五積散はどんな人に効く?冷え・痛み・胃腸の悩みに使う漢方薬
五積散はどんな人に効く?
冷え・痛み・胃腸の悩みに使う漢方薬

冷え+痛み+胃腸の不調があり『五積散(ごしゃくさん)』飲んでいます

五積散は「冷え・痛み・胃腸不調」など、複数の軽い慢性症状がある方に向く処方で
五積散は16種もの生薬を組み合わせた複合処方になっています。
五積散(ごしゃくさん)をオンラインで処方することができます。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
五積散とは
五積散(ごしゃくさん)は、漢方古典『和剤局方』に記載されている処方で、「気・血・痰・寒・食」の五つの滞り(これを「五積(ごしゃく)」と呼ぶ)を取り除くことを目的とした薬です。
現在の医療現場では、16種類の生薬を水で煎じたエキスを顆粒にした医療用漢方エキス製剤として使用されています。
主な有効成分の例
- β-オイデスモール(ソウジュツ由来)
- グリチルリチン酸(カンゾウ由来)
- ペオニフロリン(シャクヤク由来)
- [6]-ショーガオール(ショウキョウ由来)
- エフェドリン(マオウ由来)
五積散の特徴
構成生薬(16種類)
以下の16種の生薬がバランスよく配合されています:
ソウジュツ/チンピ/トウキ/ハンゲ/ブクリョウ/カンゾウ/キキョウ/キジツ/ケイヒ/コウボク/シャクヤク/ショウキョウ/センキュウ/タイソウ/ビャクシ/マオウ
使われる場面
- 複数の軽い症状が慢性的に続くケースに用いられます。
- 例:冷え+痛み+胃腸の不調など
- 一度に複数の症状が見られる場合に検討されやすい処方です。
証(しょう)の考え方
漢方では「証(しょう)」=体質や症状の組み合わせに合うかどうかが薬効を左右する重要な要素です。
証に合えば効果が期待できますが、合わなければ効果は乏しいこともあります。
効能・効果
適応症
以下のような慢性かつ軽度の症状に用いられます:
- 胃腸炎
- 腰痛
- 神経痛
- 関節痛
- 月経痛
- 頭痛
- 冷え症
- 更年期障害
- 感冒(風邪)
※高熱や激しい痛みなど急性・重症の症状には不向きです。
有効性について
- 主に長年の臨床経験と添付文書に記された効能効果が根拠です。
- 「冷え」「痛み」「胃腸の不調」などが複合的にあるタイプに対して、経験的に効果が期待されます。
- 一方で、大規模な疾患別エビデンスは乏しく、
「証の見立て」や「経過観察」が極めて重要です。
添付文書にも「改善が見られない場合には継続投与を避けること」と記載されています。
用法・用量
- 通常:成人は 1日7.5g を 2〜3回に分けて服用
- 服用タイミング:食前または食間(食後2〜3時間の空腹時)
年齢・体重・体調により調整が必要
小児への使用は医師の判断が必要(臨床試験が行われていないため)
使用できない方(禁忌・慎重投与)
絶対的な禁忌(使ってはいけない人)
- 本剤の成分にアレルギー(過敏症)がある方
慎重投与が必要なケース(医師に必ず相談)
- 病後や高齢で体力が著しく低下している方
- 胃腸が弱い方
- 発汗が激しい方
- 狭心症・心筋梗塞のある方、または既往歴のある方
- 重症高血圧症の方
- 排尿障害のある方
- 甲状腺機能亢進症の方
- 高度な腎機能障害のある方
- 妊娠中または妊娠の可能性がある方(慎重に適応判断)
- 授乳中の方(授乳継続の可否を医師と相談)
- 高齢者(生理機能が低下しているため減量配慮が必要)
飲み合わせに注意が必要な薬
併用によって作用増強・副作用リスク増大が起きるおそれがあるため、以下のような薬との併用は注意が必要です。
主な注意薬(例)
| 分類 | 具体例 | 注意点 |
|---|---|---|
| マオウ含有製剤 | 葛根湯、小青竜湯、麻黄湯 | 交感神経刺激作用(不眠・動悸・発汗)増強 |
| エフェドリン類 | エフェドリン、dl-メチルエフェドリン | 同上 |
| MAO阻害薬 | セレギリン、ラサギリン | 交感神経刺激作用の増強 |
| 甲状腺製剤 | チロキシン、リオチロニン | 心拍数上昇、動悸など |
| カテコールアミン製剤 | アドレナリン、イソプレナリン | 交感神経刺激の増強 |
| キサンチン系 | テオフィリン、ジプロフィリン | 神経刺激症状のリスク |
| カンゾウ含有製剤 | 芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など | 偽アルドステロン症・ミオパチーリスク増加 |
副作用と発生頻度
重大な副作用(頻度不明)
- 偽アルドステロン症
低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加など。
→ 異常が出たら服用を中止し医療機関へ - ミオパチー
筋力低下、手足のけいれんやまひ。
→ これも低カリウムが原因で起こり得る
その他の副作用(頻度不明)
| 分類 | 症状の例 |
|---|---|
| 過敏症 | 発疹、かゆみ、発赤など |
| 自律神経系 | 不眠、動悸、発汗、脱力感、精神興奮など |
| 消化器系 | 胃の不快感、吐き気、嘔吐、下痢など |
| 泌尿器系 | 排尿障害 など |
むくみ、急な体重増加、筋力の抜け感などが現れたら、すぐに受診してください。
まとめ
- 五積散は「冷え・痛み・胃腸不調」など、複数の軽い慢性症状がある方に向く処方。
- 効能効果:胃腸炎/腰痛/神経痛/関節痛/月経痛/頭痛/冷え症/更年期障害/感冒。
- 用法:1日7.5gを2〜3回に分けて食前/食間に服用。
