肩こり・腰痛・神経痛に使われる漢方、疎経活血湯ってどんなもの?

肩こり・腰痛・神経痛に使われる漢方
疎経活血湯ってどんなもの?

体の節々が痛くて『疎経活血湯』使えますか?

疎経活血湯は、「おけつ(血の巡りの悪さ)」と「冷え」が

原因の関節痛・神経痛・筋肉痛に特に適した漢方薬です。

疎経活血湯はオンラインで処方することができます。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。


疎経活血湯とは

疎経活血湯(そけいかっけつとう)は、漢方の古典『万病回春(まんびょうかいしゅん)』に記された処方をもとにした医療用漢方エキス製剤です。
関節や神経・筋肉の痛みに対して使用されます。

処方名の由来は以下の通りです。

  • 疎経(そけい)…経絡(けいらく)や血の巡りを通すという意味
  • 活血(かっけつ)…滞った血流を活性化させること

疎経活血湯の特徴

配合生薬(全17種)

シャクヤク、ジオウ、センキュウ、ソウジュツ、トウキ、トウニン、ブクリョウ、イレイセン、キョウカツ、ゴシツ、チンピ、ボウイ、ボウフウ、リュウタン、カンゾウ、ビャクシ、ショウキョウ

含有成分の一例

  • ペオニフロリン(シャクヤク由来)
  • β‑オイデスモール(ソウジュツ由来)
  • アミグダリン(トウニン由来)
  • グリチルリチン酸(カンゾウ由来)
  • [6]‑ショーガオール(ショウキョウ由来)

適応の考え方:証(しょう)の重視

漢方では「証(しょう)=その人の体質や症状の組み合わせ」を重要視します。
このため、証に合わない場合は効果が出にくく、継続投与は避けるべきとされています。


効能・効果

  • 関節痛
  • 神経痛
  • 腰痛
  • 筋肉痛

※すべて医療用添付文書に記載された適応症です。


有効性(臨床使用における評価)

本剤は、添付文書に記載された症状に対して使用されますが、資料中に特定の臨床試験データ(数値・研究デザイン)は明記されていません。
当院では以下のような観点で評価します:

  • 痛みの強さの変化
  • 可動域(関節の動き)
  • 日常生活動作(ADL)の改善

効果が乏しい場合は、継続せず中止します。


用法・用量

  • 通常、成人1日7.5gを2〜3回に分けて食前または食間に服用します。
  • 年齢・体重・症状に応じて、量を調整します。

使用できない方・慎重投与が必要な方

原則として避ける方

  • 妊婦・妊娠の可能性のある方
    → 生薬のゴシツトウニンには流産や早産を促すおそれがあります。

慎重に使用する必要がある方

状況注意点
胃腸が非常に弱い方食欲不振・胃もたれ・吐き気・下痢が出やすい
すでに食欲不振や吐き気のある方症状が悪化する可能性
授乳中の方授乳の継続と薬の効果を比較して判断
小児臨床試験の実施なし。使用の可否は慎重に検討
高齢者生理機能の低下を考慮して減量などを検討

飲み合わせに注意が必要な薬(相互作用)

リスク

カンゾウ(甘草)やグリチルリチン酸を含む製剤との併用により、
以下の副作用が起こりやすくなります。

  • 偽アルドステロン症:むくみ、血圧上昇、体重増加、低カリウム血症
  • ミオパチー:筋力低下、けいれん、四肢の麻痺

注意すべき薬の例

  • カンゾウ含有の漢方薬:芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など
  • グリチルリチン酸製剤
    • グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン配合薬
    • 同DL-メチオニン配合錠

併用時のチェック項目

  • 血清カリウム値
  • 血圧
  • むくみ、体重の急激な変化

副作用とその頻度

重大な副作用(頻度不明)

  • 偽アルドステロン症
    低カリウム血症、むくみ、血圧上昇、体重増加など
  • ミオパチー
    手足の筋力低下、けいれん、麻痺などがみられる可能性

その他の副作用(頻度不明)

