「痛み止めで便秘が続く…」それ、オピオイドが原因かも?対策薬スインプロイクとは

「痛み止めで便秘が続く…」それ、オピオイドが原因かも?
対策薬スインプロイクとは

トラマドールで便秘したので『スインプロイク』を使っています。

スインプロイクは、モルヒネ・オキシコドン・フェンタニル・トラマドールなどの

オピオイド鎮痛薬によって起こる便秘(OIC)専用の内服薬です。

スインプロイクはオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

スインプロイクとは?

スインプロイク(一般名:ナルデメジントシル酸塩/商品名:Symproic®)は、オピオイド誘発性便秘症(OIC)の治療薬です。

モルヒネやフェンタニルなどのオピオイド鎮痛薬によって起こる便秘に対し、腸の“μ(ミュー)オピオイド受容体”をブロックして、腸の動きを回復させます。

この薬は脳(中枢)にはほとんど届かないように設計されており、鎮痛効果に影響しにくいことが特徴です。2017年に「オピオイド誘発性便秘症」として承認されました。


スインプロイクの特徴

● OIC(オピオイド誘発性便秘症)は頻度が高い副作用

オピオイド使用中の患者さんの40~80%が便秘を経験します。
耐性がつきにくく、生活の質(QOL)や治療の継続に支障が出ることもあります。

● 脳に影響せず、腸だけに効く

スインプロイクは「末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(PAMORA)」。
脳には届きにくく、痛み止めの効果を残しつつ便秘を改善できます。

● 1日1回0.2mgでOK

少量・1日1回で効果があり、長期投与でも持続的な改善効果が確認されています。
がん・非がん患者のどちらでも有効性が認められています。


効能・効果

  • オピオイド誘発性便秘症(OIC)の改善

※一般的な便秘ではなく、オピオイド薬の副作用として起きる便秘に限って使用されます。


有効性データ(臨床試験より)

● 国内第III相試験(がん患者)

  • 自発排便レスポンダー率
     スインプロイク群:71.1%/プラセボ群:34.4%
     → p<0.0001で統計的に有意
  • 排便時のいきみ・残便感も軽減
  • 鎮痛効果への悪影響なし

● 長期使用でも効果持続

  • 2週目以降も改善が続く
  • PAC‑SYM(便秘症状)・PAC‑QOL(生活の質)も有意に改善

● 非がん性慢性疼痛のOIC(48週投与)

  • 2週目時点のSBMレスポンダー率:82.7%

※SBM(自発排便):下剤などのレスキュー薬を使わずに自然に出た便
※レスポンダー:1週間に3回以上かつ、ベースラインより1回以上多い場合


用法・用量

  • 成人:1回0.2mgを1日1回、経口投与
  • オピオイドを中止した場合は、本剤も中止します。
  • 食前・食後どちらでも服用可能(影響は軽微)

使用できない方(禁忌)

以下に該当する方は使用できません:

  • 本剤の成分にアレルギー歴がある方
  • 消化管閉塞(へいそく)がある、または疑いがある方
  • 閉塞の再発リスクが高い方

注意が必要な方

医師が慎重に判断する必要があるケース:

  • 消化管が弱っている方(潰瘍、憩室疾患、がんの浸潤、クローン病など)
     → 穿孔(腸に穴が開く)リスクあり
  • 血液脳関門の機能が低下している可能性のある方(例:脳腫瘍)
     → 離脱症状や痛み止めの効果変化の可能性あり
  • 妊娠中・授乳中の方
     → 動物試験でのリスク報告あり。慎重に検討
  • 小児・高齢者
     → 小児:安全性未確立/高齢者:副作用のリスクが高まる可能性

飲み合わせに注意すべき薬

スインプロイクは、体の中で以下の“通り道”を通って働きます:

  • CYP3A酵素
     → 肝臓で薬を分解するための酵素
  • P-糖蛋白/P-gp
     → 薬を体外に押し出すポンプのようなタンパク質

これらに影響する薬を同時に使うと、スインプロイクの効果が強くなりすぎたり、弱くなったりする可能性があります。

種類薬の例影響
CYP3Aを抑える薬(分解されにくくなる)イトラコナゾール(AUC:2.9倍)
フルコナゾール(AUC:1.9倍)
副作用のリスク上昇
P-gpを抑える薬(排出されにくくなる)シクロスポリン(AUC:1.8倍)脳に届く量が増える可能性
CYP3Aを強くする薬(分解が早まる)リファンピシン(AUC:約83%低下)効果が弱まる可能性

