不安・寝つけない・夜尿…そんなときの漢方|桂枝加竜骨牡蛎湯の効果と使い方

不安・寝つけない・夜尿…そんなときの漢方|
桂枝加竜骨牡蛎湯の効果と使い方

不安があるので『桂枝加竜骨牡蛎湯』使えますか?

桂枝加竜骨牡蛎湯は、不安・緊張・不眠・子どもの夜泣きや夜尿などに

用いられる漢方エキス剤です。

体力がやや低下し、下腹部の緊張がみられる体質に合いやすいです。

この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)とは

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は、漢方の古典『金匱要略(きんきようりゃく)』に記載された処方をもとに作られたエキス製剤です。現在はツムラ・クラシエ・小太郎漢方製薬・大杉製薬などから医療用漢方エキス剤として供給されています。

日本の医療現場では、不安や緊張が強い・寝つきが悪い・子どもの夜尿などに対し、体力がやや低下していて、下腹部の腹直筋(ふくちょくきん:おなかの筋肉)が緊張しやすい体質の方に使われます。


特徴

● 原典に忠実な処方

桂枝湯(けいしとう)を基本として、竜骨(りゅうこつ)と牡蛎(ぼれい)を加えた構成です。心と体の高ぶりを鎮め、バランスを整える目的で用いられます。

● 7種類の生薬から構成

  • ケイヒ(桂皮)
  • シャクヤク(芍薬)
  • タイソウ(大棗)
  • ボレイ(牡蛎)
  • リュウコツ(竜骨)
  • カンゾウ(甘草)
  • ショウキョウ(生姜)

● 主な含有成分

  • ペオニフロリン(シャクヤク由来)
  • グリチルリチン酸(カンゾウ由来)
  • [6]-ショーガオール(ショウキョウ由来)

● 「証(しょう)」に合わせて使う

漢方薬は、「誰にでも効く」薬ではなく、その人の体質や症状のパターン(=証)に合ったときに効果が出やすいという特徴があります。


効能・効果

製薬会社により表現が多少異なりますが、共通して次のような症状に用いられます:

  • 神経質・不眠症(興奮しやすい・寝つきが悪い・眠りが浅い など)
  • 小児の夜泣き・夜尿症
  • 眼精疲労
  • 神経衰弱・性的神経衰弱(精神的に疲れやすい・性機能の低下)
  • 遺精・陰萎(いせい・いんい:夢精や勃起不全)

※実際の適応は製品ごとに異なります。診察では「証」の一致が重視されます。


有効性(実臨床での使われ方)

添付文書に基づき、以下のようなケースで使用されています:

  • 興奮しやすく不安・緊張が強い方
  • 子どもの夜尿や夜泣き
  • 睡眠トラブルや神経症状を伴う方

ただし、漢方薬の効果は「証」の適合に左右されるため、一定期間使って効果がない場合は処方の見直しが行われます。


用法・用量

  • 成人:通常1日6.0gを2〜3回に分けて、食前または食間に服用します。
  • 小児・高齢者:年齢・体重・症状に応じて医師が調整します。

※体調や反応を見ながら、継続や中止を判断します。


使用に注意が必要な方(禁忌ではないが慎重に)

提供資料には「禁忌(絶対に使えない)」の明記はなし。
以下の方は、慎重に適応を判断する必要があります。

  • 妊婦・妊娠の可能性がある方
    → 有益性が危険性を上回ると判断された場合のみ使用
  • 授乳中の方
    → 治療上の有益性と母乳栄養のバランスを考慮して決定
  • 高齢者
    → 一般的に生理機能が低下しているため、減量など配慮が必要
  • 小児
    → 小児を対象とした十分な臨床試験は実施されていません
  • カンゾウに過敏な方
    → 偽アルドステロン症・浮腫・高血圧・低カリウム血症がある場合も注意

飲み合わせに注意が必要な薬

本剤にはカンゾウ由来のグリチルリチン酸が含まれるため、以下との併用には注意が必要です。

● 注意すべき併用薬

  • 他のカンゾウ含有漢方薬(芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など)
  • グリチルリチン酸やその塩類を含む配合剤

● 併用により起こりうるリスク

  • 偽アルドステロン症:むくみ・体重増加・血圧上昇 など
  • 低カリウム血症:脱力感・筋力低下・ミオパチー(筋肉障害)

→ 漢方薬同士で生薬が重複しないよう注意が必要です。


副作用とその対策

● 重大な副作用(頻度不明)

  • 偽アルドステロン症
     低カリウム血症、血圧上昇、体液貯留、むくみ、体重増加など
  • ミオパチー
     筋力低下、けいれん、まひ等(低カリウム血症により起こる)

