「だるい・疲れやすい」に効く漢方|補中益気湯ってどんな薬?

「だるい・疲れやすい」に効く漢方
補中益気湯ってどんな薬?

元気がなくて『補中益気湯』を使っています。

補中益気湯は、疲れやすくて体力が落ちている人や、

食欲がなくて元気が出ないときに使われる漢方です。

補中益気湯は、オンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

補中益気湯(ツムラ)とは?

効果・有効性・副作用・飲み合わせまで医師がやさしく解説


✅ 要点(まずここだけ)

  • 体力・消化機能が落ち、だるさが強い体質の方に用いる代表的な漢方薬です。
  • 食欲不振/病後の体力低下/夏やせ/かぜをひきやすい」といった症状に処方されます。
  • カンゾウ(甘草)由来の成分を含むため、むくみ・高血圧・低カリウム血症には注意。
    他の薬との飲み合わせ確認がとても重要です。

補中益気湯とは?

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、漢方古典『弁惑論』に記載された処方です。
消化機能(脾胃)を「補い」、体力・気力(気)を「益す」 ことを目的とした薬です。

  • 10種類の生薬(オウギ、ソウジュツ、ニンジン、トウキ、サイコ、タイソウ、チンピ、カンゾウ、ショウマ、ショウキョウ)を顆粒化
  • 含有成分例:
    β-オイデスモール、ギンセノシドRb1・Rg1(ニンジン)、
    サイコサポニンb1・b2(サイコ)、
    ヘスペリジン(チンピ)、グリチルリチン酸(カンゾウ)、[6]-ショーガオール(ショウキョウ)など

補中益気湯の特徴

  • 特に「消化機能が落ち、四肢のだるさが強い虚弱体質」に焦点を当てて処方されます

効能・効果(どんなとき使う?)

以下のような症状に適応があります(証=体質が合う場合):

  • 夏やせ
  • 病後の体力増強
  • 結核症(体力低下などの随伴症状に)
  • 食欲不振/胃下垂
  • 感冒(かぜ)
  • 痔・脱肛・子宮下垂
  • 陰萎(いんい=性機能の低下)
  • 半身不随
  • 多汗症(汗をかきすぎる)

証(体質)に合わないと効果が出にくいため、使用の際は注意が必要です。


有効性(どう効くのか)

■ 免疫調整作用

  • 抗体産生を高める液性免疫の活性化
  • NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の働きを強める
  • マクロファージの貪食能(異物を取り込む力)を高める
  • インフルエンザ感染モデルでIFN(インターフェロン)産生の早期誘導

■ 病後や高齢者の体力低下に

  • ヒト試験でNK細胞活性の上昇(n=35)
  • 高齢マウスでは低下した免疫機能(T細胞・NK細胞・抗体産生)が回復

■ 食欲不振・悪液質モデルでの作用

  • がん悪液質モデルマウスで、体重・筋肉量の減少を抑制

■ 感冒(インフルエンザ感染マウス)

  • 生存期間の延長などの効果報告

臨床的な位置づけ

  • ヒトでの研究は一部の指標(NK活性など)が中心
  • 「かぜをひきにくくなった」「だるさ・食欲が改善した」という体感が期待される
  • 効果が得られない場合は漫然と使い続けないことが重要です(添付文書でも明記)

用法・用量(飲み方)

  • 成人:1日7.5gを2〜3回に分けて、食前または食間に服用
  • 年齢・体重・体質・症状に応じて増減あり

💡目安:1〜2週間で効果が感じられない場合は見直しを。


使用を避けるべき人(慎重投与)

  • 妊婦:有益性が危険性を上回る場合のみ使用
  • 授乳中:母乳栄養の利点と治療効果を見比べて判断
  • 小児:臨床試験データなし
  • 高齢者:生理機能の低下を考慮し、減量など配慮

飲み合わせに注意が必要な薬(相互作用)

■ 重複使用に注意(偽アルドステロン症のリスク増加)

  • 甘草(カンゾウ)含有の漢方薬
    • 芍薬甘草湯、抑肝散、六君子湯など
  • グリチルリチン酸含有薬
    • グリチルリチン酸一アンモニウム配合剤(例:L-システインなど)

⚠ これらを併用すると「むくみ、高血圧、筋肉のけいれん・まひ」などの副作用が出やすくなります


副作用とその頻度

■ 重篤な副作用(頻度不明)

  • 間質性肺炎:せき、息切れ、発熱 → すぐに中止して受診
  • 偽アルドステロン症:むくみ、高血圧、体重増加、低カリウム血症
  • ミオパチー:脱力、四肢のしびれやまひ(低K血症が原因)
  • 肝機能障害/黄疸:だるさ、黄ばみ、尿の濃色化

■ その他の副作用(頻度不明)

  • 過敏症:発疹、じんましん
  • 消化器症状:吐き気、胃の不快感、下痢など

💡皮膚の湿疹・炎症が悪化するケースも報告あり。


【受診の目安】

以下のような症状が出たら、いったん服用を中止し、すぐにご相談ください

  • せき・息切れ・発熱
  • むくみ、体重急増、動悸、血圧の急上昇
  • 脱力感、筋けいれん
  • 皮膚や白目の黄ばみ(黄疸)