💡 AUC:体内に薬がどれだけ長く残るかを表す指標です。

サプリや市販薬も含め、医師や薬剤師への相談を忘れずに。


主な副作用と頻度

● 重大な副作用

  • 重度の下痢(0.7%)
     → 脱水に至ることもあるため、すぐに受診を

● よくある副作用

頻度症状
5%以上下痢(21.3%)
1~5%未満腹痛、吐き気、嘔吐、食欲不振、肝機能異常(AST/ALT上昇)
1%未満倦怠感(だるさ)
頻度不明離脱症候群(不安、あくび、鼻水、発汗、不眠などの複合症状)

臨床試験における安全性

対象副作用発現率主な症状
がん患者(第III相)21.6%下痢(17.5%)など
がん患者(長期)15.3%下痢(9.2%)など
非がん性慢性疼痛患者(48週)32.1%下痢(18.9%)、腹痛など

すぐに医療機関を受診すべき症状

  • 強い腹痛
  • 長引く下痢
  • 発熱、血便、黒色便
  • 激しい吐き気
     → 消化管穿孔の可能性あり
  • 発汗、鼻水、筋肉痛、あくび、不安など
     → 離脱症状が疑われる場合は、自己判断で中止せず医師へ連絡を

まとめ

スインプロイクは、オピオイドによる便秘(OIC)を改善する薬です。

  • 1日1回0.2mgで服用可能
  • 腸だけに作用し、鎮痛効果はそのまま
  • 臨床試験でも高い改善率
  • 副作用や飲み合わせには注意が必要
  • オピオイド中止時はこの薬も中止

ご相談ください

OICは、通常の便秘薬では改善が難しいケースも多くあります。
現在の鎮痛薬や腸の状態、他のお薬との関係を考慮し、スインプロイクの使用を検討します。

気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。ください。


参考文献・出典

PMDA(医薬品医療機器総合機構)添付文書検索ページ
https://www.pmda.go.jp

KEGG DRUG(D10478)
→ 薬効分類、相互作用情報がまとまっています。

国内承認時の資料概要(塩野義製薬の提出データ)
→ 医療関係者向けに公開されていることがあります。

主要論文:

Kanemasa T. et al., Neurogastroenterol Motil. 2019;31:e13563

Katakami N. et al., J Clin Oncol. 2017;35:3859-3866.

よくある質問(Q&A)


痛み止めで便秘が続いています。スインプロイクってどんな薬ですか?

スインプロイクは、モルヒネ・オキシコドン・フェンタニル・トラマドールなどのオピオイド鎮痛薬によって起こる便秘(OIC)専用の内服薬です。
腸にある「μオピオイド受容体」にだけ作用し、脳には届かないよう設計されているため、痛み止めの効果を保ちつつ便秘を改善できます。

スインプロイクは他の便秘薬とどう違うの?どんな強みがありますか?

スインプロイクの強みは、「オピオイドによる便秘」に対して特化している点です。
一般的な下剤(緩下薬、刺激性下剤など)は“腸を動かす”作用を広く持ちますが、スインプロイクは、オピオイドで抑えられた腸の神経伝達を元に戻す作用に特化しており、より根本的な対応が可能です。
また、中枢(脳)にはほとんど作用せず、鎮痛効果に影響しにくい点も他の便秘薬にはない特徴です。

スインプロイクって、いつから発売された薬なんですか?

日本では2017年3月に「オピオイド誘発性便秘症(OIC)」の適応で承認・発売されました。
米国でも同年に非がん性慢性疼痛のOICに対して承認されています。

スインプロイクの薬価と、1か月あたりの自己負担額の目安は?

薬価は277.1円/錠(2025年10月時点)。
1日1回1錠の服用なので、30日分の薬価は8,313円です。

  • 【3割負担】約2,490円/月
  • 【1割負担(高齢者)】約830円/月

※調剤料・管理指導料などは別途かかります。

スインプロイクは飲んでどのくらいで効き始めますか?持続時間は?

個人差はありますが、投与翌日から効果を感じ始めるケースが多いとされています。
薬物動態的には、服用後1〜2時間で血中濃度が最大(Cmax)に達し、効果が始まる目安となります。
半減期(T1/2)は約10時間前後で、1日1回の投与で安定した効果が持続するよう設計されています。

妊娠中にスインプロイクは使えますか?

妊娠中の使用は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に限る」とされています。
動物試験では、ラットやウサギで
流産・胎児体重の低下・発育遅延などが報告されています。
そのため、妊娠中の使用は慎重な評価が必要であり、医師の判断のもとで使用可否が決められます。

授乳中にスインプロイクは飲んでも大丈夫ですか?

授乳中は、母乳に移行する可能性があるとされています(動物試験で報告あり)。
そのため、授乳を続けるか、本剤の使用を優先するかを医師と相談し、
必要に応じて授乳中止を検討することになります

子ども(小児)には使えますか?

小児を対象とした臨床試験は行われておらず、有効性・安全性ともに確立されていません
したがって、通常は成人に対してのみ処方される薬です。