方の不眠は改善し、大きく困るケースは少ないと感じています。
オンライン診療で受診できる症状についてはこちらもご覧ください。
※本記事は当院での標準的な処方フローの一例をご紹介したものです。実際の処方は患者さんお一人おひとりの状況に応じて医師が判断します。
参考文献・出典
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2018年策定/2023年改訂)
- American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th Edition (DSM-5).
- American Academy of Sleep Medicine. International Classification of Sleep Disorders, 3rd Edition (ICSD-3).
- Sateia MJ, et al. Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults. J Clin Sleep Med. 2017;13(2):307-349.
- 三島和夫ほか. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン. 厚生労働科学研究班. 2014.
- 各薬剤の医薬品添付文書・インタビューフォーム(PMDA)
よくある質問(Q&A)
-
オンライン診療で睡眠薬は処方してもらえますか?
-
厚生労働省の指針により、ベンゾジアゼピン系睡眠薬(マイスリー・レンドルミン・デパスなど)はオンライン診療では原則初診では処方できません。一方、依存性の少ない漢方薬・ラメルテオン(ロゼレム)・オレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ・ベルソムラ・クービビック)は処方可能です。
-
最初の診察から睡眠薬を出してもらえますか?
-
症状の重さや経過によって対応します。軽症・発症まもない方には漢方から試すことが多いですが、不眠が長く続いている場合は最初からオレキシン受容体拮抗薬(デエビゴなど)を選ぶこともあります。診察時に状況をお聞きして、最適なお薬を一緒に決めます。
この記事の監修者

- 梅田北オンライン診療クリニック 院長
-
【経歴】
産業医科大学 医学部医学科 卒業。済生会系病院での臨床研修・救急、総合診療勤務を経て、複数の企業で嘱託や専属産業医を歴任。
その後、産業医学・公衆衛生の専門性を活かし、「梅田北オンライン診療クリニック」を立ち上げる。
現在は京都大学大学院(社会健康医学系専攻)に在籍し、働く人々の健康や医療アクセスの課題に向き合いながら、臨床と予防の両面から医療の新しい形を実践している。
【資格・所属】
日本産業衛生学会・社会医学系専門医・指導医/労働衛生コンサルタント(保健衛生)/
産業医科大学産業医学ディプロマ/日本東洋医学会/JATEC・ACLS・AMLS修了 ほか
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