まとめ

  • 補中益気湯は「消化機能の低下+強いだるさ」がある虚弱体質に合う処方
  • 病後の体力低下、夏やせ、かぜ、食欲不振に幅広く使われます
  • グリチルリチン酸(甘草)由来の副作用・飲み合わせには要注意
  • 合わない体質で使い続けるのはNG。効果が乏しければ中止・再評価を
  • 基本服用量:成人1日7.5gを2〜3回、食前または食間

当院では…

体質(証)評価・既往歴・併用薬・血圧や電解質も踏まえて処方を行います。

「自分に合っているか知りたい」「今の薬と一緒に飲んでいいか不安」など、
ぜひお気軽にご相談ください。最適な服用法から中止のサインまで、丁寧にご説明いたします。

参考文献・出典

添付文書(最新版:2023年12月 第1版)

ツムラ公式サイト「くすりのしおり」

KEGG DRUG(ID:D06789)

以下の学術論文

Utsuyama et al. Mechanisms of Ageing and Development, 122, 341–352

Mori K. et al. Antiviral Res, 44(2):103–111

Abe S. et al. Immunopharmacol Immunotoxicol, 21(2):331–342

山中幹基ほか. 日本泌尿器科学会雑誌 89(7):641–646(精子機能関連)

よくある質問(Q&A)


補中益気湯って、どんなときに使われる漢方ですか?

補中益気湯は、疲れやすくて体力が落ちている人や、食欲がなくて元気が出ないときに使われる漢方です。
とくに、「夏バテ・病後の回復・かぜをひきやすい・胃が下がって食欲がない」などが主な使用場面です。
体質としては、「胃腸が弱くて、手足がだるい」タイプの人に向いています。

この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?

補中益気湯は、「脾胃(ひい)」と「気(き)」の虚弱を補うという明確なコンセプトを持つ漢方薬です。
同じ「虚弱体質・体力低下」に使われる他の漢方薬と比較すると、以下の点が強みです:

  • 「気虚(ききょ)」に対して中核的な処方:とくに疲労倦怠感・食欲不振・夏バテなどに特化しており、胃腸の働きを根本から補います。
  • 多汗・子宮下垂・脱肛など、「気の下陥(かかん)」症状にも対応:単なる滋養強壮ではなく、内臓下垂や陰萎、半身不随などの症状に処方できる点がユニーク。
  • 補剤でありながら、軽度の感冒にも使える:風邪をひきやすい人の免疫調整作用も示されており、軽い「感冒」に対して処方されることもあります。
  • 補気だけでなく「気を持ち上げる」昇提作用がある:これは他の補剤(例:六君子湯、十全大補湯など)にはない補中益気湯特有の特長です。

補中益気湯は「元気が出ない+下がりやすい体質」の中心処方であり、体の内側から底上げする点が他の補剤との大きな違いです。

補中益気湯の先発薬の発売年はいつですか?

ツムラの補中益気湯(エキス顆粒)は、1985年(昭和60年)に「薬審2第120号通知」に基づいて製造承認されました。
漢方の古典「弁惑論」に基づく処方で、医療用としての導入は
40年近い歴史
があります。

1か月(30日)処方だと薬価や実際の自己負担額はいくらぐらい?

ツムラ製品の薬価は1gあたり22.5円です。1日7.5gで計算すると:

  • 30日分薬価:22.5円 × 7.5g × 30日 = 約5,063円
  • 自己負担(3割負担)なら:約1,519円
  • 自己負担(1割負担)なら:約506円

※薬局の調剤料や地域差により多少異なる場合がありますます。

効果はどれくらいで出る?作用の発現時間や持続時間は?

明確な時間は添付文書上では記載されていませんが、体質に合っていれば1〜2週間以内に効果を実感する方が多いです。
慢性的な体調不良や虚弱体質に使われるため、即効性よりも継続的な使用での改善を目指します。
持続時間については個人差がありますが、1日2~3回の分割服用で安定した血中濃度を保つよう設計されています。

妊娠中でも飲めますか?

妊娠中の使用については、「有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用」とされています。
特に甘草(カンゾウ)成分による
むくみ・高血圧・低カリウム血症のリスク
に注意が必要です。
妊娠中の自己判断での服用は避け、必ず医師と相談してください。

授乳中に飲んでも大丈夫ですか?

添付文書では「授乳の継続または中止を含めて、医師が有益性とリスクを慎重に検討すること」とされています。
成分の一部が母乳中に移行する可能性があるため、赤ちゃんへの影響が懸念される場合は授乳を中止する判断もありえます。
飲む前に、授乳中であることを医師・薬剤師に必ず伝えましょう。

子どもに使っても大丈夫?

小児に対する臨床試験は実施されていません。
そのため、使用する場合は医師の判断により慎重に行う必要があります。
年齢や体格に応じた減量、体質評価が重要です。
漢方薬の多くは成人向けの設計になっているため、自己判断では与えないようにしましょう。