  • 食欲不振
  • 胃部不快感
  • 吐き気
  • 下痢

受診の目安

  • むくみ、急な体重増加、こむら返り、血圧上昇、動悸などがある場合
    → 速やかに受診し、血清カリウム値のチェックを行ってください。



まとめ

  • 疎経活血湯は、関節・神経・筋肉・腰の痛みに対して使われる医療用漢方薬です。
  • 体質(証)に合っているかを見極めることが重要。効果がないときは継続せず見直しを。
  • 用法は、成人1日7.5gを2〜3回に分けて食前または食間に服用
  • カンゾウ由来の副作用(低カリウム、むくみ、ミオパチー)に注意し、飲み合わせにも気をつけましょう。
  • 妊娠中または妊娠の可能性がある方は原則として使用を避けるべき処方です。

💡 他の漢方薬やサプリ、市販薬を服用中の方は、受診時に必ず申告してください。
気になる症状(むくみ、こむら返り、血圧の変化など)があれば、早めの相談をおすすめします。

参考文献・出典

ツムラ製品インタビューフォーム

JAPIC 添付文書https://www.japic.or.jp/

PMDA(医薬品医療機器総合機構)医薬品情報

KEGG DRUGデータベース(D07001)

「医療用漢方製剤の解説書(日本漢方生薬製剤協会)」

漢方治療ガイドライン(日本東洋医学会)

よくある質問(Q&A)


この薬の同じ系統の既製薬品に比べて、どんな強みがあるの?

疎経活血湯は、「おけつ(血の巡りの悪さ)」と「冷え」が原因の関節痛・神経痛・筋肉痛に特に適した漢方薬です。
他の痛み用漢方よりも、血流改善に重点を置いたバランスの良い処方で、慢性痛や朝のこわばり、冷えを伴う痛みの改善に強みがあります。

そもそも疎経活血湯って、いつからあるの?発売は何年?

疎経活血湯自体は中国明代の古典『万病回春』に記載された伝統処方です。
医療用漢方製剤としては、ツムラが昭和60年(1985年)5月31日通知に基づき製造承認を取得し、現在に至るまで使われています。

1か月(30日)分でいくらくらい?薬価と自己負担の目安を知りたい。

【薬価】
ツムラ疎経活血湯:16.2円/g
※通常の成人量:7.5g/日 × 30日 = 225g → 3,645円(薬価)

【実際の目安価格(自己負担)】

  • 3割負担:約1,100円程度
  • 1割負担:約370円程度

※処方料・調剤料等は別。薬価は変更されることがあります。

飲みはじめてからどのくらいで効いてくる?どのくらい効果が続く?

疎経活血湯は漢方薬のため、即効性よりも体質改善や慢性症状の軽減を目的としています。

持続時間:生薬代謝の関係で数時間〜半日程度。ただし継続服用で徐々に体質に作用します。

効果実感の目安:1〜2週間で徐々に変化を感じる人が多いです。

妊娠中に飲んでも大丈夫?リスクはある?

基本的には妊娠中の使用は避けることが望ましいとされています。
含まれる生薬(トウニン・ゴシツ)には子宮収縮や流早産のリスクがあるため、
妊娠の可能性がある段階からの服用は原則控えるべきです。

授乳中でも飲んでいいの?母乳への影響は?

授乳中の服用は医師と相談のうえ慎重に
母乳への明確な移行性データはありませんが、
母乳栄養の有益性」と「治療の有益性」を比較して判断する必要があります。
不安な場合は、服用中の授乳の一時中断も検討されます。

子どもにも使えるの?年齢制限はある?

この薬は小児を対象とした臨床試験は実施されていません。
年齢制限は明記されていませんが、安全性が確立していないため、慎重投与が必要です。
医師が体重や症状に応じて処方することはありますが、自己判断での服用は避けてください。

湿気や寒さで痛みが悪化するけど、この薬で良くなるの?

はい、疎経活血湯は「寒さや湿気で悪化する痛み(冷えによる関節痛や神経痛)」に対して処方されることが多いです。
血の巡りを良くし、冷えや滞りが原因の痛みを和らげる漢方として使われます。

サプリや他の漢方と一緒に飲んでも大丈夫?

注意が必要です。
特に、カンゾウ(甘草)やグリチルリチン酸を含む製剤との併用で、
むくみ・高血圧・低カリウム血症・筋力低下(ミオパチー)が起こることがあります。
他の漢方やサプリを飲んでいる方は、必ず医師または薬剤師に申告してください。