- 証に合ってこそ効果が期待でき、数週間で改善がなければ継続投与しない。
- 飲み合わせ・副作用に注意。気になる症状が出たらすぐに医療機関へ。
参考文献・出典
医療用添付文書(JAPIC / PMDA)
→ PMDA 医療用医薬品 情報検索
KEGG DRUG Database(ID:D06956)
→ KEGG DRUG D06956
「漢方処方解説」南山堂刊(解説書)
→ 医療者向け漢方薬解説資料
ツムラ・インタビューフォーム(医療者向け)
よくある質問(Q&A)
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この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?
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五積散(ごしゃくさん)は、「気・血・痰・寒・食」という複数の要因による「滞り(=五積)」に着目した総合型の漢方薬であり、複数の軽度な不調(冷え、痛み、胃腸の不調など)が同時に起きている人に向く点が強みです。
同じように「冷え症」「月経痛」「胃腸虚弱」などに使われる漢方は他にもありますが、
- 五積散は16種もの生薬を組み合わせた複合処方
- 症状が1つだけでなく「いくつか重なっている」タイプに向いている
という点が他の漢方(例:当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、芍薬甘草湯など)との違いです。
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先発薬の発売年はいつ?
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ツムラ五積散エキス顆粒(医療用)は、
1985年(昭和60年)5月31日付「厚生省薬務局薬審2第120号通知」に基づいて製造承認を取得しています。
この承認により、医療用漢方製剤として正式に上市されました。
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1か月(30日)処方時の薬価と実際の目安価格は?
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薬価:13.4円/g
通常用量:1日7.5g → 1か月=225g
薬価換算:13.4円 × 225g = 3,015円
【3割負担の場合】
- 自己負担額:約900円前後
【1割負担(高齢者など)】
- 自己負担額:約300円前後
※院内処方・薬局による調剤料や処方料、管理料は別途かかります。
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効果はどれくらいで出る?どのくらい続く?
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五積散は即効性を狙う薬ではなく、数日〜数週間かけて体質に働きかける漢方薬です。
改善が見られない場合は長期継続は推奨されません。
発現時間:体質に合えば数日〜1週間以内に軽快傾向を感じるケースも
持続時間:服用中は安定して症状緩和が得られることも多いが、「証」に合っていることが前提
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妊娠中に使っていいの?
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妊娠中の使用は医師の慎重な判断が必要です。
- 添付文書には「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に限り投与」と記載。
- 成分中にマオウ(エフェドリン)やカンゾウ(グリチルリチン酸)を含むため、血圧上昇・浮腫・低カリウムなどに注意が必要。
- 胎児への影響は確立されていないが、安全性は十分に確認されていない
👉 妊娠中に処方された場合は、自己判断で継続せず、必ず医師に相談を。
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授乳中の使用は大丈夫?
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授乳中の使用についても慎重な判断が必要です。
- 添付文書では「授乳の継続可否を医師と検討」と記載。
- 有効成分のうち、一部が母乳へ移行する可能性は否定できません(例:エフェドリンは母乳移行が報告されている)。
- 乳児への影響(興奮、不眠、発汗など)に注意が必要です。
👉 授乳中の使用を希望する場合は、「授乳を続けながら飲めるか」医師に確認しましょう。
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子どもに使ってもいいの?
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原則として小児に対する安全性は確立されていません。
- 小児を対象とした臨床試験は実施されていない
- 年齢や体重での調整が必要な場合があり、医師の判断が必須
- 特にマオウ(興奮作用)やカンゾウ(偽アルドステロン症リスク)への感受性が高いとされています
👉 小児に対して使用する場合は、「専門医の厳密な判断」と「慎重な観察」が求められます。



