「冷えからくる腰痛・下腹部痛」に効く漢方ってある?|当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)の効果とは
「冷えからくる腰痛・下腹部痛」に効く漢方ってある?
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)の効果とは?

手足の冷えで『当帰四逆加呉茱萸生姜湯』を使えますか?

この漢方薬は、手足が冷えやすく、寒さで下腹部や腰に痛みが出る人に使われます。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯はオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
目次
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)とは
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(以下、本方)は、古典医学書『傷寒論(しょうかんろん)』に収載された処方「当帰四逆湯(とうきしぎゃくとう)」に、呉茱萸(ごしゅゆ)と生姜(しょうきょう)を加えた漢方薬です。
医療用の顆粒剤として処方されており、体質(証)としては以下のような方が対象です。
- 手足の末端が氷のように冷える
- 寒さによって痛みが出やすくなる
含まれる主な生薬(全9種類)
- タイソウ(大棗)
- ケイヒ(桂皮)
- シャクヤク(芍薬)
- トウキ(当帰)
- モクツウ(木通)
- カンゾウ(甘草)
- ゴシュユ(呉茱萸)
- サイシン(細辛)
- ショウキョウ(生姜)
代表的な成分例:
ペオニフロリン(鎮痛・抗炎症)、グリチルリチン酸(抗炎症・抗アレルギー)、6-ショウガオール(血行促進)
特徴
古典処方の現代化
本方は、古典処方をもとに、再現性と服用のしやすさを追求して製剤化されました。
- 9種の生薬を水のみで煎じて、有効成分を抽出
- 抽出液を噴霧乾燥してエキス化
効能・効果
本方は、以下のような体質の方に用いられます。
手足の冷えを感じ、下肢が冷えると下肢または下腹部が痛くなりやすい方
適応症
- しもやけ
- 頭痛
- 下腹部痛
- 腰痛
※漢方では、証(しょう)=体質と症状の組み合わせが合っているかが治療の成否を左右します。合っていない場合は効果が乏しくなるため注意が必要です。
有効性の考え方(臨床試験情報はなし)
添付文書には臨床試験の具体的なデータは記載されていません。
そのため、医療現場では以下のような変化・所見をもとに効果を判断します。
- 手足(特に下肢)の冷えの改善
- 冷えに伴う痛み(下腹部・腰・足)の緩和
- しもやけ・頭痛の頻度・強さの変化
- 消化器症状(食欲不振・胃のムカつき)の改善
※改善が見られない場合は、継続投与を避けるのが原則です。自己判断での増量は避け、医師にご相談ください。
用法・用量
通常、成人は1日9.0gを2〜3回に分けて服用します。
- 食前または食間に服用(空腹時が基本)
- 年齢・体重・症状により医師の判断で調整
投与例:
- 朝・昼・夕の食前に各3.0g(1日3回)
- 朝・夕の食間に各4.5g(1日2回)
使用できない方(慎重投与が必要なケース)
添付文書には明確な「禁忌」はありませんが、以下に該当する方は必ず医師に相談してください。
妊婦・妊娠の可能性がある方
→ 治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ使用されます。
授乳中の方
→ 授乳を継続するか中止するかを医師と相談して判断します。
胃腸が弱い方/吐き気・食欲不振がある方
→ 症状が悪化するおそれがあります。
高齢者
→ 一般に生理機能が低下しており、減量などの調整が必要です。
カリウム値が下がりやすい方/血圧が上がりやすい方
→ 低カリウム血症や高血圧のリスクがあるため、注意が必要です。
飲み合わせに注意が必要な薬
以下の薬との併用で、副作用のリスクが高まる可能性があります。
カンゾウ(甘草)含有の漢方製剤
- 芍薬甘草湯
- 補中益気湯
- 抑肝散 など
グリチルリチン酸を含む製剤
- グリチルリチン酸一アンモニウム配合錠 など
利尿薬
- ループ系:アゾセミド、トラセミド、フロセミド
- チアジド系:トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド など
なぜ危険?
