お腹の痛みや下腹部のけいれん…ブスコパンってどんな薬?効果と注意点をやさしく解説
お腹の痛みや下腹部のけいれん…
ブスコパンってどんな薬?効果と注意点をやさしく解説

差し込むような腹痛があり『ブスコパン』を使っています。

ブスコパン®は、副交感神経(ふくこうかんしんけい)の働きをおさえることで、
胃や腸、胆のう、尿路、子宮などの「けいれん(急な収縮)」による痛みをやわらげる薬です
ブスコパン®はオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
ブスコパン®(ブチルスコポラミン臭化物)とは
ブスコパン®は、副交感神経(ふくこうかんしんけい)の働きをおさえることで、胃や腸、胆のう、尿路、子宮などの「けいれん(急な収縮)」による痛みをやわらげる薬です。
● 普段は錠剤(飲み薬)として使われますが、入院中などでは注射で使うこともあります。
ブスコパン®の特徴
- 1940年代後半に、ドイツのベーリンガーインゲルハイム社が開発
- アトロピンではなく、スコポラミンという成分を元に開発
- 副作用が少なく、持続的に効く薬を目指して作られました
- 内臓の壁にある神経のかたまり(神経節)に作用し、痛みやけいれんの信号をブロックします
日本では1950年代から使われており、「ブスコパン注20mg」などの名称で広く処方されています。
効能・効果(どんな症状に効く?)
次のような「けいれん」や「過剰な動き(過緊張)」にともなう痛みや不快感をやわらげます。
胃腸の症状
- 胃や十二指腸潰瘍(かいよう)による腹痛
- 食道けいれん、幽門けいれん(胃の出口のけいれん)
- 胃炎、腸炎、腸疝痛(ちょうせんつう:腸がきゅーっと痛む状態)
- 痙攣性便秘、機能性下痢(ストレスなどが原因の下痢)
胆道の症状
- 胆のう炎、胆管炎、胆石症
- 胆道ジスキネジー(胆汁の通り道の動きの異常)
- 胆のうを手術で取った後の不快感
尿路・婦人科の症状
- 尿路結石、膀胱炎
- 月経困難症(ひどい生理痛)による下腹部痛
有効性(どれくらい効く?)
国内の臨床試験
日本での治験により、上記のような疾患への有効性が確認されています。
実験(人や動物を使った試験)でも効果が証明されています
- 胃や腸の動きをしずめる作用
- 胃酸や消化酵素(ペプシンなど)の分泌をおさえる
- 膀胱の緊張や圧力をやわらげる
- 胆のうの収縮(ちぢみ)を防ぐ
※ 効果のあらわれ方には個人差があります。
用法・用量(錠剤の場合)
通常、大人は 1回1〜2錠(10〜20mg)を、1日3〜5回服用します。
症状や体格などによって、医師が量を調整します。
🛑 自己判断で量を増やしたり中止したりしないでください。
使用できない方(禁忌)
次に該当する方は、使用できません。
診察時に医師へ必ず伝えてください。
- 出血性大腸炎(O-157や赤痢など)
- 閉塞隅角緑内障(目の病気の一種)
- 前立腺肥大により尿が出にくい方
- 重い心臓病(不整脈・心不全など)
- 腸の動きが完全に止まってしまう病気(麻痺性イレウス)
- ブスコパン®に対してアレルギーのある方
飲み合わせに注意が必要な薬
抗コリン作用のある薬(神経をおさえる薬)
➡ このタイプの薬は、副作用が出やすくなることがあります。
📌 具体例:
- 三環系抗うつ薬(うつ病の薬)
- 抗ヒスタミン薬(アレルギーの薬)
- フェノチアジン系薬(精神疾患に使う薬)
👉 併用すると「口のかわき」「便秘」「目のピントが合いづらい」などの副作用が強く出ることがあります。
ドパミン拮抗薬(消化管の動きを良くする薬)
➡ 代表的なものに**メトクロプラミド(プリンペラン®)**があります。
👉 ブスコパン®とは逆の作用があるため、お互いの効果を打ち消してしまう可能性があります。
💬 サプリメント・市販薬・漢方も含めて、服用中のものはすべて医師・薬剤師に伝えましょう。
副作用と頻度
重い副作用(頻度は不明)
- アナフィラキシー(突然のアレルギー反応):
吐き気、冷や汗、血圧の低下、息苦しさ、むくみ、発疹など
→ このような症状が出たら、すぐに医療機関を受診してください。
よくある副作用(5%以上)
- 口のかわき
ときどき見られる副作用(0.1〜5%未満)
- 目のピントが合いづらい(調節障害)
- お腹の張り・ガス・便秘
- 排尿しにくい
- 頭痛、動悸(どうき:胸がドキドキする)
- 発疹
まれ~頻度不明
- 散瞳(瞳が開く)や緑内障の悪化
- じんましん、赤み、かゆみ
副作用を防ぐために
