かゆみが治らない人に「当帰飲子」って知ってる?冷え体質の漢方で内側から対策

かゆみが治らない人に「当帰飲子」って知ってる?
冷え体質の漢方で内側から対策

乾燥体質で湿疹があり『当帰飲子』を使っています。

当帰飲子は、冷え症体質に伴う乾燥傾向の湿疹やかゆみに効果が期待される漢方薬です。

当帰飲子はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

当帰飲子(とうきいんし)とは

当帰飲子は、漢方の古典『済生方(さいせいほう)』に記載された処方をもとに開発された、医療用漢方製剤です。
10種類の生薬(トウキ、ジオウ、シツリシ、シャクヤク、センキュウ、ボウフウ、カシュウ、オウギ、ケイガイ、カンゾウ)から構成されています。

名前の意味について:

  • 「当帰」:中心となる生薬である「当帰」から。
  • 「飲」:冷やして服用することを指示。
  • 「子」:頻回に服用することを意味する説と、音の響きの整えとして使われたという説があります。

適応となる体質・症状

  • 冷え症体質
  • 分泌物の少ない慢性湿疹(乾燥タイプ)
  • かゆみ

当帰飲子の特徴

抗アレルギー作用の確認

薬効薬理試験において、抗アレルギー作用が確認されています(後述参照)。


効能・効果

冷え症の体質の方の以下の症状に使われます:

  • 慢性湿疹(分泌物の少ない乾燥タイプ)
  • かゆみ

⚠️ 漢方薬は「証(しょう)」=体質に合うかが効果に大きく関わります。
効果が乏しい場合は、継続投与を避ける必要があります。


有効性(薬効薬理試験)

  • 抗アレルギー作用が薬効薬理試験で確認されています。
  • 乾燥傾向の湿疹やかゆみに対して、体の内側から炎症やアレルギー反応を鎮める方向に働くと考えられます。

※現時点では、個別の臨床試験データは資料に記載されていません。
小児を対象とした臨床試験は実施されていません。


用法・用量

  • 通常成人:1日7.5gを2〜3回に分けて、食前または食間に服用
  • 年齢・体重・症状により適宜増減可能

使用に注意が必要な方

以下の方は、使用に際して注意が必要です(医師にご相談ください):

  • 著しく胃腸が弱い方:食欲不振、胃の不快感、吐き気、嘔吐、下痢などが現れる可能性あり。
  • すでに吐き気・食欲不振などのある方:症状が悪化する恐れ。
  • 妊婦・妊娠の可能性がある方治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ使用。
  • 授乳中の方:授乳継続か中止かを医師と相談して判断。
  • 小児:臨床試験未実施。慎重に使用判断。
  • 高齢者生理機能の低下を考慮し、減量など慎重な投与が必要。

飲み合わせに注意すべき薬

当帰飲子に含まれる甘草(カンゾウ)やその成分であるグリチルリチン酸は、他の薬との併用で副作用リスクが高まる場合があります。

併用注意の代表例

甘草含有の漢方製剤

  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  • 抑肝散(よくかんさん) など

グリチルリチン酸含有薬

  • グリチルリチン酸アンモニウム・グリシン・L-システイン配合
  • 同DL-メチオニン配合 など

なぜ注意が必要か?

  • 低カリウム血症が進行しやすくなる
     → これにより以下のような副作用が起きやすくなります:

偽アルドステロン症

  • 血圧上昇
  • むくみ(浮腫)
  • 体重増加 など

ミオパチー

  • 筋力低下
  • 脱力感
  • 手足のけいれん・麻痺 など

🔍 血清カリウム値や血圧の定期的なチェックが必要です。
また、漢方薬同士の併用時には生薬の重複にも注意が必要です。


副作用と頻度

重篤な副作用(頻度不明)

偽アルドステロン症

  • 低カリウム血症
  • 血圧上昇
  • ナトリウム・体液の貯留
  • 浮腫(むくみ)、体重増加 など

→ 異常が見られた場合は直ちに投与中止。
 必要に応じてカリウム補充などの処置を行います。

ミオパチー

  • 脱力感
  • 四肢のけいれん・麻痺など

→ 投与中止し、早急に医療機関へ。

その他の副作用(頻度不明)

