体力が落ちたときに飲む漢方「十全大補湯」って?疲れやすい人におすすめの理由

体力が落ちたときに飲む漢方「十全大補湯」って?
疲れやすい人におすすめの理由

病気をした後体力が落ちたので『十全大補湯』を使っています。

十全大補湯は、病後や体力が落ちた時期に使われる代表的な漢方薬です

十全大補湯はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

十全大補湯(ツムラ)とは?効能・飲み合わせ・副作用を医師がやさしく解説



「十全大補湯」とは

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)は、漢方の古典『和剤局方』に記載されている処方です。
病気などで弱った体の「抗病力」を十全=十分に補うことを目的とした薬です。


含まれる主な生薬(10種類)

  • オウギ
  • ケイヒ
  • ジオウ
  • シャクヤク
  • センキュウ
  • ソウジュツ
  • トウキ
  • ニンジン
  • ブクリョウ
  • カンゾウ

代表的な成分とその由来:

  • ペオニフロリン(シャクヤク由来)
  • β‑オイデスモール(ソウジュツ由来)
  • ギンセノシド Rb1・Rg1(ニンジン由来)
  • グリチルリチン酸(カンゾウ由来)

十全大補湯の特徴

  • 昭和60年、厚生省の通知に基づいて医療用漢方製剤として承認

効能・効果(医療用添付文書より)

  • 病後の体力低下
  • 疲労倦怠(だるさ)
  • 食欲不振
  • 寝汗
  • 手足の冷え
  • 貧血

有効性(基礎研究ベース)

※以下は主に非臨床試験(動物・細胞)の結果です。

● 体力・回復力の底上げ

  • 抗がん剤や感染症で弱った動物モデルで、
    生存期間の延長や体重減少の抑制が確認されました。

● 免疫バランスの調整

  • 抗体産生(液性免疫)・細胞性免疫(CTL活性)・NK細胞活性・マクロファージの働きを強化

● サイトカインの調整作用

  • IL‑1β、GM‑CSF、IL‑2、IFN‑γ、TNFα、IL‑6などの産生を増やす作用あり(条件による)

● 抗がん剤の副作用軽減

  • 白血球・赤血球の減少抑制、腎障害(CDDP)の軽減、体重減少の予防など

● 貧血への作用

  • 骨髄細胞の回復促進(CFU-Sの回復など)

※効果の出方には個人差があり、証(体質・症状)との相性を医師が見極めます。


用法・用量

  • 成人は通常、1日7.5gを2〜3回に分けて服用
  • 食前または食間(食後2時間ほど経ってから)が目安
  • 年齢・体重・症状によって医師が調整

使用できない方(禁忌ではないが注意が必要)

以下に該当する方は、医師に必ず相談してください。

  • 胃腸がとても弱い方(吐き気・下痢・食欲不振が出やすい)
  • すでに食欲不振や悪心・嘔吐が強い方
  • 妊婦・妊娠の可能性がある方(医師が有益性を判断)
  • 授乳中の方(授乳継続とのバランスを検討)
  • 高齢者(生理機能の低下により、減量の必要がある)
  • 小児(小児対象の臨床試験なし)

飲み合わせに注意が必要な薬

❗ 特に注意:甘草・グリチルリチン酸を含む薬

一緒に服用すると、以下の副作用リスクが高まります:

  • 偽アルドステロン症: むくみ/血圧上昇/低カリウム血症
  • ミオパチー: 筋力低下・だるさ・四肢のけいれん・まひなど

該当する例

  • 芍薬甘草湯/補中益気湯/抑肝散など
  • グリチルリチン酸を含む配合薬(風邪薬や滋養強壮剤など)

注意: 他院処方や市販薬・栄養ドリンクにも含まれることがあります。


副作用と発生頻度

【重大な副作用】※頻度不明

  • 偽アルドステロン症
  • ミオパチー(筋力低下など)
  • 肝機能障害・黄疸

いずれも、異常を感じたら服用を中止して医療機関へ。

【その他の副作用】

  • 皮膚: 発疹、発赤、かゆみ、じんましんなど
  • 消化器: 胃の不快感、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振

モニタリングの目安(医療側が実施)

  • 血清カリウム値
  • 血圧・体重
  • 肝機能(AST/ALT/γ-GTP など)

※服用中に、むくみ/急激な体重増加/足のつり/だるさ などがあれば、自己判断せずに受診してください。


まとめ

  • 十全大補湯は、病後や体力が落ちた時期に使われる代表的な漢方薬です
  • 甘草由来成分の副作用に注意し、薬の重複を避けることが大切
  • 効果は個人差があり、証(体質・症状)との相性を医師が診断

参考文献・出典

添付文書(医療用):効能・副作用・注意事項の記載

KEGG DRUG(D06981):薬効分類や構成情報

ツムラIF(インタビューフォーム):開発経緯・試験データ

論文例(非臨床):

Takahashi H. et al. Int J Immunother. 1995;11(2):65-69.

Kiyohara H. et al. Planta Med. 1995;61(5):429-434.

よくある質問(Q&A)


この薬の同じ系統の漢方薬と比べたときの強みは何ですか?

十全大補湯は「気(エネルギー)と血(栄養)を同時に補う」ことを目的とした漢方です。
同じく体力回復を目的とした漢方(例:補中益気湯・人参養栄湯)と比べて、

  • 貧血や冷えといった「血虚(けっきょ)」症状に強く、
  • より幅広い虚弱体質(疲れ・食欲不振・寝汗など)に対応しやすい

という点が特徴です。

十全大補湯の先発品はいつ発売された薬ですか?

医療用の「ツムラ十全大補湯エキス顆粒(医療用)」は、
昭和60年(1985年)5月31日付通知(薬審2第120号)に基づき承認されました。
その後、さまざまなメーカーが後発品(ジェネリック相当)を製造しています。

1か月(30日分)で処方された場合の薬価と実際の目安価格は?

ツムラ十全大補湯の薬価は
1gあたり18.4円です。

  • 通常処方:1日7.5g → 30日で225g
  • 薬価:18.4円 × 225g = 4,140円

自己負担額(3割負担の場合)は、
1,242円前後が目安になります(※調剤料・技術料等は別途)。

飲んでどれくらいで効いてくる?効果はどのくらい続く?

漢方薬は即効性より“体質に合った積み重ね”による改善が基本です。

  • 効果が出るまで:数日〜2週間程度で体の変化を感じることがあります。
  • 持続時間:1日2~3回の服用が必要なことから、数時間〜半日程度の持続と考えられます。

※急性症状に対する即効薬ではないため、長期的なバランス調整が目的です。

妊娠中に飲んでも大丈夫ですか?

基本的には、妊娠中の使用は慎重に判断する必要があります
添付文書上も「治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合にのみ使用」とされています。

妊娠初期は特に慎重に自己判断せず、必ず産婦人科や主治医に相談してください。

授乳中でも服用していい薬ですか?

添付文書では、授乳継続の有益性と、治療の有益性を比較して判断するよう記載されています。

甘草成分の母乳移行は明確ではないものの、
過剰摂取で乳児に影響を与える可能性は否定できないため、
医師が必要と判断した場合のみ、注意して使用します。

子どもに使ってもいい薬ですか?

ツムラ十全大補湯エキス顆粒は、小児を対象とした臨床試験が実施されていません。

市販薬(小児用)とは異なるため、医療機関での処方が原則です。

小児への投与は、体重換算や症状に応じて医師が慎重に判断する必要があります。