風邪のひき始めに効く漢方「桂枝湯」って?体力が落ちた時におすすめの飲み方と注意点
風邪のひき始めに効く漢方「桂枝湯」って?
体力が落ちた時におすすめの飲み方と注意点

風邪に『桂枝湯』を飲んでいます。

桂枝湯は、体力が落ちているときの風邪のひき始めに使われる漢方薬です。
寒気やだるさ、軽い発熱、発汗のない風邪の初期に、
体のバランスを整えて自然治癒力を助ける効果が期待されます。
桂枝湯はオンライン診療で処方可能です。
この記事では、公的資料を参考に薬の特徴をわかりやすくお伝えします。
桂枝湯(けいしとう)とは?
――風邪の初期に用いる代表的な漢方の効果・飲み合わせ・副作用まで
目次
✅ 要点まとめ
- 桂枝湯は「体力が衰えた風邪の初期」に用いられる古典的漢方処方
- 5つの生薬(ケイヒ・シャクヤク・タイソウ・カンゾウ・ショウキョウ)で構成
- カンゾウ成分により「低カリウム血症」や「偽アルドステロン症」に注意
- 効果がみられない場合、継続投与は避けるのが基本
(※2023年12月改訂 添付文書より)
桂枝湯とは?
桂枝湯(けいしとう)は、漢方の古典『傷寒論(しょうかんろん)』『金匱要略(きんきようりゃく)』に記載された、風邪の初期に使われる代表的な処方です。
- 構成生薬:
ケイヒ・シャクヤク・タイソウ・カンゾウ・ショウキョウ
桂枝湯の特徴
● 古典処方を現代の製剤へ
- 漢方古典の処方をベースに顆粒剤として製品化
- 承認根拠:昭和60年 厚生省薬務局通知(薬審2第120号)に基づく製造承認
● 製法の工夫(ツムラ独自の乾式造粒法)
- 生薬5種を水だけで煎じ→噴霧乾燥→乾式造粒
- 有機溶媒や追加の水を使わない製剤設計で、安定性・服用性が向上
効能・効果
体力が衰えたときの風邪の初期
● 実臨床での使い方のポイント
- 漢方は「証(しょう)=体質や症状」に合っていることが重要
- 発汗の有無、寒気、だるさなどを観察して選択
- 改善がなければ継続投与は避ける
有効性について
- 臨床試験データは添付文書には明記されていません
- 医療用漢方製剤として、古典・臨床経験・薬務通知に基づいて使用されています
※「証」に合わなければ、他の漢方薬への切り替えを検討
用法・用量
- 成人:1日7.5gを2〜3回に分けて服用
(食前または食間) - 調整可能:年齢・体重・症状に応じて増減可
使用を避ける・慎重にすべきケース
| 対象 | 注意点 |
|---|---|
| 妊婦 | 治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与(9.5) |
| 授乳婦 | 母乳と治療効果のバランスを見て、授乳継続または中止を検討(9.6) |
| 小児 | 臨床試験実施なし。慎重に判断(9.7) |
| 高齢者 | 生理機能低下により副作用リスクあり。減量等を考慮(9.8) |
| 証が不一致 | 効果がなければ速やかに中止(8.1) |
| カンゾウ含有 | 血清カリウムや血圧に注意(8.2) |
飲み合わせ注意(相互作用)
❗以下の薬と併用には注意が必要です
● カンゾウ(甘草)含有製剤
- 芍薬甘草湯、補中益気湯、抑肝散など
● グリチルリチン酸含有製剤
- グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・L-システイン
- 同成分含有の配合錠(例:DL-メチオニン配合)など
● 理由
- グリチルリチン酸は尿細管でのカリウム排泄を促進
→ 低カリウム血症 → 偽アルドステロン症・ミオパチーのリスク上昇
● 他の漢方との併用
- 生薬の重複に注意
副作用(頻度不明)
【重大な副作用】
🔹 偽アルドステロン症
- 症状:低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加 など
- 対応:異常が出た場合は投与を中止し、カリウム補正などの処置
🔹 ミオパチー
- 原因:低カリウムによる筋障害
- 症状:脱力感、手足のけいれん・まひ
- 対応:投与中止+カリウム補正
【その他の副作用】
- 過敏症:発疹、発赤、かゆみなど
その他の注意点
- 湿疹・皮膚炎が悪化することあり
- 必要に応じて血清カリウムや血圧のモニタリングを実施
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 効能 | 体力が落ちたときの風邪の初期 |
| 用法 | 成人は1日7.5gを2〜3回に分けて服用 |
| 注意点 | 証に合わない場合は中止。副作用リスクに注意(特にカンゾウ含有製剤との併用) |
| 使用上の配慮 | 妊婦・授乳婦・小児・高齢者には個別対応が必要 |
💬 当院からのご案内
当院では、体質(証)・既往歴・現在服用中の薬をしっかり確認しながら、患者様ごとに最適な漢方治療をご提案しています。
不安な点がある方は、受診前でもお気軽にご相談ください。
参考文献・出典
医療用添付文書(2023年12月改訂):
PMDA医療用医薬品情報にて検索可
KEGG DRUG:D06947
https://www.genome.jp/db/kegg/drug/D06947
ツムラ公式のインタビューフォーム・製品情報ページ
ツムラ製品情報
厚生労働省の医療用漢方製剤承認通知(薬審2第120号)
日本東洋医学会雑誌・漢方研究文献などでの症例報告や使用実績も参考にされます。
よくある質問(Q&A)
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桂枝湯ってどんなときに使うの?