  • 過敏症状:発疹、発赤、かゆみ、じんましん など
  • 消化器症状:食欲不振、胃の不快感、吐き気、嘔吐、下痢 など

早めの受診が望ましい症状

  • むくみ
  • 急な体重増加
  • 動悸
  • 筋力低下
  • こむら返り(足のつり)
  • 強い倦怠感 など

まとめ

  • 当帰飲子は、冷え症体質に伴う乾燥傾向の湿疹やかゆみに効果が期待される漢方薬です。
  • 抗アレルギー作用は薬理試験で確認されています。
  • 効果は体質(証)との相性が重要。合わなければ継続は避けましょう。
  • 用法:成人では1日7.5gを2〜3回に分けて服用。
  • 甘草やグリチルリチン酸含有薬との併用に注意。副作用リスク(偽アルドステロン症・ミオパチー)があります。
  • 妊娠中・授乳中・小児・高齢者・胃腸虚弱の方は、必ず医師に相談してください。

受診のご案内

乾燥肌のかゆみが長引く、冬に悪化する、合う漢方が分からない…
そんなお悩みは、ぜひ当院にご相談ください。

体質(証)を評価したうえで、当帰飲子を含めた最適な治療をご提案します。を行っています。
気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。


参考文献・出典

医療用医薬品添付文書(JAPIC、PMDA):用法・副作用・相互作用などが詳細に記載されています

KEGG DRUGデータベースD07018 当帰飲子

「漢方医学」関連文献(日漢協の刊行物、日東書院『漢方処方解説』など)

ツムラ「インタビューフォーム」:製剤特性や薬理試験、構成生薬情報が豊富

厚生労働省 医療用漢方製剤通知(薬審2第120号)

よくある質問(Q&A)


この薬はどんな人に使われるの?

冷え性体質で、乾燥傾向のある湿疹やかゆみに悩んでいる方に使われます。
とくに「分泌物の少ない乾燥タイプの慢性湿疹」や「かゆみ」が対象です。

この薬と同じ系統の他の薬と比べて、どんな強みがあるの?

当帰飲子は、体質(冷え)+皮膚症状(乾燥・かゆみ)の両方を改善することを目的とした処方です。
他の漢方製剤と比較した強みは以下の通りです:

  • 抗アレルギー作用が薬理学的に確認されている点(皮膚症状への有効性の裏付け)
  • 10種類の生薬をバランスよく配合し、血行促進・免疫調整・抗炎症といった多方面から皮膚症状にアプローチ

同じく皮膚疾患に使われる「消風散」や「十味敗毒湯」とは異なり、冷え症体質向けで乾燥肌傾向に強い点が差別化ポイントです。

ツムラ当帰飲子はいつ発売された薬?

この薬は、漢方の古典『済生方』をもとにツムラが製剤化し、**1985年(昭和60年)5月31日付の通知(薬審2第120号)**に基づき製造承認を取得しています。
そこから医療用漢方エキス製剤として販売されました。

1か月(30日)処方された場合の薬価と実際の目安価格(自己負担含む)は?

薬価:21円/g

用法:成人で1日7.5gを2〜3回に分けて服用

30日分(225g)あたりの薬価計算
 21円 × 225g = 4,725円(薬価ベース)

▶ 自己負担額の目安(保険適用3割負担)
約1,420円程度

※別途、調剤料や診察料が加算されることがあります。

この薬は飲んでどれくらいで効く?作用の持続時間は?

漢方薬のため、西洋薬のような即効性ではなく、体質(証)に合っている場合、1〜2週間ほどで徐々に改善傾向が見られるとされます。
作用の持続時間について明確なデータはありませんが、通常は毎日継続して飲むことが前提です。

▶ 急性症状ではなく、慢性的な乾燥性皮膚疾患の体質改善目的で使われるため、継続的な服用が推奨されます。

妊娠中に使っても大丈夫?

妊娠中の使用については以下のとおりです:

  • 「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること」と添付文書に記載あり
  • 安全性を示す十分な臨床データはなし
  • 投与前には、医師が妊娠経過や母体の状態を慎重に評価する必要あり

▶ 自己判断での服用は避け、必ず医師に相談してください。

授乳中でも使えるの?

授乳中の使用については次のとおりです:

  • 母乳への成分移行については不明
  • 添付文書では「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を比較検討し、授乳の継続または中止を判断」とされています。

▶ 授乳中の使用も、医師と相談のうえ判断することが推奨されます。

子どもにも使えるの?

添付文書上では、「小児に対する臨床試験は実施されていない」と明記されています。

安全性や適正用量の情報が不足しているため、原則として小児には慎重に使用されるべきです。

▶ 小児に対しては、体質の見極めも難しいため、専門医の判断に基づく処方が必須です。