インフルエンザの薬は何がいい?1回で効く「ゾフルーザ」とは
インフルエンザの薬は何がいい?
1回で効く「ゾフルーザ」とは

インフルエンザの『ゾフルーザ』は1回でいいんですか?

はい、ゾフルーザは、A型・B型インフルエンザに効く飲み薬で、
1回の服用で治療が完結するのが大きな特徴です。
ウイルスが体内で増えるのを止める「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」というタイプの薬で、
インフルエンザウイルスの増殖を根本から抑えます。
当院では保険処方も自費での予防投与もオンラインで対応することができます。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
目次
ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)とは
ゾフルーザは、インフルエンザ(A型・B型)治療に使われる飲み薬です。
最大の特徴は「1回の内服で治療が完結する」点で、2020年からは家庭内感染などの予防にも使用できるようになりました(※10mg錠は治療のみ)。
キーワード:ゾフルーザとは/バロキサビル/インフルエンザ薬/1回内服
ゾフルーザの特徴
● 新しい作用機序
インフルエンザウイルスの増殖に必要な酵素「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ」を狙って作用。
ウイルスのmRNA合成を妨げ、増殖を抑えます。
● 単回投与が可能
2015年に臨床試験開始、2018年に治療薬として承認。2020年に予防薬としても承認。
● 小児にも使える剤形
錠剤(10mg/20mg)と顆粒があり、小児にも投与しやすい設計です。
● 耐性への配慮
従来のインフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)が効きにくいウイルスにも有効。
ただし小児では、耐性ウイルス(薬が効きにくい変異型)出現の可能性が高く、使用には注意が必要です。
効能・効果
● 治療
A型またはB型インフルエンザの治療に使用します。
● 予防
感染者と同居・共同生活しているハイリスクの方(高齢者、慢性疾患持ちなど)の発症予防に使用されます。
※インフルエンザワクチンの代わりにはなりません。10mg錠は予防に使用できません。
有効性(臨床試験の要点)
- 成人・12歳以上:ゾフルーザ群では症状が落ち着くまで53.7時間(プラセボ群では80.2時間)
- ハイリスク患者:73.2時間 vs 102.3時間(ゾフルーザ vs プラセボ)
- 小児:体重により39〜61時間程度で症状が軽快
- 家族内での予防:発症率1.9%(ゾフルーザ) vs 13.6%(プラセボ)
※B型インフルエンザの予防に関するデータは限定的です。
用法・用量(体重・年齢で決まります:すべて単回内服)
● 治療の場合
※発症から48時間以内の内服が望ましい
| 対象 | 用量 |
|---|---|
| 成人・12歳以上(80kg以上) | 20mg錠×4錠または顆粒8包(80mg) |
| 成人・12歳以上(80kg未満) | 20mg錠×2錠または顆粒4包(40mg) |
| 小児(40kg以上) | 20mg錠×2錠または顆粒4包(40mg) |
| 小児(20~40kg未満) | 20mg錠×1錠または顆粒2包(20mg) |
| 小児(10~20kg未満) | 10mg錠×1錠(10mg) ※顆粒に変更しない |
⚠️ 顆粒と錠剤の混用・代替は禁止。(10mgが必要な場合に顆粒で代用しない/20mg以上必要なときに10mg錠を複数使用しない)
● 予防の場合
※接触後2日以内に開始し、10日を超える効果は未確認
| 対象 | 用量 |
|---|---|
| 成人・12歳以上(80kg以上) | 20mg錠×4錠または顆粒8包(80mg) |
| 成人・12歳以上(80kg未満) | 20mg錠×2錠または顆粒4包(40mg) |
| 小児(40kg以上) | 20mg錠×2錠または顆粒4包(40mg) |
| 小児(20~40kg未満) | 20mg錠×1錠または顆粒2包(20mg) |
※10~20kg未満の小児には、予防用量の設定がありません。
予防投与について
- 対象:インフルエンザ患者と同居または共同生活している重症化リスクの高い方
- 方法:接触後48時間以内に1回内服
- 注意:B型予防データは少なく、ワクチンや手洗い・換気等の感染対策も併用が必要
使用できない方(禁忌)
- 本剤にアレルギー歴がある方
注意が必要な方(必ず医師に相談を)
- 妊娠中・授乳中の方(胎児・乳児への影響が不明)
- 重い肝機能障害がある方(データ不足)
- 新生児・乳児・低出生体重児(臨床試験未実施)
- 高齢者や基礎疾患をもつ方(状態に応じた注意が必要)
飲み合わせに注意が必要な薬
- ワルファリン:血液をサラサラにする薬。プロトロンビン時間が延びる報告あり。併用中の方は必ず医師へ。
- 他の薬、市販薬、健康食品を使っている方は必ず医師に申告してください。
副作用と頻度(臨床試験より)
● 重大な副作用(頻度不明)
- ショック・アナフィラキシー(息苦しさ、意識低下、じんましんなど)
- 異常行動(急な走り出しや徘徊など:特に就学期〜未成年男子で注意)
- 虚血性大腸炎(腹痛・下痢・血便)
- 出血(鼻血、血尿、血便など)
● 比較的軽度な副作用
- 下痢、悪心、嘔吐、頭痛、肝機能値上昇(AST/ALT)
● 副作用の頻度目安
| 対象・試験内容 | 副作用発現率 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 成人・12歳以上(治療) | 約4〜5% | 下痢など |
| ハイリスク患者(治療) | 約6% | 悪心、下痢など |
| 予防試験 | 約2% | 悪心、下痢など |
体調に異変を感じた場合は、自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。
まとめ
- 1回の内服で治療・予防が可能なインフルエンザ薬
- 発症後48時間以内の治療開始、接触後2日以内の予防投与が効果的
- 重症化リスクのある方の予防的投与にも有用
- 自己判断での用量変更は禁物。年齢・体重に応じた適正な用法を
- 副作用は比較的少ないが、まれに重大な症状が起こる可能性あり
- 他の薬(特にワルファリン)との併用には注意
参考文献・出典
Hayden FG et al., Lancet Infect Dis 2020; 20:1257–1268.(予防効果に関する試験)
塩野義製薬「ゾフルーザ錠/顆粒 インタビューフォーム(最新版)」
添付文書(第5版/2025年1月改訂)
PMDA 医薬品医療機器総合機構「医薬品情報検索」
→ https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
KEGG DRUG Database:D11021
Ison MG et al., N Engl J Med 2018; 379:913-923.(成人治療効果に関する主要論文)
よくある質問(Q&A)
-
ゾフルーザとはどんな薬?どんな特徴があるの?