→ カンゾウや利尿薬は、体内のカリウムを排出しやすくする作用があります。
その結果、以下の副作用が出やすくなります。
- 低カリウム血症
- ミオパチー(筋肉の異常:けいれん・脱力など)
- 偽アルドステロン症(むくみ、体重増加、血圧上昇など)
お薬手帳や現在服用中のサプリを添付し、医師に必ず申告しましょう。
副作用とその兆候
重大な副作用(頻度不明)
偽アルドステロン症
- 血清カリウムの低下
- 高血圧
- むくみ、体重増加
ミオパチー
- 筋肉の脱力感
- 手足のけいれん・まひ
以下の症状が出たら服用を中止し、すぐに受診してください。
→ 足がつる/力が入らない/動悸/急な体重増加/血圧上昇 など
その他の副作用(頻度不明)
- アレルギー反応:発疹、発赤、かゆみ
- 肝機能異常:AST・ALT上昇など
- 消化器症状:食欲不振、吐き気、下痢など
服薬開始後は、体調の変化を記録しましょう。必要に応じて血圧やカリウム値のチェックを行います。
まとめ
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、
「冷えによる痛みやしもやけ」などに用いられる医療用漢方薬です。
- 古典処方をもとに、9種の生薬を水だけで煎出 → 乾式造粒
- 証(体質)が合わなければ効果は限定的
- 副作用に注意し、合わないと感じたら中止・相談
当院での対応
当院では、処方前に以下をしっかり確認します:
- 体質(証)が本方に合っているかどうか
- 現在の薬・サプリとの相互作用の有無
「冷えると痛みが出る」「冬にしもやけが悪化する」などのお悩みがある方は、いつ・どこが・どのように痛むか/冷えとの関係を詳しくご相談ください。
参考文献・出典
JAPIC 添付文書情報(最新改訂版)
KEGG DRUGデータベース:D07020
厚労省「漢方製剤に関する承認申請の取り扱いに関する通知」(S60.5.31 薬審2第120号)
『漢方診療ハンドブック』や『ツムラ漢方処方解説』等の臨床解説書
よくある質問(Q&A)
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当帰四逆加呉茱萸生姜湯とは、どんな症状に使われる漢方薬ですか?
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この漢方薬は、手足が冷えやすく、寒さで下腹部や腰に痛みが出る人に使われます。具体的な効能は以下の通りです:
- しもやけ
- 頭痛
- 下腹部痛
- 腰痛
冷えが原因で起こる痛みや不快な症状に対して処方されることが多く、体質的に「冷え性」の人に適しています。
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この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?
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本剤は、「当帰四逆湯」という冷えを改善する処方に呉茱萸(ごしゅゆ)と生姜を加えた強化型です。
他の冷えに対する処方(例:当帰芍薬散、桂枝茯苓丸)と比較した特徴は:- より強い温め効果と鎮痛作用(下腹部や下肢の痛みに有効)
特に「寒冷刺激で症状が悪化する」タイプに適した処方設計となっています。
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ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯の先発薬の発売年は?
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ツムラ製の当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス顆粒(医療用)は、1985年5月31日(昭和60年)付で製造承認されています。
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1か月(30日)処方時の薬価と実際の目安価格(自己負担額)は?
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薬価基準では、ツムラ当帰四逆加呉茱萸生姜湯は1gあたり16.6円です。
- 30日分の計算(9g/日 × 30日)=270g:
薬価合計:4,482円(保険点数ベース) - 自己負担額の目安(3割負担): 約1,344円
※診察料・調剤料は別途かかります。価格は地域や薬局によって異なることがあります。。
- 30日分の計算(9g/日 × 30日)=270g:
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作用発現時間・持続時間は?
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漢方薬のため明確な薬物動態データはありませんが、
臨床的には:- 作用発現: 数日~1週間程度で冷えや痛みの改善を実感する例が多い
- 持続時間: 食間・食前に複数回服用することで持続的に効果を発揮します
※急速な解熱・鎮痛効果などを期待する薬ではなく、体質に合うことが前提で効果が現れます。
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妊娠中の使用は可能?注意点は?
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妊娠中の使用については、治療上の有益性が危険性を上回る場合に限り使用可能とされています。
注意点:
- 使用する際は必ず医師の判断が必要
- 特に妊娠初期は慎重に検討
- 子宮収縮作用のある生薬は含まれていないが、万全を期す必要あり
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授乳中の使用は可能?母乳への影響は?
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授乳中の使用も可能とされていますが、治療上の有益性と母乳栄養のバランスを個別に判断します。
- 明確な「母乳への移行」データはありません。
- 一般的には短期間・適正使用であれば大きな影響は報告されていません。
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子どもに使っても大丈夫?
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小児に対する臨床試験は実施されていないため、基本的には慎重な使用が求められます。
- 特に体力が虚弱な子どもや、消化器症状がある場合は注意
- 小児に用いる場合は、年齢や体重に応じて投与量を厳密に調整



