こむら返り・差し込みの腹痛に|芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)の効果と副作用を解説

こむら返り・差し込みの腹痛に|
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)の効果と副作用を解説薬

こむら返りで『芍薬甘草湯』を使えますか?

芍薬甘草湯の最大の強みは、急激なけいれん性の痛み(こむら返り、腹痛など)に対する

即効性とシンプルな構成です。

構成生薬は芍薬と甘草の2種類のみです。

芍薬甘草湯はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)とは?

— こむら返りや急な差し込み痛に用いる代表的な漢方薬を医師がやさしく解説

筋肉が急につって痛い「こむら返り」や、胃腸のけいれんによる腹痛など、「急に起こるけいれん性の痛み」に対して使われる漢方薬が【芍薬甘草湯】です。
その構成は非常にシンプルで、芍薬(シャクヤク)と甘草(カンゾウ)という2つの生薬だけ。

この記事では、芍薬甘草湯の特徴・効能・使い方・副作用・注意点まで、医療データに基づいてやさしく解説します。


芍薬甘草湯とは?

2種類の生薬(芍薬と甘草)だけで作られたシンプルな漢方薬です。
医療現場では「医療用エキス顆粒製剤」として使われています。

■ 効能(厚労省が承認した症状)

  • 急激に起こる筋肉のけいれんを伴う痛み
  • 筋肉や関節の痛み
  • 胃痛・腹痛

※「こむら返り」のような急な差し込み痛に適しています。
一方で、慢性的な鈍い痛みには不向きなこともあります。


芍薬甘草湯の特徴

■ 成分の代表例

  • ペオニフロリン(芍薬由来)
  • グリチルリチン酸(甘草由来)

■ 医療用としての承認

昭和60年5月、厚生省薬務局の通知に基づいて正式に承認された医療用漢方薬です。


効能・効果の裏づけ(薬理作用)

■ 基礎研究(体の仕組みに基づいた作用)

  • 痛みの伝達を抑える神経活性作用
     → 脊髄のノルアドレナリン神経系を活性化することで、痛みが伝わりにくくなります。
  • 子宮筋の収縮を抑制
     → 月経痛にも応用されることがあります。
  • 抗アロディニア作用(痛覚過敏の軽減)
     → 抗がん剤などによる神経痛モデルでの有用性が確認されています。

■ 臨床研究(人での効果)

国内外で報告があり、主に以下のような症状への有用性が示唆されています。

  • こむら返り
  • 月経痛などのけいれん性疼痛

※研究数が限られているため、効果には個人差があります。


用法・用量(のみ方)

  • 通常:成人は1日7.5gを2〜3回に分けて服用(食前または食間)
  • 調整:年齢・体重・症状に応じて医師が調整
  • 期間:必要最小限の期間に限定して使用

対象ごとの注意点

■ 妊娠中の方

有益性がリスクを上回る場合のみ使用。必ず医師に相談してください。

■ 授乳中の方

医師と相談のうえ、授乳の継続可否を検討します。

■ 小児

臨床試験データが不十分。医師の判断に従ってください。

■ 高齢者

一般的に生理機能が低下しているため、減量や慎重な調整が必要です。


使用できない方(禁忌)

以下に当てはまる場合、芍薬甘草湯は使えません。

  • アルドステロン症
  • ミオパチー(筋肉の病気)
  • 低カリウム血症(血中のカリウムが少ない状態)

※該当するかわからない場合は、必ず医師に相談を。


飲み合わせに注意が必要な薬

以下の薬と一緒に使うと、低カリウム血症や偽アルドステロン症のリスクが高まります。

■ 甘草(カンゾウ)を含む他の漢方薬

(例)補中益気湯、抑肝散、六君子湯など

■ グリチルリチン酸を含む製剤

(例)

  • グリチルリチン酸+グリシン+L-システイン配合剤
  • グリチルリチン酸+DL-メチオニン配合剤など

■ 利尿薬(尿を出す薬)

  • ループ利尿薬:フロセミド、アゾセミド、トラセミド
  • チアジド系:ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジドなど

❗なぜ注意が必要?
これらの薬と芍薬甘草湯に含まれるグリチルリチン酸は、カリウムの排出を促進しすぎるため、
→ むくみ・血圧上昇・筋肉の異常(ミオパチー)につながります。


副作用と発生頻度

■ 【重大な副作用】(頻度不明)