- ピントが合いづらくなることがあるため、車の運転や機械操作は避けてください。
- 汗が出にくくなることがあり、高温環境では熱中症になりやすくなります。
→ 涼しい場所で過ごし、こまめに水分補給をしましょう。
使用前に医師へ相談すべき方
- 前立腺肥大がある方
- 心臓病・不整脈がある方
- 甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
- 開放隅角緑内障
- 妊娠中・授乳中の方(医師と相談して使用を判断します)
- 高齢者(副作用が出やすいため慎重に使用します)
まとめ
ブスコパン®(ブチルスコポラミン臭化物)は、副交感神経の働きをブロックして、内臓のけいれんによる痛みをやわらげる薬です。
胃腸・胆道・尿路・婦人科領域など、幅広い分野で使用されます。
ただし、緑内障や心臓病、前立腺肥大などの持病がある方には使えず、副作用にも注意が必要です。
🛑 服用中は運転を避け、気になる症状があれば早めに医師へ相談しましょう。
参考文献・出典
【添付文書】PMDA(医薬品医療機器総合機構)サイト
【KEGG】https://www.kegg.jp/entry/D00848
【日本薬剤師会:相互作用情報】https://www.japic.or.jp/
【主要文献】Silvasti M, Int J Clin Pharmacol Ther Toxicol. 1987
よくある質問(Q&A)
-
ブスコパン®ってどんな薬?
-
副交感神経のはたらきを抑えて、けいれん性の痛みや不快感をやわらげる鎮痙薬(ちんけいやく)です。
胃腸・胆道・尿路・子宮などの臓器で起こるけいれんに効果があります。
-
ブスコパン®の先発薬はいつ発売されたの?
-
ブスコパン®は、1955年7月に日本で初めて輸入承認され、1956年2月に販売開始されました。
もともとは1940年代後半にドイツのベーリンガーインゲルハイム社で開発された薬です。
-
この薬の同じ系統の薬と比べたときの強みは?
-
ブスコパン®は「非中枢性・非アトロピン系の抗コリン薬」として、以下のような強みがあります:
・長年の臨床使用実績と安定供給があり、緊急時から慢性管理まで幅広く使われている
・中枢神経への移行が少ない(脳に作用しにくい)ため、眠気や混乱が起きにくい
・アトロピンよりも消化管などへの選択的作用が強く、副作用の頻度が比較的少ない
・注射・内服ともに使えるラインナップがあり、医療現場での応用範囲が広い
-
1か月分(30日)の薬価・自己負担額の目安は?
-
ブスコパン錠10mg(サノフィ)
- 薬価:6.1円/錠
- 例:1日3回2錠(=6錠)×30日=180錠
→ 薬価合計:1,098円
→ 自己負担(3割):約330円前後
● 後発品(例:ブチルスコポラミン臭化物錠10mg「ツルハラ」)
- 薬価:7.3円/錠(※やや高いが流通あり)
※処方料・調剤料などは別途かかります。目安としてご参照ください。
-
どれくらいで効く?作用発現時間・持続時間は?
-
内容 目安の時間 作用発現 内服:30〜60分以内に効果が出ることが多い 持続時間 約3〜6時間程度(個人差あり) 注射の場合は10分以内に効果を感じるケースもあります(医療機関で使用時)。
-
妊娠中に使える?リスクや注意点は?
-
妊婦または妊娠の可能性がある方には、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ使用されます。
動物実験で催奇形性の報告はありませんが、ヒトでの安全性は確立していません。
PMDA添付文書には「投与は慎重に検討」と記載されており、定期的な使用よりは必要最低限の使用が推奨されます。
-
授乳中に使っていいの?母乳への影響は?
-
ブスコパン®が母乳中に移行するかは明確にされていません。
使用する場合は、
→ 授乳を中止する
→ 授乳を一時的に休止して薬を使う(搾乳して廃棄)
などを医師と相談して決める必要があります。PMDA添付文書には「授乳の継続または中止を検討」と明記されており、安易な併用は避けるのが基本です。
-
子どもに使える薬?使用の可否と注意点は?
-
日本国内では小児を対象とした臨床試験は実施されていません。
添付文書上も、「小児等への使用経験が少ないため慎重に投与」と記載あり。
ただし、海外や一部の医療現場では医師の判断で使用されることがあります(例:小児の腸重積のけいれん緩和など)。
保護者の同意のもとで、慎重な投与管理が必要です。



