のどが痛い・腫れてつらい時に飲む漢方|小柴胡湯加桔梗石膏ってどんな薬?
のどが痛い・腫れてつらい時に飲む漢方
小柴胡湯加桔梗石膏ってどんな薬?

のどの炎症があるので『小柴胡湯加桔梗石膏』使えますか?

小柴胡湯加桔梗石膏はのどの腫れや痛み(扁桃炎・扁桃周囲炎)に
使われる保険適用の漢方薬です
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
目次
小柴胡湯加桔梗石膏とは
小柴胡湯(しょうさいことう)に桔梗(ききょう)と石膏(せっこう)を加えた漢方薬で、のどの腫れや痛み(扁桃炎・扁桃周囲炎)に用います。
小柴胡湯加桔梗石膏の特徴
漢方の原典をもとに開発
この処方は『傷寒論』や『金匱要略』に基づく小柴胡湯に、「のどの炎症」を意識して桔梗と石膏を加えた経験的処方です。
以下の9種の生薬を、水で煎じたエキスから顆粒化しています:
- セッコウ(石膏)
- サイコ(柴胡)
- ハンゲ(半夏)
- オウゴン(黄芩)
- キキョウ(桔梗)
- タイソウ(大棗)
- ニンジン(人参)
- カンゾウ(甘草)
- ショウキョウ(生姜)
効能・効果
以下のようなのどの腫れや痛みを伴う疾患に使用されます:
- 扁桃炎(へんとうえん)
- 扁桃周囲炎(へんとうしゅういえん)
臨床試験の概要
急性扁桃炎に対する比較試験(国内)
- 小柴胡湯加桔梗石膏(1包×3回/日)と、PL顆粒+アズノールうがい薬を比較
- 対象:31例(うち本剤群15例)
- 期間:5日間
→ 咽頭痛の改善に有意差なし(明確な優越性は示されていません)
慢性扁桃炎の小規模報告
- 1年間の投与で急性発作が減ったという7例の報告あり
→ 比較対照なしの症例報告のため、参考程度のエビデンス
COVID‑19に対する話題(適応外)
- 葛根湯+小柴胡湯加桔梗石膏の併用で発熱が早く下がったとの報告あり
→ 適応外使用の話題であり、医師と相談が必要
用法・用量
- 通常:成人 7.5g/日(2〜3回に分けて)
- 食前または食間に服用
- 年齢・体重・症状により調整可
使用できない方・注意が必要な方
明確な「禁忌」は添付文書にはありませんが、以下の方は注意が必要です:
胃腸が弱い方
→ 食欲不振・胃の不快感・下痢が出やすくなります。
高齢者・体力が低下している方
→ 副作用が出やすいため、少量から開始するなどの調整が推奨されます。
妊婦・授乳婦
→ 有益性が危険性を上回る場合のみ使用を検討
小児
→ 十分な臨床試験データがなく、使用は慎重に
飲み合わせに注意が必要な薬(相互作用)
甘草(カンゾウ)やグリチルリチン酸を含む他の薬と併用すると、副作用が強まる恐れがあります。
注意が必要な薬の例
- 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 抑肝散(よっかんさん)
- グリチルリチン酸製剤(湿疹薬など)
☑ 併用により偽アルドステロン症(むくみ・体重増加・高血圧・低カリウム血症)や
ミオパチー(脱力・けいれん)のリスクが上がります。
→ 血圧・体重・むくみ・血清カリウム値のモニタリングが重要です。
主な副作用とその対処
【頻度不明だが注意が必要な副作用】
▶ 間質性肺炎(かんしつせいはいえん)
- 症状:咳・息切れ・発熱
→ 服用を中止し、X線・CT検査とステロイド治療が必要な場合も
▶ 偽アルドステロン症
- 症状:むくみ・体重増加・高血圧・低カリウム血症
→ 血液検査で異常があれば投与中止し、補正治療を行う
▶ ミオパチー
- 症状:脱力、けいれん、麻痺
→ 低カリウムによる筋障害、異常があれば直ちに中止
▶ 肝機能障害・黄疸
- AST/ALT、ALP、γ-GTPの異常上昇
→ 定期的な肝機能チェックが望ましい
その他の副作用
- 発疹・じんましん(アレルギー反応)
- 食欲不振、胃の不快感、軟便、下痢 など
☑ いずれも症状が持続する場合は医師へ相談を
添付文書改訂情報(重要)
間質性肺炎に関する安全性情報が追加され、2023年12月に添付文書が改訂されました。
→ 息切れ・咳・発熱が出たら、直ちに服用を中止して受診してください。
まとめ
- 小柴胡湯加桔梗石膏は、のどの腫れや痛み(扁桃炎・扁桃周囲炎)に使われる保険適用の漢方薬です。
- 体質(証)に合うかどうかを見極めた上での使用が大切です。
- 明確な治療効果の証明は限定的であり、従来治療と同程度という報告もあります。
- 副作用や飲み合わせに注意し、自己判断での継続は避けるようにしてください。
当院からのご案内
当院では、のどの症状の原因や重症度・体質・服薬中の薬を総合的に評価し、
抗菌薬・鎮痛薬・漢方薬の併用も含めた治療提案を行っております。
ご来院の際は、現在使用中の市販薬やサプリメントも含めてお知らせください。
参考文献・出典
PubMed等での関連文献(「shosaikoto + tonsillitis」などで検索)
よくある質問(Q&A)
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小柴胡湯加桔梗石膏とはどんな薬ですか?
