甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)って何の薬?効果・副作用まとめ

甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)って何の薬?
効果・副作用まとめ

神経過敏があり『甘麦大棗湯』を使ってみたいです。

甘麦大棗湯は主に「夜泣き」や「ひきつけ」に用いられる漢方薬です。

特に情緒不安定・神経過敏・不眠などの精神的な症状を和らげる目的で使われることが多く、

小児の夜泣きや驚きやすい体質の改善にも処方されます。同様に大人にも使えます。

甘麦大棗湯はオンライン診療で処方可能です。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。



甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)とは

甘麦大棗湯は、漢方の古典『金匱要略(きんきようりゃく)』に記載された処方で、
**大棗(たいそう/ナツメ)・甘草(かんぞう)・小麦(しょうばく)**の3つの生薬から構成されています。

医療現場では、これらの成分を抽出して顆粒状にした医療用漢方エキス製剤として処方されます。

夜泣き、ひきつけに効能・効果があります。


こんな方におすすめ

お子さんの夜泣きや、繰り返す“ひきつけ”に対して、
医師が体質や症状(証:しょう)を見極めたうえで使用を検討する漢方薬です。


甘麦大棗湯の特徴

  • 3種類の生薬を水のみで煎じて抽出し、噴霧乾燥でエキス粉末化。
  • 有機溶媒や水を追加しない乾式造粒により顆粒化。
  • 服用しやすく、安定性に優れています。

含まれる成分の例

  • サイクリックAMP(タイソウ由来)
  • グリチルリチン酸(カンゾウ由来)

これらの成分は、薬理学的に効果の裏付けがあるとされています。


効能・効果

  • 夜泣き
  • ひきつけ

※ただし、体質や症状(証)との相性が重要です。
効果が不十分な場合は、継続投与を避けます。


有効性(エビデンスや使用経験)

  • 本剤は医療用として承認されています。
  • 小児を対象とした臨床試験は実施されていません
  • 一方で、漢方の古典に基づく長年の使用実績と、
    成分の薬理学的知見(グリチルリチン酸やcAMP等)が背景にあります。

実際の診療では…

  • 証の適合が有効性のカギとなります。
  • 効果が乏しい場合は他の治療法へ切り替えます。
  • 西洋薬のように明確なエビデンス(大規模な臨床試験)はないため、
    過度な期待を避け、短期間で効果を判定する方針です。

用法・用量

  • 成人:1日7.5gを2〜3回に分けて服用
  • 食前または食間に内服(食間=食後2〜3時間が目安)

※年齢・体重・症状により調整します。
※小児は個別に投与量を決定します。


使用できない方(禁忌)

次のような持病のある方には使用しません:

  • アルドステロン症(ホルモン異常による高血圧など)
  • ミオパチー(筋肉の病気)
  • 低カリウム血症(血中カリウム濃度が低い状態)

飲み合わせに注意が必要な薬

カンゾウ(甘草)の影響で、以下の薬剤と併用する際は注意が必要です。

漢方薬(カンゾウ含有)

  • 芍薬甘草湯
  • 補中益気湯
  • 抑肝散 など

その他

  • グリチルリチン酸含有製剤:例)グリチルリチン酸一アンモニウム配合剤
  • ループ系利尿薬:フロセミド、アゾセミド、トラセミド 等
  • チアジド系利尿薬:トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド 等

※併用時は、カリウム値や血圧、体重、むくみの有無を定期的に確認します。


副作用と発生頻度

重大な副作用(頻度不明)

  • 偽アルドステロン症
     低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加 など
  • ミオパチー
     手足の脱力感、けいれん、麻痺など(低カリウムが原因で起こる)

万が一、異常を感じたら

服用を中止し、すぐに医療機関を受診してください。
必要に応じてカリウム補正などの治療を行います。


注意点

  • カンゾウ由来成分が含まれるため、以下の方は特に注意:
    • 高齢者
    • 長期間服用する方
    • 利尿薬を併用している方
  • 妊婦・授乳婦
     治療の必要性と安全性を医師が慎重に判断します。
     授乳継続の可否も個別に検討します。
  • 小児
     臨床試験はありませんが、診断と経過観察を重視し慎重に使用されます。

まとめ

  • 甘麦大棗湯は、「夜泣き・ひきつけ」に使われる3つの生薬の漢方
  • 使用には体質(証)との相性が重要です。
  • 用法は成人で1日7.5gを2〜3回に分けて服用
  • 効果が不十分な場合は無理に継続しないのが基本方針
  • 副作用には注意:とくにカンゾウ由来の影響で、偽アルドステロン症やミオパチーに注意。
  • 併用薬との相互作用にも注意が必要です。
  • 妊娠・授乳・高齢・小児では慎重投与。

