清暑益気湯ってどんな薬?夏のだるさ・下痢・食欲不振に効く漢方の話

清暑益気湯ってどんな薬?
夏のだるさ・下痢・食欲不振に効く漢方の話

夏バテで『清暑益気湯』を使っています。

清暑益気湯は夏バテ(暑気あたり)による「だるさ」「食欲がない」

「お腹をこわしやすい」「夏やせ」などに対して処方されます。

清暑益気湯はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

清暑益気湯(せいしょえっきとう)とは?

清暑益気湯の効果・飲み方・副作用を解説

暑さで「食欲がない」「全身がだるい」「お腹がゆるい」「夏やせしている」——いわゆる“夏バテ(暑気あたり)”に対して処方される医療用漢方が清暑益気湯(せいしょえっきとう)です。
ここでは、効果・飲み方・飲み合わせ・副作用などを患者さん向けにわかりやすく
紹介します。


■ 名称の意味

「清暑」=暑さによる熱をさますこと
「益気」=弱った元気(気)を補うこと


■ 構成生薬(9種類)

  • ソウジュツ(蒼朮)
  • ニンジン(人参)
  • バクモンドウ(麦門冬)
  • オウギ(黄耆)
  • チンピ(陳皮)
  • トウキ(当帰)
  • オウバク(黄柏)
  • カンゾウ(甘草)
  • ゴミシ(五味子)

代表的な含有成分(目安)

  • β-オイデスモール(ソウジュツ由来)
  • ギンセノシドRb1/Rg1(ニンジン由来)
  • ベルベリン(オウバク由来)
  • グリチルリチン酸(カンゾウ由来)
  • ゴミシンA(ゴミシ由来)

■ 清暑益気湯の特徴

  • 古典医学書『医学六要』にある清暑益気湯をもとに開発。

■ 効能・効果

  • 暑気あたり(しょきあたり)
  • 暑さによる:
    • 食欲不振
    • 下痢
    • 全身のだるさ(倦怠)
  • 夏やせ

⚠ 「証(しょう)」が合わない場合は効果が出にくいため、様子を見て改善がなければ中止が原則です。


■ 有効性について

  • 本剤は、漢方処方に基づく医療用エキス製剤として承認。
  • 添付文書には大規模臨床試験データの記載はありませんが、長年の使用経験に基づくエビデンス(根拠)があります。

■ 用法・用量(飲み方)

  • 通常:成人1日7.5gを2〜3回に分けて服用
  • 服用のタイミング:食前または食間
  • 個別調整:年齢・体重・体調により増減可

飲みやすくする工夫

  • お湯に溶かして服用する
  • そのまま水で服用しても可
  • 夏バテ時は胃腸が弱っているため、少量から始めるのも一案

■ 使用に注意が必要な方

✳️ 添付文書上「絶対禁忌(使用してはいけない)」の明記はありませんが、以下の方は慎重に判断が必要です。

  • 妊婦: 有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ使用
  • 授乳中: 治療効果と母乳育児の両立を検討して判断
  • 小児: 臨床試験データなし(効果・安全性が未確立)
  • 高齢者: 生理機能の低下を考慮し、減量など配慮が必要

■ 飲み合わせに注意すべき薬(相互作用)

清暑益気湯にはカンゾウ由来のグリチルリチン酸が含まれます。以下のような薬との併用で、副作用リスクが高まる可能性があります。

【注意が必要な併用薬】

  • カンゾウを含む漢方薬
     例:芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など
  • グリチルリチン酸を含む一般薬
     例:肝機能改善薬(グリチルリチン酸+アミノ酸などの配合剤)

【なぜ危険?】

  • 腎臓でカリウムの排出が進む
     → 低カリウム血症偽アルドステロン症(高血圧・むくみ・体重増加)
     → **筋力低下や手足のつり(ミオパチー)**の原因になることも

➤ 服用中は、血圧やむくみのチェック、必要に応じて血清カリウム値の確認を行います。


■ 副作用

【重大な副作用(頻度不明)】

  • 偽アルドステロン症:
     むくみ、体重増加、血圧上昇、低カリウム血症など
     → 異常があれば投与中止+医師の診察が必要
  • ミオパチー:
     脱力感、手足のけいれん、麻痺など
     → 発症時は直ちに中止・受診