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漢方の古典「小柴胡湯」に、のどの炎症や痛みに効果が期待される「桔梗(ききょう)」と「石膏(せっこう)」を加えた処方です。
のどが腫れて痛いとき(扁桃炎や扁桃周囲炎)に保険適用で処方される医療用漢方薬で、ツムラが製造販売しています。
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この薬の同じ系統の既製薬品に対する強みは?
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・小柴胡湯単独と比べて、のどの症状に対する即効性や抗炎症作用が期待できる点が特徴です。
・桔梗がのどの炎症部位に直接作用しやすく、石膏の熱を冷ます作用が加わることで、扁桃炎などに特化した応用が可能です。
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先発薬の発売年はいつですか?
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医療用の「ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏エキス顆粒」は、
1985年(昭和60年)5月31日に「薬審2第120号通知」に基づき承認されました。
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1か月(30日)処方時の薬価と、実際の目安価格(自己負担額)は?
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- 薬価:37.2円/g
- 通常用量:1日7.5g → 1か月で225g
- 1か月の薬価:8,370円(225g × 37.2円)
【自己負担の目安】
- 3割負担:約2,510円
- 1割負担:約840円
(調剤料等は別途かかる場合があります)
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作用が出るまでの時間や、効果の持続時間はどれくらいですか?
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明確な薬理試験は少ないですが、服用後1〜2日以内にのどの痛みの改善を感じるケースが多いとされます。
持続時間については1回服用あたり数時間~半日程度のことが多く、1日2〜3回に分けて継続投与する設計です。
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妊娠中に小柴胡湯加桔梗石膏を使っても大丈夫ですか?
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基本的には妊娠中の安全性は確立していません。
添付文書では「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に限る」とされており、使用の際は医師とよく相談することが必須です。
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授乳中に使用しても母乳への影響はありますか?
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母乳への移行に関するデータは十分ではありません。
添付文書では「授乳の継続または中止を検討すること」と記載されており、授乳中の使用は慎重に判断する必要があります。
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子どもにも使えますか?
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小児への使用は臨床試験が実施されていないため、使用実績に基づいて医師が判断するケースが多いです。
特に幼児や体力のない子どもには、副作用(下痢・食欲不振)などへの注意が必要です。
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小柴胡湯加桔梗石膏は市販されていますか?
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市販薬としては販売されていません。
医師の診察・処方が必要な医療用医薬品です。
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小柴胡湯との違いは何ですか?
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小柴胡湯は体の「半表半裏(はんぴょうはんり)」の邪を除く基本方剤で、幅広い炎症性疾患に使われます。
小柴胡湯加桔梗石膏は、それに「桔梗+石膏」を加えることで、とくに“のどの炎症”にピンポイントで対応した処方設計になっています。
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飲み合わせに注意が必要な薬はありますか?
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以下の薬や漢方との併用は注意が必要です:
- 甘草(カンゾウ)やグリチルリチン酸を含む製剤
- 芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散 など
これらを併用すると、偽アルドステロン症(むくみ・高血圧・低カリウム血症)やミオパチー(筋力低下)のリスクが高まります。
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副作用にはどんなものがありますか?
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【重大な副作用(頻度不明)】
- 間質性肺炎(咳・息切れ・発熱)
- 偽アルドステロン症(むくみ・血圧上昇・体重増加)
- ミオパチー(脱力・四肢の麻痺)
- 肝機能障害、黄疸(AST, ALTの上昇)
【その他の副作用】
胃の不快感、食欲不振、下痢など
発疹・蕁麻疹



