八味地黄丸の効果と副作用|疲れ・尿トラブル・冷え性の方におすすめ?
八味地黄丸の効果と副作用
疲れ・尿トラブル・冷え性の方におすすめ?

祖父が排尿トラブルで『八味地黄丸』を使っています

八味地黄丸は、「疲れやすい」「手足が冷える」「尿の回数や量に異常がある」
といった体質に合わせて使われる漢方薬です。
「尿トラブル」や「加齢に伴う排尿の悩み」がある場合は、八味地黄丸がよく選ばれます。
八味地黄丸はオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
八味地黄丸とは?―効能・副作用・飲み方をやさしく解説
八味地黄丸(はちみじおうがん)は、漢方の古典『金匱要略(きんきようりゃく)』に記載された処方で、次の8つの生薬から構成されています:
- ジオウ
- サンシュユ
- サンヤク
- タクシャ
- ブクリョウ
- ボタンピ
- ケイヒ
- ブシ末
疲れやすい、手足が冷える、尿のトラブルがある、口が渇く――こうした体質や症状に用いられてきた漢方薬です。
医療機関で処方される顆粒剤(例:ツムラ八味地黄丸エキス顆粒(医療用))のほか、市販の錠剤や細粒などもあり、医療用・一般用どちらでも使われています。
※本記事は患者さん向けのやさしい解説です。使用の可否や用量は、必ず医師の診断に従ってください。
八味地黄丸の特徴
古典処方を現代にあわせて製剤化
八味地黄丸は『金匱要略』に記された処方をもとに、近代的な抽出・製剤技術を用いて標準化されています。
医療用の顆粒剤では「水だけで煎じ→噴霧乾燥→有機溶媒不使用の乾式造粒」という流れで、服用しやすく改良されています。
「証(しょう)」を重視する考え方
漢方では「証(体質や症状の組み合わせ)」を重視します。
八味地黄丸は、疲れやすい/手足が冷える/尿に関する異常や口渇があるような方に適するとされ、
証に合わない場合は長く使い続けないのが基本です。
効能・効果
医療用・一般用で表現に多少の違いはありますが、
共通してターゲットにしているのは「疲れやすさ+冷え+尿のトラブル」です。
医療用(例:ツムラ)
- 疲労感・倦怠感が強く
- 尿の回数が多い・少ない
- 口が渇く
- 手足に冷感と熱感が交互に出る
といった体質の方の、以下の症状に用いられます:
腎炎、糖尿病、陰萎(インポテンツ)、坐骨神経痛、腰痛、脚気(末梢神経障害)、膀胱炎、前立腺肥大、高血圧 など
一般用(例:市販の錠剤)
下肢の痛み、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ など
※いずれも「疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿の異常があり、時に口渇もある」体質が前提です。
有効性(有効性試験等)
作用のしくみ(作用機序)
明確には解明されていませんが、基礎研究では以下のような作用が報告されています。
基礎薬理試験(動物・試験管レベル)
- 排尿運動の調整作用:ラット・ウサギで膀胱の容量増加、排尿収縮の抑制など
- 膀胱・尿道の筋肉への作用:動物種により異なるが、軽度の抑制→増強の二相性作用
- 外尿道括約筋の収縮抑制:神経筋接合部のアセチルコリン受容体以降で作用の可能性
そのほかにも:
- 糖代謝改善(糖尿病に対する効果)
- 循環器系、骨代謝、精子形成(造精)、利尿、血圧低下、腎機能の改善作用なども示されています。
臨床使用上のポイント
証(体質・症状)に合う患者さんに対して効果が出やすいとされています。
逆に、合わない場合は効果が出にくく、早めに他の薬に切り替えることもあります。
用法・用量
製品により異なりますが、例として錠剤の場合:
成人:1日18錠を2〜3回に分け、食前または食間に服用
年齢・体重・症状に応じて調整されます。顆粒や細粒など、製品の添付文書に従うのが大前提です。
使用できない方・注意が必要な方
妊婦・妊娠の可能性がある方
基本的には使用を避けます。
- ボタンピにより流早産のリスクあり
- ブシ末による副作用が出やすくなります
小児
ブシ末(加工附子)が含まれているため、慎重投与です。
高齢者
生理機能の低下により副作用が出やすくなるため、減量など配慮が必要です。
以下のような体質・症状の方も要注意
- 体力があり、のぼせやすく赤ら顔:動悸・のぼせ・舌のしびれ・吐き気が出やすい
- 胃腸が弱い方や吐き気・嘔吐がある方:消化器症状が悪化することがあります
飲み合わせに注意が必要な薬
- 他の漢方薬:ブシなど成分の重複に注意。併用は医師・薬剤師の管理下で行うこと
- 降圧薬・利尿薬など:八味地黄丸にも同様の作用があり、効きすぎる可能性があります
サプリメントや健康食品も含め、必ず申告を。漢方といえど相互作用のリスクはあります。
副作用とその頻度
頻度は明確ではありませんが、以下のような報告があります。
主な副作用(添付文書より)
- 過敏症:発疹、発赤、かゆみ
- 肝機能異常:AST/ALT/ビリルビン上昇など
- 消化器症状:食欲不振、胃の不快感、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、便秘
- その他:動悸、のぼせ、舌のしびれ ※ブシ末の影響が考えられます
発疹、黄疸のような皮膚の異常、強い動悸やしびれ、強い腹痛などが現れたら、すぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。
まとめ
- 八味地黄丸は、疲れ・冷え・尿の異常といった体質に使われる古典処方を、現代技術で服用しやすくした漢方薬です
- 証が合えば効果が期待できますが、合わなければ無理に継続しないことが大切です
- 妊娠中(可能性を含む)の方は原則使用不可
- ブシを含む他の薬との重複、降圧薬や利尿薬との併用にも注意が必要です
ご相談はお気軽に
当院では、証の評価・併用薬のチェック・副作用の早期対応を行い、
患者さんの体質に合わないと判断した場合は、他の処方に切り替える方針です。
気になる症状や不安があれば、遠慮なくご相談ください。持病、生活スタイルなどをふまえて、最適な治療計画をご提案します。
気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。
参考文献・出典
JAPIC 添付文書情報(2023年10月改訂)
→ 製品の効能、用法、副作用、成分構成などを網羅
KEGG DRUG(D07031)
→ 化学構造・作用薬理データが掲載されています
『和漢医薬学雑誌』や『基礎と臨床』の論文
田中奈保子ほか, 和漢医薬学雑誌, 15, 181-188 (1998)
例:洲加本孝幸ほか, 基礎と臨床, 16, 3169-3175 (1982)
よくある質問(Q&A)
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八味地黄丸ってどんなときに使うの?他の漢方薬とどう違う?