【その他の副作用(頻度不明)】

  • 過敏症: 発疹、蕁麻疹など
  • 消化器症状: 食欲不振、胃の不快感、悪心、下痢など

■ その他の注意

  • 清暑益気湯を使用中に湿疹や皮膚炎が悪化することがあります。

■ 受診の目安

以下のような症状があれば、服用を中止し、医師に相談してください。

  • 急な体重増加、むくみ
  • 全身のだるさ
  • 筋力の低下・手足のけいれん
  • 血圧の上昇、動悸
  • 発疹・皮膚症状の悪化

■ まとめ

妊婦・授乳中・小児・高齢者は、医師と相談してから使用しましょう。

清暑益気湯(せいしょえっきとう)は、夏の暑さによる体力低下・食欲不振・下痢・全身倦怠・夏やせに使われる医療用漢方です。

証(体質・症状)が合えば有効ですが、改善が見られないときは中止を検討します。

カンゾウ由来の成分に注意し、飲み合わせや副作用リスクの管理が重要です。


参考文献・出典

【添付文書】:
PMDA医療用医薬品情報検索
→「ツムラ清暑益気湯エキス顆粒」で検索

【KEGG DRUG】:
D06997 – Seishoekkito

【薬価収載情報】:
厚生労働省「薬価基準収載品目リスト」

【日経DI・治療薬マニュアル・治療薬ハンドブック】などの市販書籍

【医学論文(PubMedなど)】:
「seishoekki-to」「暑気あたり」「夏バテ fatigue herbal medicine」等で検索可能

よくある質問(Q&A)


この薬はどんなときに使うの?

夏バテ(暑気あたり)による「だるさ」「食欲がない」「お腹をこわしやすい」「夏やせ」などに対して処方されます。
特に「暑さで体力が落ちた人」「胃腸が弱っている人」に向いています。

清暑益気湯と同じような市販の漢方薬との違い・強みは?

同じく「夏バテ」や「胃腸虚弱」に使われる補中益気湯や人参養栄湯などと比べて、清暑益気湯は“暑さによる不調”に特化している点が最大の強みです。
とくに湿熱(蒸し暑さ)による下痢や食欲低下、倦怠感に対して、オウバクやゴミシのような清熱・収斂作用のある生薬を含んでいる点が特徴です。

先発薬はいつ発売されたの?

清暑益気湯(ツムラ清暑益気湯エキス顆粒)は、昭和60年5月31日付 厚生省薬務局通知(薬審2第120号)に基づき承認されました。
それ以前は、漢方処方として使われてきた伝統薬であり、医療用漢方としての製品化はこの承認以降です。

1か月(30日分)処方された場合の薬価や自己負担額は?

ツムラ清暑益気湯の薬価は21.6円/gです。

  • 通常1日用量:7.5g(=162円)
  • 30日分:162円 × 30日 = 4,860円(薬価ベース)

▶︎ 自己負担額(3割負担の場合):約1,460円

※薬局での実際の調剤料・技術料等は別途かかることがあります。

清暑益気湯の効果はどれくらいで現れる?持続時間は?

一般に、漢方薬は体質(証)に合えば数日〜1週間程度で改善が見られるとされますが、個人差があります。
清暑益気湯は体力の回復を目的とするため、即効性より徐々に体調を整える効果が期待されます。
▶︎ 持続時間は明確なデータがないものの、1日2〜3回服用を継続することで作用を維持する設計です。

妊娠中に清暑益気湯は使っても大丈夫?

妊娠中の使用については、「有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と添付文書で明記されています。
▶︎ 主治医と相談のうえ、必要性と安全性を慎重に評価した上での使用が原則です。
特に妊娠初期や不安定な時期には安易な使用は避けましょう。

授乳中でも服用できますか?

添付文書上、授乳中の使用については、
治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討」と記載されています。
▶︎ つまり、医師と相談して服薬か授乳継続かを判断する必要があります。
成分の母乳移行について明確なデータはないため、安全のため慎重な姿勢が求められます。

子どもにも使えるの?

清暑益気湯は、小児を対象とした臨床試験は行われていません。
年齢制限は添付文書上にありませんが、安全性が十分に確立されていないため、使用の可否は必ず小児科医に相談しましょう。

飲み合わせに気をつけるべき薬はある?

はい、あります。
清暑益気湯にはカンゾウ(甘草)由来のグリチルリチン酸が含まれているため、以下の薬と併用すると副作用(偽アルドステロン症・低カリウム血症など)のリスクがあります。

  • カンゾウを含む他の漢方薬(芍薬甘草湯、補中益気湯など)
  • グリチルリチン酸を含む肝機能改善薬・総合感冒薬など

定期的な血圧測定や血清カリウム値の確認が推奨されます。

清暑益気湯はどれくらいでやめた方がいい?

証(体質・症状)が合っていない場合は効果が出にくく、漫然と飲み続けるべきではありません。
通常、1週間〜10日程度で改善傾向がなければ中止を検討し、医師に相談してください。