-
ゾフルーザは、A型・B型インフルエンザに効く飲み薬で、1回の服用で治療が完結するのが大きな特徴です。
ウイルスが体内で増えるのを止める「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」というタイプの薬で、インフルエンザウイルスの増殖を根本から抑えます。
これまで主流だったタミフル(オセルタミビル)やリレンザ(ザナミビル)とは作用の仕組みが異なる新しいタイプです。
-
この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?
-
ゾフルーザは「1回の服用でウイルスの増殖を抑える」という点で、従来薬に比べて利便性が高い薬です。
また、ノイラミニダーゼ阻害薬に耐性を示すウイルスにも一定の効果があることが確認されています。
臨床試験では、発症からの症状改善時間が平均53.7時間と、従来薬より短縮される傾向が示されました。
一方で、小児では薬が効きにくくなる変異ウイルス(I38変異)が出やすいため、慎重な投与が推奨されています。
-
ゾフルーザはいつ発売されたの?どれくらい新しい薬なの?
-
ゾフルーザは2018年に日本で初めて承認・発売されました(塩野義製薬株式会社)。
その後、2020年に「インフルエンザ予防」の適応が追加され、家族内感染などにも使えるようになりました。
海外でも米国FDAが2018年に承認しており、世界的に使用が広がっています。
-
ゾフルーザの薬価はいくら?実際の自己負担額は?
-
2025年時点の薬価)
剤形 薬価(1錠/1包あたり) 一般的な使用量(成人1回分) 自己負担(3割負担の目安) ゾフルーザ錠10mg 1,535.4円 小児などで10mg×1錠 約460円 ゾフルーザ錠20mg 2,438.8円 成人40mg(2錠) 約1,460円 ゾフルーザ顆粒2%分包 約1,200円前後(換算) 体重に応じ使用 約360円〜 ※ゾフルーザは単回投与のため、30日分を処方されることは通常ありません。
-
ゾフルーザの効果が出るまでどのくらい?効果はどれくらい続く?
-
ゾフルーザは内服後約4時間で血中濃度がピークに達し、ウイルスの増殖を抑える効果が始まります。
症状の改善はおおむね2〜3日で実感されることが多く、薬の効果は数日間持続します。
半減期(体内で薬が半分になる時間)は約100時間あり、1回の投与で十分な効果を保ちます。
-
ゾフルーザの予防投与はどんなときに使うの?
-
ゾフルーザは、インフルエンザ患者と同居または密に接触した人で、重症化リスクが高い方の予防目的に使われます。
具体的には、高齢者・糖尿病・心疾患・慢性呼吸器疾患を持つ方などが対象です。
感染者との接触後48時間以内に1回服用することで、発症率を大きく下げることができます。
臨床試験では、発症率1.9%(ゾフルーザ) vs 13.6%(プラセボ)と、予防効果が確認されています。
ただし、ワクチン接種の代わりにはなりません。当院でも予防投与を自費にて院内発送で対応しています。
https://h-ohp.com/column/2610/ 👈関連ページです
-
妊娠中にゾフルーザは飲める?胎児への影響は?
-
妊娠中は原則として使用を避けることが推奨されています。
動物実験では催奇形性(赤ちゃんの発育への影響)は見られていませんが、ウサギで流産の報告があるため、
治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用します。
胎盤を通過することが確認されているため、主治医と十分に相談した上で使用を検討します。
-
授乳中でもゾフルーザは使えるの?
-
ゾフルーザは母乳中への移行が確認されている(動物実験)ため、
授乳を続けながらの使用は慎重に検討が必要です。
授乳を一時的に中止する、または服薬を控えるなど、医師と相談して判断します。
安全性データが十分でないため、自己判断での使用は避けましょう。
-
子どもにもゾフルーザは使える?年齢制限はある?
-
ゾフルーザは10kg以上の小児に使用可能です。
年齢よりも体重に応じて用量が決まるのが特徴です。
ただし、小児では薬が効きにくくなるウイルス(I38変異)が出やすく、再発や感染拡大のリスクがあるため、
医師の指示に従って慎重に使います。
10kg未満の乳児には安全性データがなく、使用できません。