→ 異常を感じたら服用を中止し、医師の診察を受けてください。
 必要に応じてカリウム補正などの対処が行われます。

● その他の副作用(頻度不明)

  • 過敏症状:発疹、発赤、かゆみ等

● モニタリングのポイント

  • 血圧や血清カリウム値のチェックが重要
  • むくみ・だるさ・こむら返りなどの初期症状に早めの対応を

まとめ

  • 桂枝加竜骨牡蛎湯は、不安・緊張・不眠・子どもの夜泣きや夜尿などに用いられる漢方エキス剤です。
  • 体力がやや低下し、下腹部の緊張がみられる体質に合いやすいです。
  • 使用時は「証(しょう)」を重視し、短期間で反応を評価 → 必要なら見直し
  • カンゾウ(甘草)由来成分に注意が必要で、併用薬や副作用にも注意が必要です。
  • 妊婦・授乳婦・高齢者・小児は個別に慎重な判断を。

参考文献・出典

【添付文書】
ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(医療用)添付文書(2023年10月改訂)
https://www.tsumura.co.jp または PMDA添付文書情報

【KEGG DRUGデータベース】
https://www.genome.jp/kegg-bin/show_drug?D06945

【漢方医学会の資料】
日本東洋医学会や日本漢方生薬製剤協会による解説資料など

【インタービューフォーム】
製薬企業が医療従事者向けに提供する詳細情報(ツムラ等から取り寄せ可能)

よくある質問(Q&A)


桂枝加竜骨牡蛎湯ってどんなときに使う薬ですか?

不安や緊張が強い人、子どもの夜尿や夜泣き、眠りが浅い方などに使われる漢方薬です。特に、体力がやや落ちていて下腹部の張りや緊張がみられる人に適しています。

この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?

桂枝加竜骨牡蛎湯は、桂枝湯に「竜骨」「牡蛎」を加えた処方で、精神的不安や興奮、不眠、性機能低下に対応できる点が特徴です。
同じく精神安定系の漢方薬(抑肝散・加味逍遙散など)と比較すると、「虚証(体力がないタイプ)」向けで、下腹部の緊張や性機能関連の訴えにも対応できる点で差別化されています。

先発薬はいつ発売されましたか?

ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(医療用)は、昭和60年(1985年)5月31日に「厚生省薬務局薬審2第120号通知」に基づき製造承認されています。
これが日本国内での最初のエキス製剤(医療用)の先発品とされます。

1か月(30日)処方された場合の薬価・目安の自己負担額は?

▼ 医療用漢方製剤の薬価(1gあたり)

製品名製薬会社薬価(円/g)
ツムラ桂枝加竜骨牡蛎湯ツムラ13.8円
クラシエ桂枝加竜骨牡蛎湯クラシエ12円
コタロー桂枝加竜骨牡蛎湯小太郎漢方製薬10.7円
オースギ桂枝加竜骨牡蛎湯大杉製薬10.8円

▼ 目安金額(ツムラ製品で試算)

成人用量:1日6g → 1か月で180g

  • 薬価ベース:2,484円(13.8円×180g)
  • 自己負担(3割):約745円
    ※診察料や調剤料は別途かかります。

この薬の作用発現時間・持続時間はどれくらい?

明確な「分・時間」単位の薬理データは存在しませんが、

  • 効果の発現は数日〜1週間程度で見られることが多いとされます。
  • 持続的な体質改善目的で2〜4週間以上の連続使用が一般的です。

※急性の症状に即効性を期待する薬ではなく、徐々に体質や症状を整える漢方薬です。

妊娠中は使える?リスクや注意点は?

妊娠中の使用は「治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合に限り使用」とされています。

医師と相談の上で使用を検討してください。

動物試験等による明確な催奇形性リスクは報告されていません。

ただし、生薬の中にはホルモン様作用や子宮への影響が疑われるものもあるため、慎重な判断が必要です。

授乳中の使用は可能?母乳への影響は?

授乳中の使用についても、「有益性と授乳のメリットを比較して判断」することが求められます。

重大な影響は報告されていませんが、授乳中に使用する際は医師に相談し、赤ちゃんの体調変化にも注意を払う必要があります。。

桂枝加竜骨牡蛎湯に含まれる生薬の成分が母乳中に移行するかどうかの詳細なデータはありません

子どもに使えますか?年齢制限や注意点は?

はい、小児にも使用されます。特に夜泣き・夜尿症への適応がある漢方薬です。

添付文書上は「小児対象の十分な臨床試験は実施されていない」と記載があるため、保護者と医師が相談して慎重に使用判断することが基本です。

ただし、小児向けの用法・用量は年齢・体重・症状に応じて個別に調整されます。