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桂枝湯(けいしとう)は、体力が落ちているときの風邪のひき始め(初期症状)に使われる漢方薬です。
寒気やだるさ、軽い発熱、発汗のない風邪の初期に、体のバランスを整えて自然治癒力を助ける効果が期待されます。
-
この薬の同じ系統の既製薬品と比べて、桂枝湯の強みは?
-
桂枝湯の強みは、次の通りです:
ツムラ製剤では乾式造粒法が用いられており、湿気に強く、服用しやすい顆粒形状
体力がない(虚証)タイプの風邪初期に特化している(→葛根湯は実証寄り)
咳や痰が目立たない、ゾクッとする感じや悪寒があるときにマッチしやすい
5つの基本生薬のみで構成されており、過不足のないバランス処方
-
桂枝湯(ツムラ)の発売年はいつ?
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ツムラ桂枝湯エキス顆粒(医療用)は、
昭和60年(1985年)5月31日、厚生省通知に基づき承認申請 → 承認・販売開始された製剤です。
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桂枝湯の1か月(30日)処方時の薬価と、自己負担額の目安は?
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ツムラ製の薬価は以下の通りです(2023年改定時点):
- 薬価:6.7円/g
- 通常処方:1日7.5g × 30日 = 225g
- 総薬価:6.7円 × 225g = 約1,507円
負担割合 自己負担額(目安) 1割負担 約151円 3割負担 約452円 ※院外処方時はこれに調剤料等が別途加算されます。
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桂枝湯の効果はどのくらいで出る?作用の持続時間は?
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一般的に、服用後1〜2時間程度で体の温まりや汗が出るなどの反応が現れることがあります。
漢方薬のため即効性を期待するよりも、証(体質・症状)に合っていれば穏やかに効果が現れ、半日〜1日で風邪の進行を抑えるケースもあります。持続時間は、個人差がありますが、1回あたり4〜6時間程度の感覚で投与間隔を設定(1日2〜3回)
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妊娠中でも桂枝湯は飲める?リスクや注意点は?
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妊娠中の使用は、添付文書では次のように記載されています:
「妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること」
自己判断での服用は避け、医師の判断のもとで使用してください。
使用は可能だが慎重に判断される薬です。
桂枝湯には子宮収縮を直接促すような生薬は含まれていませんが、体質・週数によっては不適合なこともあります。
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授乳中に桂枝湯を飲んでも大丈夫?母乳への影響は?
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授乳中も基本的には使用可能ですが、次のような注意があります:
「授乳の継続または中止を検討すること」
重大なリスクは報告されていませんが、赤ちゃんへの影響が不明のため、医師に相談のうえ慎重に使用します。
桂枝湯の生薬は、母乳中への移行に関する明確なデータはありません。
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子どもにも桂枝湯は使えるの?
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使用可能ですが、注意が必要です:
- 添付文書では「小児等を対象とした臨床試験は実施されていない」と明記
- 小児への使用実績はありますが、年齢・体重に応じた用量調整が必須
- 小児科医・漢方に詳しい医師の判断が必要
特にカンゾウ由来の副作用(低カリウム血症など)に注意し、長期使用や自己判断での使用は避けてください。