  • 偽アルドステロン症:むくみ、体重増加、血圧上昇、だるさ、筋力低下、けいれん
  • ミオパチー・横紋筋融解症:筋肉痛、四肢の脱力、尿の色が濃くなる
  • 心不全・重度の不整脈(Torsade de Pointes含む)
  • 間質性肺炎:咳、息切れ、発熱
  • 肝機能障害・黄疸:白目や皮膚が黄色くなる、食欲不振、全身倦怠感

■ 【その他の副作用】

  • 皮膚:発疹、赤み、かゆみ
  • 消化器:吐き気、下痢、嘔吐など

💡 受診の目安

  • 上記のような重大な症状が出た場合は、服用を中止しすぐ受診
  • 長期服用中は、血圧やカリウムのチェックが必要なことがあります。
  • 他に服用中の薬(サプリ・市販薬含む)も必ず医師に伝えましょう。

まとめ

症状の性質や体質(証)によって使い分けが必要です。当院でも適切に診断し、安全性を確保したうえで処方しています。

芍薬甘草湯は、こむら返りや差し込みのような急な痛みに対する漢方薬

基礎研究や臨床報告から、筋けいれん性疼痛への有効性が示唆されています。

使用は医師の指導のもと、必要最小限の期間で。

禁忌(使用してはいけない人)や併用注意の薬があるため、自己判断せず受診が必須です。

参考文献・出典

【添付文書】ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)
 → PMDA 医薬品情報

【主な論文】
 - Omiya Y, et al. J Pharmacol Sci. 2005
 - Hidaka T, et al. Eur J Pain. 2009
 - 柴田哲生ら. 日本産科婦人科学会雑誌, 1996
 - 櫛引美代子ら. 秋田大学医療技術短期大学部紀要, 1998

よくある質問(Q&A)


この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?

芍薬甘草湯の最大の強みは、急激なけいれん性の痛み(こむら返り、腹痛など)に対する即効性とシンプルな構成です。
構成生薬は芍薬と甘草の2種類のみで、無駄な添加がなく、飲み合わせによる相互作用リスクを把握しやすいのも特徴。

芍薬甘草湯の先発薬はいつ発売された?

医療用の芍薬甘草湯は、昭和60年(1985年)にツムラが製造販売承認を取得しています(通知:薬審2第120号)。
以来、複数のメーカー(クラシエ、小太郎、東洋薬行など)からも後発品が販売されています。

1か月(30日)処方時の薬価や実際の自己負担額は?

ツムラ製「芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)」の薬価は10.4円/gです。

通常の処方量は1日7.5gのため、薬価計算は以下の通りです:

項目金額(概算)
1日薬価約78円(10.4円 × 7.5g)
30日分薬価約2,340円
自己負担(3割)約700円程度
自己負担(1割/高齢者)約230円程度

※調剤料・技術料・処方料は別途かかります。あくまで薬価ベースの概算です。

効果が出るまでの時間や持続時間は?

芍薬甘草湯は「急激な痛み」に対応する漢方であるため、即効性が比較的高いとされています。

  • 作用発現時間:服用後30分〜1時間程度で効果を感じるケースが多いとされます(※個人差あり)。
  • 持続時間:2〜4時間程度持続すると報告されています。

※ただし、漢方薬であるため、体質や症状の性質によって効果発現は異なります。

妊娠中でも芍薬甘草湯は使えるの?

原則として、妊娠中の使用は「治療上の有益性がリスクを上回ると医師が判断した場合」のみに限られます。

ただし、甘草由来のグリチルリチン酸により偽アルドステロン症が起こる可能性があるため、医師の慎重な判断が必要です。

芍薬には子宮収縮を抑える作用があるため、妊娠中の下腹部けいれんには使われることもあります。

授乳中でも飲んで大丈夫?

授乳中の使用も可能ですが、母乳移行や乳児への影響を考慮し、医師と相談のうえで使用を判断する必要があります。

授乳を続けるか中止するかも含めて医師と相談してください。

グリチルリチン酸が少量母乳に移行する可能性があるため、乳児にむくみ・低カリウム血症などが起こるリスクはゼロではありません。

子どもでも使えますか?

小児への使用は、臨床試験が行われていないため慎重な対応が求められます

安易に自己判断で服用させることは避け、必ず医師に相談してください。

医師の判断に基づき、体重や体格に応じて投与量を調整することがあります