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八味地黄丸は、「疲れやすい」「手足が冷える」「尿の回数や量に異常がある」といった体質に合わせて使われる漢方薬です。
同じように「冷え」や「疲れ」を訴える人向けの漢方は多いですが、「尿トラブル」や「加齢に伴う排尿の悩み」がある場合は、八味地黄丸がよく選ばれます。同系統の処方(例:六味丸、牛車腎気丸)との違いとしては、以下の点が特徴です。
- ブシ(附子)が含まれており、冷えをしっかり温める力が強い
- 前立腺肥大や糖尿病、膀胱の症状などにも適応がある
- 加齢による腎の衰え(漢方的な「腎虚」)に伴う症状に広く対応
特に、手足の冷感+疲れ+頻尿 or 排尿困難がセットになっている人に使われることが多く、他の冷え向け漢方では物足りない場合にも処方されることがあります。
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ツムラ八味地黄丸はいつ発売されたの?
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ツムラ八味地黄丸エキス顆粒(医療用)は、1985年(昭和60年)に厚生省通知に基づいて製造承認されました。
原典である『金匱要略』は古代中国の漢方古典ですが、現代日本の医療用漢方としては1980年代半ばから正式に使われていることになります。
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ツムラ八味地黄丸の薬価と、実際に30日分もらったらいくらかかる?
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ツムラ八味地黄丸エキス顆粒(医療用)の薬価は、9.8円/gです。
処方時の用量によって異なりますが、1日7.5g(一般的な成人用量)の場合:- 薬価:9.8円 × 7.5g × 30日 = 約2,205円
- 3割負担なら:約660円前後
実際の自己負担額は調剤料や管理料を含めると月1,000円前後が目安となります(薬局・地域により異なります)。
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八味地黄丸を飲んでから、どれくらいで効いてくるの?効果はどのくらい持つ?
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八味地黄丸は漢方薬なので、即効性よりも「体質に合ったうえでの継続的な効果」が特徴です。
- 作用発現までの目安:1〜2週間ほどで少しずつ改善を実感する人が多い
- 持続時間:個人差はありますが、1日2〜3回に分けて服用する設計で、数時間ごとに緩やかに効き続けると考えられます。
なお、数日〜1週間服用しても全く変化がなければ、「証(体質)」が合っていない可能性もあります。その場合は医師と相談しましょう。
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妊娠中に八味地黄丸を飲んでも大丈夫?
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妊娠中の使用は原則として避けるべきとされています。
- 成分のボタンピには子宮収縮を促す可能性があり、流早産のリスクが指摘されています
- ブシ末(加工附子)も含まれ、副作用(動悸、のぼせなど)が出やすくなります
医療機関で処方される場合でも、妊娠中は他の処方に切り替えることが一般的です。
妊娠の可能性がある場合も、自己判断での服用は避けましょう。
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授乳中に八味地黄丸を飲んでもいいの?母乳への影響はある?
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授乳中の使用については、「治療上の有益性と授乳の利益を比較して判断」とされています。
- 成分が母乳に移行するかどうかは明確なデータはない
- 安全のため、授乳を続けるか/薬を優先するかを医師と相談する必要があります
「どうしても使用が必要な場合」は、一時的に授乳を中止するか、別の漢方薬に切り替える選択肢が検討されます。
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子どもにも八味地黄丸を使えるの?どんな点に注意すべき?
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小児にも使用は可能ですが、慎重に行う必要があります。
理由は、八味地黄丸に含まれるブシ末(附子)が子どもには強く作用する可能性があるためです。
- 年齢・体重・体質に合わせて厳密な用量調整が必要
- 医師の指導のもとで使うべきで、自己判断での使用は控えてください
特に発達中の子どもでは、副作用(動悸、舌のしびれ、胃の不快感など)が出やすくなることがあります。