受診の目安

以下のような場合は自己判断せず、医師にご相談ください:

  • 夜泣きや“ひきつけ”が続く、または強く出ている
  • むくみ、血圧上昇、だるさ、こむら返りなど、
     低カリウムを疑う症状がある
  • 他のお薬を併用している

参考文献・出典

ツムラ製品 添付文書(JAPIC・PMDA)
 → 最新の効能・用法・副作用・禁忌が記載されています。

KEGG DRUG:D06931(甘麦大棗湯)
 → 薬理成分や相互作用情報、作用機序の参考になります。

金匱要略(古典)
 → 甘麦大棗湯の起源・伝統的使用目的を知ることができます。

『漢方薬・生薬データベース』(北里大学薬学部)
 → 各生薬の作用特性や古典的効能の解説あり。

厚生労働省 漢方製剤製造承認通知文(昭和60年 薬審2第120号)

よくある質問(Q&A)


甘麦大棗湯はどんな症状に効きますか?

主に「夜泣き」や「ひきつけ」に用いられる漢方薬です。特に情緒不安定・神経過敏・不眠などの精神的な症状を和らげる目的で使われることが多く、小児の夜泣きや驚きやすい体質の改善にも処方されます。


同じ系統の漢方薬に比べて、甘麦大棗湯の強みは何ですか?

甘麦大棗湯は、精神的な不安定さやけいれん性疾患に特化した構成(タイソウ・カンゾウ・ショウバク)を持ち、余計な生薬を含まないシンプルな処方である点が特徴です。他の神経系漢方薬(例:抑肝散、柴胡加竜骨牡蛎湯など)に比べて、刺激性が少なく、穏やかな作用で小児から高齢者まで使いやすいのが強みとされています。

先発薬の発売年はいつですか?

ツムラ甘麦大棗湯エキス顆粒(医療用)は、1985年(昭和60年)5月31日付で製造承認されました。

1か月(30日)処方時の薬価と、自己負担額の目安は?

ツムラ甘麦大棗湯の薬価は、12.2円/gです。

通常処方量は成人1日7.5gなので…

  • 1日あたり薬価:91.5円
  • 30日分の薬価:2,745円

これに基づく自己負担の目安(3割負担の場合):

  • 約820円前後/30日分

※薬局での調剤料などを含めると、実際の負担額は1,000〜1,500円程度になることが一般的です。

効果が出るまでの時間(作用発現時間)や、効果の持続時間は?

甘麦大棗湯は、即効性の西洋薬とは異なり、体質(証)に合えば比較的早く効果を感じることもあります
ただし、個人差があり、数日~1週間程度の経過観察が必要です。

持続時間: 明確な時間は定められていませんが、1日2〜3回の継続服用で効果を保つ設計です。

作用発現時間: 通常は1~数日以内に何らかの反応(睡眠の質の改善やひきつけの頻度低下など)が見られることも。

妊娠中に使用しても大丈夫ですか?

慎重投与となっています。

  • 妊婦または妊娠の可能性がある女性には、「治療上の有益性が危険性を上回る」と判断された場合のみ使用します。
  • 安易な使用は避け、必ず医師の診察と判断が必要です。

※動物実験での催奇形性データやヒトでの大規模な安全性試験は未実施です。

授乳中でも使用できますか?母乳への影響は?

添付文書では以下のように記載されています:

  • 「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳継続または中止を検討すること」→ つまり、医師がリスクとベネフィットを個別に判断して決定します。
  • 甘草(カンゾウ)由来のグリチルリチン酸の乳汁移行は極めて少ないとされるが、影響ゼロとは言い切れないため、念のため注意が必要です。

子どもにも使えますか?注意点は?

甘麦大棗湯は、「夜泣き・ひきつけ」といった小児の症状でよく使用される漢方薬ですが、次の点に注意が必要です。

  • 小児を対象とした臨床試験は実施されていません。
  • そのため、使用にあたっては:
    • 年齢・体重・症状に応じて用量を医師が個別に調整する
    • 効果や副作用をよく観察しながら短期間で評価

また、成分であるカンゾウ(甘草)により低カリウム血症やむくみが生じる可能性があるため、長期使用や他の薬との併用には十分な注意が必要です。